太田述正コラム#3073(2009.2.3)
<皆さんとディスカッション(続x387)>
<komuro>
≫10~50年のうちには、プロの将棋や囲碁の棋士やプロの器楽奏者等はいなくなっている可能性が高いし、ほとんどすべての生産活動はロボットが担うようになっているだろうという話が今回のオフ会でも出ました。≪(コラム#3070(未公開))
 私は将棋・囲碁ともアマ三段で、30年前からプロ棋界を見ていますが、将棋・囲碁に関して、プロがいなくなるとは思いません。
 現在、将棋ソフトがアマトップレベルの実力を備えていて、あと十何年かで一般のプロ棋士並の強さを持つ可能性はあります。
 しかし、将棋ファンは強さだけを見ているわけではないのです。
 人間同士が闘っているから面白いのです。
 1997年に、コンピューターがチェスのチャンピオンに勝ったことが話題になりましたが、だからといって人間がチェスを止めるわけでは無いです。
 あと、現在の将棋ソフトの指し手には、創造性や芸術性が見られません。
 どんなにソフトが強くなったとしても、これは難しいと思います。
 人間vsコンピューター(ロボット)は、一旦機械側が勝ってしまうと、あとは話題にならなくなりますね。
 それより、女性がハンデを乗り切って男性に勝つのを見守るほうが、よっぽど面白いと思います。
<太田>
 若い頃は、将棋が2~3段だったけど今はからきしダメな私ごときが、現在でも正真正銘の3段の方に申し上げるのはまことに口幅ったいが、将棋は勝てばいいのですよ。
 勝利に結びつかない創造性や芸術性など何の意味もありません。
 あなたの話を聞いていると、何だか大昔の升田贔屓で大山嫌いの人を思い出しますね。
 こう言うと、心理戦(大山はあえて、最善手を指さないことがあった)や盤外戦(これにも大山は巧みだった)がある
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%B1%B1%E5%BA%B7%E6%99%B4
からこそ、人間同士の対局は面白いのだ、と反論されそうですね。
 しかし、ポーカーじゃあるまいし、将棋にそんなものを求めるのは邪道だと私は思います。
 もちろん、将棋ソフトがトッププロより強くなっても、人間が楽しみで将棋を指すのを止めるわきゃないです。
 ただ、私は、対局だけで食ってはいける人はいなくなる、という意味で将棋のプロはいなくなる可能性が高いと思っているのです。
 器楽演奏においても私は、毎日何時間もの練習を、幼少の時からたゆまず生涯続けなくてはならないところの、演奏のプロは機械で置き換わって姿を消すなることになる可能性が高いと思っています。
 ただし、与えられた曲のテンポ、及び個々の音の強弱と長短を絶妙に決めることができるという意味でのプロ、更に弦楽器等においては、これに加えて音のゆらぎの出し方のプロ・・彼らが電子楽器に入力するわけです・・は残ると思います。
 しかし彼らは、もはやプロの演奏家と言うよりは、広義のプロの作曲家・・創造性、芸術性のみが問われる・・の範疇に属するでしょうね。
 
<Nelson>
≫()内も証拠がない点で五十歩百歩ではありませんか.あなたがなすべきは,左翼の法学者さんの指摘を真正面から受け止めて,「()内は確かに成立していた,その証拠は…だ」と示すことです.そうすることによって初めて反天皇擁護派を説得することができます.≪(コラム#3071。ドイツゲーマー)
 少なくとも証拠はあげています・・・・それに対する左翼の法学者様のご「指摘」の「あった」証拠を答えてくださいと私が申し上げているのに・・・逆に私に「なかった」証拠を答えろってか(笑)!?
 そいつは説明責任の転嫁ってやつではないの?
 「指摘」した本人がちゃんと最初に答えてね。
 だから、まともな「議論」ならないといったんですよ。
 念のためもう一度(多少付け加えて)。
 「立憲君主制」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E5%90%9B%E4%B8%BB%E5%88%B6#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E3.81.AE.E7.AB.8B.E6.86.B2.E5.90.9B.E4.B8.BB.E5.88.B6)、「聖断」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%81%96%E6%96%AD)、「田中義一」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E7%BE%A9%E4%B8%80)等が昭和天皇が政治的決定に関与しなかった消極的証拠となり、「1941年9月6日の御前会議」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E5%89%8D%E4%BC%9A%E8%AD%B0)が昭和天皇が政治的影響力がなかった積極的証拠になりませんかねとこれは以前も申し上げました。
 「五十歩百歩」とおっしゃいますが、私は少なからず微々たる証拠・事実を不足をしていますが挙げており、逆走かもしれないけれど、百歩譲って、1歩以上は進んでいます。それに対し、左翼の法学者様の私の説へのご「指摘」は、「積極的根拠」はありませんので、50歩はおろか1歩も進んでおらず、「スタート地点で準備運動している状態」だということをお忘れなく。
 したがって、ドイツゲーマー様ご自身がおっしゃっているように、しっかり「検証」して、「積極的根拠」が少しでもわかる時まで、左翼の法学者様の私の説へのご「指摘」は保留させておくことが肝要だと愚考しますが・・・いかがでしょうか。
≫なお,<昭和天皇の>形式的責任について,みなさまに新たにご紹介したい話などもあるのですが.また日を改めて行います.≪(同上)
 楽しみにしています。
<太田>
 Ms.Nelson、何かコラム書いてみませんか?
