太田述正コラム#14090(2024.3.14)
<岡本隆司『物語 江南の歴史–もうひとつの中国史』を読む(その27)>(2024.6.9公開)
「ごく大づかみにいって、史上の日本や西欧は、家系と職能は分かちがたく結びついて、しばしば世襲的に継承する職業身分ごとに権能を分けあう社会だった。
そのため職種はプロフェッションとして専業化して、身分団体を結成する傾向が強い。
その支持・賛助をえた公権力から、存在と権利の承認を獲得して、相互に緊密な依存関係を保った。
中世にはギルドとしてまとまり、都市行政に参画したし、近代以降のブルジョワジーも、各業種の利害を体した代表で議会を構成し、規制の緩和や利権の保障を政治的に獲得している。
こうした政治社会構造が国民国家の母胎をなした。
これと対比すると、中国とりわけ南方の社会は、専業もなく身分もなく、その団体もない。
公権力の存在が微弱だったからであり、とりわけ明代に、それが顕著になってくる。
誰もがいわばバラバラな「素人(アマチュア)」ながら、あらゆる公的事業に参画しえた。
中国の近代化過程で軍人・外交官ふくめ、個人・団体として専業・プロフェッションの養成・確立が、かえって一大課題になったゆえんでもある。」(136~137)
⇒エッ!
「中国人の生活を構成しているのは家族、郷党、ギルドという三つの様式であり、ギルドの存在とは中国社会そのものと切っても切れない関係にある・・・。家族は血縁、郷党は地域、ギルドは目的により結成せられた団体であって、その区別は明確である。だが、中国には家族制度が根づき、郷党も宗族の延長したものに過ぎす、宗族との区別も判然としなかった。中国の団体には、仮に目的を異にするものであっても、家族を祖形とし、郷党を本拠とするものがもともと多いとされる。たとえば、商工ギルドは、商工業の擁護を主たる目的とするが、多くの場合、同郷のみにより結成されているか、同郷団体の連合により組織されている。また、商工業者は世襲を強いられることもあるとはいえ、商業の分野では、「合股(ごうこ)」という一族や友人の合同出資によりある種の企業体が維持され、同業者が一定地域に聚居することによって、隣保互助の精神を実現していた。しかし、ギルドは血縁、地縁、両縁と微妙な関係にあるがゆえに、これらを単純な一つの目的とみなすことは困難である。かといって、国家による保護を求めることもなく、むしろ国家の圧迫を排して、成員の生活の安定を目指しているがゆえに、成員の全生活をその管理内に包容しようとするのが中国のギルドなのである。したがって、ギルドは中国人にとって社会生活を支える重要な様式というべきもの<なの>であ<る。>」(石井知章「根岸佶と中国ギルドの研究」より)
https://www.bing.com/ck/a?!&&p=f1c4ee0c4951025aJmltdHM9MTcwODA0MTYwMCZpZ3VpZD0wNzllY2NiMy1iM2ZhLTZlM2MtMGYyYS1kODk1YjIxMDZmNjEmaW5zaWQ9NTI0Ng&ptn=3&ver=2&hsh=3&fclid=079eccb3-b3fa-6e3c-0f2a-d895b2106f61&psq=%e3%82%ae%e3%83%ab%e3%83%89+%e4%b8%ad%e5%9b%bd&u=a1aHR0cHM6Ly9haWNoaXUucmVwby5uaWkuYWMuanAvcmVjb3JkLzkwMTQvZmlsZXMvMDclRTglQTglOTglRTUlQkYlQjUlRTUlQTAlQjEyM18lRTclOUYlQjMlRTQlQkElOTUlRTclOUYlQTUlRTclQUIlQTBfJUU2JUEwJUI5JUU1JUIyJUI4JUU0JUJEJUI2JUUzJTgxJUE4JUU0JUI4JUFEJUU1JTlCJUJEJUUzJTgyJUFFJUUzJTgzJUFCJUUzJTgzJTg5JUUzJTgxJUFFJUU3JUEwJTk0JUU3JUE5JUI2XzQ5LTYwLnBkZg&ntb=1
という、現在でも日本で通説であると想像されるところの、根岸佶(注40)説
https://www.seijo.ac.jp/pdf/faeco/kenkyu/002/002-negisi.pdf
、を、著者は、完全にスルーして、独自の見解を何の典拠も付さずして主張しているわけですが・・。(太田)
(注40)ただし(1874~1971年)。「高等商業学校(現一橋大学)・・・卒<、同大>・・・経済学博士。」東亜同文書院教授、朝日新聞記者、東京商大(現一橋大)教授、同名誉教授、日本学士院賞受賞。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E5%B2%B8%E4%BD%B6
(続く)