太田述正コラム#14797(2025.3.3)
<皆さんとディスカッション(続x6184)/映画評論278:この愛のために撃て>
<.7rm3dxk>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
既出のwiki騎馬民族征服王朝説の騎馬民族征服王朝説の現在という項目にある一文、「一方、近年盛んな遺伝子の研究からは、ユーラシア・ステップのアルタイ系騎馬民族に高頻度にみられるY染色体ハプログループC-M86が東日本ではゼロであるものの、九州と徳島でそれぞれ3.8%、1.4%確認されており、時期は不明ながら、「騎馬民族」系統の小規模な流入があったことを支持する結果となっている。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%A9%E5%8E%9F%E5%A2%B3%E5%A2%93%E7%BE%A4
証拠としては弱いかもしれませんが、遺伝子レベルでは興味深く、しかも徳島に騎馬民族の遺伝子があります。これは、既出の山口博名誉教授の主張する萩原1号墳のある場所でもあるのです。
神武東征の出発地である宮崎には古い古墳がないので、神武東征が作り話であるとする意見があります。しかし、彼らが元々は遊牧民であり騎馬民族であったなら、おかしな話ではないと思うのです。彼らは日本に上陸して、戦いに次ぐ戦いによって移動していたのであり、おそらく半世紀程度で西日本を征圧して王朝を立てたのだと思います。だから、宮崎を根拠地にして長いこと居た訳ではない。彼らの存在が分かりにくい理由は、彼らが日本列島に馬を持ち込んでいなかったこと、少人数であったこと、お互いに文字を持っていない神話時代の出来事であること、彼らが戦闘モードを除いて早くから倭人に同化したのではないか(中国大陸では鮮卑族、満州族の故郷は陸続きで在在していた)、等が挙げられます。これも証拠としては弱いかもしれませんが、イネの遺伝子は神武東征を示持しています。
https://prtimes.jp/story/detail/Gx0n9Xta37b
この東征と徳島にある古墳を繋ぐと、ある想定が可能になります。彼らは南九州を征圧した後、四国に上陸し、阿波(徳島)の国で幾内の情報を得ると同時に吉備勢力と同盟を結んだ。そして、宮崎に戻り東征の兵を挙げたのではないか。おそらく、阿波にある古墳は王族の戦死<者>であった可能性もあると思います。
⇒日本で弥生時代が始まった紀元前10世紀に、支那本土では、周による殷の打倒があり、周の揚子江河口地域への進出もあって、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%A8#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:China_2a.jpg
水稲稲作文化を背負った江南人(弥生人)の朝鮮半島南部経由の日本列島流入が生じた、と考えれば、同じ頃に、(渤海湾にまで及んでいた殷
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%B7#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Shang_dynasty.svg
の)殷人が遼東半島や朝鮮半島北部に逃れ・・「殷最後の王である帝辛(紂王)の親族である箕子が<北部>朝鮮に開いたとされる・・・箕子朝鮮」伝説
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%95%E5%AD%90%E6%9C%9D%E9%AE%AE
を想起せよ・・、玉突きで、当時の「北夷」の一部が朝鮮半島南部へと逃散し、更にその一部が日本列島へと押し出された可能性だって否定できないとは思います。
しかし、だからと言って、あなた自身も認めておられるように、江南人系人とアルタイ系人の圧倒的人口差、と、軍事技術における有意差のなさ、から、後者がヤマト王権を樹立した、とは考えにくいのではないでしょうか。(太田)
<HH>
・・・<有料読者向けコラムの>こ<このところ>の2回のテーマである織豊政権に関する書籍と中共の現在認識に関する書籍へのコメントですが、前者は小西行長の背信行為との指摘、後者は中共指導部にいいように乗せられてしまうジャーナリストの初さへの指摘など非常に説得力があると感じました。支那、ロシア、朝鮮の日本を取り巻く大陸3国との関係は古今を問わず死活問題でありながら、教科書や報道レベルでは納得できる記載に出会うことは殆どない中で太田さんの指摘は納得感が高いと常日頃感じています。
⇒今月22日のオフ会「講演」で、秀吉による唐入りに対する日本の歴史学者の批判の浅はかさ、等について、更につっこんだ私見を申し述べたいと考えています。(太田)
ただ、その中でどうにもまだ消化しきれないのが、ロジステックス的観点からの古代における弥生性の導入が大陸弥生人の侵攻によるものと杉山構想における北海道占領前提による米ソ対決路線です。私は民族的なノウハウの継承というのは存在すると考えており、その裏腹的な事実として民族的に不得意なこともまた存在すると考えています。人間社会における縄文性と弥生性の発露が太田史観の中核で、単純化すればそれは食物獲得の手段の違いと軍事性を帯びているか否かだと思います。私はそれに加えてロジスティックス能力、移動手段とその経路維持の得意不得意もあるのではないかと最近考えています。縄文人は海上輸送とそれを利用した交易に長じ弥生人は陸上のそれに通ずるという考えです。私はどうにも弥生人が海を越えて組織的に日本に侵攻する能力を有していたとは思えないのです。そのような補給も含めた海上航路維持技術を有していれば、その後の2000年間に何度もそのようなことが起きてもおかしくありませんが、元寇以外、せいぜい刀伊の入寇レベルです。一方、縄文ノウハウを基層にもつ日本は明治維新後、30年に満たない時間で生じた日清戦役で近代的軍隊を大陸に派遣し戦争ができました。
