太田述正コラム#14550(2024.10.29)
<G・クラーク『ユニークな日本人』を読む(その18)>(2025.1.24公開)
「・・・もちろん、どこの国へ行っても、村があり農民がいる。
そういう人々は日本人と同じように村意識をもっていて、そこには人間関係社会がある。
しかし、それ以外の人たちは、やはりなにかの理由で原則とかイデオロギーを求めているのです。・・・
⇒クラークの「母国」であるイギリスで、都市と田舎の違いは、’ rural areas and urban areas each have their own unique attributes and characteristics. While rural areas offer a peaceful environment and lower cost of living, urban areas provide more job opportunities, cultural experiences, and access to amenities. Ultimately, the choice between living in a rural area or an urban area depends on individual preferences and priorities, whether it be a desire for a close-knit community in a rural setting or the excitement and convenience of urban living.’
https://thisvsthat.io/rural-areas-vs-urban-areas
と記されるだけで、田舎は、都市に比して、より、close-knit community であるのは当たり前であるところ、だからといって、田舎には「村意識」や「人間関係社会がある」的なこと、を伺わせる話は全く出てきません。
況や、イギリスにおいて、田舎の人より都市の人の方がより「原則とかイデオロギーを求めている」なんてことはありえなさそうですよね。(太田)
われわれにしても、もとはそういう村のなかに住んでいた、人間関係社会のなかにいた。
ところが、なんらかの理由でそこから逸脱したわけです。
日本では、それが・・・そのまま続きました。・・・
⇒クラークは、今度は、(日本以外の)どこの国においても、「村意識」や「人間関係社会」は消滅してしまっている、的なことを言い出しています。
校正ミスなのか、そもそも、クラークの頭のつくりが粗雑なのか、ですね。(太田)
日本という国家は欧米のような意味では存在していない。
日本はアナーキストの社会なんです。・・・
⇒このくだりは、私がかねてから指摘していることであり、慧眼です。(太田)
日本では、日本政府が・・・法律をつく<ることなく、>・・・すぐに行政指導をして対応する。
われわれの目で見て、<日本は、>とくに行政指導の印象が強いですね。
これは独裁社会、一枚岩の社会の特徴なんです。・・・
その同じ一枚岩的な社会の中に起きた成田空港事件とか、むつ湾事件とか、原子力発電所建設反対運動とかを、どう説明したらいいのか。
社会として、まるで精神分裂症を起こしているのではないか、と思われている。・・・
<日本のような>人間関係社会<で>は、あまり原則にこだわらず、<人々が、>そのときそのとき非常に現実的に動<くことが多い>。・・・
うまく実態をみて行政指導をやってピンチをのりこえるのは<まさにその場合であるわけですが>、うまくいかずに実態にふりまわされ<て>感情的になる<場合もあります>。・・・
現実的<に動く>ことと感情的<にな>ることの原因はまったく同じです。」(17、20、22~24)
⇒<>内のように、言葉遣いを直したり補足したりすれば、クラークの言っていることはそう的を外れてはいません。(太田)
(続く)