 その気になったら、ご連絡下さい。
<アーサー> 
 –縄文モードについて–
 日本を真の独立国にしよう、には賛成です。
 縄文文化が日本文化の古層にある、も定説ですね。
→典拠を付けましょう!(太田)
 しかし、縄文モードと弥生モード説の必要性がよくわかりません。
→サイクルを描いているように見える日本の歴史を説明するための仮説です。(太田)
 縄文モードだから独立できない、というのは何故でしょう。
→軍事を放擲していたのでは、鎖国が不可能となった現代においては独立なんてできませんよ。(太田)
 今回のコラム#3072(未公開)での議論では、現代の日本が縄文モードであるということの根拠が男性の中性化に求められています。縄文時代の男性が中性化していた、ということでしょうか。火焔土器の方が弥生土器より荒々しいですが。
 縄文イコール中性化の典拠は何でしょう。
→縄文時代は(少なくとも弥生時代よりははるかに)平和であったらしいこと、狩猟採集経済と言っても、後期には農業もあったし、狩猟において川魚の漁労も結構あったらしいし、男性と女性の役割分担はそんなになかったのではないかと思われます。木の実等の採集だってそんな感じですよね。だから、縄文時代は中性化の時代であったのではないかと思うのです。 また、縄文文明における美は、非対称、デフォルメの美であり、このような「印象派」的美を、我々は、典型的な縄文モードの時代である江戸時代の浮世絵において見出だすことができます。(太田)
 次に、男性の中性化の典拠として、
  強姦発生件数
  他殺率
などが挙げられていますが、仮にこれらの件数が増加すれば中性化が改善し、弥生モードになり、日本はアメリカの属国から独立するのでしょうか。
→・・・。えーい、面倒だ、イエス!(太田)
 女性に対するアファーマティブアクションを推進する議論に、支障が出ませんか?
→先進国におけるエコ社会化や男女共同参画社会化のうねりは、縄文化のうねりである、と私自身は認識しています。 昭和期の日本は、縄文モードの時代であったのに、縄文モードにそぐわぬ大戦争・・どうしても男性優位になってしまう・・をやる羽目になったことにより、本来男女共同参画社会化の旗手たるべき日本が、この点では逆に他の先進諸国より遅れてしまったということなのです。(太田)
 仮にアングロサクソン化を目指すのであれば、縄文モードの話もいいですが、英国がいかに敗戦や失敗から立ち直ったか等の実例から学ぶべきでしょう。
 (英国が敗戦していればの話ですが。)
→北米植民地の独立は、当時の英国にとっては一種の敗戦でした。しかし、この敗戦をむしろ奇貨として、大英帝国は、マーク1からマーク2へと華麗なる変身を遂げるのです。(コラムを書いたことがある。)(太田)
 そもそもアングロサクソンは戦争と善悪をどういう風に関連付けているのか。
 彼らにとって戦争が正業なら、利益を上げる戦争こそが善でしょうか。
 一方、日本人は敗戦の結果、「戦争の勝ち負け」と「国家の善悪」を混同してしまった。戦争で勝ったから善だ、負けた国は悪だ、などと言ってもだれも賛成はしないけれど、日本人が「日本は負けたから悪だった」と思っているとしたら、「日本人男性の攻撃性は悪である。」ということになり、戦後の日本男性の反暴力的傾向は説明できると思いますがいかがでしょうか。
→むしろ、善であると確信していた大戦争を戦ってコテンパンに負けた上に悪のレッテルを貼られてしまった、というショックが余りにも大きかったことから、既に縄文モード入りをしていたということもあり、戦争の放棄がストンと胸に落ちた、というところでしょうね。(太田)
<太田>
 SMさん、遠江人さん、訂正ないし補足があったらよろしく。
 「・・・米国では、何らかの違法薬物を一生のうちに経験する人の比率は46%もある。欧州でも20%を超える国は多い。  ところが、日本は2.9%と際だって低い。・・・」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
(朝日の社説のバックナンバーは一般公開されていないのでご注意)
 これも、中性化の議論と無縁ではなさそうなデータですね。
<コバ>
 今度は靴を投げつけられた温家宝
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20090203k0000m030135000c.html
です。
 要人に暴力で抗議しようにも、もう靴を投げつけるくらいしか出来ない時代なのかもしれません。
 日米地位協定の見直し、思いやり予算の大幅削減、沖縄米軍に関する有事駐留論など、日本の民主党内から発せられる意見は、共和党にせよ米国民主党にせよ、アメリカの外交戦略家から見て、日米同盟を弱体化させるものに映っているそうです。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/sunohara/index.html
→「独立」抜きにそんなことだけを言ってりゃ、米側にそう映っても仕方ないですよね。(太田)
 これを踏まえると、日本の宗主国米国が、日本の民主党よりも自民党のほうがマシ(米国資本に都合の良い改革をさせるなど)だと考えて、日本の官僚機構やマスコミに買弁させているということはあり得ることでしょうか?
