太田述正コラム#2906(2008.11.11)
<皆さんとディスカッション(続x303)>
<海驢>
 太田様、コラム#2902にて、さっそくご返答いただきましてありがとうございました。
 補足のご説明をいただき、概ね納得できました。
 とは申しながら、また若干気になった部分がございましたので、以下に述べさせていただきます。(と、こんな書き込みで多忙な太田さんのお手を煩わせるのは恐縮ですので、放置いただいて結構です。どなたか、近現代史・戦史に詳しい方から示唆いただけることを微かに期待して投稿いたします。)
 
≫『・・・日本帝国主義は東北同胞を奴隷のごとくコキ使ったが、彼等の軍隊(註、日本軍)は掠奪をしたり、婦女を強姦したりするような事例は、そうざらにはなかった。』≪(引用:「ソ連軍の満州進駐」董 彦平(著)・加藤 豊隆(訳)・原書房)
≫董彦平は国民党軍の中将だったと思いますが、「そうざらにはなかった」と言うのですから、「少なからずあった」ということでしょう。≪(コラム#2902。太田)
 「ざらにはなかった」の「ざら」を国語辞典で調べますと、『どこにでもあって珍しくないさま。ありふれているさま。:用例「そんな話は―にある」』とのことです。
※出典:ざら – goo 辞書 http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A4%B6%A4%E9&mode=0&kind=jn
 したがって、「ざらにはなかった」=どこにでもあって珍しくない+ではなかった(否定)=「珍しい」という解釈が一般的ではないかと思いました。
 ただし、董彦平中将が見聞していないだけという可能性や、訳者である加藤豊隆氏が日本国内向けに慮った可能性も、もちろんあると思います。
 当方の祖父は、昭和16年入隊以来、満州から中支へ転戦し、(より現場・末端に近い)下士官として従軍しておりました。幼少の頃は生活を共にしており、軍歌とともに戦地での生活や体験、戦闘についても聞き及びましたが、支那人を蔑視したような(暴虐行為に関する)「武勇伝」は皆無でした。
 あくまで、個人的な体験談ですが。
≫部隊単位で降伏すれば、米軍だってあまり無体なことはやらなかったはずですよ。≪(同上)
 二千名単位で投降しても、無体なことを行っていたようです。
<以下、引用(孫引き):『孤高の鷲―リンドバーグ第二次大戦参戦記 <下>』(学習研究社刊 翻訳:新庄哲夫)>
 たまたま捕虜のこと、日本軍将兵の捕虜が少ないという点に及ぶ。「捕虜にしたければいくらでも捕虜にすることが出来る」と、将校の一人が答えた。「ところが、わが方の連中は捕虜をとりたがらないのだ」
 「*****では二千人ぐらい捕虜にした。しかし、本部に引き立てられたのはたった百か二百だった。残りの連中にはちょっとした出来事があった。もし戦友が飛行場に連れて行かれ、機関銃の乱射を受けたと聞いたら、投降を奨励することにはならんだろう」「あるいは両手を挙げて出て来たのに撃ち殺されたのではね」と、別の将校が調子を合わせる。
<引用終わり>
以下のリンクに絶版となっている「リンドバーグ日記」原本の画像・文章が掲載されていました。ご参考まで。
※参考:Yahoo!ブログ – “Fulaingu” Tigers
http://blogs.yahoo.co.jp/furainngutaigaasu/folder/1578421.html
<太田>
 他の読者の方にぜひ調べてご報告願いたいですが、国民党軍の規律の乱れは大変なものであったと承知しており、董彦平は日本軍を自分の国民党軍と比較し、他方、ソ連軍は規律がしっかりしていた中国共産党軍と比較している、という前提で彼の言葉を解釈すべきだと思います。
 また、米軍の話は、日本側の文献でどのような記述があるのか、知りたいところですね。
 さて、東京新聞の11月6日付朝刊がようやく送られてきたので、その24頁の田母神前空幕長に関する記事中、私の発言を引用した箇所をご披露しておきます。
 
 「元防衛庁官房審議官で評論家の太田述正氏は、1978年に統幕議長だった栗栖弘臣氏が有事法制の必要性を訴え、更迭されたことと比較。栗栖氏を「本業にかかわる発言をした確信犯」、田母神氏を「政府見解に反するが、直接仕事に関係ない」とし、更迭以上の処分は難しいと話す。・・・太田氏は「確信犯か分からないが、確信犯でなければ、余計にKY(空気が読めない)。自分にとって不愉快だからと、専門家でもないのに歴史認識を述べることに何の意味があるのか。自衛官幹部全体の信頼を失墜させる愚行を犯した究極のKY」と断じた。」
 さて、最近の関係未公開コラムを読んでおられる有料読者の方々は、「直接仕事に関係ない」とか「専門家でもないのに」の真意が分かっておられると思いますが、それ以外の方々は、後述のTV番組をご覧になるか、これら未公開コラムが公開されるまで、誤読されないようにご注意ください。
 なお、私のTV出演内容が以下のように決まりました。
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番組タイトル:
「闘論!倒論!討論!2008」
テーマ:
田母神前空幕長更迭問題が提起したもの
 
収録日時:
平成20年11月12日(水)
14時30分~18時00分
放送予定日:
平成20年11月13日(木)
スカパー!216Ch. 日本文化チャンネル桜(一部)
インターネット放送「So-TV」公開
http://www.so-tv.jp/
パネリスト:
(敬称略50音順)
潮 匡人(評論家)
太田述正(評論家・元防衛庁審議官)
川村純彦(川村研究所代表・元海将補)
佐藤 守(軍事評論家・元空将)
西村幸祐(ジャーナリスト)
松島悠佐(軍事問題研究家・元陸将)
司会:
水島 総(日本文化チャンネル桜 代表)
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パネリスト6人中、自衛官歴のある人が4人、というのはちょっとバランスを欠いているようにも思います。
 また、皆さん「右」の方なので、{桜」TVへの第一回目の出演の時同様、1対5の議論になるかもしれませんね。
 ついでにもう一つ。
 本日自宅でフジテレビの取材を受けました。
 明日朝の「めざましテレビ」で一部が放送されるかもしれません。
<コバ>
 カマヤンの虚業日記というサイト(携帯サイトですいませんが、
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/mobile?guid=on
、11月8日の記事)を読むと、筑紫哲也氏が、共謀罪は米国共和党の国策を日本に押し付けようとしたもの、ブッシュ政権時代、反アメリカ共和党的言論人はマスコミにパージされた、結局日本のマスコミを振り回しているのはアメリカだ、などと共謀罪反対集会で話していたそうです。太田さんは日本で創設の動きがあった共謀罪についてどう思いますか?
 話しが飛び飛びになっちゃいますが、太田さんは反アメリカ共和党的言論人なのでしょうか? 日本マスコミに長いこと発信をスルーされていたのを考えるとブッシュ政権に睨まれていたとか…。筑紫氏の話しが正確なものであればですが。
<太田>
 私は、共謀罪の導入に賛成です。(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E8%AC%80%E7%BD%AA
に出てくる賛成派の論拠参照。)
 私は「反アメリカ共和党言論人」かもしれませんが、私が日本の主要マスコミに基本的にうけないのは、私が真面目に安全保障問題を議論しているからでしょう。そんな議論にはニーズがない、ということなのですよ。
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太田述正コラム#2907(2008.11.11)
<オバマ・黒人差別・米国・欧州>
→非公開