太田述正コラム#3217(2009.4.16)
<皆さんとディスカッション(続x458)>
<globalyst>
≫前原誠司氏は4月12日朝のフジテレビのコメントで、「北朝鮮を攻撃できる抑止力が必要だ。」と明快でした。≪(コラム#3215。Kiken Yochi)
 私も見ました。相手は石原伸晃氏でしたが、「日本が相手国を攻撃できる武器を持てば、日米関係は大きく変質する。アジアの国々の反発も大きい」なんて言ってましたね。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp3-20090412-482023.html
 太田氏の「吉田ドクトリン墨守者」を目の当たりにして笑ってしまいました(同じ日に石原慎太郎氏は、陸上自衛隊練馬駐屯地の創立58周年記念行事で「私たちは国連やアメリカを気にしなくとも自分自身でこの国を十分守れる」云々と言ってたし。)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090412/plc0904121741003-n1.htm
<太田>
 「・・・石原慎太郎都知事は・・・、北朝鮮のミサイル問題などに関連し、国連が「何の役にも立たない」と指摘。日本の高度な技術力が米国の戦争を支えているとした上で、「私たちは国連やアメリカを気にしなくとも自分自身でこの国を十分守れる」と持論を展開し<た>・・・」ってわけですか。
 私なら、「「国連が「何の役にも立たない」と指摘」まではよしとして、その後は、「日本の高度な技術力、及び日本の経済力が(思いやり経費の支出、アメリカの装備の購入やODAの肩代わり支出等を通じて)米国の戦争を支えている部分がある。しかし、憲法解釈上の制約と自衛隊の攻撃力の弱体さのため、核を保有していないことともあいまって、日本はその安全保障を宗主国米国に全面的に依存しているという情けない状況にある」と言うところです。
 そう、おっしゃるとおり、石原親子は共に吉田ドクトリン墨守者であり、退嬰的保守主義者なのです。
 石原慎太郎を都知事に選び続けてきた東京都民は、森田健作を県知事に選んだ千葉県民と、その愚民度において、大した違いはありません。
<globalyst>
≫民主党には党としての安全保障政策がない・・少なくとも吉田ドクトリン墨守政党とは言えない・・からこそ、私は民主党を選んだんですよ。≪(コラム#3215。太田)
 少し理解しました。
<太田>
 私は、候補者も、政党も、安全保障政策で判断することにしています。
 そうするのはグローバルスタンダードでもあります。
 面白いことに、安全保障を放擲したはずの日本でも、このような判断基準は有効である、というのが経験を通じて私がかなり昔に到達した結論です。
<後からすみません>
 コラム#3213(2009.4.14)ですが、
「小沢が執念を燃やしているのは、(それが「風車」であるにもかかわらず、)ただただ(検察を含む)官僚達を打倒することだけであり、そのためであれば、彼は、説明することのできないカネ集めでも何でもやり、かつついでに自分の懐も潤す、ということなのに、・・・」
御説に従うと、上の御意見も、「典拠が示されていなければ、そもそも検証することができないので、個人の妄想と同義」ということになりますか(私は御説には100%の賛成はいたしませんが)。
<太田>
 「ディスカッション」シリーズ上では、典拠をつけるもつけないも管理者たる私の自由だし、典拠をつけなかった場合でも、私の過去コラムが典拠になっている場合が多い、と繰り返し申し上げてきているところです。
 それはそれとして、膝を抱いてひきこもりされてるのではないかと心配していたあなた、ご健在のようで一安心です。
<後からすみません>
  コラム#2840「ロアルド・ダールの半生(その2)」<を読みました。>
 「英国安全保障調整機関(には)・・・英国初の本格的な広告会社をつくることになるデーヴィッド・オグリヴィー(David Ogilvy)らがいて」というお話は興味深いですね。
 日本の電通もそうかもしれませんが(これは典拠が必要と思いますが、時間がないので省略)、プロパガンダ技術も軍事技術の民間転用の一つなんでしょうね。
<太田>
 他方、投稿者の側は、典拠を省略するなどという贅沢は許されません!
