太田述正コラム#3041(2009.1.18)
<皆さんとディスカッション(続x371)>
<マソン>
–少子化について–
≫そう遠くない将来、我々人間は、次のような番い生活を送ることになりそうです。≪(コラム#3035。太田)
こんな生活になるのでしたら、それこそ何のために生きるのでしょう?
日本文明とか天皇陛下とかを守って一体なんになるのでしょうか???
→医学や薬学が発展すれば、人々がその恩恵に浴すようになるのは必然だと思うのです。 私の書いたことは、引用した典拠に書かれていたことをほんの一歩進めただけですよ。 ところで、コラム#3040(未公開)にはコメントありませんか?(太田)
≫「教義や戒律の厳しい宗教が」隆盛になればなるほど人類もまた、「生めよ増やせよ、地に満てよ」というわけで、隆盛を極めることになります。≪(コラム#3025。太田)
これはどうなんでしょう。カタリ派
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AA%E6%B4%BE
の例もあります。
→面白いご指摘をいただきありがとうございました。 「産めよ、増えよ、地に群がり、地に増えよ。」は旧約聖書の創世記9章に出てきます。 つまり、私としては、アブラハム系一神教を念頭に置いているわけです。 しかし、カタリ派(Catharism)・・私の世代の高校生は、世界史で13世紀のフランスでのアルビジョン(Albigeois)十字軍の対象としてちょっと習ったんじゃなかったですかね・・は、キリスト教の異端とはいえ、ヘレニズム世界の産物であるグノーシス派(Gnosticism)・・善悪二元論(duallist)・・の影響のほか、殺生の禁止とか転生とか、仏教の影響も受けており、アブラハム系一神教の系譜には位置づけ難い面があります。 さて、仏教だって、坊さんは本来肉食も妻帯も御法度ですが、仏教国で人口減少傾向があるなんてことはありませんよね。 英語版のウィキペディアは、日本語版よりもかなり少し詳しい
http://en.wikipedia.org/wiki/Catharism
(1月18日アクセス。以下同じ)のですが、こちらを読んでみると、仏教と同じように、信者はプロ(Perfecti)と平信徒(Credentes)に分かれており、戒律を厳格に守ったのはプロだけのようですね。 ですから、カタリ派の人口が減ったという話はどこにも出てきませんよ。(太田)
また先進国の中では比較的出生率の高いフランスでは、原理主義的な人は少数派です。
→女性の社会進出が進み、かつフェミニズム(男女平等主義)が浸透すると、先進国でも一般に少子化傾向が緩和します。 フランスのフェミニズムが、革命的な形で進行していることは、女性のためのポルノ映画の制作・・女性も男性に負けず劣らず暴力的、性的存在として描かれる・・が盛んに行われるようになったことや
http://www.guardian.co.uk/film/2009/jan/18/french-feminism-despentes-catherine-millet
、今回のダティ法相の出産に象徴されているところの、婚姻外出産の急速な増加(典拠省略)から明らかです。 とはいえ、フランスも、出生率2.1を回復したわけではありませんよね。(太田)
人口の増えているアフリカの人たちが、教義や戒律の厳しい宗教の信者だという話は聞きません。
→いや、アフリカにおいては、原始アニミズム信仰を駆逐しつつイスラム教とキリスト教が競うように普及しつつあります。(典拠省略)(太田)
「貧しい人々は子沢山」という法則でしたら、現実にある程度当てはまるように思いますが…。
→それに加えて、アフリカの場合は、ご指摘の要因もあるわけです。(太田)
少子化については、「ゆるやかな」少子化であれば問題ないと考えることはできませんか。
江戸時代は人口が増えませんでした。子どものいない夫婦がたくさんいて養子縁組がありふれていました。
そもそも人口が増えっぱなしでは、いずれ地球はパンクしてしまいます。世界全体でも日本でもゆるやかな少子化がすすんだ方がいいのではないでしょうか。
→私は人口がどんどん減少していくのは問題だと言っているのであって、人口の維持ができればそれでよいのです。(太田)
みんなが愛情のある豊かな暮らしをできるよう話し合って工夫していくのが目標ではないのでしょうか?
