太田述正コラム#2806(2008.9.22)
<夏休み中の記事より>(2008.11.9公開)
1 始めに
 ようやく少し時間ができたので、9月の第一週の夏休み中にダウンロードだけしてあったファイルを斜め読みしたところ、既に時期遅れになった時事ものを始めとして、余り収穫がありませんでした。
 その中から、比較的面白かった2つの記事の概要をご紹介しましょう。
2 イスラム世界における性
 
 まず、American Freedom Campaignの共同創立者のナオミ・ウルフ(Naomi Wolf)によるコラムです。
 「欧米では、ベールで覆うことは、女性の抑圧であり女性の性の抑制であると解釈している。しかし私がイスラム諸国を旅行しイスラム教徒の家で女性だけの中で議論に招待され、イスラムの女性の格好と女性の性に対する姿勢は抑圧に根ざすものではなく、公と私、つまりは神の領域と夫の領域とを峻別する意識に根ざすものであることが分かった。・・・
 多くの女性達はこういう。「欧米の衣類を着ると、男達は私をみつめ、私を客体化する。他方私はいつも自分自身を雑誌の中の標準的モードと比較してしまう。とてもかなわないし、年をとるとともにもっとかなわなくなるし、いつも男達の目に晒されていることもなおさらつらくなる。ところが、ヘッド・スカーフやチャドルを身に纏うと、人々は私に客体ではなく個人として関わってくれる。私は尊敬されていると感じる。」と。・・・
 女性の性が私的な世界にとどめおかれ、聖なるものとみなされるように仕向けられておれば、そして、夫がその妻(や他の女性)が一日中半分裸でいるのを見ていなければ、家の聖域の中でヘッド・スカーフやチャドルが取り去られた場合の大きな力と濃密さを誰しもが感じることができる。・・・
 あらゆる街角にポルノと性的イメージがあふれる中で成長する欧米の健康な若い男性達の中には、リビドーの減少が次第に一般的になりつつある。だから、女性の性が、もっと慎み深い文化の中で持っている力がいかほどのものか想像できようというものだ。欧米の人々は、フランスや英国の女性がベールを選択する時、それは必ずしも彼女の抑圧を示すものではないことを認識する必要がある。・・・」
 (以上、
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2008/09/05/2003422327
(9月5日アクセス)による。)
3 ロシア正教とグルジア正教
 次は、ニューヨークタイムス掲載の記事です。
 「1億人以上のロシア人が正教徒であり、キリスト教世界の中で最大の正教を構成している。ポスト・ソ連期のロシア政府は正教を国家宗教とした。・・・
 ロシア世論調査センターが昨年行った調査によれば、ロシアの総人口1億4,100万人のうちの約75%がが正教徒であるけれど、規則的に教会に行くのはわずか10%に過ぎない。・・・
 グルジアは、人口は500万人にみたないが、最も古いキリスト教諸国の一つだ。その教会は4世紀まで遡ることができ、キエフのウラディミール公がドニエプル河の岸辺に正教をもたらし、ルス(Rus)族の洗礼を行った988年までしかそのルーツを遡ることができないロシア教会よりはるかに古い。・・・
 この二つの教会の歴史は長く、相互の関係は入り組んでいる。1801年にロシアは、ペルシャからの保護を求めていたグルジアを併合し、その教会を吸収した。そしてロシアはグルジア司教区(patriarchate)を廃止したが、この司教区は、ボルシェビキが権力を掌握した後は、少なくとも名目的には回復された。帝政時代からソ連時代にかけて、グルジアの僧侶達はロシアとキエフで訓練を受けた。ソ連時代には、グルジアはロシアで迫害された坊さん達の避難所となった。・・・
 ロシア教会は、ロシア政府によるアブハジアと南オセチアの承認に対して煮え切らない態度をとっている。・・・
 この両地域の正教会は必ずしもモスクワの管轄下に入るわけではない<というのだ。>・・・
 ロシア教会は自らを帝国的な教会であると内心思っている。しかし、現在の<グルジアの>紛争からロシア教会が得るものはほとんどない。ロシア教会の<ある>学者は、「この何十年かの間で、ロシア正教会の外交政策が国家のそれと乖離したのは初めてだ」と語っている。」
 (以上、
http://www.nytimes.com/2008/09/06/world/europe/06orthodox.html?ref=world&pagewanted=print
(9月6日アクセス)による。)