太田述正コラム#3209(2009.4.12)
<皆さんとディスカッション(続x454)>
<疑問博士>
太田殿の考え<(コラム#3207)>が8割位理解出来ましたが…
●中国は日本みたいに属国ではなく、好きなように外交でも発言できる立場で、一見 軍事・経済の面で拡大的に見えるが実際は日本より遥かに大きく技術協力してもらわないとダメな国だと思われます。
中国という国の本当の脅威とはGDPや防衛費の拡大よりも日本やアメリカみたいな技術大国になることだと思います。
●日本が軍備をアメリカに頼らず自国で賄っても今の国防費とそんなに変わらないというのは分かりますが、果たして装備品を日本だけで賄ったら今の日本の軍事力より下回ってしまい危険な感じも伺えます。
単純に日本があと航空技術さえあればOKみたいな素人の考えもありますが、実際どうなんでしょう…
<太田>
中共が軍事技術大国になることは避けられないと思います。
旧ソ連は当時の米国に拮抗するほどの軍事技術大国でした。
自由民主主義国でなくても、国が湯水のように資源を注ぎ込むことである程度軍事技術力は備わりますし、スパイが米国等から軍事技術を盗み出すからです。
結局、中共はその非自由民主主義的な国のかたちが米国や日本にとっては脅威なのであって、その脅威は、中共のGDPが大きくなればなるほど、軍事や軍事技術やスパイ活動に割ける資源が増大するという意味で、大きくなる、と言えるでしょう。
日本が米国から「独立」することは、装備を国産にする、ということでは全くありません。引き続き、米国等から装備を購入したり、米国等の装備のライセンス生産をしたりすることを続けることになるでしょう。
<平ちゃん>
太田先生、さっそくのご回答ありがとうございました。
ただ、やはり、疑問の解けないところもありますので、お手数を省みず申し訳ありませんが、以下、2,3、改めて質問をさせて頂ければ幸いです。
≫「古代から関係も深く、また人種的にも民族的にも深い繋がりがある」ドイツとオーストリアは、ナチスドイツによって併合されていた時期を除き、別の国であり続けています・・・≪(コラム#3207。太田)
しかし、ヨーロッパにおいても、例えば、イタリアについては、長い間、小国に分かれていたものが近代になって統一をされ現代も統一が続いているのではないでしょうか?
また、ドイツについても、ビスマルクが統一するまでは小国に分かれていたものが近代になってビスマルクによって統一され今日に至っていると見ることもできるのではないでしょうか?
以上、近代以前に独立しており近代以降に統一された国が、現代においては、独立の方向にあるとは必ずしも言えないのではないでしょうか?
<太田>
最近は、分離独立がはやってますよ。
アフリカではエリトリアがエチオピアから分離独立しましたが、一番盛んなのは(ロシアを含む)欧州です。
冷戦が終焉を迎えると、ソ連が解体して、多数の独立国が生まれましたし、ユーゴスラビアも解体して、スロベニア、クロアチア、マケドニア、ボスニア、コソボ、モンテネグロ、そしてセルビアの7カ国が成立しましたし、チョコスロバキアも解体して、チェコとスロバキアに分かれました。
また、ベルギーはオランダ語圏とフランス語圏にいつ分かれるか分からない状況ですし、英国からスコットランドが離脱する可能性も現実性を帯びてきています。
<平ちゃん>
≫沖縄は、全く別個の国ないし薩摩藩の属国としての長い歴史を持っており、日本に「併合」されてから、まだ1世紀半弱ほどしか経過していません。≪(同上)
沖縄の場合には、日本(大和)側の認識としては、少なくとも形式的には、1400~1500年頃には、当時の室町幕府の幕政下に置かれていたのではないでしょうか?
~1600年のいわゆる薩摩入りもその理由は沖縄が臣下としての義務を果たしていないことが理由だったのではないでしょうか?
また、日本(大和)と沖縄の歴史的な関係については、沖縄の方言は日本語の祖語と奈良時代から鎌倉時代にかけて独立、方言化したと言語学的には見られているようであり、日本(大和)と沖縄の古代からの関係が指摘されているように思われますが。
また、沖縄で大陸的な文化が色濃くなったのは、むしろ、薩摩入り以降との話もあるようですが(薩摩藩が和風を禁止した)、、、ただし、この話は確実なソースで確認していませんので断言はできませんが、、、
以上、「 日本に「併合」されてから、まだ1世紀半弱ほどしか経過していません 」との認識はいかがなものなのでしょうか?単純にはそのように言えないようにも思えるのですが、、、
なお、太田先生はウイキを引用されているようですが、内容を見ますと、琉球は明だけから冊封を受けているように書かれていますが、当時、日本からも冊封を受けていたはずであるし、また、「おもろそうし」が日本式の漢字かな混じり文であったことに触れられてないなど、日本との関係を極力排した記述にも感じられ、やや偏った編集との印象も受けましたが。
<太田>
典拠抜きの議論にはおつきあいしかねます。
<平ちゃん>
≫ここは一つ、沖縄の人にもご意見を聞かせて欲しいところです。≪(同上)
私は沖縄の人間ではありませんが、沖縄の人たちのひとつの回答としては、1972年の沖縄返還の折に、米国は沖縄に対して独立の選択肢も与えていましたが、そのとき、沖縄のひとたちは本土復帰を選んだとの事実があるのではないでしょうか?
