太田述正コラム#14560(2024.11.3)
<G・クラーク『ユニークな日本人』を読む(その23)>(2025.1.29公開)
「・・・日本は、攻撃される客観的な可能性を客観的に見きわめなくてはなりません。
その可能性はある程度たしかに存在している。
私の目で見て、確率としていえば可能性は2か3、つまり2パーセントから3パーセントある。
一方、日本が再軍備するとして、それによってもう一度軍国主義になる可能性は5~10パーセントではないかと思います。
だったら・・・再軍備しないほうがいい。
社会党は多分そういうふうに判断せず、本能的にやっているのでしょうが、判断は私と同じではないかと思うのです。・・・
⇒本筋と余り関係のない箇所は紹介しないことにしているのですが、ここはさすがに見過ごせません。
ことごとくが誤りであり、クラークは自分が土地勘のないことにまで話を広げるべきではありませんでした。
クラークはそういう困った人物だということですが・・。(太田)
農協<(注16)>とか日本医師会<(注17)>のように「お金がほしい」というような非常に素朴な原則のもとでなら、なんらかの形で全国的な組織がつくれます。
(注16)「戦後農協は、欧米型の自主的、自立的協同組合の理念を掲げながらも、実際には食糧統制、農業統制のための行政の下請け組織的性格が強かった。また事業運営にあたっても上部組織である連合会主体の運営がなされる傾向がある。さらに、戦後農協の性格を「協同組合」、「農政下請け機関」、「圧力団体」の複合体とみる見解もある。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E5%8D%94%E5%90%8C%E7%B5%84%E5%90%88
(注17)「1916年に高木兼寛や北里柴三郎などにより初めての全国的組織である大日本医師会(会長:高木兼寛)が設立されたが、1919年の医師会令公布により郡市区医師会、道府県医師会が次々と法的に整備された為、その上部機構である大日本医師会も法定化を急ぐべきとの意見が高まり、医師会令も改正され、1923年11月25日、日本医師会創立総会が開催され、北里柴三郎を初代会長として、ここに法定の日本医師会が誕生した。
1939年に第二次世界大戦が勃発すると、 1942年には日本医療団令、改正医師会令が公布され、翌年、日本医師会は解散となり日本医療団総裁稲田龍吉を官選会長とする新正日本医師会が作られた(1943年1月22日)。
敗戦後、1946年に中山寿彦会長以下新役員を選出して日本医師会改組審議会を発足、新制医師会設立要綱を作成し、・・・1947年11月1日、高橋明を会長とする新制社団法人日本医師会が誕生した。・・・
政治団体である日本医師連盟の事実上の母体である。 また、自由民主党の支持母体で政治組織である日本医師連盟を通して政治活動を行っており、選挙の際は自民党支持を公言している。・・・
日本医師会を牛耳っていた会長武見太郎が、・・・「会員の3分の1は欲張り村の村長だ」と述べた<。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A
⇒両団体とも事実上の官製団体であり、(両団体ともこれまた事実上の自民党支持組織ではあるけれど、)クラークの言うような、単なる圧力団体では全くありません。(太田)
しかし、一つのイデオロギーのうえではつくれない。
<だから、>抽象的な・・・消費者運動とか女性解放運動・・・<では、>全国的な組織をつくることができない。・・・
なぜかというと、日本人は組織・グループをつくる場合は、直接会わなければならないからです。
人間関係社会だから、直接的な働きかけが必要になる。」(36、41)
⇒消費者運動に関しては、「日本消費者連盟」という非官製全国団体があります
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%80%85%E9%80%A3%E7%9B%9F
し、生活協同組合にも非官製のものを含め、全国的な「日本生活協同組合連合会(日本生協連)」、「日本コープ共済生活協同組合連合会(コープ共済連)」、「全国労働者共済生活協同組合連合会(こくみん共済 coop、全労済)」、「全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)」、もある
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%B4%BB%E5%8D%94%E5%90%8C%E7%B5%84%E5%90%88%E4%B8%80%E8%A6%A7
ので、やはり、クラークの言うことはいい加減です。(太田)
(続く)