そのために天皇陛下を日本人は守ってきたのでしょう。ひどい殺し合いをしなくてもいいように。
→全く同感ですが、そのためにも、日本でフェミニズムを浸透させ、その構造的男女差別を打ち破りましょう!(太田)
<KY>
≫<太田さん、KY(コラム#3037)>「土人」呼ばわりされたと思った人には、ぼくを「類人猿」呼ばわりする権利がある。 ちなみに「強制しないでね」という記述にはコメント無しですか? まあ「土人」も「類人猿」も共生する方途を・・・≪(コラム#3039。サヨク)
場末の飲み屋の酔客じゃあるまいし、仮にも知識人である筈の人物が、公共の媒体で堂々と、自国の君主に哀悼の意を示す自国民を土人呼ばわりするなぞ、普通の国じゃ完全に常識外れなんですよ。皇太后が死んだ時に宮殿に詰め掛けた英国人は土人ですか?
≫ここ十数年でさんざん批判されている日本の「右」と「左」ですが、私はもう一つ、これらと同じように批判される対象として、ニュー・アカデミズムやポストモダンと呼ばれた、これら以降の日本の人文・社会科学があるのではないかと思っています。≪(コラム#。遠江人)
≫私は、この10年来、日本の論壇はフォローしていないと繰り返し申し上げているところです。フォローしたいような議論が交わされないのは、「日本の人文・社会科学<の>目を覆うような停滞状況が」あるからだ、というのが私の見解です。≪(コラム#。太田)
所詮は理系男の私ですから割引いて頂きたいのですが、日本の人文系で凄い分野を一つ挙げるとしたら、それは歴史の厚みがある印度哲学でしょうか。なにしろ印度人やスリランカ人が留学に行くし、何処かで会った “Pali Text Society”の学者は日本で修士を取った人でした。他は知りません。
数年振りに日本に帰った時に、近所の本屋に行きましたが、買うに値する人文系の本はそれ程ありませんでした。だって欧米直輸入なら英語で直接読んだ方が良いし、訳書の場合は翻訳が酷くて読めたものじゃない。それ以外だと、読書感想文に毛が生えた程度の
奴ばかりで、確かに読む気がしません。
小学校以来の畏友で、偶然同時に英国の大学院に来た男がいます。こちらは政治学が専門で、何かの折に日本の学会に行ったら、自分の英国人指導教官の著書の中身を紹介するだけの「研究」発表があって、しかもその内容が間違いだらけだったそうです。
暫く前に実家からとある軍事史系の本を送って寄越したんですが、日清戦争時の高陞号撃沈事件の記述で、艦長名が「ガルス・ウォルスェー」なんて書かれていて、「そんな英国人いるかよ」って笑ったんですが(正確にはThomas Ryder Galsworthy)、一時が万事こんな調子じゃ、付き合っていられませんよ。
英独仏の思想を持ち込む単純作業だって、実はロクに出来ちゃいないんじゃないですか?だいたい論壇なんて上等な話どころか、エコノミストやガーディアン程度の新聞雑誌すら無いですよね。
<ブルル>(http://society6.2ch.net/test/read.cgi/mass/1196337365/l50x)
チャンネル桜で太田は田母神を批判する根拠として職務怠慢や無能の他にKYであることをあげていたので、KYな人間はその時点で信用できないと考えているようだ。
しかしコラムで語った自己像の『戦略上、沈黙を守ったりウソをつくべきところを、 私は常に自分の信じる「真実」を遠慮容赦なく語る』という性質はKYであることの定義そのものだし田母神の取った行動だってその線に沿っている。
太田の今までの発言を全部信用するなら太田自身もKYという事になり、太田は自分を信用するに足りない人物だと自己紹介してる事になる。
しかしそんなことを狙って発言するわけも無いので、彼の発言には一貫性がなく、矛盾があるということ。
<太田>
どうして学問の自由とか大学の自治が重要かが諸君、全く分かってないようだね。
KYさんも言っているように日本で人社系の学問が形骸化しちゃってるから、分からなくなっちゃってるのかもしれないけれど・・。
私が書いたり言ったりしていることは、はばかりながら学者としての言動なのであって、学問にウソや都合の悪いことについての沈黙があったりしちゃマズイってことくらい理解して欲しいね。
他方、政治家(革命家も広義の政治家)や官僚の言動は、学問ではなく、国民の一般意思的負託に応えて結果を出しているかどうかが問われるものであって、そのためだったら、ウソをつくことだって都合の悪いことについて沈黙を守ることだって許される場合がある。
そんな政治家や官僚・・田母神氏も官僚です・・が、やるべきことをやらなかったり、結果が出せなかったりしたら、KYだと言われても仕方がないんだよ。
<のらえもん>
–不粋な質問–
はじめまして。毎日楽しく、時に考えさせられながらコラムを拝読しています。
いつも思うのですが、官僚の天下り批判ってメディアや本、雑誌で取り上げられることが多く、禁止すべしという声のほうが圧倒的に多いですが、なんで天下りってなくならないのですか?