 電通の始まりは、通信社だった
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E6%B0%B8%E6%98%9F%E9%83%8E
ので、諜報や軍事技術とは無縁ではなかったと言えそうだ、なんてくらいなら簡単に調べられたはずです。
 
<びり江>
 <ダールが>フレミングの同僚だったとは知りませんでした。<フレミングの小説>「007は二度死ぬ」の<映画>脚本を<ダールが>書いたのもこの縁からかな?
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD13831/
 大勢の女性と寝たという色男だったそうですが、そういえばオスカー女優パトリシア・ニールがダールと結婚したのは亡くなった愛人ゲイリー・クーパーに似ていたからだなんて話を聞いたことがありました。
 2ch情報なんで典拠はありませんが。
<太田>
 私が<>で付け加えたくらいの労を惜しまず、投稿をしましょう。
 また、何事によらず、典拠を探す努力をしましょう。 
<深雪@邦人返せ北朝鮮>
 コラム#3214(2009.4.14)「風前の灯火のタイ王制」(未公開)を読んで。
 タイの月曜日は、街に黄色のポロシャツを着た人で溢れますね。それは年に一度ではなく、毎週です。老若男女、国民の七割方が、この黄色の服を月曜は着ているという感じでしょうか。
 また毎日、朝・夕二度、街じゅうのいたるところで人がフリーズしますよね。非常に不思議な光景ですが、スピーカーからタイ国歌が流れている。毎日これが繰り返されている。
 王様のポスターに落書きをした外国人は、有無を言わさず投獄です。
2007年3月29日19時33分配信 読売新聞【バンコク=田原徳容】
 タイ北部チェンマイの裁判所は29日、プミポン国王の肖像画に落書きをしたとして不敬罪などに問われたスイス人男性(57)に対し、禁固10年の判決を言い渡した。
 これほど王制が深く根を下ろし親しまれているタイ王国に、民主化の波がついに訪れたのかと、ちょっとした驚きを感じます。
<太田>
 私のタイとの関わりは、カイロでの小学生時代の親友が、駐エジプト・タイ大使の次男であり、当時、しょっちゅう大使館に遊びに行っていたこと、1959年に、エジプトから日本に帰国する途中、バンコック観光をしたこと、防衛庁の技官でスタンフォード大学で一緒であったF君が、タイの貴族の娘と米国の東海岸の大学で恋に落ちて結婚し、タイで大学教授になり、奥さんは上院議員になり、長きにわたって彼と年賀状を交わした、ということくらいしかありません。
 深雪さんの方が私よりずっとタイに土地勘がありそうですね。
 なお、どうして「タイの月曜日は、街に黄色のポロシャツを着た人で溢れ」るのかを説明すればより親切でしたね。
 ・・・For years, millions of Thais wore yellow every Monday in a voluntary show of support for the King, who was born on the first day of the week and is represented by the golden hue.・・・
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1891171,00.html
(4月15日アクセス)
<深雪@邦人返せ北朝鮮>
≫タイの現在の首相は英国で生まれ、育った人間ですし、反体制派も亡命するのは英国、というわけですから、日本のタイにおける存在感の薄さは絶望的なものがありますね。 ≪(コラム#3214。太田)
 タイ王国に、個人的な寄付という形でも力を注ぎ、タイに影響力を見出したい華僑の存在は否定できず、それらの華僑は押し並べてロンドン好みのようです。
 <コラム>冒頭でご紹介のアピシット・ウェーチャチーワ氏は、言わばその筆頭ですか。<過去2度にわたって首相を務め、アピシットの民主党の最高顧問である>チュワン・リークパイ氏も華僑の出ですし、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%91%E3%82%A4
華僑は既に始めからの、タイの国の正統のメンバーだと以下の論文は言っているところを見ても、日本はむしろ善戦しているのかもしれません。
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/13047/1/AjiaTaiheiyo_04_00_003_Murashima.pdf
 バーンパイン離宮には、ひとつだけ異彩を放つ中国様式の巨大建築物がありますが、あれは、一華僑からのプレゼントの建物だそうです。
http://100min.com/blog/archives/travel/photo/20071222/12.jpg
 これら華僑がイギリスで学び、タイ王国の中枢に入りこんだのですから、華僑のタイ王国進出に比べたら日本など関与する余地もありません。しかしこんな華僑優位の中、企業としての日本人はよくやっていると思います。現状、バンコクを走る車の九割はトヨタ車です。イギリス車のランドローバーやジャガー、ましてや中国製自動車などとんと見かけません。
