太田述正コラム#14280(2024.6.17)
<大川周明『大東亜秩序建設/新亜細亜小論』を読む(その1)>(2024.9.12公開)

1 始めに

 長らく敬遠していたキンドル版がコピペがまともにできるようになって気に入ったということもあり、今度もまた、キンドル版でもって、大川周明『大東亜秩序建設/新亜細亜小論』シリーズを手掛けることにしました。
 大川周明(1886~1957年)は、「主著に「日本文明史」「日本二千六百年」「米英東亜侵略史」、自伝「安楽の門」、「コーラン」の全訳<がある。>」
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%A7%E5%B7%9D%E5%91%A8%E6%98%8E-17853
という「主著」の中には入っていない二つの論考群ながら、GHQが発禁にしてくれたおかげで、今まで大川の著作は全く読んでいなかった私が読むことになったわけです。
 なお、「『大東亜秩序建設』は「大東亜秩序の歴史的根拠」「大東亜圏の内容および範囲」「亜細亜・欧羅巴・日本」の3編からなるが、このうち「亜細亜・欧羅巴・日本」は大東文化協会刊として大正14(1925)年に単行本として刊行されたものである。これに前記の2編を加えて、昭和18<(1943)>年6月に第一書房から刊行された。また、『新亜細亜小論』はⅠ、Ⅱの2編からなるが、Ⅰは月刊雑誌「新亜細亜」(南満洲鉄道株式会社・東亜経済調査局刊)の「巻頭言」に大川周明が執筆したもののうち、昭和15<(1940)>年10月~昭和18年12月のものを掲載したものである。・・・ この『新亜細亜小論』は昭和19<(1944)>年3月に日本評論社から刊行された。」(8)由。

2 『大東亜秩序建設』を読む

 「もし予が日本近代史を書くことありとすれば、予は佐藤信淵〔一七六九-一八五〇〕の思想の叙述から筆執り初めるであろう。そはこの偉大なる学者の魂の中に、新しき日本が既に最も具体的なる姿をとりて孕まれていたからである。・・・」(14)

⇒私が、「佐藤信淵→平野国臣/吉田松陰の系譜・・・は、要するに、(ロシアを含む)欧米の帝国主義の鏡像に他なりません。」(コラム#14220)、と、切り捨てた佐藤信淵を賞揚されてしまうとこの先を読む意欲が失せてしまうところですが、そういう、思想界の、いわば鉄砲玉を、牧野伸顕が、恐らくは杉山元の推挙に基づき(注1)、社会教育研究所に招聘したことは、むしろ得心がいく感、なきにしもあらずです。(太田)

 (注1)「<大川は、東大の>学生時代には参謀本部でドイツ語の翻訳をしており、宇垣一成、荒木貞夫、杉山元、建川美次、東条英機、永田鉄山、岡村寧次らと知己があった。大学卒業後、インドの独立運動を支援。ラース・ビハーリー・ボースやヘーラムバ・グプタを一時期自宅に匿うなど、インド独立運動に関わり、『印度に於ける國民的運動の現状及び其の由来』(1916年)を執筆。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%B7%9D%E5%91%A8%E6%98%8E
 大川周明は1911年東大哲学科卒。
https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/542/
杉山元は、1910年12月~12年10月、参謀本部欧米課勤務 、そして、1915~1918年、インド駐箚武官、経験がある。(後者の前任者は建川美次。)
https://banzai2161.web.fc2.com/sugiyamahajime.html

(続く)