太田述正コラム#3257(2009.5.6)
<皆さんとディスカッション(続x478)>
<植田信>(http://8706.teacup.com/uedam/bbs)
–「アメリカ丸投げ」構造の外務省的帰結–
こんにちは、皆さん、植田です。
太田述正氏の『防衛庁再生宣言』に印象的なワン・フレーズがあります。
「国の自立を図るためには外務省も改革しなければならないが、外務省は、防衛庁がしっかりすれば、なんとかなるのではないかと思われる。なんと言っても必要なのは、国の自立の最重要基盤である防衛庁・自衛隊の建て直しであり、そのための防衛庁中央組織の大改革である。」P.62
これは私もまったくその通りだと思います。
元外交官の岡崎久彦氏の『吉田茂とその時代』を貫くトーン、というか、思考方法の基盤がどこにあるか、と考えると、いや、考えたくもない気がするのですが、アメリカべったりの思考です。
たとえば、「吉田ドクトリン」の存在を否定して言うに、「吉田茂はマッカーサーの方針に忠実だっただけ」と。
で、この話題は別の機会にして、きょうは、本日の日経新聞の記事からです。
題して、国防を他国に丸投げにした国の外務省はどうなるか、です。
いや、記事の題名は、「複眼思考への試練」。
内容は最近の日本外務省で起きたこと。
「4月初め、東京・霞が関の外務省で2人の幹部職員が丸刈りで出勤し、話題になった。軍縮不拡散・科学部長の佐野利男(56)と官房総括審議官の松富重夫(53)。3月下旬の国際原子力機関(IAEA)の事務局長選で在ウィーン国際機関日本代表部大使の天野之弥(61)の当選を勝ち取れず、責任を取った。
原子力の平和利用を盾に〈反米〉に傾く途上国の票が対立候補に流れたとの見方が多い。日本政府は天野を再擁立したものの、途上国の多くは日本を〈米国寄り〉とみる。今も日本の国家戦略の基軸である日米同盟。それが途上国の反発を生む冷徹な国際政治の現実がここにある。」日経新聞2009.5.5
それを「冷徹な」と形容すべきことなのか、と私には不思議です。
当たり前のことだろうに、と。
日米安保がある以上、戦後の日本が一貫してアメリカ依存していることは、誰にも明白です。
それを、「冷徹な」なんて形容するところに、戦後日本人のノーテンキさが表出されています。
それは別にして、日本が国防をアメリカに丸投げにしていることの一つの帰結が、そういうところに出てきます。
途上国は、日本が自国をどういう立場であるかを表明したところで、結局は、「アメリカ寄り」だと判断してしまう、と。
<太田>
ご明察!
外務官僚に、ノンキャリの佐藤優などを含め、属国たる日本に生を受けたことの悲哀について語る者がほとんど見受けられないのは、世界の7不思議の一つではないでしょうか。
海外勤務中、現地の日本人達に傅かれ、かつ贅沢三昧の生活をしているために、回復不可能なほどスポイルされてしまうということなのでしょう。
<amida>
実際チャンネル桜以外、まともな言論を吐く場がこの日本に存在するのか、疑問です。
なにやかやといちゃもんつけて、この太田氏のブログをも利用してせっせと自分たちの既定の方針に導こうと画策している時代遅れの隠れマルクス主義者。
太田先生がそんな薄っぺらい議論に同調するほど馬鹿でないことがわからんのかね。
<太田>
若干誤解があるようですね。
「やいち」さんの前回投稿(コラム#3255)が念頭におありのようですが、第一に、「やいち」さんのこれまでの投稿(例えば#2976)をご覧になれば、彼が、(その意味が一義的に明確とは言えませんが、)「隠れマルクス主義者」ないし「隠れ左翼」ではないことがお分かりいただけるはずですし、第二に、コラム#2976でも申し上げたように、現在の日本では「左翼」、「右翼」というレッテル貼りがほとんど意味を失っているからです。
その私がレッテルを貼っちゃいけないわけですが、私は「右(翼)」の人々より「左(翼)」の人々と議論する方が好きだとも、これまで累次申し上げてきたところです。
右の人々の多くは、事実を直視することを怠ったり事実をねじ曲げたりする傾向があるため、議論が最初から噛み合わない(にもかかわらず結論だけ私と一致する)からであるのに対し、左の人々の多くとは議論が噛み合う・・結論だけが私と一致しない・・からです。
