太田述正コラム#3142(2009.3.9)
<麻薬問題の危機的現状(その1)>(2009.4.12公開)
1 始めに
日本ではマリファナがらみの話が時々メディアを賑わせますが、世界的には、アヘンやコカインの問題がどんどん深刻化してきています。
今回は、コカインの問題に焦点をあてて、メキシコを中心としたその現状をスケッチしたいと思います。
2 メキシコの惨状
南米では昔からコカの木が自生しており、これに含まれているコカインが快感、爽快感をもたらすことから、昔から宗教的行事等に用いられてきました。
ところが、コカインが精製されるようになると、それが有害で強い依存症を引きおこすことから、麻薬として流通が規制、禁止されるに至ります。
現在、世界のコカインの60%はコロンビアで生産されており、その大部分は、メキシコ経由で米国に密輸出されています。
コロンビア、メキシコ、及び米国は、いずれもコカインの取り締まりに努めてきたけれど、生産拠点がアンデス山脈からアマゾンの熱帯雨林へと追いやられただけであり、昨年、コロンビアでのコカイン生産は16%も増え、コカインがらみの紛争から逃れるため、27万人もの人々が家を棄てざるをえなかったとされています。
http://www.guardian.co.uk/world/interactive/2009/mar/09/cocaine-latin-america、
http://www.guardian.co.uk/world/audioslideshow/2009/mar/09/cocaine-trail-colombia-bolivia
(どちらも3月9日アクセス。以下同じ。なお、この典拠は以下においても大きな<>内の記述の典拠として用いている。)
「・・・<そもそも、ニクソン大統領は1971年に対麻薬戦争宣言を行ったものだが、それ以来、米国はこの戦争に負け続けてきたと言っても過言ではないところ、このたびオバマ米新政権の>大統領首席補佐官(chief of staff)のラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)は、米墨対麻薬共同作戦(US-Mexican counter-narcotics co-operation)に関し、「彼らは米国から銃器が南下するのを止めようと明確に欲しているし、我々は麻薬が北にやってくるのを止めようと欲している」と語った。
もう一つの米国の憂慮は、<麻薬>同様に有害な商品であるところの暴力が北に流入してくることだ。・・・
オバマは6日、統合参謀本部議長のマイク・ミュレン海軍大将から本件に関する説明を受けた。
議長は、メキシコにおける脅威(challenge)はイラクとアフガニスタンの叛乱分子に対処する<困難さ>と甲乙付けがたいと述べた。
<米本国軍(US Joint Forces Command)は、先日、メキシコは「急速かつ突然に崩壊」する危険性に直面している、と発表した。
メキシコ政府と麻薬諸カルテルとの戦いやカルテル相互の戦いにより、昨年はメキシコで5,700人が亡くなった。今年に入ってからも、既に約1,000人が亡くなっている。>
メキシコ当局は、昨年麻薬の諸カルテルから、20,000の銃器を没収したとしている。
メキシコで銃器を購入することは困難であることから、メキシコ当局は、その大部分は米国から来たものであると結論づけている。
米国アルコール・タバコ・銃器・爆発物局(ATF)は、メキシコで没収された銃器の90%は米国から来たものであると推定している。
米国から来たものであることがはっきりしている2,400については、うち1,800が、合計で銃器店が6,500もあるところの、メキシコと国境を接する4州から来たものだ。・・・
成功する可能性のある麻薬取り締まり戦略を策定することは困難だが、関係係官達は、少なくとも、銃器の密輸を取り締まることの方は何らかの方法があるのではないかと考えている。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/mar/09/mexico-drugs-usa
「・・・<メキシコでは>平均して一日20人もの人々が<麻薬がらみで>亡くなっている。・・・
メキシコの麻薬密輸組織は、毎年250億から400億米ドルの利益をあげている。
「あんた方は麻薬がお嫌いだろうが、ここ・・・の人々を助けてくれている。職を与えてくれるんだ」と若い<メキシコ人の>母親は言った。「<現在のメキシコの>大統領が麻薬に関して<カルテルを撲滅するなどという>ばかげたことを始めてくれたおかげで、カルテルは壊滅したりなりをひそめたりしているが、我々の所に流れてくるカネがなくなってしまった」と。」・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/mar/09/mexico-drug-cartels-violence
メキシコがこのような危機的状況に陥っているとは驚きですね。
(続く)
麻薬問題の危機的現状(その1)
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