太田述正コラム#14374(2024.8.2)
<大川周明『大東亜秩序建設/新亜細亜小論』を読む(その46)>(2024.10.28公開)
「しか<し>これと同時に、かかる保守的精神は、人類の行手に、既に無用に帰したる過去の塵埃を堆積し、その発展の自由を阻む。・・・
かくの如き保守主義が、アジア衰徴の一因となりしことは拒むべくもなき事実である。・・・
インド最高の哲人アラビンダ・ゴーシュ<(注76)>は、幼少にしてイギリスに遊学し、留まること実に廿年、西欧の与え得る一切の教育を遺憾なく受け、そのインドに帰れる時は、殆ど母語を忘れたほどであった。
(注76)オーロビンド・ゴーシュ(Sri Aurobindo Ghose。1872~1950年)。「[インド帝国官僚(Indian Civil Service)たるべく]ケンブリッジ大<に学ぶ。>・・・イギリス支配から脱却するためのインドの初期の自由化運動のリーダーのうちの1人としての[1910年までの]短い政治キャリアののち、「神的な生命」に相当する「スーパーマインド(超精神、超心)」と呼ばれるハイレベルの霊的意識を確立することによって地上での生活の進化を促進することを目的とした、「インテグラル・ヨーガ」と呼ばれる新しい霊性の道の実践と進化を主唱した。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5
https://en.wikipedia.org/wiki/Sri_Aurobindo ([]内)
それにも拘らず彼はよく一切のイギリス的なるものをその魂より払拭して、真個のインド人となることによってのみ、初めて一切を信じ、一切を断行し、一切を犠牲にし得ることをインド青年に教え、アーリヤの思想、アーリヤの鍛錬、アーリヤの性格、アーリヤの生命を、知識また感情を以てに非ず、実に生命を以て驀地(まつしぐら)に摑得すべしと教えた。
余はネールがアラビンダ・ゴーシュの精神に拠ってインド独立運動を指導せんことを切望して止まない。
⇒’Sri Aurobindo influenced Subhash Chandra Bose to take an initiative of dedicating to Indian National Movement full-time. Bose writes, “The illustrious example of Arabindo Ghosh looms large before my vision. I feel that I am ready to make the sacrifice which that example demands of me.’(上掲)というのですが、それは、チャンドラ・ボースが、ゴーシュが、イギリスにおいて教育されながらも、一切イギリス的なものを捨て去ったことに鼓舞された、ということ以上ではありますまい。
しかし、ゴーシュがインド人として見出したと信じたものは、インドの退廃を象徴するナンセンスに他ならなかった、というのが私の見解です。(太田)
この精神に立還る時、ネールは必ずアジア生活の根底に横たわる一如を把握し、この一如を具体化または客観化して、新しきアジアを実現するために日本と堅く手を握るに至るであろう。 」(186、206)
⇒そうはなりませんでしたね。
インド人民党政権下で、一見そうなりつつあるように見えるけれど、依然として前途遼遠だ、と、私は考えています。(太田)
(完)