<唯我独尊>
コラム#3170<を読みました。>
≫戦前まで郭文化が咲き誇っていたこの日本で、全くと言ってよいほど売春の非犯罪化の是非についての議論が起こっていないのは理解に苦しむところです。≪(コラム#3170。太田)
さまざまな公的分野で日本を支配している人たちの不文律は、
1.臭いものに蓋をする
2.言わぬが花
3.正直者が馬鹿を見る
これらの諺に象徴されていると思います。
実に計算高い人たちなのでしょうが、これを受け入れている多くの国民の性格は極めて温厚で、議論などはもってのほか、ということなのでしょう。
氷山の一角と推測される援助交際、未成年者との淫行などが報道されても、眉をひそめる程度で、明日には忘れ去られていくのでしょうが、
国民の多くに不都合が生じるような事態が生じない限りは、野次馬気分で傍観するに違いありません。
ご婦人層に絶大な影響力を持つメディアも、自分たちの首を絞めるようなことに触れたくないでしょう。
現在のメディアは真実を調査して知らせることよりも、自分たちの存続と成長が最重要課題なのですから。
<太田>
できるだけ、典拠を付けるようにご努力いただけるとありがたいのですが・・。
ところで、
・・・The film, Behind the Green Door, starring Marilyn Chambers ・・・was the first hard core pornographic film ever put on general release in the United States and was especially shocking to 1972 audiences as it depicted a white woman having sex with a black man.・・・
・・・the notoriety which accompanied the film made it almost impossible for her to break into mainstream cinema・・・
In 2004 she ran for US vice president as a member of the libertarian Personal Choice Party, gaining just over 900 votes.
http://www.newyorker.com/reporting/2009/05/11/090511fa_fact_gladwell?printable=true
を読んで、1980年代の初めに、ニューヨークに出張した際だったかに、この古典的ハードコア映画のリバイバル上映を見たことを思い出しました。
主演女優のチェンバースは、その後苦難の人生を歩んだようですね。
(先日56歳で死去。
http://blogs.dion.ne.jp/heavy/archives/cat_233604-1.html)
彼女に比べると、飯島愛
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%B3%B6%E6%84%9B
は、相対的には短かったとはいえ、いかに恵まれた人生を送ったことでしょうか。
愛ちゃんが参院比例区に立候補していたとして、900票しかとれないなんて考えられませんからね。
日本人は、カネで性を売ることに関しては、依然まことに大らかであることが分かります。
<ΑγγΑ>(「たった一人の反乱」より)
≫「権力は腐敗する、絶対権力は、絶対的に腐敗する」という格言(名セリフ)がありますが、自国を自分で防衛しない国民も腐敗する、と追加できるでしょう。≪(コラム#3255。植田信)
フィンランド症候群みたいだな。
あれも医者に自分の健康管理をまかせたから、健康管理をされていない人たちより早死にすることになったんだ。
国も人と同じかもしれん。
日本も早く米国から自立することがなにより大事だろう。
<ΑγΑγ>(同上)
≫南京大虐殺やその他の物議を醸す問題についてはピリオド打たれないような気がする。≪(コラム#3255。γΑγΑ)
長谷川さん(千葉大のポスドク)曰く、日本側史料だけで虐殺が証明できてしまったので、日本軍による戦争犯罪があったことは学問的には決着済み、だそうだ。