当の官僚自身は「いくらなんでもこれからは天下りなんて、できひんよな~。」とか、「やれたらやりたけど、見つかったときの損得勘定考えたら損やからせーへん方がええわ。」とか思わないもんでしょうか。
<太田>
脱税しても絶対につかまらないという保証があったとして、あなた、脱税しませんか?
しないとしたら、あなたは圧倒的少数派に属します。
<コバ>
英国のミリバンド外相が、「テロとの戦い」という概念を、異なる背景をもつ勢力をひとまとめにし、 軍事力で抑え込もうとする誤った考えだったとして強く批判しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/t10013581231000.html#
今さらそんな批判をするならば、神がかったブッシュの棍棒外交を、英国がもっと上手に善導することは出来なかったのでしょうか?
いやいや、そんな米国の属国に生息している野蛮人が、英国人に物申すなんて千年早いですね…orz
<サヨク>
遠江人さん、「ソーカル事件」なんか典拠としてつけ加えたらどうですか?余計なお世話ですよね?失礼!・・・
<遠江人>
紹介したWikipediaのリンク先にそのことについても載っていますよ。
それにしても私のあのような投稿に対してレスをしてくださっただけでも感謝です。ありがとうございます。戯言なりに言おうとしたことの僅かでも伝わったかもしれないのならうれしいです。
ところで太田さん、太田コラムとはまったく関係ない投稿をしてしまっていたようです。
すいません、以後改めて気をつけます。
<太田>
いや、私のコラムや、私のコラムに係る投稿を踏まえた投稿であり、全く問題ありませんよ。
さて、記事の紹介です。
・・・Dr Malcolm Brynin, principal research officer at the Institute for Social and Economic Research at the University of Essex・・・found that the euphoria of first love can damage future relationships. “Remarkably, it seems that the secret to long-term happiness in a relationship is to skip a first relationship,” said Brynin. “In an ideal world, you would wake up already in your second relationship.”
While researching the components of successful long-term partnerships, Brynin found intense first loves could set unrealistic benchmarks, against which we judge future relationships. “If you had a very passionate first relationship and allow that feeling to become your benchmark for a relationship dynamic, then it becomes inevitable that future, more adult partnerships will seem boring and a disappointment,” he said.
Adults in successful long-term partnerships are those who have taken a calm, pragmatic view of what they need from a relationship, Brynin found. “The problems start if you try not only to get everything you need for an adult relationship, but also strive for the heights of excitement and intensity you had in your first experience of love. The solution is clear: if you can protect yourself from intense passion in your first relationship, you will be happier in your later relationships.”・・・
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2009/jan/18/relationships-love
(1月18日アクセス。以下同じ。)
これは要するに、恋をした経験は、愛を育むことの妨げになる、ということですな。
太田コラムの熱心な読者だったら、すぐ腑に落ちると思うよ。
今次ガザ・ミニ戦争が引き起こした悲劇的エピソードがニューヨークタイムスに載っています。
http://www.nytimes.com/2009/01/18/world/middleeast/18doctor.html?ref=world&pagewanted=print
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太田述正コラム#3042(2009.1.18)
<イスラエルのガザ攻撃(続x13)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x371)
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