⇒前期倭寇の時も日本の「海軍力」は明のそれを凌駕していましたし、日露戦争時には、「海(/川)」軍力」が取り柄のバイキングを祖先に持つロシアの海軍を日本の明治海軍は打ち破りましたよね。(太田)
食糧においても稲作耕作技術の日本伝来が弥生人の日本侵攻をイメージしていますが、これも縄文人が現地で習うか、あるいは技術者と種苗を運んで来ればできる話です。交易で大陸に渡った縄文人が米飯をご馳走になり、それを食べて日本でも栽培できないかと考えて交易として持ち帰れば、あとは労働力は集落を元々形成していてあるわけですから栽培を始めればよく大掛かりな植民の必然性はないのではないでしょうか。
もちろん軍事技術の輸入は不可欠ですから、それは日本に来た弥生人が持ち込んだということはあると思います。そして、これも農業の導入により生じる縄文人同士の構想の中で縄文人主流派に取り入り参謀的役回りで立ち回れば(知恵もそうですし、武器も大陸の自分の心当たりに依頼して縄文人に交易による入手を依頼することで)大陸から手勢を率いて来なくても地歩は固められるのではないでしょうか。
⇒このくだりは、何がおっしゃりたいのか、いま一つ、よく分かりません。(太田)
同様にソ連の北海道上陸もいくら北国の寒さに慣れているとはいえ、完全アウェーの北海道に侵攻し冬季の継戦を可能とする補給路を赤軍が維持できるか。そもそもまともな演習もしたことがない渡洋作戦を師団レベル、軍団レベルでできるのか、瞬間的な渡洋作戦はあるいは米軍が援助すればできるかもしれませんが冬季になりオホーツク海が濃霧と氷に覆われ海上輸送が困難さを増していきます。それを米軍がどこまで手伝うか。杉山構想においては、米ソ対決を引き出すことが主眼とされている中で米ソの長期的な協力を必要とする作戦を構想するでしょうか。そして、それをできるという前提で鋭敏な杉山元や梅津美治郎が作戦を立てるでしょうか。確かに昭和20年4月の東西総軍編成の中で北海道は外されたので、その時点では北海道はソ連の手に落ちる可能性も考えたとは思います。しかし米ソ連合軍が編成されない限り、赤軍単独師団レベルでの<侵>行がまず行われるでしょうし、その場合は戦力の乖離が大きくないことから逆にソ連を撃退してしまう可能性も同時に残されていると思います。単純にリソース配分として最強である米軍侵攻が考えにくい北海道を外しただけではないでしょうか。最終段階で杉山構想の修正として北海道占領による米ソの対峙を考えた可能性はあるかもしれませんが、米軍の対ソ肩代わり戦略に当初から北海道切り捨てが織り込まれていたというのが、少なくともソ連が軍事占領した上で、という条件ですとそうならない可能性の方が高いように思います。
⇒着上陸作戦/着上陸後の攻勢作戦、のカギは航空優勢が確保できるかであり、終戦の頃、日本側は本土で作戦可能機が陸海軍合わせ、「最大限見積もっても1000機に満たなかった」
https://houzankaitachibana.hatenablog.com/entry/54224387
という見方がある一方で、ソ連側は、早くも、その2年以上前の1943年6月の時点で、まだ相当空軍力が残っていたドイツ軍に対して、東部戦線で「一日最大のべ5000回にも及ぶ出撃」を行うことができた
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E8%89%B2%E7%A9%BA%E8%BB%8D
ことを考えると、日本側は1000機未満のうち少なくとも3分の2は対米控置しなければならなかったであろう以上、その航空戦力はソ連のそれと比較すれば蟷螂之斧状態であったと言えるでしょう。
だとすれば、ソ連軍は、着上陸作戦のための空母だの駆逐艦だの上陸用舟艇だのなんぞ全くなくったって、それこそ、商船や漁船を使って兵員/装備を輸送/荷揚げすれば足りた可能性すらあります。(太田)
また中共に関して、昨日の法治主義の欠如に関する弁護は贔屓の引き倒しのように感じました。それを言えば大日本帝国も島津斉彬コンセンサスを遂行していた80年間は戦時体制ですが、本格的な情報管制を敷いたのは昭和10年代以降の最終盤ですし、それも不徹底だった感があります。それと比べると中共の法治主義の欠如はそれを中共指導部が当然視しているのか、それとも時期尚早と考えているのかはわかりませんが、どちらにしても怠慢であると私は思いますし、最終的には人間主義の受容の障害になる(法治の欠如がエコ贔屓に繋がり、ひいてはその恣意性が蔓延することで人間集団それ自身の信頼感の欠如につながる)のではないでしょうか。
⇒明治時代と現在との決定的な違いは、熱戦と冷戦・・冷戦だって有事ですが・・、前線と後方、の区別がなくなったことです。(典拠省略)
私は、そういったことを勘案の上、そして、種々の計算をし尽しつつ、中共当局は法治主義に係る政策を採ってきている、と見ているわけです。(太田)
<太田>
安倍問題/防衛費増。↓
なし。
ウクライナ問題/ガザ戦争。↓
<イスラエル側の予想通りの進行?↓>