http://d.hatena.ne.jp/Jodorowsky/20070331
≫残された問題は、基本的に、虐殺数だけだ≪(コラム#3251。太田)
ってことなんでしょう。
しかし、世の中には受け入れられない人、受け入れたくない人がいるわけで、本当に南京大虐殺を否定したい人こそは、藤岡信勝氏、東中野修道氏らに国内外問わず学術論文を発表して南京大虐殺という間違った歴史を学問的に正してよ、と言わないといかんと思うけどね。
もっとも、それができないから政治運動をするんだろうけど。
≫ 吉田ドクトリンは、戦後日本の政治や官僚機構を堕落させただけではなく、 近現代を扱う歴史学やジャーナリズムもまた堕落させた、というのが私の見解です。≪(同上)
こんな難しい話ではなくて、査読の無いオピニオン雑誌への寄稿や著書が業績になってしまう日本の大学のシステムの問題なんだと思うけどな。
http://sociology.jugem.jp/?eid=277
<ΑΑγγ>(同上)
≫私のコラムをお読みになっておれば、米英では、優秀な歴史家やジャーナリストが輩出していることを痛感されるはずです。≪(コラム#3255。太田)
もちろん。
疑問なのは、なぜアメリカやイギリスは優秀な歴史家やジャーナリストを輩出しているのかということ。
>こんな難しい話ではなくて、査読の無いオピニオン雑誌への寄稿や著書が 業績になってしまう日本の大学のシステムの問題なんだと思うけどな。
ではなぜそのシステムができてしまったのか?を考えるといいよ
<ΔΔΑΑ>(同上)
田島陽子「みんな男が悪いんだよ!」
太田述正「みんな吉田ドクトリンが悪いんだよ!」
<ΔΑΔΑ>(同上)
>日本も早く米国から自立することがなにより大事だろう
そして中国の庇護国になるんですね?
さすがは売国ミンス党を支持される方々の意見は一味違う。
<ΑΔΔΑ>(同上)
同じ乱暴者なら話が通じるアメリカのがマシ。
<太田>
落ちがついたところで、お後がよろしいようで。
蛇足ながら、「フィンランド症候群」の典拠つけてほしかったな。
「・・・健康管理されていないグループのほうが、心臓血管系の病気、高血圧、ガン、各種の死亡、自殺、いずれについても健康を管理されていたグループより数が少なかったのです。健康に気を使っていないほうが、病気もしないし、死亡率も低かったのです。
それは、おそらく「心の問題」が身体に影響をおよぼした結果なのでしょう。タバコを吸いたいのに規制され、アルコールや砂糖も欲しいのに制限されることによって、精神的には大きなストレスが加わります。心が健康でいられなくなったわけで、それが身体に影響し、病気になったり死を招いたりしたのです。つまり、歳をとってからのガチガチの健康管理は、かえって健康を損ねるのです。・・・」
http://www.yugakusha.net/study/wada_50yearsold/200403.html
<コバ>
米国ではオバマのおかげで規制される前に買っちゃおうと銃取引が活気づいているようです。
Federal Assault Weapons Banにクリントンが署名したのにブッシュがそれを無効にしてしまったようですが、オバマ政権で銃規制が根付いていくことに期待したいです。
http://www.faz.net/s/RubDDBDABB9457A437BAA85A49C26FB23A0/Doc~E89D87B33491E44A880511DB86A54B375~ATpl~Ecommon~Scontent.html
American Way of lifeを変えつつあるオバマが、核兵器廃絶に前向きな態度を取っているのに、わざわざその意向に反する発言をする日本の指揮官のお歴々は頼もしい。
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20090505/04.shtml
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/160110.html
そんなに核兵器が好きなら北朝鮮に移り住んでもらいたいです。
しかしまず最初に集団的自衛権、多国間同盟の議論を喚起すべきでしょ!
