太田述正コラム#3193(2009.4.4)
<皆さんとディスカッション(続x446)>
<関心>
 太田様、いつも拝見しております。
 コラム#3189のSM3に関しての典拠HPです
http://www.gensuikin.org/nw/ntw1.htm
が、右上には”2002.12.30”とスタンプがあり、その内容も、幾分古いように思われます。太田様が”田母神閣下の詐欺的言説”とおっしゃる、太田述正コラム#3185にご主張の「何から、何を(誰を)、どの程度守るか」という、本質部分に対しての影響は大きくはないと思いますが、指摘させて頂きます。
 太田様が付け足したコメント「<・・・現在海上自衛隊のイージス艦に搭載されているSM3ではノドンを迎撃することはできないわけだ。>のおおもとの根拠となっている、典拠HP内「イージス・リープ・システム(海上配備型システム)は、これまでのところ、3回迎撃実験が行われているが、・・・これらのテストでは、ブースター(推進部分)と弾頭が一体となったミサイルを標的にしている。・・・ノドンでは、弾頭が切り離される。・・・迎撃体が衝突したのは、ミサイル本体であって、弾頭部分ではない。従って、ノドンに対してどう機能するかは全く分からない。・・・」という引用部分ですが、その後(2002年以降)の開発により、SM3を使ったイージスBMDシステムには分離後のミサイル弾頭部分に衝突する能力が付与されています。
以下、中央日報より、
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=93982&servcode=A00&sectcode=A00&p_no=&comment_gr=article_93982&pn=8&o=r
 尚、”・・・推進部分と弾道<頭のタイポと思われます>部分が分離する・・・”と同様の記述は、「読売新聞2007年12月18日の記事にあった」と、いくつかのブログ等に記載されておりますが、残念ながら記事本文を読売新聞社HPにて確認する事はできませんでした。
 また、今回の北朝鮮の”飛翔体発射事案”に対しては、記事にある「こんごう」と同様にBMD能力改修を行った「ちょうかい」を、日本海に配備するとの事です。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090328/plc0903280908006-n1.htm
その「ちょうかい」に関してですが、試射には失敗しています。
http://www.asagumo-news.com/news/200811/081127/08112704.html
 不具合が解消されている事を望むとともに、対処にあたられる方々のご健闘を祈念しております。
 最後に、Nelsonさんによる「ソマリア海賊対策における法案の一般法化について」に関連して質問があるのですが、なかなかまとまりません。もう一月になってしまいました。お元気にされてますかね?いつの日か!
<太田>
 情報提供、ありがとうございました。
 いずれにせよ、現在日本と米国が共同開発中の次世代海対空ミサイル・システムが導入されない限り、ノドンの撃破はできそうもない、との私の見解は変わりません。
 下掲典拠の本文参照
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/345c8c44e718241df327374b94934861
 (なお、この本文への最初の投稿者は、テポドンに対しては、更にSM3は無効だと指摘していますね。)
 このあたり、誰か英語の典拠を教えてくれないかなあ。
 ところでMs.Nelson、読んでるかな? 仕事が始まったばかりで無理だろうね。
<深雪@邦人返せ北朝鮮>
–コラム#3191感想–
 わたし的には一年そこそこ。太田さんにとっては数日間。この儚い接点による相互理解の溝を弁解させていただくと、私は吉田ドクトリンと形容されるアメリカによる戦後「永久占領」体制を是認している訳ではなく、いち早いそれからの脱出が日本の国家自立にとって不可欠だと思っているのです。だから、太田さんをも支持するし、ささやかに支援すらしたいと思っているのです。
→そんなことはないとは思いますが、「支援」って迎合することじゃありませんからね。 個人個人の意見は違うところがあって当然なんですから。(太田)
 コラム#3191で『吉田トクトリン礼賛になっちゃいます!』と太田さんに諭されたのですが、礼讃している訳ではなく、敗戦後の日本の歴史がそうであったのではないかという事実確認のつもりで書きました。要は、日本の平和は憲法九条を中心とした概念故に担保された訳ではない、という事を言いたかったのです。この辺も、太田さんと意見を一にするポイントだろうと、まだ短い蜜月ですが、思うのです。
→めまぐるしい現代の一年間は決して短くありませんよ。(これは揶揄しているのではなく、感謝しているのです。)もちろん、有料化前からずっと当コラムの愛読を続けていただいている方も決して少なくありませんが・・。(太田)
 個別メッセージにしても公開される可能性があるので、敢えて<ミクシーの>トピに書かせていただきました。度重なる書き込みで、うざくてスンマソン。
→どういたしまして。大歓迎です。(太田)
 マイミクさんが以下の情報をくれました。ソースというか典拠がないのですが、
 【人工衛星を打ち上げたらそれが軌道に乗って成功したと見なされるために、衛星の発信する信号電波が他の国の複数の受信所で受信され、追跡可能な証拠を残すことが必要なんだそうです。もし今回打ち上げるのが人工衛星なら電波割当の申請が必要となるはずなのに申請しておらず周波数の割り当ても行われていないのだそうです。そうなると今回の「自称人工衛星」はミサイルという結論になりますよね。 】
これに対する根拠が提示できれば、簡単に「人工衛星なんかじゃないじゃんかよー」と、 反論できて痛快ですね。
→深雪さんにしてはめずらしく手抜きしましたね。
 「・・・韓国メディアは衛星からの発信電波で衛星の存在が確認できる可能性を指摘している。 しかし、韓国政府関係者は「北朝鮮が周波数を公表しなければ現実的に確認は困難」と話す。日本の宇宙航空研究開発機構関係者も同じ見方だ。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009032902000096.html
て記事、調べればすぐ見つけられたはずですよ。(太田)
 明日四日午前中にも人工衛星のふりをしたテポドン2が発射される感じの麻生発言でしたね。明日雨なら、運動会よろしく順延でしょうか。雨雲が迫っていますね。
→常識? それともこの記事を読んでおられたのですか?(太田)
 ・・・As North Korea began fueling a long-range rocket to be launched between Apr. 4 and 8, the last remaining variable for the projected launch will be weather, experts say. “Because the launch of a long-distance missile gets easily affected by wind, humidity and cloud, the actual launch will take place any day with the best weather,” said Dr. Cho Gwang-rae at the Korea Aerospace Research Institute.・・・
