太田述正コラム#2763(2008.8.31)
<米国人による感覚的イギリス論>(2009.3.11公開)
1 始めに
 夏休み休暇の準備があるので、軽く流すコラムでご容赦願います。
 今回は、1990年代中頃にニューヨークタイムスの特派員としてロンドンにやってきて英国のライター兼編集者と結婚したサラ・ライオール(Sarah Lyall)が上梓した感覚的イギリス論である “The Anglo Files: A Field Guide to the British”のご紹介です。
 なお、彼女が「英国」と言っている箇所は、「イギリス」と読み替えるべきでしょう。
2 サラの指摘の概要
 われわれ米国人は未来を見つめるが、彼ら英国人は過去を見つめる。
 われわれはその米国人らしさを大声で自慢げに喧伝するが彼らは足をふるわせながらその英国人らしさについて謝罪する。
 英国人は米国人に比べ、はるかにきれい好きではない。
 21世紀においてすら、多くの英国の人々は夜のラッシュアワーに地下鉄に消臭剤をつけずに乗っているし、皿洗いをやる時でも、彼らは洗剤を洗い流さなければならない部分を適当に決めて良いと考えているように見える。
 性について言えば、ゲイであることが軽く受け止められており、男の子が先生や他の男の子から追っかけ回されたり体を触られたりする話をよく見聞きする。
 また、英国の料理は、まず間違いなく不味い。
 そして英国人は動物大好き人間だ。
 彼らは、とにかく自己卑下するし、特異であることや歯並びが悪いことを好んでいるかのようだ。
 英国人は、あたかも努力なくして成功したかのように装わなければならないものと思い込んている。彼らにとっては自慢するなどというのは最もお行儀の悪いことなのだ。なんとなればそれは攻撃的で、高望みをする、うぬぼれのように、そして得意がっているように写り、まるで米国人のように育ちが悪く見えるからだ。とにかく英国人は、高望みをせず、何かをなさねばならないと思いこんでいて、楽しむよりも堪え忍ぶことを当然視するという人々なのだが、このあたりのことは、米国のニューイングランド地方、とりわけメイン州の小さなコミュニティの人々がそっくりそのまま受け継いでいるように思う。
 どうも以上のようなことは、英国人の国民性と言うよりは、彼らの何世代にもわたる階級制度との関わりの中で培われた生活の知恵といったところではなかろうか。
 (以上、
http://www.latimes.com/features/books/la-et-book30-2008aug30,0,5078665,print.story 
(8月30日アクセス)による。)
3 終わりに代えて
 彼女の結論の部分・・階級制度なるもので全てを説明しようとするのはいかがなものか。第一階級制度なんてイギリスには存在しない!・・はともかくとして、それ以外の部分はまことに感覚的ではあるものの、私自身がイギリス滞在中に感じたことと基本的に異なりません。
 ずっと以前にも申し上げたと思いますが、イギリス人って日本人に似ていると思いません?
 なお、これも以前に申し上げたことですが、料理が不味い、というのは、食材が新鮮かつ豊富でおいしいので味付けをほとんどしなくてよい、ということなのであり、一見全然違うように見えるけれど、日本料理に通じるところがあるのですよ。
 きれい好きでない、という点は日本人とは全く違いますがね。
 ただし、日本と違ってイギリスの気候は涼しく、また湿気も余り高くないので、それほど汗をかかないし、細菌も余り繁殖しない、という事情があることを忘れてはならないでしょう。