<太田>
よく勉強されてますね。脱帽です。
連休中にTVで鑑た番組の感想をまとめてご披露しておきます。
2日の夜は映画「レッドクリフ 第一部」を鑑ました。
第一部だけなのに、長いの何のって。
要するにアクション映画にネオ儒教をまぶしたって感じですね。
そうしたら本日、「<諸葛孔明、孫権、劉備、曹操>各英雄の子孫が浙江省に集中<して住んでいる。>
蜀の滅亡後、劉姓は後の王朝にとって敵となったため、劉の字の一部を取り『金』姓を名乗った・・・」という記事が出ていました。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009050690070855.html
そうなんですかね。
2002年から2003年にかけて北京でお世話になった中共政府関係者の名前は劉さんでしたがね。
4日の昼には、久しぶりに映画「シャレード」を鑑ました。
筋をほとんど忘れていたので、結構おもしろかったです。
それにしてもパリ、昔(この映画は1963年公開)から全くと言ってよいほど変わっていませんね。
サルコジがパリをリニューアルしようとしているらしいけれど、果たしてうまくいきますか。
主演オードリー・ヘップバーンということで、彼女が主演したもう一つの映画「ティファニーで朝食を」を思い出しました。どちらもテーマミュージックでも有名ですが・・。
大学の教養課程の英語の授業で、「テイファニーで朝食を」の原作(トルーマン・カポーティー)が教材として使われたのがきっかけで、映画を見た記憶があります。
5日の昼にも、その前日同様、昼食をとりながら、TVをつけてそのまま見入ってしまいました。
5日に鑑たのは、NHK-Hの「レイモンド・チャンドラー」です。
このハードボイルド作家の生涯を、作品の紹介を織り交ぜながら紹介した番組です。
チャンドラー(Raymond Chandler)は、その最後の作品中で、おなじみの探偵、フィリップマーロウに、
If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive.
If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.
「強くなければ生きてはいけない、
優しくなければ 生きていく資格がない」
という名ゼリフを吐かしています。
ご存じの方も多いでしょう。
私は、米国のカリフォルニアで2年間の留学生生活を送ったので、番組の中でロスやロス近郊の海岸風景が出てくるたびに、当時のことを思い出しました。
記事の紹介です。
端午の節句の本日、日本の主要メディアが取り上げて欲しい話題が朝鮮日報に出ていました。
フランスは、少子化対策に実にGDPの5%弱を投じているんですね。
・・・France spends 88.3 billion euros (around W150 trillion) or approximately 4.7 percent of its GDP to support its citizens in raising their children. ・・・
In France, taking a year’s maternity leave is normal, and a woman is expected to exercise her right to take two additional years to raise the child.・・・
In France, women get a year’s maternity leave on full pay・・・
France are required to take two weeks off within the first four months after the birth of their child to help their spouse.
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2009/05/06/2009050600279.html
・・・In 1993, France’s fertility rate hit a historic low of 1.66 children per woman aged between 15 and 49. But thanks to a series of policies, it now has the highest fertility rate in Europe with 1.98 as of 2007. ・・・
For sterile couples, the government provides 100 percent of the cost resulting from up to six times of in-vitro fertilization. Households with a child under three that earn less than 48,000 euro per year are given a subsidy of 172 euro a month. Families with two or more children are given a monthly stipend between 120 and 430 euro until the children are 20 years old. ・・・
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2009/02/06/2009020661016.html
今回のインフルエンザでメキシコだけで死者が沢山出たのは、やはり貧困のせいだったようです。
・・・ flu victims have delayed checking into hospitals until their condition has deteriorated so much they cannot be saved. While medicines are plentiful and cheap at Mexican pharmacies, swine flu antiviral medication was often not available or prohibitively expensive. ・・・
・・・Delaying medical care is a characteristic of poverty. For people living close to the edge, taking off a day to visit a doctor or staying home sick is literally taking food out of their mouths・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/04/AR2009050403755_pf.html
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太田述正コラム#3258(2009.5.6)
<弱者が強者に勝つ方法>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x478)
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昨日、今日と映画を観まくってました。
そのなかで、「大いなる陰謀」(http://movies.foxjapan.com/ooinaru/)という映画で学生たちのディスカッションする場面がとても羨ましかったです。アメリカだってどの国だって、「どう生きるか?」というのに一生懸命なんですよ。
(まあ、最後の落ちが?でしたけど・・・)
質問があります。最近のアフガニスタン・イラク・パレスチナ情勢ってどうなってるのでしょうか?
この頃、太田コラムで読んでないような気がします。(自分で英語覚えて、アングロサクソンの新聞読め!って言われたら、そうなんですが・・・)