穿った見方をすると、現在の沖縄の反日的な雰囲気の理由のひとつには、戦後、日本の分断を画策していた米国の意図があるようにも思えるのですが(例えば、沖縄の米軍治世時代に新聞などのメデイア、あるいは教育機関に反日的な人材を登用するように指導をして、その影響が今日まで続いているとか、、、いわゆるホワイトパージのようなことが沖縄でもあったのではないでしょうか?)
<太田>
憶測でものを言ってはいけません。
典拠にあたりましょう!
<ΑΒΑΒ>(「たった一人の反乱」より)
どんなに相対的な思考をしてるつもりでも、どこかの段階で思考を停止して何らかの価値を絶対化して信仰してるものだよね。
太田さんの場合は、自由民主主義という価値を絶対化してるってことでいいのかな。
<太田>
多重人格者でない限り、誰でも一個の人格として、一定の価値観を持っています。
私は、自分がリベラル右派であると言ったことがありますが、より正しくは、日本(縄文)の顔をしたアングロサクソン的価値観を抱いている者です。
「日本(縄文)の顔をした」とは、人間(じんかん)主義と自然との共生志向を、「アングロサクソン的価値観」とは、自由主義的(=必ずしも民主主義的ではない)価値観を含意しているところです。
<KT>
<コラム#3207の「池田犬作」さんの投稿>文を読んで、犬川隆法とか、狸原啓之というのを思いつきました。
これはアウト? チラシの裏ですみません。
大麻って、アルコールより依存性が低いんですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%BA%BB
<太田>
江原啓之なんて人、全く知りませんでしたが、ウィキでたっぷり紹介されてるんですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E5%8E%9F%E5%95%93%E4%B9%8B
「・・・浜の真砂は 尽きるとも 世に「心」盗人の種は尽きまじ」(字余り)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%9E%E4%B8%96
とでも言うほかありませんな。
ところで、「江」→「狸」ってのは、イマイチでしたねえ。
<コバ>
<コラム#3142>メキシコにおける麻薬戦争<を読みました。>
メキシコは本当に麻薬組織がひどいみたいですね。
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/07/mexico-war-drugs-dead
http://www.0081news.com/archives/3050.html
麻薬組織も生活がかかっているだけに死にもの狂いなのでしょうか。
日本だとテレビニュースで学生の大麻汚染や、住宅街で麻薬取引が行われているのをよく放送していますが、日本が世界に開かれた弥生的時代を迎えるにあたって、どんな麻薬対策が必要なのか…。
<太田>
私が、売春、カジノ解禁、マリファナ非犯罪化に与しているのはご存じのことと思います。
記事の紹介です。
「・・・ 7日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル紙は、「核の幻想主義者」と題した社説で、「オバマ氏の道義的権威ではテヘラン、平壌を抑えきれない」と批判。同紙は例外的に核使用をめぐる「道義的責任」も論じているが、大統領発言を「覆うべくもない広島への謝罪」だとして、核使用を決断したトルーマン大統領(当時)の「功績への侮辱」だと非難した。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090411/plc0904111924008-n1.htm
(4月12日アクセス。以下同じ。)
オバマ頑張れ!
米国では判例上、広義の妾契約は、売春には該当せず有効とされています。
・・・since the 1970s, courts have ruled that as long as the woman is paid for some service besides sex — housecleaning, companionship — the arrangement is not the equivalent of prostitution.) ・・・
その米国で、妾契約仲介サイトであるSeekingArrangement.com
http://seekingarrangement.com/
が大流行なのだそうです。
The site now claims more than 300,000 registered members, far fewer than mainstream dating sites like Match.com, which has 1.5 million paying subscribers, but still a remarkable number. Sugar babies outnumber daddies 10 to 1・・・
ABOUT 30 PERCENT OF ARRANGEMENTS on the site involve the daddy paying an “allowance,” usually a thousand or two a month, though the site claims some reach $10,000. The rest provide the baby with incidental cash, shopping sprees, gifts, travel or the fleeting illusion that theirs is a high-end, easy life. ・・・
会員になるには、女性はタダですが、男性は会費を払わなければなりません。
Babies can join free, while daddies pay $44.95 a month — and an optional $5 to ensure the site’s name doesn’t show up on credit-card statements. For another $1,200 a year, a sugar daddy can become a Diamond Club member, with his income and net worth verified and his profile featured at the top of the home page. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/12/magazine/12sugardaddies-t.html?ref=magazine&pagewanted=print
18世紀の終わりから19世紀の初めにかけて猛威を振るった北アフリカのベルベル人の海賊(コラム#306、1538)の息の根を最終的に止めたのは、その陸上根拠地への攻撃であり、占領であったという記事がニューヨークタイムスに出てました。
http://www.nytimes.com/2009/04/12/weekinreview/12gettleman.html?ref=world&pagewanted=print
「民主党の小沢一郎代表は十日、昨年の米大統領選で共和党候補だったマケイン上院議員と党本部で会談した。
小沢氏は、オバマ米大統領がアフガニスタン増派の方針を示したことについて「軍事力で政府を倒すことはできても、民を治めることはできない」と反対を表明した。
政府が米国との協定締結承認案件を国会に提出している在沖縄米海兵隊グアム移転に関しては「スムーズに対応しなければいけない」と指摘した。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009041102000051.html
(4月11日アクセス。以下同じ。)
なんだ、吉田ドクトリンへの完全復帰かあー。
株や商品取引やFXをやっている人は、以下を熟読しよう!
