太田述正コラム#2912(2008.11.14)
<皆さんとディスカッション(続x306)>
<サヨク>
誰も親を選べない。同様に故郷(国)を選べない。それが所与の条件だ。我々は好むと好まざるとに関わらずそこから始める以外にない。
愛憎相半ばする親や故郷(国)への思いだが、その所与性を無視した他者からの批判には、やはり抑え切れない怒りが込み上げる。
「ナショナリズムとはかつては身近な共同体に対す思いだったものを、国民国家の中で想像的に回収しようするもの」(うろ覚え)とすれば、それは誰でも感じるものだろう。
つまり、それは他者に対し自慢するものではない。所与の条件を受け入れるということだ。
その意味では誰がもナショナリストなのでは?
<太田>
親は選べないけれど、国を選ぶことはできます。
もちろん、生まれる場所は選べないのだけれど、国内で住所を移せるように、国外に移住することだってできますよ。
極端な言い方をすれば、国は個人にとって手段なのであって、思い入れの対象ではありません。
ナショナリズムは、国を思い入れの対象として被治者にインドクトリネートすることによって、独裁的権力を維持すべく、フランス革命後にフランスにおいて生み出された民主主義独裁のイデオロギーである、というのが私の持論です。
なお、あなたの最後のセンテンスは、「ナショナリスト」を「パトリオット」(郷土愛者)に置き換えれば成り立ちうると思います。
<FUKO>
≫昨日朝のフジテレビ「とくダネ!」で太田さんのインタビュー放送してましたよ!≪(コラム♯2910)
肩すかし…残念です。
ところで、めざましテレビを観ていたとき、どーでもいいようなニュースばかりだなぁと思っていたところ、ドクターアトミックという、オッペンハイマーを主人公にした歌劇の紹介をやっていました。
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_ee13.html
原爆を投下したアメリカやシベリア抑留を行ったロシアを批判しようにも、田母神氏のように自国の行為に目をつむり反省しないままでは体裁が悪いなぁと思った次第です。
<太田>
オッペンハイマーについては、コラム#2420でとりあげているので、まだお読みでない方は、ぜひお読みくださいね。
<moshika>
ch桜の討論見ました。
http://jp.youtube.com/watch?v=_X9oOHgpBqI&feature=PlayList&p=C5CDB71512A59806&index=0&playnext=1
「ショックと怒りを与えるのが太田のやり口」(コラム#2905(未公開))が炸裂して、完全に1対6でしたね。本当にお疲れ様でした。
潮氏が麻生内閣に期待していたが当てが外れたと、正直におっしゃっていたのが印象的でした。自民党内部から田母神氏擁護がでているようですが、こんな煙幕には惑わされないでほしいと思います。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081111/plc0811111019011-n1.html
あと、フリップは明快で効果的でしたよ。前回より見易く、改善されていると感じました。
これからも「右」に「左」に活躍を期待してます。
<太田>
「桜」で、「航空自衛隊はパワハラ、セクハラの巣窟だ」と述べたところですが、本日、次のような記事を目にしました。
「航空自衛隊の第1術科学校(浜松市)校長の宮下今朝芳(けさよし)空将補(55)が、部下の女性に対するセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)疑惑で9月に更迭されていたことが分かった。・・・更迭は9月18日付。後任人事は発令されていない。学校トップが約2カ月間不在のまま、現在も副校長が校長の職務代理を務める異常事態が続いている。関係者によると、女性が9月ごろ、「宮下校長からセクハラ行為を受けた」と申し立てたため、航空幕僚監部(空幕)が調査を開始。校長ら幹部の人事権を持つ防衛省内局が「校長職にとどめておくのは不適切」と判断し、空幕付に異動させた。・・・」
http://mainichi.jp/select/today/news/20081114k0000m040142000c.html
これは、上記の私の発言を裏付ける材料になりそうですが、他方、この記事がすべて事実だとすれば、隠蔽体質の航空自衛隊が、かなりすばやい対応をとったことがうかがえ、当時の田母神空幕長がリーダーシップを発揮したとすると、彼を私が「職務怠慢」と断じたのは行き過ぎだったということにもなりかねません。
しかし、彼自身はどう見ても「パワハラ」には無頓着であり、そんな人物が「セクハラ」には厳しいとは考えにくいのですがね。
相当ひどいセクハラで、しかも証人や物証等があるケースであったのではないでしょうか。
なお、本日はこれから「右」の月刊誌のインタビューを受けますし、来週は20日に「左」の週刊誌のために「左」の国会議員と対談を行います。
<moshika>
コラム#2911読みました。
精神病質はいくらか古い概念で、今は人格障害などと言われるようです。
(人格障害) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%A0%BC%E9%9A%9C%E5%AE%B3
精神病質はK・シュナイダーの定義では「異常人格(性格)とは,われわれの念頭に浮かんではいるが,はっきり規定しえない平均範囲の人格(性格)からの変異であり,逸脱であり,その人格(性格)の異常性に悩むか,または,その異常性のために社会が悩むところの異常人格(性格)を精神病質人格(性格)」
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/9/nfm/n_9_2_2_3_1_0.html