Israel blocks entry of all humanitarian aid into Gaza・・・
https://www.bbc.com/news/articles/c9q4w99je78o
妄想瘋癲老人米国。↓
<杉山元らに戦後さんざこき使われてきた米官民が悲鳴を上げ始めてるのを見るのは欣快至極だが、米軍の削減から、そして、粛々とした撤退、とはいかず、醜悪且つ無様な姿を露呈してるのは杉山らにとっても意外だったかも。いやあ、そうじゃなくって、それもまたお見通しだったんだろうな。↓>
「米CBSテレビが2日公表した世論調査結果によると、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対する軍事支援について、回答者の51%が賛成し、49%が反対した。2022年4月の調査では72%が賛成だったが、大きく低下。・・・民主党支持層の72%が賛成したのに対し、共和党支持層は68%が反対に回り、党派色が鮮明に分かれた。」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fcf5b07ce7f525dd5a0a5a204b9680dd4710efac
<まあ、これで、欧米/露、世界は、欧と英と米と露、へと四つへコマ切れ状態/それぞれ落ちぶれ状態、に。さぞかし杉山元らが狂喜しとるだろうて。↓>
Trump and the end of the geopolitical ‘West’–Donald Trump and JD Vance may delight in shocking Europe, but their counterparts across the pond are coming to terms with the collapse of a united West.・・・
https://www.washingtonpost.com/world/2025/03/02/trump-end-geopolitical-west-zelensky/
それでは、その他の国内記事の紹介です。↓
ニューヨークはトランプの米国じゃあないからなあ。↓
「ニューヨークは空前の日本酒ブーム!・・・」
https://www.asahi.com/and/article/20250228/425451522/?iref=comtop_And_03
盲人も遊女もそれなりに生かされていた江戸時代。↓
「・・・鳥山検校<は、>・・・瀬川を身請けして3年後の安永7年(1778)、高利貸しでの不正が発覚して、ほかの盲人たちと一緒に処分される。財産を没収のうえ江戸から追放されたのだから、かなり重い処分だった。こうして身請けされながら、わずか3年で生活の糧を失った瀬川が、その後、どうなったのか、たしかなことはわからない。武士の妻になった、大工の妻になった、という話はあるが、確証はない。・・・」
https://news.yahoo.co.jp/articles/2209ebc2e98e35f26d5c4d43853fe4bbd94f35ad
日・文カルト問題。↓
<文カルト健在。↓>
「ドイツで慰安婦像2体設置、ナチス博物館と教会で 国際女性デーに合わせて韓国系団体主導・・・」
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20250302000400882?section=society-culture/index
中共官民の日本礼賛(日本文明総体継受)記事群だ。↓
<まあそんなところで。↓>
「・・・「需要拡大型の産業政策」と「殺到する経済」の結びつきによる経済成長のパターンは、非先端の半導体産業においても働いている可能性がある。
そしてそれは、近年の米国による中国の半導体産業を対象とした厳しい制裁措置に対する、中国の製造業のレジリエンス(打たれ強さ)を高めることにつながっていると考えられる。
こうした「打たれ強さ」は中国の強みでもある一方で、過剰生産能力が常に温存され、その製品が海外に輸出されることで激しい貿易摩擦を引き起こすことにもつながりかねないという側面がある。」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0a2d7abda4dc388a94a16499172df381906d77a
–映画評論278:この愛のために撃て–
今回の「『この愛のために撃て』<(原題:À bout portant、英題:Point Blank)>は、2010年の<仏>映画<で、>誘拐された妻を救おうとする男を描いたサスペンス・アクション映画」だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%AE%E6%84%9B%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E6%92%83%E3%81%A6
https://en.wikipedia.org/wiki/Point_Blank_(2010_film) ←詳細な筋
筋の起承転結が明快で娯楽秀作と言えよう。
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太田述正コラム#14798(2025.3.3)
<橋爪大三郎・峯村健司『あぶない中国共産党』を読む(その19)/遠藤誉『毛沢東–日本軍と共謀した男』を読む(その1)>
→非公開