太田述正コラム#14586(2024.11.16)
<G・クラーク『ユニークな日本人』を読む(その36)>(2025.2.11公開)
「・・・いまの日本の人間関係社会には、もちろん欠点も行き過ぎもあります。
しかし、基本的に人間の性質、本質にフィットしてます。
それでうまくやっている。・・・
実際にこの世の中で共同主義、コミュニズムではなくてコミューナリズム(communalism)<(注38)>、つまり共同体をもってるのは先進国では日本だけですよ。
(注38)コミュナリズム。「宗教などを紐帯とする集団が,みずからの社会的特質の優位性を強調し他集団を排除しようとする考え方。近代以降主に南アジアで定着した用法。特にヒンドゥー対ムスリムなど他の宗教集団という関係において用いられる。イギリスの植民地統治,集団間の経済的格差などの要因がその背後にある。・・・
地方分権自治主義<、>地方自治を尊重する立場<、>コミューン主義<という意味もある>。」
https://kotobank.jp/word/%E3%81%93%E3%81%BF%E3%82%86%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%9A%E3%82%80-3210877
「コミューン主義(commune-ism)は共産主義(communism)の、その失敗から産まれてきた。」
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784755402708
中国にはもちろんありません。
ソ連にもない。・・・
⇒ここは、(用いられている言葉を気にしなければですが、)まぐれ当たり的に、クラークの言うことはあながち間違いではありません。(太田)
日本人論とか、タテ社会論とか、島国社会説とかを勉強<」し>・・・て・・・反感を感じました。
なぜ日本人はこんなに科学的でないのか。
どれもこれも日本人論は科学的ではありません。
それで・・・何年<も>苦労を積み重ねた結果が<私>の仮説です。・・・
⇒それは私のセリフです!
クラークの「科学的でない・・・仮説」まで、上梓当時ならまだともかく、今頃になって読まされた私は、クラークより更に気の毒かも。(太田)
ソ連はイデオロギー的で原則的な社会です。
⇒ソ連を含むロシアの人々のモンゴルの軛症候群はイデオロギーではなく集団的疾患であり、その最大の特徴は、領土、勢力圏の拡大衝動、にあります。
もちろん、拡大を試みる際には、ゴタクを並べるけれど、そんなものはイデオロギーでも思想でも原則でもありません。
クラークは、日本についてと同様、ロシアのことについても半可通でしかなさそうです。(太田)
中国もアメリカもそうです。
⇒立ち入りませんが、少なくとも中共は、私見では日本文明総体継受を遂行中であることだけをとっても、決してそうではありません(コラム#省略)。(太田)
日本が人間関係社会のルールで、そういった問題をうまく解決できるかどうか、私はそれをいちばん心配しています。
うまく解決できない場合、日本は必ず感情的になります。
感情的といっても、女性的なヒステリーくらいなら、それは大丈夫です。
しかし、その女性的なヒステリーに、すこしイデオロギー的なバイオレンス、暴力を入れると、それは怪物になります。
怪獣みたいになってしまうんです。」(118~120、125、138)
⇒自分の日本に係る先の大戦についての認識が誤っている(コラム#省略)ため、クラークは、大好きなはずの日本に対して、そして、そのとばっちりで女性一般に対してまでも、いわれなき誹謗中傷を行ってしまっているわけです。(太田)
(続く)