太田述正コラム#2974(2008.12.15)
<皆さんとディスカッション(続x336)>
<michisuzu>
≫スポーツ観戦は面白いし、自分でやれば更に面白い。戦争が好きなどころか、本来は戦争を生業とするイギリスで、大部分の近代スポーツが生まれたのはどうしてなのか、よくよく考えてみようね。≪(コラム#2970。太田)
 面白い説ですね。
 これって戦争の代替としてスポーツが派生したと解釈すれば正解なのですか?
<太田>
 団体スポーツ(team sports)がイギリスが起源であることは、ほぼ定説であると言っていいでしょう。
 イギリスのパブリックスクール(特定のグラマースクールを含む)(私立中高一貫教育機関。生徒は、オックスブリッジ進学志望者またはキャリア官僚(将校を含む)志望者)では、団体スポーツが奨励され、団体スポーツの洗練化(ルール策定を含む)がそこで行われました。
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_sport
(12月14日アクセス。以下同じ)
http://en.wikipedia.org/wiki/Independent_school
 ウェリントン公爵が、「<ナポレオンとの>ウォータールーの戦いはイートンの運動場において勝利がもたらされた(The Battle of Waterloo was won on the playing-fields of Eton)」と語ったことになっています
http://en.wikipedia.org/wiki/Eton_College
が、パブリックスクールは、元来は男子校であり、そこでは一貫して軍事教練が義務づけられてきました(コラム#2474)。
 ちなみに、野球の元であるクリケットは、子供の遊びが、ギルドフォード・王立グラマースクール(Royal Grammar School, Guildford)で1550年頃に洗練された形で採用されるに至ったものであろうと考えられています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Cricket
http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Grammar_School,_Guildford
 また、サッカーやラグビー、そして後にアメリカンフットボールとなったところの原型は、イギリスの町や村同士が、住民全員で参加し、「豚の膀胱」を足で奪い合い、相手の教会等にその「膀胱」を蹴り込むという荒々しい「スポーツ」であり、危険であることから、何度も禁令が出された代物です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Football
 これをパブリックスクールが、洗練された形で採用したところから、その隆盛が始まるのです。
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_sport上掲
 以上のようなことから、私は、イギリスのパブリックスクールでは将校候補者としての教育が行われており、この教育の一環として団体スポーツが奨励された、そしてこのパブリックスクールを淵源とする団体スポーツがイギリスの新旧植民地、ひいては世界に普及して行った、と総括しているわけです。
 (ついでに言うと、個人競技であるゴルフはスコットランドが起源だが、(ローン)テニスと卓球は19世紀後半にイギリスで生まれた。団体競技であるバスケットボールとバレーボールは、アメリカンフットボールの室内変形バージョンとして19世紀末に米国で生み出された。ハンドボールだけは北欧ないしドイツが起源。(典拠省略))
 つまり、イギリスにおいて、戦争を遂行するための識見を身につけるための手段の一つとして団体スポーツが始まった、というのが私の見解です。
<nhatnhan625>
 コラムかけるほどの引き出しが自分にはありませんが、やれるものならやってみたいです。(コラム#2970参照)
<太田>
 ご快諾いただき、ありがとうございます。
 ハンドルネームを使っていただいて結構ですが、私だけには、
http://www.ohtan.net/contact/
で、メルアド、ご住所(ご勤務先で結構です)、電話番号をお教え下さい。
 最初のコラム(案)を送っていただいた時点で、名誉有料読者とさせていただき、コラム配信を開始するとともに、コラム・バックナンバーへのアクセス方法をお教えします。
<nhatnhan625>

 中国では、民主運動家が08憲章をだしました。
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008121001000182.html
 で、中国観察のブログ(日々是チナヲチ)などでは香港誌『開放』編集長・金鐘氏のインタビューを独自にするなどもりあがっているんですが、
http://blog.goo.ne.jp/gokenin168/e/d022f6abde81c9ba344723aead791837
 欧米はどうなっているんでしょうか。なんか金融危機でそれどころではないということなんでしょう。(まあ、日本も、あんまり報じてないようですが・・・)
 わたしのパソコンからも、この08憲章のサイト、まだ開くんです。当局は甘く見ているのか、ネットの拡散力の前にあきらめたのか。。。
 確かにうちの学生たちなどは、「民主化勢力=外国勢力の手先」って習っていますから、どうも反応がないうすいです。就職のことで頭がいっぱいなようです(苦笑)
<太田>
 コラム#2973「中共における08憲章について(その1)」(未公開)を昨夜配信したばかりです。
 このシリーズは、メルアドをお教えいただければ、お送りしますよ。
<MS>
 コラム#2973で、取り上げられている、08憲章の日本語訳全文を見つけましたので、リンクを紹介させてください。
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/597ba5ce0aa3d216cfc15f464f68cfd2
<コバ>
 沈静化する様子のないギリシャにおける騒乱(
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081213-00000003-jij-int
)は、民主主義的青臭さなのでしょうか?
