太田述正コラム#14576(2024.11.11)
<G・クラーク『ユニークな日本人』を読む(その31)>(2025.2.6公開)
「・・・いまの日本は個人スポーツにたくさんお金を使い、選手においしいステーキを食べさせられるのに、金メダルを取れなくなった。
というのは、個人スポーツに勝つには個人主義が必要なんです。
欧米人のいわゆる冷徹さが必要なんです。
相手と徹底的に競争すべきで、グループ的な人間にはそれはできないんです。
・・・戦争直後、まだ日本の水泳が勝っていたのは・・・個人主義が残っていたからなんです。
しかしいまの日本人は団体スポーツのほうが得意になった。・・・
⇒人間主義を基本とする日本では匠の伝統があり、また、日本人はたまたま平均的知能も高いことから、食事内容の欧米化に伴い体格が向上すれば、個人種目や団体競技における個人成績も向上するのであって、このことは、このところの、五輪等における日本人の活躍から明かでしょう。
また、繰り返しますが、日本人は集団主義的ではありません!
ここでも、クラークは、単なる思いつきで語っています。(太田)
アメリカは人間関係社会ではないからこそ、人間関係をつくる人が求められている。
だからロビイストが商売として成り立つのです。
日本では逆です。
人間関係をつくる・・・ことはだれにでもできる。・・・
ロッキード<という米国の会社は、日本の会社と違って、>・・・自民党とのあいだのパイプを・・・もっていなかった・・・。
だから児玉みたいな人を雇ったんですね。<(注30)>
(注30)「OECD(経済協力開発機構)の調べによれば、2023年の段階で、主要7カ国(G7)のうち、日本以外ではロビー活動の規制があり、加盟29カ国中12カ国は、監督組織を設置している。
このうち10カ国はロビイストの名前とロビー先、具体的なロビー活動内容も登録が必要だ。3カ国は、資金の予算と支出、さらにどのような政策が対象かも明記することになっている。また29カ国中10カ国が、活動の透明性に違反があった場合は制裁を科す仕組みがある。・・・
OECDによれば、ロビー活動の規制は米国では1940年代からあったが、OECDが2010年に「ロビー活動の透明性や公正性にかかわる原則」について理事会勧告を出してから、英国やイタリアなどにも規制が広がりだした。
日本でも・・・、金融機関で監督官庁の大蔵省(現・財務省)を担当する人を「MOF担」と呼んだりする言葉もある。・・・
ただ規制がないため、ロビイストの定義も定まらず、人数や費やされた金額などの実態も把握されていない。政治とカネが問題になっても、もう一方の当事者である企業のロビー活動を見えるようにするべきだとの声は高まっていない。」
https://globe.asahi.com/article/15247247
⇒ここは、珍しく、クラークが正鵠を射たことを言っているのかもしれません。(太田)
<また、>アメリカには評論家はほとんどいません。
アメリカ人はみんな意見をもっているので、評論家という商売が成り立たないんです。
日本人はみんな自分自身の意見をもっていないから、評論家に聞きたがる。
だからはやっているんです。」(80~81)
⇒評論家を、commentatorと訳せば、’a person on radio or television who describes and discusses news events, sports, books, or other subjects’です
https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/commentator
し、punditと訳せば、「権威者 専門家 学識者 学者 博識者 賢者」ないし「評論家,消息通,専門家」です
https://kotobank.jp/ejword/pundit
が、前者だとしても後者だとしても、米国に大勢いることは間違いなさそうであり、「商売が成り立」っていることは明らかです。
(後者については、邦語ウィキペディアに一覧表が載っています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A9%95%E8%AB%96%E5%AE%B6%E4%B8%80%E8%A6%A7 )
ここでも、原則に戻って(?!)、クラークが言っていることは完全に口から出まかせの思いつき的デタラメです。(太田)
(続く)