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200904/200904030027.html
 最高人民会議の開催が4月9日ですから、国威発揚のためには、北朝鮮にしてみれば8日までに華々しく発射したい気持ちは痛いほど理解しますが、私は日本人なので理解はしても賛同などとてもできません。
→この際、テポドン2の諸元をまとめておきましょう。
 ・・・The Congressional Research Service report said some analysts believed that the Taepodong-2 missile could deliver a 1,500- to 2,200-pound payload more than 4,000 miles, within range of the Alaskan coast, as well as all American military targets in Japan and Guam.
 The North Korean rocket would weigh about 80 tons and could place a payload of 100 kilograms, or 220 pounds, into orbit at about 250 miles David Wright, co-director of the Union of Concerned Scientists’ Global Security Program, wrote recently , citing some inconclusive assumptions. When used as a missile, the same rocket could carry a 500-kilogram, or 1,100-pound, payload about 5,600 miles, far enough to reach San Francisco.
But “since it likely would be difficult for North Korea to build a first-generation warhead and heat shield with a mass of 500 kilograms, this wouldn’t represent a true intercontinental nuclear capability,” Mr. Wright wrote. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/04/world/asia/04korea.html?ref=world&pagewanted=print
 一見、ソースによって諸元が食い違っているように見えるけれど、要するに弾頭を軽くすれば遠くに飛ぶ、ということなのでしょう。
 なお、皆さんご承知だと思いますが、「・・・ 官邸対策室は4日午後0時16分、「さきほど、北朝鮮から飛翔(ひしょう)体が発射された模様です」と報道機関や地方自治体に発表した。しかし、同21分、「さきほどの情報は誤りです。飛翔体が発射は確認されておりません」と訂正した。
 北朝鮮がミサイルを発射した場合、米国の早期警戒衛星が熱源を探知、防衛省を通じて首相官邸に連絡が入り、発射5~10分後に報道機関や地方自治体に広報する段取りになっていた。
 しかし、今回の速報のもとになった発射情報について、防衛省は「早期警戒情報ではない」(報道官)とし、千葉県旭市にある航空自衛隊のFPS5レーダー(通称「ガメラレーダー」)が探知した航跡であることを明らかにした。同レーダーは弾道ミサイルを追尾する国産レーダー。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/0404/TKY200904040093.html
 バッカじゃないの。
<後からすみません>
 前回同様、北朝鮮ミサイルの迎撃準備の顛末はとてもわかりやすく、説得力がありました。プロの御見識を勉強させていただきました。
 他方、国内政局の話はやはり時間の無駄でしたね。小沢氏がとんでもない政治家だということでしたら、いずれ、もっと直接的で、疑いのない事実が明らかになるかもしれませんので、そのときに判断したいと思います(なお、「論理」力ですが、多少の不足は記憶力他で補えますので、お気に病まれる必要はないような気がします)。
<太田>
 教師は、生徒が自分で勉強ができるようにさせることが大切であり、手取り足取り教えるのは必ずしも良い教師であるとは言えません。
 しかし、生徒の能力と意欲が余りに低い場合には、教師のできることには限界があります。
 そんな場合、生徒は「時間の無駄」である勉強などではなく、それ以外のことをやった方が身のためでしょう。
 これは、ギリシャの哲学者ソクラテスが、その対話者との関係において心がけていたことでもあります。
 私が、果たして教師やソクラテスであるかどうかはともかくして、あなたにはまことにお気の毒なことでした。
 蛇足ながら、意欲が少しでもあるのでしたら、だめもとで、(私があらゆる機会に申し上げていることですが、)ご自分の言いたいことを典拠で裏付けるようにしてご覧なさい。
 そうすればあなたも、ひょっとして「時間の無駄」でない勉強ができるようになるかもしれませんよ。
<おさ>
 コラム#3014(2009.1.4)「イスラエルのガザ攻撃(続x3)」<に関連して・・。>
 テポドン一発で、こんなに大騒ぎとは、日本のマスコミは、笑えますね。イスラエルのことを<ハマス等によるロケット攻撃が散発的にあっただけなのに大規模な「反撃」を行ったと>あれだけ<批判的に>書いていたのに、いざ自国のことになると、着弾前からこれですからね。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090404/crm0904040849011-n1.htm
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090403-OYT1T00006.htm
<太田>
 こいつは傑作投稿ですね。私が<>内を補わなかった方がよかったかな。
 村上春樹にぜひ所見を聞いてみたいところです。
<SF>
 コラム#3192「タックスヘイヴン物語(その1)」(未公開)、拝見いたしました。
 折りしも、日経ビジネスオンラインでもタックスヘイヴンの記事連載が始まったようですね:
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090401/190741/
 こちらの記事でも、タックスヘイヴンの中心はロンドンと言っていますね。
 次回のコラムでは、英国と米国にも触れるようですので、楽しみです。
<太田>
 記事の紹介です。
