太田述正コラム#3069(2009.2.1)
<皆さんとディスカッション(続x385)>
<SM>
 太田様、皆様、
昨日はオフ会にご参加いただきありがとうございました。
特に太田さんには素晴らしい講演をいただき、ありがとうございました。
クラシック音楽に造詣のない私にとっては非常に新鮮で面白いお話でした。
・・・
それではまたお会いできるのを楽しみにしております。
<太田>
 当日の講演の原稿であるコラム#3067「ハンデと戦う女性ピアニスト達」(未公開)をリンクしたユーチューブ演奏を聴きながら読んだ読者から、私が演奏家者が不明だと説明した
http://jp.youtube.com/watch?v=0ZaTzSWqXCU&feature=related
の演奏者は、ダニエル・バレンボエムであるという指摘がありました。
 SMさん、オフ会で発表された「中性化についてのまとめ」、コラム転載用のファイル、送ってもらえるのを待ってます。
 オフ会中の私の発言の一つを、より正確な形で記しておきます。
 2.26事件の時の昭和天皇の、首謀者達への厳しい姿勢や、戦後の記者会見時の下掲のような木で鼻を括ったような答え方
 「1975年10月31日、訪米から帰国直後の記者会見
[問い] 陛下は、ホワイトハウスの晩餐会の席上、「私が深く悲しみとするあの戦争」というご発言をなさいましたが、このことは、陛下が、開戦を含めて、戦争そのものに対して責任を感じておられるという意味ですか?また陛下は、いわゆる戦争責任について、どのようにお考えになっておられますか?(ザ・タイムズ記者)
[天皇] そういう言葉のアヤについては、私はそういう文学方面はあまり研究していないので、よくわかりませんから、そういう問題についてはお答えできかねます。」 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C%E5%A4%A9%E7%9A%87#.E6.95.97.E6.88.A6.E8.A6.B3
はどうしてなのでしょうか。
 歴代天皇は、政治と関わらないように注意を払ってきたわけですが、それは、天皇親政を唱えた後醍醐天皇の時には持明院統と大覚寺統から交互に天皇を出すという慣例が鎌倉時代に確立していた
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%A6%9A%E5%AF%BA%E7%B5%B1
おかげで、同天皇が追放されたり殺されたりすることなく、持明院統から北朝の天皇が擁立されることによって、また、孝明天皇の時には、強硬に攘夷を唱え続けていた同天皇が急死・・毒殺説もある・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%9D%E6%98%8E%E5%A4%A9%E7%9A%87
することによって、それぞれ天皇制そのものが廃止される危険性が回避された、といった歴史を踏まえたものであったと考えられます。
 こうして、無答責への固執は、DNAとして昭和天皇にも受け継がれた、と私は考えるわけです。
 ところで、オフ会出席者から、セックス依存症については、インターネット上で議論がなされているという発言、そしてもう一人の出席者から、NHKでもある番組でセックス依存症への言及がなされていたという発言がありました。
 そこで、セックス(性)依存症で検索してみたところ、日本語ウィキペディアでちゃんと項目が立てられていました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A7%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87
 その記述にいわく、
 「・・・日本国内において性依存症はいまだ認知度が低く、「セックス中毒」といったような興味本位の記事として取り上げられることが多い。 医師やカウンセラーの中にもそうした研究が行われていることすら知らない者がおり、患者が病院を訪れても思うような治療やアドバイスが受けられないこともある。・・・」
 このほかにも、検索で多数のサイトにヒットしましたよ。
 カウンセラーのmichisuzuちゃん、分かりましたか。
 耳たこだろうけど、投稿する時には、少しはインターネット等で調べるようにしようね。
 
<Nelson>
≫旧陸軍に問題があったのは事実ですが、海軍も相当「問題あり」の組織ですよ(司馬遼太郎氏は海軍を賞賛してましたけど)。海軍の問題点を指摘した書籍がいくつか出てますので参考になさってください。≪(コラム#3068。親衛隊員)
 
