太田述正コラム#2959(2008.12.7)
<ムンバイでのテロ(続)(その3)>(2009.1.16公開)
さて、インド政府はいかなる姿勢なのでしょうか。
まず、一人だけ生き残って捕らえられたテロリストの(インド捜査当局が発表した)供述から行きましょうか。
「・・・アザム・アミール・カサブ(Azam Amir Kasab)の人物像は、貧しい男でほとんど公教育を受けておらず、無差別殺人のための厳しい訓練を何ヶ月も受けた、というものだ。・・・
カサブは警察・・・に次のように語った。
パキスタンのパンジャブ州のファリドコット(Faridkot)という村の出身で小4の時に学校から落ちこぼれた。父親は食い物屋をやっていた。2005年に知り合いが彼をラスカレタイバという非合法集団に紹介し、私はパキスタン側のカシミールの首都であるムザファラバード(Muzaffarabad)でこの集団による訓練を受けた。・・・と。
警察は、カサブは今回のテロの上層部の計画者についてはほとんど知らないと言っている。しかし、彼は一度ラスカレタイバの上部組織であるジャマート・ウド・ダワ(Jamaat-ud-Dawa)の長であるハーフィズ・ムハマッド・サイード(Hafiz Muhammad Saeed)による説明を聞かされたことがあると白状したという。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/02/AR2008120202968_pf.html
(12月4日アクセス)
次にインド人共犯者探しの状況についてです。
「・・・12月5日、ムンバイの警察は、・・・今年2月に逮捕されたところの、ラスカレタイバ・・・のためにムンバイのいくつもの場所について偵察を行ったと語っていた<インド人の男>を再び尋問することを決めた。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/06/AR2008120600819_pf.html
(12月7日アクセス)
さて、インド政府の現時点でのホンネは次のとおりです。
「・・・ニューデリーでは、政府の高官筋が、匿名を条件に、インドは、パキスタンを根拠地とするイスラム過激派集団であるラスカレタイバが、あのテロを計画したこと、そしてこの集団の指導者達がパキスタンの強力な<諜報機関である>ISIによって訓練され支援されていることについて「明確で議論の余地のない証拠」を持っていると語った。
我々は関与した連中の名前を知っているし、ラスカレタイバとISIとの密接な関係についても知っている、とこの筋は語った。・・・
<もっとも、>米国の対テロ官僚は、匿名を条件に、「仮にISIとラスカレタイバとの間で接触があったとしても、だからといって後者がISIの支援を受けている、ということにはただちにはならない」と言った。そしてこの官僚は、もちろん、ISIの積極的関与が更なる証拠が出て明らかにされるという可能性を排除はできないが、「今まで見た証拠だけでは、支援を受けているとまでは言い切れない」と言った。
インドと米国の捜査官達は、ラスカレタイバの指導者の一人であるヤスフ・ムザミル(Yusuf Muzammil)を今回のテロの主犯であると見ており、米国務長官のコンドリーサ・ライスは、パキスタンに対し、彼と他の容疑者達を<インドに>引き渡すよう促した。・・・
パキスタンの高官によれば、パキスタンは、インドと米国が要求したところの、48時間以内にラスカレタイバに対して行動をとるとともに、インド当局によってあのテロと関わりがあるとされている少なくとも3名のパキスタン人達を逮捕する計画を策定することに同意した。
この・・・高官によれば、インドはまた、捜査に関連して、ラスカレタイバの司令官(commander)であるザキ・ウルラーマン・ラクフィ(Zaki ur-Rehman Lakhwi)とISIの元局長(director)のハミッド・ギュル(Hamid Gul)の2人を逮捕して引き渡すよう求めている。
インドの官僚達は、・・・<上出の>カサブ(21歳)が警察による尋問中にラクフィの名前を口にしたと語った。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/05/AR2008120503746_pf.html
(12月7日アクセス)
他方、パキスタン側については、少し古いですが、同政府の公式見解を最初にご紹介しておきましょう。
「<パキスタン大統領の>アシフ・アリ・ザルダリは、昨<12月3>日、<インドの容疑者引き渡し>要求を拒否したかのように見えた。<インドが引き渡しを要求した>20名は、嫌疑を裏付ける証拠があれば、パキスタンにおいて裁判にかけられるだろう、と語ったからだ。・・・
ザルダリは、・・・「もし証拠が得られれば、我々は彼らを我々の裁判所で裁き、刑を宣告するだろう」と語った。彼はまた、生きて捕らえられた唯一のテロリストがパキスタン市民であるとインドが示唆していることに疑問を呈した。「我々は彼が確かにパキスタン人であることについての具体的な証拠をまだ何も与えられていない」と。・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/04/mumbai-terror-attacks-pakistan
(12月4日アクセス)
(続く)
ムンバイでのテロ(続)(その3)
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