 ベートーベンの傑作バイオリン・ソナタ「クロイツェル」は、もともとは、バイオリニストのクロイツェルにではなく、黒人との混血児の(同じくバイオリニストの)ブリッジタワー(Bridgetower)に捧げられてたのだそうです。
http://www.nytimes.com/2009/04/03/books/03dove.html?hpw=&pagewanted=print
 
 にわかにクラシックづいた方は、この曲をオイストラッフの(ちょっと堅苦しい)演奏でお楽しみ下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=ZuXlHbTRhso&feature=related
(これが1以下5まで)
 1930年代に欧米で大人気を博した黒人女性のコントラルト(contralto=メゾソプラノとアルトの間)のクラシック歌手マリアン・アンダーソン(Marian Anderson)の記事も同じニューヨークタイムスに出ていました。
http://www.nytimes.com/2009/04/03/books/03book.html?_r=1&hpw=&pagewanted=print
 黒人差別がひどく、かつ黒人はクラシック音楽とは無縁だと思われていた時代に、ローズベルト夫人が彼女の庇護者になって米国の公的な場所での彼女の初公演が実現したのだそうです。ローズベルト嫌いの私も夫人は褒めざるをえませんね。
 この1939年の彼女の歴史的なリンカーン記念館での公演(米国国家)等、彼女の歌をどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=wQnzb0Jj074
http://www.youtube.com/watch?v=TR95d7yP2Ig&feature=related
 元メジャーリーガーが、次のようなコラムを寄せています。
 ・・・Only 60 years ago, Jackie Robinson broke through a glass ceiling for African-American ballplayers, but since then there’s been a quiet inflow of many other cultures that has also changed the game dramatically. ・・・
 Take a close look at the recent World Baseball Classic and you’ll see how far the sport has come in a short period of time. It is no longer a homogeneous, closed circle of local athletes, but rather an entire world of cultures. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/02/opinion/02glanville-diversity.html?ref=opinion
 自殺した詩人の母親を持ち、自らも何度も自殺しかけた女性作家が、同じく自殺した詩人の母親を持ち、先般自殺したニコラス・ヒューズ(コラム#3174「シルヴィア・プラスをめぐって(その1)」(未公開)に登場するプラスの息子)へのすばらしい弔文を寄せています。
http://www.nytimes.com/2009/04/03/opinion/03sexton.html?ref=opinion&pagewanted=print
 以下、形而下的特集です。いや、形而上的特集かな。
その1:罪深き者よ、汝の名は女なり!
1 セックス
 Erotic movies, often with scenes of nudity, are hugely popular in Korea. Ignited by “Lust, Caution,” which drew 3 million viewers in 2007, the fervor continued throughout last year with “Portrait of a Beauty” attracting 2.5 million and “A Frozen Flower” 4 million viewers. Then came “The Reader,” starring Kate Winslet, and “Elegy,” with Penelope Cruz. About 60 percent of those booking seats for the last two are women, and 20 percent of them are in their 40s or older,・・・
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200904/200904020010.html
2 嗜好品
 A research project led by psychologist James Erskine at the University of Hertfordshire has found that women who were asked to suppress thoughts of chocolate ate 50 percent more chocolate than women in a control condition where they were allowed to freely express their desire for chocolate.
 At a later stage in the research, conducted on 130 participants, chocolate was replaced by cigarettes, producing similar results. Men, however, showed contrary results. ・・・
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200904/200904040002.html
その2:不況の米国ではやるもの
 不況→自宅でできるタダのレクリエーションで我慢する、しかし子供はつくれない→
 ・・・dollar sales of products in the “family planning” category, which include condoms and over-the-counter female contraceptives, were up 10.2% for the first two months of this year.・・・
http://www.time.com/time/business/article/0,8599,1884149,00.html
 そのコストも節約するには? →答えるまでもありますまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
太田述正コラム#3194(2009.4.4)
<タックスヘイヴン物語(その2)>
→非公開