 ありがとうございます。紹介して頂いた本ぜひ読ませていただきます。
 もちろん、私はトップダウン型の海軍にも問題があったことも承知しておりました。
 海軍が、いかに組織・運用面では陸軍と違いトップダウン型であり最適であっても、実際の作戦・指揮面において「トップ」が無能であれば作戦は完遂できないということでしょう。
 ただ、敗戦原因に関しては、海軍だけの問題というよりも、南進論と北進論といったような、安全保障政策の一貫性の無さの方が大きい気がしますけどね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E9%80%B2%E8%AB%96
<太田>
 私は、マクロ的に見れば、日本と米英、就中米国との圧倒的な国力の差、すなわち、物量の差と科学技術力の差によって日本が敗れた、ということでしかないと思っています。
 安全保障政策が一貫していようがいまいが、そんなことは本質的な問題ではなかろう、ということです。(米国は対ドイツ戦も、対日戦も、また、対日戦で海軍がとろうと思った戦略と陸軍がとろうと思った戦略等を、ことごとく平行して推進できるだけの国力があったのに、日本にはそんな贅沢は一切許されないほど国力に懸隔があったということです。(コラム#2127参照))
 その上で私は次のように考えています。
 帝国海軍も陸軍も対米英戦開戦初期においては、奇襲的な勝利を何度か収めましたが、その後行われたまともな戦いにおいては、海軍はほとんど青史に残るような戦い方はしていません。
 これに対し、陸軍は、どちらも敗北が決まっていた戦闘ではあったものの、ペリリュー島攻防戦(コラム#2128)や硫黄島の戦いのような、素晴らしい戦い方をしています。
 装備面で海軍は陸軍に比べて相対的に恵まれていて、少なくとも戦争初期においては米英軍とほとんど遜色がなかったということを考えると、海軍の軍隊としてのだらしなさは陸軍以上です。
 思うに、陸軍も海軍もおしなべて「トップ」は無能だったけれど、陸軍は、日本型経済体制的組織であったことから、(末端部隊が自由に創意工夫を凝らして頑張ればよいところの)守備戦においては強かった、ということではないでしょうか。
<伊集院 浩二>(http://chizai-tank.com/Godaigo/review16.htm
「実名告発防衛省」 太田述正 著 2008年   金曜日 ・・・
 
 最後まで一気に読ます書だ。その衝撃度は、元特捜検事だった田中森一氏が著わした「反転」以来の生々しさと言っても過言ではない。
 同著を熟読すれば、太田氏の勇気ある告発を一番恐れているのは、実名を挙げられた永田町の政治家でも防衛省でもない、それこそ魑魅魍魎の世界が読者にも見えて来る筈だ。
 著者は防衛庁に30年勤務した東大法学部卒のキャリア官僚だ。同盟国であるべきアメリカが日本に強いる防衛メカニズムが如何に理不尽且つ不平等であるか、豊富な事例を財務面と地政的なアングルから鋭く抉っている。
 同著の行間から、現在の日米同盟が第二次世界大戦終了後に締結された日米安全保障条約というよりは、ペリー提督来航後に締結された日米和親条約に限りなく近い不平等条約であるという著者の訴えが熱く伝わって来る。
 1945年の敗戦後、吉田茂ドクトリンを経て岸信介内閣による60年安保改定、そして再び浮上した在日米軍再編を巡る平成の黒船的外圧の数々・・・。
 同著は日米同盟という国防メカニズムを防衛庁キャリアという立場を踏まえた上、日米同盟の現実と矛盾点を冷静且つ丁寧に解析している。
 恐らく、同著に触れる読者にとって利権や癒着の構造に大きな衝撃を受けるに違いない。つまり、日本のメディアが書けなかった暗部であり深層部なのだ。
 同著は、佐高 信氏が率いる「金曜日」の勇気ある出版姿勢で世に出たものである。佐高氏は、著者の太田氏と思想や理念が大きく異なるジャーナリストであるが、二人には共通している信念と熱き血流がある。それは利権や体制に果敢に立向かう勇気と正義感だろう。
 太田氏は嘗て選挙に出て落選している。だが、政治家になってもらいたくない「平成の元武人」だ。
 御醍醐龍太シリーズを贈呈したい人物の一人でもある。
<太田>
>同盟国であるべきアメリカが日本に強いる防衛メカニズムが如何に理不尽且つ不平等であるか
は、私としては、「日本が自らアメリカの属国となっている結果、いかにアメリカが日本に理不尽且つ不平等な防衛メカニズムを強いる形になっているか」と書いてもらいたかったところですが、まっいいか。
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太田述正コラム#3070(2009.2.1)
<現在の戦争の最先端>
→非公開