太田述正コラム#3324(2009.6.9)
<皆さんとディスカッション(続x510)>
<おーつか>
90年代にボランティア・ブームというのがあり、NPO法や介護保険法、さらには「ゆとり教育」もそうですが、これらは常勤公務員のやるべき仕事を放棄、あるいは労働法の管轄外あるいは最低賃金ギリギリでやらせようとする、新自由主義とポストモダン左翼が結託した素敵な政策群であったわけです(典拠・元ポストモダン左翼のオレ)。
公務員が少なくてもよかったのは、徳川時代に鎖国し移動の自由を制限し、五人組という相互監視制度や、檀家という素晴らしくよく出来た脱宗教・民衆管理制度を導入したから。
(宗門人別帳は戸籍制度となって明治政府の日本型中央集権の完成にも貢献しました)。
こういう前近代的な制度は先進国には相応しくありません。
西側先進国並みのまともな国になろうと思ったら、中央集権官僚制度それ自体を国民の側から監視するマンパワーがどうしても必要となります。
これすなわち国会議員と地方議員。
人口当たりの国会議員の数は、日本は先進国でアメリカ合衆国の次に少ない(エジプト・ケニア並)。
http://www.flickr.com/photos/skasuga/3570853494/
合衆国は連邦制なので、州議会の議員を勘案すると、日本は圧倒的に少ない。
議員を減らそうとかほざいている自由民主・民主両党はまったく非民主的(あるいはポピュリズム的)であり、政党としては全体主義的な小政党のほうがまともなことを言っています。
さらにひどいのは、日本の基礎的自治体の議員数で、まぁ田舎の町村議会はいいのですが、政令指定都市の議員数は例えば横浜市(人口366万職員数2.7万人)で92人
。
人口十万あたりに換算すると2.5人で、これは諸外国の国会議員並です。
(ちなみに、人口千人当たりの常勤公務員数は、たったの7人)。
逆に言うと、ひとりの市議会議員が4万人!もの市民を代表し、300人からの常勤職
員と、おそらくその倍くらいいる非常勤・外郭団体職員を監視していることになる。
ひとりの政治家が千人からの職員をチェックすることは不可能です。
横浜市政が腐敗するわけですよ。大型自治体は解体すべきだ。
スウェーデンあたりでは基礎的自治体の人口そのものが3万人程度(上下はかなりある)で、一人の議員が代表する人数は千人程度です(うろ覚え)。
つまり、これぐらいの人数の政治家がいなければ、先進国の現代的官僚機構の監視など不可能なのです。
(むかし交流があった地方官僚は、町会を現代的にモディファイすることによって大型自治体を分割監視する構想を持っていましたが、どうなっているのやら)。
ちなみに、北欧諸国の地方議員は無給のボランティアで、議会は自分たちの仕事が終わった後の夜間に開催されることが普通だそうです。
ちなみに、この分野についてのわたしの思想的バックボーンは松下圭一です。
<太田>
典拠がついてるようでついてないのは惜しいですね。
なお、分かっておられるでしょうが、政治家の数の少なさの問題と(狭義、広義の)公務員の少なさの問題とは、大幅に重なりつつも、いささか異なった問題であるように思います。
<文十郎>
≫朝鮮半島の植民地支配に対して、一回、心から遺憾の意を表すれば、韓国はもう蒸し返しはしないと思いますがね・・。≪(コラム#3320。太田)
具体的にどのような行動をすればいいのでしょうか?
<太田>
やはり、天皇の初訪韓を実現し、その折に、ということでしょうね。
民主党中心の政権になれば、恐らく実現するでしょう。
<Chase>(http://blogari.zaq.ne.jp/fifa/)
・・・われわれ一般ピープルには、猪瀬<直樹>氏の活躍ぶりには何ともいえない畏怖の感を覚える。そもそも権力を持たない猪瀬氏がかくも巨大な存在になり得たのは、巨大な暴走事なかれ集団(エージェンシー※)の存在のためであったろうと逆説的な説明も成り立つ。・・・
※エージェンシーについては、太田論文のキーワードであるため、その意味をネットで拾って記しておく。上記文中の使い方は、雑駁過ぎるのであまり真に受けないで下さい。
(引用はじめ)
一般に、エージェンシー問題とは、プリンシパル(委託者)の委託を受けたエージェントが、委託者の利益のために行動しないことによる取引の失敗のことだ。
これは、エージェントとプリンシパルの間に利害の対立があり、同時に両者の間に情報の非対称性(通常、エージェントの方が情報は豊富だ)があることによって起こる。
たとえば、経営者は株主のエージェントだが、常に株主の利益を最大化するように行動するとは限らない。
株主価値の増大よりも自己保身に重きを置く経営方針を採ることがあるし、株主の目の届かないところで自分のための無駄遣いをすることもある。
同様に、いわゆる投資銀行やヘッジファンドでは、金融マン達が、資本家や顧客の無知につけ込んで、成功報酬のコール・オプションを使って過大なリスクを取る形で彼らの富を盗み出す行為がしばしば行われている。
サブプライム問題は、大規模で集団的なエージェンシー問題によって引き起こされたのであり、資本主義や自由主義の原理が理由で起きたのではない。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/yamazaki/yamazaki_20090501.html(引用おわり)
私が主催する・・・福岡国際問題研究所が、来月で10周年を迎える。・・・
主要研究領域は、エネルギーに係る諸問題であり、目指す方向性は、その根本的解決を図ることである。我々は、表層的な事象に惑わされることなく、人類社会が真の意味での持続可能性を獲得するためには、どういうアプローチが必要かという問題意識から、社会全体の仕組みの根本の有様を逆にデザインしていく発想で日々仕事に取り組んでいる。・・・
なんて物言いを、10年前に、10年後できたらなーと夢想したものである。
組織や成果などなんもありまシェーン!結局、何の広がりも無い中年のポンコツおっさんのモノローグブログに成り果てました。ギャフン!(太田述正氏の決め?文句・・・少し古い?)。
今のレーゾンデートルといえば、太田述正氏のテーゼを世界に広めて行くことと、植田信氏の、世界史、日本史(国体)に係る思想戦を応援していくことか・・・。
まあ私に何の学もないが、こつこつと丁寧にやっていきたいと思っている。Guardianも頑張って読むぞー!
