太田述正コラム#3050(2009.1.22)
<日米中英走馬燈>(2009.3.6公開)
1 始めに
 私が本日読んだ、日本、米国、中共、及び英国それぞれについて、思わず考えさせられる記事を1本ずつご紹介します。
2 日本
 
 「・・・麻生総理は最近とかく批判の対象となっているが、そんな世上の評は浮草の如きものである。私が感心しているのは2点である。1つは3年後の消費税増額を決して譲らないことである。これは日本の財政経済について確固たる見識があって初めてできることである。・・・
 <もう1つは、>麻生総理が「集団的自衛権の解釈は変えるべきだと、ずっと同じことを言ってきた」と平然と発言された<ことだ。>。・・・
 麻生内閣は、この2つについて、不退転の見識を示し続けるだけで、安易な口先の妥協を許さず信念を貫いた総理としての評価に値する。」(岡崎久彦)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090122/plc0901220333001-n1.htm
(1月22日アクセス。以下同じ。)
 また自民党擁護ですか、岡崎さん。
 憲法改正をするってのがウソ公約であることがバレバレになっちゃったから、「タカ」派有権者を籠絡して自民党につなぎ止めるために、仕方なく、自民党「タカ」派が、憲法の政府解釈変更って言い出してるだけなのに、そんなことで「感心」し、「評価」するとはね。
 政府解釈変更は、憲法改正と違って麻生さんの決断でできることなんですよ。
 できることをやらないでいて、やるべきだと言い続けるほど厚顔無恥なことはないでしょが。
 岡崎さん、あなたは最後の最後まで自民党の延命に手を貸すわけね。心底見損ないましたよ。
3 米国
 「・・・<今度出た>’NOTHING TO FEAR–FDR’s Inner Circle and the Hundred Days That Created Modern America’で著者のコーエン(Adam Cohen)は、フーバー<を貶める>昔の党派的見解に拠っている。・・・
 彼は、フーバーは生活に困窮したところの、持ち家に住む人々がその持ち家に引き続き住めるようにするための支援をほとんど行わなかったと記している。しかし、実際にはフーバーは住宅ローン委員会の設置を1931年12月に提案したにもかかわらず、議会がこの法律を通すのに7ヶ月もかけた上に、中身を水で薄めてしまい、持ち家に住む人々が対象にならないようにしてしまったのだ。<ローズベルトのブレーンの一人で学者上がりの>レックスフォード・タグウェル(Rexford Tugwel<。1891~1979年>)でさえ、何年か経った後、インタビューに答えて、「実際のところ、ニューディールのすべてはフーバーが始めたプログラムの延長線上のものばかりなのだ。ニューディ-ルというラベルの下でもたらされた変化のほとんど全部は、フーバーが望み、かつ十分すぎるほど明確に彼が望んでいると言明したものなのだ」と述べたところだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/01/22/books/22Gordon.html?pagewanted=print
 米国民のフランクリン・ローズベルト信仰はまだまだ根強いものがあるようです。
 全く困ったもんだ。
4 中共によるオバマ就任演説の検閲
 「・・・米国の新大統領が<就任演説で>共産主義や異論の声(dissent)に言及した時、<中共の>諸ウェブサイトはこれを検閲し、また、国家TV局は共産主義に言及がなされた際、生放送を突然中断した。
 「昔の世代の人々はファシズムと共産主義に対してミサイルと戦車で対決しただけではなく、不屈の同盟と堅固な確信によっても対決した」とオバマはその18分間の演説で語った。
 彼はその後、「腐敗とウソ、そして異論の声を沈黙させることによって権力にしがみつく人々よ、君達は歴史の誤った側にいるが、もし君達が拳をゆるめるならば、我々は手を差し伸べる用意がある」と付け加えた。
 人気のあるシナ(Sina)とソフ(Sohu)というインターネット・ポータルサイトに本日掲示された翻訳において、「共産主義」という言葉は省かれ、異論の声についての箇所は削除されていた。他方、もう一つのネットイーズ(Netease)というサイトでは、共産主義についての箇所は完全に削除されていたが、異論の声についての言及は落とされていなかったため、支那の人々がこのことを褒める書き込みをしていた。
 なお、国営の人民日報の英語サイトには、この演説の無削除版が掲載されている。・・・」
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/7843154.stm
 中共当局も芸が細かいというか神経質というか姑息というか・・。
 こんなことがそう長く続けられるとは思えませんね。
5 英国紳士とタイタニック沈没
 「ある経済心理学者(behavioural economist)は、データによれば、<タイタニックが沈没した時代の>昔の英国人は、「紳士的(gentlemanly)」だったのに対し、当時の米国人は、もっと「個人主義者(individualist)」だったと語った。・・・
 彼は、事件直後に行われた米国と英国での取り調べにおける証言を読むと、<英国の>女性達がその夫達が彼女達を救命ボートに乗せてくれたと語った記録がたくさんあると言う。
 夫達はそれから、「船の後ろの方に行き、船が沈没していく間、葉巻をくゆらし、和気藹々としていた」と。
 <この経済心理学者の>サベージ(Savage)氏は、「一人のかなり裕福な<英国の>紳士がいた。彼は妻を<救命>ボートに乗せた後、船の階段を下り、タキシードに着替え、上の階に上がり、たばこを吸った。死ぬときには、きちんとした身なりをして紳士として死のうと思いつつ・・。」と語る。・・・
 また、沈没しつつある時、船長のエドワード・ジョン・スミスは、「英国人らしくあれ、諸君。英国人らしくね」と叫んでいたという証言もいくつかある。
 「米国の文化はより個人主義的な文化だったが、英国の文化は紳士的態度をより重視するものだった」とサベージ氏は語る。
 「この事件が起こったのは、紳士たるべきことが社会で仰ぎ見られることであった<ヴィクトリア時代直後の>エドワード時代であったことを思い起こすべきだ」と。
 サベージ氏は、「女性達と子供達を先に」といった社会規範が英国の文化では極めて強固であり、このような状況下でもそれが貫徹していた、と結論づける。」
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/7843154.stm
 映画のタイタニックでもそんな光景があったような気がしますが、最後の文章は現在形で語られているところ、現在の(中流以上の)英国人の間でも紳士的文化はなお健在である、と私は思っています。