太田述正コラム#13946(2024.1.2)
<映画評論110:Lasko>(2024.3.29公開)

1 始めに

 さんざんクサしたばかりですが、もう一つ、ドイツ映画です。

 ’Lasko is an action film・・・. The film was broadcast for the first time on March 16, 2006 on RTL. In 2008, the channel commissioned a spin-off series called Lasko – The Faust of God, which was produced with ORF.・・・
Country of production Germany
Original language English・・・’
https://de.wikipedia.org/wiki/Lasko_%E2%80%93_Im_Auftrag_des_Vatikans α ←をGoogle英訳

2 本題

 走り続ける列車での活劇がほぼ全編、という映画は少なくなく、だからこそ、
・・・I just watched Midnight Meat train and Night Train Murders. Those certainly had some real terror on the train.
 If you have seen Steven Segal’s film where he tried to stop the bad guys on a train, you have seen this one. I seem to recall that Jean Claude even did one called Derailed. There was even another 2001 film called Death Train set in Mexico.・・・
https://www.imdb.com/title/tt0436496/ β ←をGoogle英訳
のような批判をするムキもないわけではありませんが、私はまあまあ良くできた娯楽映画だと思いました。
 また、映画の舞台がドイツで主人公を演ずるのもドイツ人のMathis Landwehr(1980年~)である
https://de.wikipedia.org/wiki/Mathis_Landwehr
にもかかわらず、準主役のArnold Vosloo(1962年~)のような英語ネイティブの俳優
https://de.wikipedia.org/wiki/Arnold_Vosloo ←をGoogle英訳
や、ドイツで英語でシェークスピア劇を演じてきたStephan Bieker(1968年~)
https://de.wikipedia.org/wiki/Stephan_Bieker ←をGoogle英訳
、をからませ、全編英語が用いられるのですが、これも、
 ’Action Concept film making the leap to English language. Although I generally like subtitled films myself, this will hopefully ensure that their films will be seen in more territories worldwide.’(上掲)
に同感であり、『タイムトラベラーの系譜』とは違って、違和感は覚えませんでした。
 これは、戦後、西独が(仏も加わってはいたものの)米英の占領下に置かれたこと、かつ、EUの公用語が事実上英語になっている
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E9%80%A3%E5%90%88%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%AA%9E#:~:text=EU%E3%81%AE24%E3%81%AE%E5%85%AC,%E3%81%AE%E3%81%AF%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82
ことが背景にある、と、私は受け止めました。
 但し、にもかかわらず、この映画の件の列車がフランスの、スペインとの国境近くのカトリック巡礼地ルルド(Lourdes)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%89
を目的地にしていたというのに、全くそのことが無視され、ドイツ国内だけで話が完結する・・例えば、ドイツ警察からフランス警察への連絡場面はありません・・ことには大変奇異な思いがしました。
 (また、こんな国際列車がディーゼル車である(注)ことにも・・。)

 (注)「ドイツでは現在、電車が国内の軌道旅客輸送能力の80%超を担っているが、ディーゼル車はローカル線の近郊交通手段として走行頻度が高いため、乗客数を考慮した総輸送距離で測ると、全体の約3割を占めている。架線による電化が困難、あるいはコストがかかりすぎるなどの理由で、ディーゼル列車しか運行できない非電化の路線区間はまだ約450ある。」
https://infrabiz.co.jp/2611/

 もう一つ、首をかしげたのは、これがカトリック教会ヨイショ映画であることです。
 確かに現在のドイツでは、カトリック教徒がプロテスタントよりほんの少しですが多く、カトリックが最大の宗派ではある
https://www.trans-euro.jp/TAex/2020/05/05/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E5%AE%97%E6%95%99/
ので、ドイツ国内向けには問題はないのでしょうが、もともと、英米では、反カトリック教会意識があり、また、昨今、神父による性加害問題が取りざたされていることもあり、再びカトリック教会への逆風が吹いていることを考慮すれば、わざわざ英語で作っておいて、対英米マーケティングが元の木阿弥じゃないか、と、言いたくなります。