 自分もいつクビを切られるかわからないワーキングプアなので、最近の日本で一揆が起こらないのが本当に不思議だと思ってるのですが…。
 自公民超大連立なんてことになっても誰も決起しないんじゃ困っちゃいますorz
 自民党が分解してバラバラになり、総選挙で民主党が政権奪取を実現してくれればいいのですが…。
 麻生批判をしてるふりの自民党議員連中による三文芝居に騙されないことが有権者にとって重要だと思います。
<太田>
 ギリシャは共産主義勢力と右派との間の内戦、「民主主義」、軍部独裁、「民主主義」復活という苦渋の戦後史を経て現在に至っています。
 ギリシャでは、政治家、官僚、軍部、正教の僧侶、すべてが腐敗しています。
 教育環境も劣悪です。
 高学歴者を含め青年の失業率は25%にも達しています。
 そこに、世界不況が襲った、ということです。
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/14/greece-riots-youth-poverty-commenthttp://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/14/greece
(どちらも12月14日アクセス)
 なお、必ずしも本筋ではありませんが、国立アテネ工科大学(National Technical University of Athens)、通称アテネ工芸大学(Athens Polytechnic University)が今回の騒動の中心であるところ、ギリシャの現行憲法で、管理者の同意なき大学への警察の立ち入りが禁止されている
http://www.csmonitor.com/2008/1215/p06s01-wogn.html
http://www.nytimes.com/2008/12/15/world/europe/15greece.html?_r=1&ref=world&pagewanted=print
(12月15日アクセス)ことと、現政権の今回の騒動への対応のまずさ
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7782868.stm
(同上)も、学生・アナキスト・移民騒動の鎮静化を妨げている原因です。
 いずれにせよ、ギリシャはEU加盟国ではあるけれど、イスラム世界的、ないしはアフリカ的発展途上国である、ということなのです。
 何で哲人ソクラテスと大王アレキサンダーを生み出した民族がそうなっちゃったのか。
 古典ギリシャ文明を華開かせ、ヘレニズム世界の主となり、ローマ時代にはローマ人の鑑と仰ぎ見られ、ビザンツ帝国の経綸を1,000年間にわたって担った、がゆえにプライドが高すぎるくらい高いギリシャ人が、数百年にわたったオスマントルコ・・イスラム帝国・・の支配によって完全に劣化してしまった、そしてそのことに恐ろしく傷ついている、けれどもいかんともし難い、ということなのであろう、と私は考えています。
 アテネでオリンピックが挙行されたのが、つい4年前のことだったなんて今となってはとても信じられませんよね。
 そういえば、日本の近くの某大国は今年首都でオリンピックを挙行したんでしたね。
 あの国でオリンピックが挙行されたのが4年前だったなんて信じられない、ってことになるのかならないのか・・。
 いや、そんなことより、オスマントルコならぬ米国を宗主国とするわが属国日本の将来のことこそ心配すべきか・・。
<プププ>(http://society6.2ch.net/mass/
 何で日本のメディアは未だに日本の国益をリードする役割を果たせないのだろうか??
 メディアが変われば少しは国民の意識も変わるのかな?
 情報もBBCやCNNに比べてあまりにも内容が貧弱。日本が鎖国、属国状態だからか?
 そして、日本は理念も、国家的な目標も無い国で、属国と言う地位に甘えているため、日本の政治家に意見してもどうせ何も出来ないことも国民は分っている。
 直接の文句はアメリカ政府に言って、日本の政治家に命令してもらわないと何も動かないので、
 アメリカの選挙権を持っていない日本国民はあきらめ、無気力になっていく。
 こんな感じですかね~? ハア~鬱
 太田さん海外から毎日ブログ見てますよ。 太田さんガンバレ~
 海外在住の妻より
 戦争好き好き話がでたので、ジョージカーリンのコメディーを一丁
George Carlin – We Like War
ttp://jp.youtube.com/watch?v=sDkhzHQO7jY
<太田>
 Thank you!