 ちなみにスワンナプームを作ったのも日本企業ですし(とんでもない安普請の空港ですが、役人が建設資金をだいぶ抜いたせいでその様な事態になったと現地の事情通は語っていました。確かに大きいだけが取り柄の、安普請の空港ではありました。)、バーンパイン離宮の迎賓館を請け負ったのも大林組です。おまけに、その迎賓館にいちばん最初に宿泊されたのは、新婚旅行中の東宮ご夫妻。
http://hommali.up.seesaa.net/image/A5D0A5F3A5D1A5A4A5F33.jpg
 王政がこののち健在であれば、タイ王国と日本の親しい関係は担保される事でしょうが、王制の危機となれば日本も別ルートの窓口が必然的に求められますね。優秀な日本の企業戦士は、いち早くそれに気が付いていると思われます(私の想像ですが)。王制が形骸化されれば、王制支持派の利権構造は根こそぎ変わりますから、日本の影は確かに薄くなるかもですね。
 (ちなみにこれらは、私が現地で見聞きした一次情報で、典拠は無しです。)
<太田>
 早大の相場英治教授の切れ味の良い論文をご紹介いただき、まことにありがとうございました。
 最近のタイの政治情勢を見ていてもやもやしていた部分が、おかげさまですっかりクリアになりました。
 「・・・今日のタイ社会においては,ビジネス界はもとより,政界,官界,言論界,学界,市民運動などの主要部分は,血統的には中国系の血が濃厚なタイ人によって担われている・・・
 王家においても中国系の血は殆ど歴代入っているのである。・・・
 タイ支配層は「純血」に価値を置かず,本音では土着民(彼らも純血だとは言えないが)を愚民祝し,自らの混血性に優越感を覚えている。・・・
 ・・・<ただし、>華僑の子孫たちはタイ人社会からは分離された別個の集団,すなわち華人として存在しているのではなく,十全なタイ人としてタイ人社会の主要部を構成していることである。つまり,彼らは「タイであること」の諸条件を全て充たしている・・・
 ・・・東北タイ・・・,東海岸・・・,あるいは南タイなどを中心に・・・「村外のよそ者に利益を奪われるな」という考えが, 1990年代になってタイ各地の農村で急速に拡大している。これが村民自身による農村開発運動の出発点である。 ・・・これらの農村開発運動の発想は, 1932年革命時に・・・華僑の経済支配。収奪から脱する方法として提案<され>た協同組合の考えに近いものがあるが, 90年代には「村外のよそ者」とは言われても, 30-40年代のように華僑、華人と名指しされることはない。・・・」
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/13047/1/AjiaTaiheiyo_04_00_003_Murashima.pdf
 要するに、タクシン派=赤シャツ隊は、タクシン・チナワットら指導層こそ華僑
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%8A%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%88
だが、構成員の大部分はタイ土着民であるのに対し、アピシットを現首相に押し上げた反タクシン派=黄シャツ隊は、もっぱら華僑によって構成されており、王室、軍、官僚機構、財界、言論界、学界らタイ支配層たる華僑勢力がその後ろ盾になっている、ということです。
 これで、どうして、タクシンが王制の熱烈な擁護者(典拠省略)なのか、また、パタヤでは、現地の住民の支持の下、警察まで赤シャツ隊となれ合ってASEANサミットを流会させるという大「成果」をあげることができた
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/KD15Ae01.html
(4月15日アクセス)
のに、首都バンコックでは、住民から浮き上がってしまい、住民とのいざこざで赤シャツ隊員2名が死亡した上、赤シャツ隊は治安部隊に惨めな降伏を余儀なくされた
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/KD15Ae04.html
(同上)
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2009/04/16/2003441185
(4月16日アクセス)のか、腑に落ちました。
 バンコックの住民は、華僑勢力たる支配層に属するか、この支配層にぶらさがっている人々が多いってことなんですね。
 このような背景があるとすると、現在のタイにおける両派の対立状況は、まことにもって深刻であって、そう遠くない将来に王制廃止にまで行くつく可能性がある、と改めて思わざるをえません。
 なお、
 ・・・A poll by Abac University, the most respected pollster in Thailand, found that 55 percent of 2,178 respondents in 18 provinces from throughout the country wanted the red shirts to end their protest and let Abhisit continue to run the country. Only 11 percent wanted Abhisit to resign.・・・
