太田述正コラム#13934(2023.12.27)
<映画評論105:娼婦ベロニカ>(2024.3.23公開)

1 始めに

 「『娼婦ベロニカ』(・・・Dangerous Beauty)は、マーガレット・ローゼンタール原作の伝記小説「The Honest Courtesan」を基に映画化した作品<で、>1998年・・・に<米>国より公開された成人映画<で、>キャサリン・マコーマック主演、マーシャル・ハースコビッツが監督・製作する。16世紀のヴェネツィアを舞台にして、美貌と知性を持つ実在の高級娼婦(クルチザンヌ<(注1)>)、ヴェロニカ・フランコ<(注2)>の半生と恋の行方を描<いている>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A8%BC%E5%A9%A6%E3%83%99%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%82%AB
https://en.wikipedia.org/wiki/Dangerous_Beauty
ところ、ずっと以前にCATVで鑑賞したことがあるが、それ以外は、フランス国王が登場した、ということを覚えているだけだったので、初鑑賞と言っていいでしょう。

(注1)花魁を日本のcourtesanとしている点だけをとっても、この英語ウィキペディア、信頼性には疑問符がつくが・・。↓
https://en.wikipedia.org/wiki/Courtesan
 (注2)1546~1591年。
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Honest_Courtesan
https://en.wikipedia.org/wiki/Courtesan#/media/File:VeronicaFranco.jpg ←肖像画

2 本題

 メインパソコンがダウンしてから鑑賞し始めた一連の映画群の中では、一番、痛快で堪能したと言っていいでしょう。
 (しかも、これが、私自身は必ずしもファンではないところの、一種のフェミニズム映画であるにもかかわらず、何一つ賞をとっていないのは、売春肯定論が英米では事実上依然としてタブーだからではないでしょうか。)
 どんな男性にとっても、知性と教養に溢れ、一流の見識を持ち、かつ、容貌が傑出している娼婦、とくれば、それに抗する術などないところ、そんなヴェロニカを演じているマコーマック(Catherine McCormack。1972年~)が、いかにも地頭がよさそうな超絶美女のイギリス人と来ているのですからね。
 ちなみに、彼女は、私のロンドン時代の宿舎があったサレーで生まれ、オックスフォード大付属の演劇学校(Oxford School of Drama)(注3)で学び、一年間無料の名誉ゴルフ会員権がRCDSの「学生」に与えられた二か所のゴルフ場のうちの一つがあって私も何度かプレーをしたところの、(ロンドン内の)リッチモンド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89_(%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3)
で・・但し2009年当時・・、事実婚生活をしており、20~30ものオファーのうち、脚本を読んで自分が気に入ったたった1本の映画にしか出演せず、演劇活動に軸足を置いた俳優人生を歩んでいる、という人物です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Catherine_McCormack

 (注3)オックスフォードから少し離れた場所に「キャンパス」がある。
https://en.wikipedia.org/wiki/Oxford_School_of_Drama
 日本の東京大学はもとより東京芸術大学にさえ演劇科がないのは、オックスフォード大に倣ったのかも。

 舞台背景は、第4次オスマントルコ・ヴェネティア戦争(1570~73年)、ペスト、異端審問、と、盛沢山ですが、現代とは違って、衛生状態は悪く医学も未発達だったけれど、オスマントルコのイスラム教もヴェネティア、ひいてはイタリア、のカトリシズムも、原理主義とは程遠かった点では、現代よりもむしろおらかな時代だったな、と、改めて思った次第です。