太田述正コラム#2991(2008.12.23)
<エコ志向のオバマ新政権/文化放送出演準備>(2009.2.3公開)
1 始めに
 オバマ新政権の陣容がほぼ固まりましたが、今回は、そのエコ志向の側面をご紹介しましょう。
2 エコ志向のオバマ新政権
 (1)エネルギー省長官
 ノーベル物理学賞を受賞した実験物理学者のスティーブン・チュー(Steven Chu=朱棣文。1948年~)がエネルギー省長官に指名されています。
 彼は、セントルイスの高校での成績が大したことがなく、超一流大学には入れず、ロチェスター大学で学士号をとり、カリフォルニア大学バークレー校で博士号をとります。
 スタンフォード大学教授等を経て、現在、バークレーの教授兼ローレンス・バークレー国立研究所の所長をやっています。
 エネルギー省長官に就任すれば、支那系としては、閣僚級ポストに就いた2人目ということになります。
 チューは、化石燃料への依存から脱することを、地球温暖化対策として重視している人物です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Steven_Chu
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC
http://www.nytimes.com/2008/12/05/us/politics/05web-chu.html?_r=1&pagewanted=print
(いずれも12月23日アクセス。以下同じ)
 (2)エネルギー・気候変動担当大統領補佐官
 クリントン政権で環境保護庁(Environmental Protection Agency)長官として辣腕を振るったキャロル・M・ブラウナー(Carol M. Browner。1955年~)が新設のエネルギー・気候変動担当大統領補佐官(Assistant to the President for
Energy and Climate Change)に発令される予定です。
 彼女は、フロリダ大学ロー・スクール卒です。
 環境保護庁長官の時、彼女によって、同庁は、炭酸ガス排出の規制権限を付与されましたが、後続のブッシュ政権は、同庁にこの権限を一切行使させようとしませんでした。
 ブラウナーは、このブッシュ政権を「環境に関する史上最悪の政権」と宣言するとともに、地球温暖化を「我々が直面する最大の挑戦」と述べたことがあります。
 また彼女は、今年9月、米下院で「これまで何度となく、米国が新しい環境基準を設定しようとすると、反対論者は、コストがかかりすぎる、米国民に巨大な経済的負担を押しつけることになる、と警告したものだ。しかし、一旦新しい基準が設定されると、米国人の工夫と革新によって予想されたよりもはるかに低いコストで解法を見いだすことができた。…米国の経済界はこの種の挑戦にこれまで応えて来たし、今後とも応えることだろう。必要なのは、予測可能性と柔軟性なのだ」と証言したところです。
 オバマ次期大統領は、彼女のために、「気候皇帝(Climate czarina)」というニックネームが付けられた新ポストを用意したわけです。
 (彼女は元下院議員の夫と結婚していますが、これは彼女の三番目の夫です。)
http://en.wikipedia.org/wiki/Carol_Browner
http://www.nytimes.com/2008/11/26/us/politics/26web-browner.html?pagewanted=print
 (3)科学技術担当大統領補佐官
 科学技術担当大統領補佐官(Assistant to the President for Science and Technology)には、ハーバード大学ケネディ行政大学院の環境政策の教授でかつ、同大学ベルファー科学・国際問題センターの科学技術公共政策プログラムの長であるジョン・P・ホールドレン(John P. Holdren。年齢?)が発令される予定です。
 彼は、大統領科学技術諮問委員会(President’s Council of Advisors on Science and Technology =PCAST)の共同議長も兼ねることになります。
 彼は、MITで学士号、スタンフォード大学で博士号を取得し、長くカリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執りました。
 彼は、最近ハーバード大学で行った講演で、「地球温暖化」は適切な呼称ではないと指摘しました。というのは、「それだと、徐々に進展するところの、何か画一的な、それほど心配することではない(benign)ことのような印象を与えるが、我々が経験しているのはこのいずれでもないからだ。既に広範な危害が…気候変動によって生じているのだ。これは単に我々の子供達や孫達にとっての問題ではない」と述べ、新しいデータは、北極海の氷の加速度的喪失や大洋の劇的な酸化が生じていることを示している、と続けたところです。
http://en.wikipedia.org/wiki/John_P._Holdren
http://www.nytimes.com/2008/12/22/opinion/22mon2.html?ref=opinion&pagewanted=print