→米国は、少なくとも小沢一郎には圧力をかけている、と私は見ています。 そうでも考えなきゃ、小沢一郎のこのところの一連の異常なふるまい
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090201-OYT1T00235.htm
(2月2日アクセス)
は理解できません。(太田)
 何かもう、負け犬根性の貧乏人として、被害妄想ばかり溢れるばかりです。自民党になんか投票したことないのに…orz
 民主党よ、本当に気張りんさい!
 京都にある酒造会社で、英国人の杜氏が大活躍中のようです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090203-00000504-san-soci
→米スレート誌がMen at Work: Artisans of Old Japanシリーズを、1月26日号から始まって5回にわたって連載した
http://www.slate.com/id/2209693/entry/2209694/
(~)ことから、欧米で、日本の匠への関心が非常に高まっていることがうかがえます。(太田)
 こんな風に日本へ好んで住んでくれる外人さんが増えてくれると日本に非常にプラスになるのではないでしょうか。
 しかし、へっぽこ日本人として、その才覚とvitalityをちょっとでも分けてもらいたい…orz
<michisuzu>
 人事院の問題(人事院総裁と甘利さんが揉めています!)が今話題となっていますが、人事院の総裁って内閣による罷免もないので官僚の中の官僚らしいですね?
<太田>
 michisuzuちゃん、こういう質問ないし問題提起だって、下掲のような典拠
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090203/plc0902030256003-n1.htm
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009020301000084.html
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20090203040.html
を付けるのが親切というものです!
 私自身は、会議に呼んだのに人事院総裁がやって来なかったなんてのはもとより、「級別定数」の決定権限を人事院から奪うことだって、大した話だとは思っていません。
 それより、本件とともに公務員改革工程表に載っている、「「2011年からいわゆる『天下り』の根絶に対応した新たな人事制度を実現する」という方針は結構だけれど、09年から退職後の再任用、定年延長などの検討を進め、総人件費を抑制しながら早期退職慣行を是正するとした」ということでは、
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090203AT3S0202A02022009.html
全く中身がないに等しく、こちらの方こそ、もっと問題にされるべきでしょう。
 話は変わります。
 オフ会での講演の時に言い忘れた(コラム#3067(未公開)参照)のですが、平原綾香が歌っている「ノクターン」
http://jp.youtube.com/watch?v=uSDGrLkE0Ik&feature=related
は、講演中に登場したところの、(仲道郁代演奏による)ショパンの「ノクターン(遺作)」
http://jp.youtube.com/watch?v=PU6C1QQnSeY&feature=related
の翻案です。
 実は、最寄りのスーパーのでいつもこの平原の歌が流れていて耳に焼き付いているということもあって、このショパンの曲を選んだのです。
 最後に記事の紹介です。
 ・・・ Excluding the politically awarded Peace Prize, Muslims have won only three Nobel prizes since their inception more than a century ago, or one for every 450 million Muslims alive today. By contrast, there have been 169 Jewish Nobel Laureates (excluding the Peace Prize), or about one for every 89,000 Jews alive today. During the past century, a Jew was 5,000 times more likely to win the Nobel than a Muslim. ・・・
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/KB03Ak03.html
(2月3日アクセス。以下同じ。)
 ノーベル文学賞を入れての話なので、確かにイスラム教徒の成績はユダヤ人に比べて余りにもひどいですよね。
 ・・・The weekend’s elections in Iraq were a huge success for the Iraqi people. The remarkably peaceful day of voting on Saturday – and the interim results – give good reason to hope Iraq really is on the way to building a decent society.・・・
 The turnout, 51%, was less than some predicted but importantly it included many Sunnis who had boycotted the last elections in 2005. ・・・
 The peaceful polling was remarkable and so were the results. All the Islamic parties lost ground, especially that associated with the so-called “Shia firebrand”, Moqtada al-Sadr, whose share of the vote went down from 11% to 3%. The principal Sunni Islamic party, the Islamic Party of Iraq, was wiped out.
 The only Islamic party to gain ground was the Dawa party of the Shia prime minister Nouri al-Maliki – and even that party dropped the word Islamic from its name.・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/feb/03/comment-iraq-elections
 やはり、イラクには、もともと民主主義が機能しうる条件が備わっていたのですねえ。
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太田述正コラム#3074(2009.2.3)
<米帝国主義について(その2)>
→非公開