人格障害はDSM-Ⅳの定義では「その人の文化から期待されるものから著しく偏り、広範でかつ柔軟性がなく、青年期または成人早期に始まり、長期にわたって安定しており、苦痛または障害を引き起こす、内的体験および行動の持続的様式」(要旨抜粋)ですから確かに似ています。
http://hikumano.umin.ac.jp/dsm4.html
(DSM)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%A8%E7%B5%B1%E8%A8%88%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D
≫性犯罪者の相当部分は精神病質者だ。・・・「第三の男」でオーソン・ウェルズが演じたハリー・ライム(Harry Lime)が一つの例だし、・・・<シェークスピアのオセロに登場する>イアゴ(Iago)が古典的精神病質者だ。・・・≪(太田コラム#2911(未公開))
最近の大きな事件では、茨城県土浦市の通り魔や、付属池田小事件の犯人は精神鑑定で人格障害と診断されています。
http://ameblo.jp/seisin-iryo0710/entry-10132246196.html
ただ、私は、精神病質や人格障害が犯罪と結び付けて語ることには違和感があります。精神病質や人格障害は上記定義より、時代や文化によって変化するものと思われ、その意味で科学的とは思えません。
刑法学者の佐藤直樹氏は著書でシュナイダーの精神病質の定義に触れて文学的ですらあると述べられていましたが、明確な概念ではないという点で同意します。
(佐藤直樹氏の上記著書) http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-3258-8.html
その曖昧な概念がさも犯罪と結びつくと喧伝されることは、相当慎重でなければならないと思います。
それら言説が、障害者の累犯、刑務所人口の増加の問題(老人、外国人等も同じ状況であり、内実は出所後ケアの問題)に関して、社会の目を曇らせる結果にならないか危惧します。
(累犯障害者) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%AF%E7%8A%AF%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85
(江川紹子氏が受刑者の問題に言及したコラム) http://www.egawashoko.com/c006/000150.html
<太田>
色々ご教示ありがとうございます。
引用されたウィキペディアによれば、今後は、「人格障害」でもなく、「パーソナリティ障害」と呼ばれることになりそうですね。
でもそれって、日本語を英語に置き換えただけじゃ?
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太田述正コラム#2913(2008.11.14)
<「諸君」に見る小沢一郎像>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x306)
- 公開日:
福島民友に佐高信氏による評論が載っていました。田母神論文に関して、最大の問題は自分に都合のいいところだけをつまみ食いした粗末な史観を、自衛隊だけでなく、多くの保守政治家が共有していることであり、そんな政治家が文民統制できるはずがないとのこと。それはさておき、途中で自衛隊は何を守るのか、という問いがありました。「有事法制がないと、侵略された場合、自衛隊は超法規的に活動せざるを得ない」という趣旨の発言をして、金丸信に統合幕僚会議議長を解任された栗栖弘臣氏が、「日本国防軍を創設せよ」という著書を出しています。その中で栗栖氏は、自衛隊は国民の生命・財産を守るというのは誤解であり(戦争で真っ先に死ななければならない自衛隊員も国民の一部なので、甚だしい自己矛盾とのこと)、自衛隊法に書いてあるように国の独立と平和を守るのであり、その「国」とは「天皇制を中心とした我が国固有の国柄を持つ家族意識、国民意識」なのだそうです。自衛隊が守るものが、栗栖氏の言うところの「国」であるならば、軍隊を持った日本がアングロサクソン化するなど、達成出来ないと思うのですがいかがでしょうか。いや、英国はSave the Queen!の国だから、アングロサクソン化につながるのかも…。支離滅裂な文ですみません…。
「ナショナリズムは国民を馴致するための民主主義独裁のイデオロギー」とは的確な表現です。いつか暇を持て余し時で結構ですから「民主主義独裁」について論じていただけることを期待しています。ひそかに。
>今後は、「人格障害」でもなく、「パーソナリティ障害」と呼ばれることになりそうですね。でもそれって、日本語を英語に置き換えただけじゃ?(太田コラム#2910)
日本精神神経学会の精神科用語検討委員会委員長、松下昌雄氏の弁では、
「パーソナリティーには『人格』だけでなく『性格』など多様な意味合いがあり、的確な訳が難しいので原語を生かした」とのことです。必ずしも「人格障害」の使用を禁じたわけではなく、より望ましい表現を勧める趣旨だと。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20080806-OYT8T00230.htm
他にも幾つかあるようですが、総じて「(社会、患者自身ともに)病気への偏見を和らげる」ことを目的としているようですね。
(社交不安障害、素行障害)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080531-OYT8T00244.htm
(統合失調症)
http://www.jspn.or.jp/05ktj/05_01ktj/05_01index.html