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/21/obama-climate-change-john-holdren
 (4)海洋・大気局長
 商務省の海洋・大気局長(National Oceanic and Atmospheric Administration)には、オレゴン州立大学の海洋生物学者(marine biologist)にして気候学者(climatologis)のジェーン・ルブチェンコ(Jane Lubchenco。1947年~)が発令される予定です。
 米国のナショナル・アカデミー(National Academy)会員(member)にして英国のロイヤル・ソサエティ(Royal Society)会員(fellow)がこのポストに就くのは史上初めてです。
 ルブチェンコは、世界が化石燃料の使用を今一切止めたとしても、大洋は炭酸ガスを吸収し続け、どんどん酸性度が増していくだろうと警告して来ました。
 そして彼女は今年初めに、「ブッシュ政権は、科学を尊重してこなかった」と述べ、「科学的情報を尊重し、環境政策を策定するにあたって科学を真剣に考慮する新政権ができることを期待している」と続けたものです。
http://www.nytimes.com/2008/12/22/opinion/22mon2.html?ref=opinion&pagewanted=print上掲、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/21/obama-climate-change-john-holdren上掲、
http://en.wikipedia.org/wiki/Jane_Lubchenco
http://voices.washingtonpost.com/the-trail/2008/12/18/lubchenco_will_helm_national_o.html
3 終わりに
 これらの閣僚級や準閣僚級の陣容は、オバマのグリーン・チームと呼ばれるに至っています。
 オバマは、ある時、科学的プロセスの尊重とは、「科学に投資と資源を供給することだけではない。それは、政治やイデオロギーによって、<科学的>事実と証拠が決してねじ曲げられず、無視されないことも意味する」と語ったことがあります。
 これは、ブッシュ政権の科学政策の真っ向からの否定です。
 また、オバマは、このグリーン・チームを生誕させることによって、環境政策とエネルギー政策に科学を活用することで、大量の雇用を生み出そうとしている、と評されています。
http://www.nytimes.com/2008/12/22/opinion/22mon2.html?ref=opinion&pagewanted=print上掲
 人種的にもジェンダー的にも多彩な夢のチームですね。
 こういうことができるのが、米国の凄さなのです。
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 –文化放送出演準備–
<○○>
 お世話になっております。
 明日ご出演頂きます、大竹まことゴールデンラジオの構成担当の○○と申します。
 太田さまの著書「実名告発防衛省」が入手困難で、本日ようやく手に入ったことがあり、台本がまだ完成していません。
 <取り上げて欲しいとおっしゃった>
「政官業癒着構造、更には、日本が米国の属国であることから安全保障を中心に政府にガバナンスが欠如していること。例えば、現在年金問題が喧しいが、日本の年金制度の起源は1942年、すなわち先の大戦のまっただ中」
の部分は入れさせて頂きますが、他に特にお話しなければいけない点がありましたら、ご連絡頂ければ幸いです。
 後は、明日本番前に打ち合わせさせて頂ければと思います。
 何卒よろしくお願いします。
<太田>
 明日、何時に局にうかがえばよろしいですか?
 さて、しゃべりたいことは何か、とのおたずねをいただきました。
 下掲は、明日、文化放送の後、ミニTV局(スカイパーフェクト中の「桜」)で収録をする際に使用するフリップの一部です。
 (この全部をしゃべりたいということではありませんが、○○さんに、私のロジックを理解していただくために、「余分に」ご披露させていただきました。)
 私が一番、しゃべりたいのは、1枚目と2枚目の部分です。
<1枚目>
・・・略・・・
<2枚目>
・・・略・・・
<3枚目>
・・・略・・・
<4枚目>
・・・略・・・
・・・中略・・・
<6枚目>
・・・略・・
<7枚目>
・・・略・・・
・・・・以下、省略・・・
 なお、参考まで、
東京新聞に載った『実名告発 防衛省』の書評
http://www.tokyo-np.co.jp/book/shohyo/shohyo2008121402.html
『実名告発 防衛省』をテーマにした、週間金曜日掲載対談(最終ゲラの一つ前)
(対談相手は辻元清美衆議院議員(社民党))
<引用始め>
辻元 田母神(俊雄・前航空幕僚長)事件はこれまでと質が違いますね。
・・・中略・・・
辻元 といっても、日本の経済状況ではこれ以上、お金を出せない。米国は中国
とも関係を密にしていくでしょうし、いまのような日米安保が続いていくように
は思えません。日米の軍事関係の見直しを米国側から持ち出される、その時期が
かなり近くまできているように思います。
<引用終わり>