 ジョージ・カーリンのユーチューブ見せていただきました。
 ものすごいブッシュ批判ですね。カーリンってコメディアン、天才です。
 多人数でやっている「ザ・ニュースペーパー」だって彼一人の足下にも及びません。
 私の主張を日本のコメディアンの誰かが取り上げてくれるといいんですがね。 
 「たった一人の反乱」への投稿も時々「ディスカッション」で取り上げるようになったとはいえ、こんなのは本来の掲示板に投稿していただくとありがたいなあ。
<KT>
 質問があります。#2972の
 「・・・東大生の1日の勉強時間は授業も含め545分で、10年前より89分も増えていることが、07年の東京大の学生生活実態調査でわかった。・・・
http://koerarenaikabe.livedoor.biz/archives/51313611.html
 この記事をめぐる投稿も面白いです。」
で、ページにアクセスして読みましたが、太田さんはどのように面白かったのでしょうか。
 自分は、全体の流れが理系に偏ってるのと、「大体これ全数調査じゃないでしょ?
 実際とばらつきが出るのも当然だし、アンケートに答える人はそれなりに大学生活に何らかの意識を持ってる人=大学生活にまじめな人。偏りがでるのも当然。」
という文が気になりました。
<太田>
 例えば、「法学部卒だが授業を別にすれば俺は4時間ぐらいしかやってないぞ。やっぱ理系や司法組が勉強時間をはねあげてるんだろうな」という投稿です。
 民間企業に就職する気で、理系の能力がそこそこあれば、法学部を卒業するのに大して勉強をする必要がない、という状況は現在でも変わっていないな、と受け止めました。
 私の、「日本の法学部卒=短大卒相当」論を補強する証言です。
<遠江人>
 雲豊さん、こちらこそご覧頂きありがとうございます(コラム#2972参照)。
 まだファイルはオンラインストレージに上がりっぱなしになっているので、有料読者でまだの方はぜひどうぞ。観て絶対に損はしないと思います。
・・・
 すいません、今確認したらIDごと飛んでいました。
 新しくアップし直しましたので、#2639で示されたURLの一番右のスラッシュ以降を以下に変更してアクセスしてみてください。
 05b5fe55d8c37a85ed23987eb8e36c6dd9380c7a
<KT>
 11月のオフ会で発足した、「太田述正を囲む会」(メーリングリスト)で中性化、派遣の話をまとめたりしております。
 SMさんが、新年会という趣旨で来年の一月末にオフ会を開くのはどうでしょう、という話もあがっています。
 太田さんの都合はいかがでしょうか。
<太田>
 そうですね、原則として、四半期に一回、オフ会をやることにしましょうか。
 1月の土曜日、(3日はともかくとして、)いつでもいいですよ。
 さて今夜、26日放送の「太田総理・・」の収録に行ってきます。年末特別版なので、出番は、ほんのちょっとですが・・。
 それでは記事の紹介です。
 本日は、何たって、日本のソフトパワーが世界を制したっちゅうクリスチャンサイエンスモニターの記事です。
 Today, Japan sets the trends in what’s cool. ・・・
・・・a nuanced Japanese aesthetic that has infiltrated global sensibilities ? a sort of new “soft power” for Japan. In the process, they’re challenging delineations of good and evil from the world’s main purveyor of pop culture, Hollywood, as well as American ideals of the lone action-hero.
・・・The American 20th-century ideal of the individual superhero is wearing thin,・・・The Japanese model is of self-denial and the sublimation of selfish desires for the sake of group harmony. This is becoming a multipolar world. The desire to be a part of something harmonious rather than the leader of a pack is growing.・・・
Daily life has many areas of gray, the two artists say ? and it’s encumbent upon them to explore them. That approach applies to young people as well, though they emphasize their sensitivity to young readers’ impressionability.・・・
・・・50 years ago, people had much sharper delineations of who was good and who was evil in the world. “Now the world has changed. Nobody is sure who is good or who is evil…. The whole world is becoming borderless and unstable. The manga world’s ambiguity has become realistic.・・・
In true Japanese style, the point is made without fanfare. “I always feel like US culture bashes down doors, while Japanese culture seeps in under the door,” ・・・
Japan takes note of a three-fold increase since 1990 ? to 3 million ? in those studying Japanese. The number of Americans studying in Japan rose 13 percent between 2005 and 2007・・・
http://www.csmonitor.com/2008/1215/p01s04-woap.html
(12月15日アクセス)
 素晴らしい民間とひどいパブリックセクターの併存が日本の現在の姿です。
 こりゃ、上記記事中に登場するロランド・ケルツ(Roland Kelts)東大教授の本のタイトルであるところのJapanamericaなる宗主国米国・属国日本連合帝国全体のパブリックセクターであるところの、宗主国米国のパブリックセクターが、いかに(相対的に)しっかりしているかを示しているのかも。