 (台北タイムス上掲)
ということもあり、タイの状況は、当面、小康状態に移行しそうです。
 蛇足ながら、完全にタイに(少なくとも支配層には)同化している華僑とタイへの腰掛け派遣組であるところの日本人を比較するのは意味がないでしょう。
 それはともかく、深雪さん、後一歩でコラム書けますね。しかも、様々なテーマで・・。
 フレーフレー、深雪さん!
<おーつか>
 Guardianに”rocket launch”その後の記事が出てますね。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/apr/14/north-korea-boycott-nuclear-talks
 ”The US and others believe that the failed launch was a covert military exercise as the rocket used– the Taepodong-2 — is equally capable of carrying warheads.”
とは、
「米国人とその他属国は、失敗したアレをひみつミサイル実験と信じているようだ」
というような皮肉だと読んでよろしいでしょうか。
 国連非難を引きだした結果、北朝鮮の態度は硬化し、オバマ政権は困ってるという
ような論調と読みました。
 読者コメントだと
「で、イスラエルの核は?」
みたいな意見が支持されているのも面白い。
<太田>
 全く皮肉は入ってないと思いますよ。
 この記事で面白いのは、
 ・・・It was a weaker response than the UN resolution sought by Japan and the US. The US ambassador Susan Rice, backed by Russia, insisted the statement was legally binding — just like a resolution — but other diplomats and officials disagreed.・・・
って箇所ですよ。
 「・・・どれが本心なのか、ロシア人の考えを判断することが難しくなった。 最近ロシアが見せている外交がその典型だ。・・・」
という、朝鮮日報の記事を思い出しました。
http://www.chosunonline.com/news/20090414000048
http://www.chosunonline.com/news/20090414000049
(4月15日アクセス)
 記事の紹介です。
 田原・田勢対談、1回目は面白くなかったけれど、2回目は一読の価値あり。
 検察からの取材の実態がよく分かります。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090414/146367/?ml
(4月15日アクセス)
 タックスヘイヴンの話の3回目も面白かったです。
 「・・・ 「タックスヘイブンというと、一般の人は、どうしてもマフィアのマネーロンダリングが行われるところであるという印象を持ちがちだが、そうした使われ方は全体の2~3%。ほとんどが、多国籍企業と超裕福な人の脱税の目的で使われている」 ・・・
 これに一役噛んでいるのが、世界中にネットワークを持つ大手の監査法人だ。表向きは顧客の資産管理だが、実際は、タックスヘイブンを使った租税逃れを指南していた・・・」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090413/191781/?top
 ・・・Rebuilding the cooling tower だけでも would take at least six months, ・・・ it would take 6 to 12 months to restart all facilities at the Yongbyon nuclear plant, and its capacity to produce plutonium is limited to about one bomb’s worth of material a year・・・and this means that negotiations with North Korea can stretch out to the next six months・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/15/AR2009041503257_pf.html
 農業に目を向ける日本の若者が増えているという記事が出ていました。
http://www.nytimes.com/2009/04/16/business/global/16farmer.html?ref=world&pagewanted=print
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太田述正コラム#3218(2009.4.16)
<キリスト教・合理論哲学・全体主義(続)(その3)>
→非公開