・・・If you give the average person a 90% chance of winning a little money or a 10% chance of winning a lot, he will most likely take the option that offers him at least a little bit of cash. But offer him a 90% chance of losing a little money or a 10% chance of losing a lot, and he will opt for the latter. ・・・
The psychologists found that exposure to stress led participants to choose riskier decisions when trying to decide between taking a minor loss or a major one. The reverse proved true with gains.
One potential explanation for the effect might be that the human brain has two ways of looking at the world, an analytical one and an intuitive one. The analytical one is more easily disrupted by outside stimuli, such as stress. The intuitive one cuts to the bottom line when times are tough. ・・・
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=13447720
中共じゃ、男尊女卑的伝統と一人っ子政策の影響、及び胎児性別判断が可能となったことにより、男女比が大きく崩れつつあります。
・・・A bias in favor of male offspring has left China with 32 million more boys under the age of 20 than girls, creating “an imminent generation of excess men,” ・・・
In 2005 , they found, births of boys in China exceeded births of girls by more than 1.1 million. There were 120 boys born for every 100 girls. ・・・
Among children born second, there were 143 boys for 100 girls・・・
The trend toward more male than female children intensified steadily after 1986, they said, as ultrasound tests and abortion became more available.・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/11/world/asia/11china.html?ref=world&pagewanted=print
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太田述正コラム#3210(2009.4.12)
<知力とは何か>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x454)
- 公開日:
太田先生
さっそくのご回答ありがとうございました。
>典拠抜きの議論にはおつきあいしかねます。
う~~ん
太田先生が<コラム#3138>「琉球新報記者による取材」において沖縄は独立を考えるべきであるとの主張をなさっていたので、太田先生が何故沖縄独立の歴史的な妥当性があるとの結論に至ったのかをご説明をお願いしたいと思い、できれば、そのような結論に至った根拠を示した参考資料をお教え貰おうと思ったのが、そもそも、<コラム#3138>「琉球新報記者による取材」へのコメントの趣旨であったのですが、、、、
それは、ともかく、私が先に書いたことについては、その当否はともかく、沖縄の話をする上ではよく知られている学説であると思い敢えて典拠はつけませんでしたが、以下、典拠を付けさせて頂きます。
>沖縄の場合には、日本(大和)側の認識としては、少なくとも形式的には、1400~1500年頃には、当時の室町幕府の幕政下に置かれていたのではないでしょうか?
外山守善『沖縄の歴史と文化』(2001年23版 中公新書799 )p240
1404年 冊封使初めて渡来
>~1600年のいわゆる薩摩入りもその理由は沖縄が臣下としての義務を果たしていないことが理由だったのではないでしょうか?
同上 p78
(つづく)
(つづき)
>また、日本(大和)と沖縄の歴史的な関係については、沖縄の方言は日本語の祖語と奈良時代から鎌倉時代にかけて独立、方言化したと言語学的には見られているようであり、
同上 p95
なお、沖縄の言葉と現代日本語との関係については以下のサイトが参考にできるかと思われます。
琉球語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%89%E7%90%83%E8%AA%9E
>日本(大和)と沖縄の古代からの関係が指摘されているように思われますが。
同上 pp20-29
>私は沖縄の人間ではありませんが、沖縄の人たちのひとつの回答としては、1972年の沖縄返還の折に、米国は沖縄に対して独立の選択肢も与えていましたが、そのとき、沖縄のひとたちは本土復帰を選んだとの事実があるのではないでしょうか?
同上 p90
、、、、私としては、沖縄の人たちが独立を望むというのであればその方向で話を進めていくべきであるとの考えです。しかし、間違った知識、認識に基づいてそのような結論に至るのであれば沖縄の人にとっても日本の人にとっても不幸なことではないかと思い、今回、太田先生がどのような知識、認識に基づいてそのような結論に達したのかをお聞きしようとしたのが<コラム#3138>「琉球新報記者による取材」へのコメントの趣旨でした。
追加です。
>また、沖縄で大陸的な文化が色濃くなったのは、むしろ、薩摩入り以降との話もあるようですが(薩摩藩が和風を禁止した)、、、ただし、この話は確実なソースで確認していませんので断言はできませんが、、、
同上 p242
1617年 日本化を禁ずる令達をだす。