<太田>
福岡国際問題研究所の10周年が間近とか。
おめでとうございます。
引き続き、ご健闘を!
<鯨馬>
太田説の補強にいかがですか?
「平和はいかに失われたか―大戦前の米中日関係もう一つの選択肢 」原書房
http://www.amazon.co.jp/
平和はいかに失われたか―大戦前の米中日関係もう一つの選択肢-ジョン・ヴァン・アントワープ-マクマリー/dp/4562028424
当時きっての中国通職業外交官のメモランダム。ワシントン条約体制の崩壊の原因として、中国の国際法無視の急進的現状変革志向+排外熱と、米国の対中迎合姿勢、そして、むしろ日本はワシントン体制維持に真摯に努力していたことを挙げています。
さらには、このままでは対日戦争が避けられないこと、そのコストは甚大なこと、そして、米国が日本を打倒してもその空白を埋めるのはソ連であろうことを冷静に指摘しています。
<太田>
お気持ちはありがたいが、実は、拙著『防衛庁再生宣言』(2001年)の第9章(209~217)を、私は、ご指摘のマクマレーのメモランダムを紹介した本の紹介にあてています。
その数年前にこの本の原書に新宿の駅前の紀伊国屋で出会ったことが、私の日本戦前史観における迷いを拭い去ってくれたのです。
読んだ当時、防衛大学校の総務部長をしていた私は、日本戦前史研究の第一人者である同校の戸部良一教授に読後感を話したところ、「マクマレーのような見方をする人は現在では少数ですよ」と言われましたが・・。
また、その少し後に、あるパーティーで旧知の岡崎久彦大使と立ち話をした際に、「マクマレーのメモランダムが本になりましたよ」と言ったところ、大使が「本当? ヘー知らなかった」と目を輝かせた、ということも思い出されます。
さて、遅ればせながら、6月6日(土)東京オフ会(0930~2100)の報告を。
まずは出席者数です。いずれも、私を除いた数字です。
全体では、15人出席。(うち1人はSkype「出席」)
1次会には14人出席。(同上。飛び入り出席1人あり。)
2次会には8人出席。(2次会のみへの出席者1人あり)
3次会には5人出席。(3次会は予定外。1次会出席、2次会欠席で再び3次会出席した1人あり)
1次会の際に、太田コラム読者10倍計画について議論し、太田コラムFAQ(Frequently Asked Question)をウィキペディア方式で作成する、という方向性が出ました。
現在、IT支援グループにお知恵を借りつつありますが、ウィキペディアの「太田述正」そのものに、FAQ的な小見出し・・例えば、太田述正の考え方・・を起こして、太田コラム読者たる複数の管理人の下、太田コラム読者たるウィキペディアンに「問(Question)」に相当する項目と「答(Answer)」に相当する解説を勝手に書き込んでもらう、という案が現在のところ有力です。
皆さんも、どしどしご意見をお寄せ下さい。
ついでに、MSさんから、MS、KT両名がオフ会当日披露した、お二人が大好きな音楽に係るURLを教えてもらったので、気が乗ったら、試聴等をしてみてください。
“m-flo loves Emyli & YOSHIKA / Loop In My Heart”
http://www.youtube.com/watch?v=4epX9ar-nPs
参考文献
m-flo
http://ja.wikipedia.org/wiki/M-flo
VERBAL
http://ja.wikipedia.org/wiki/VERBAL
“Kitaro / silkroad”
http://www.youtube.com/watch?v=30_kqCOZXSI
参考文献
喜太郎
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%96%9C%E5%A4%9A%E9%83%8E
NHK特集 シルクロード:
http://ja.wikipedia.org/wiki/NHK%E7%89%B9%E9%9B%86_%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89
ドキュメンタリー映画 ”Death on the Silk Road”
http://www.filmakers.com/index.php?a=filmDetail&filmID=979
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4587743
2009/06/09(火) 01:03:42
では、本日の記事の紹介です。
「北朝鮮の裁判所が米国の女性記者2人に12年の労働教化刑を言い渡したというニュースが、中国国内で波紋を広げている。中国系米国人が含まれているためで、「判決は中国への嫌がらせ」「力ずくでも救出すべきだ」といった書き込みがインターネットのサイトに寄せられている。・・・
建前上、北朝鮮は中国にとって友好国であり、ネット上に書き込まれた北朝鮮への批判は、中国当局によってすぐに削除されることがほとんどだが、今回はそのまま放置されているようだ。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090609/chn0906090950003-n1.htm
米国のブレア国家情報長官とCIA(パネッタ長官)との間で、米国の世界各国における現地諜報主任ポストをめぐる、ホワイトハウスや議会を巻き込んだ暗闘が起こっているようです↓。
・・・On May 19, Dennis C. Blair, the director of national intelligence, sent a classified memorandum announcing that his office would use its authority to select the top American spy in each country overseas.
One day later, Leon E. Panetta, the director of the Central Intelligence Agency, sent a dispatch of his own. Ignore Mr. Blair’s message, Mr. Panetta wrote to agency employees; the C.I.A. was still in charge overseas, a role that C.I.A. station chiefs had jealously guarded for decades.・・・
Some current and former officials portray the C.I.A. resistance to the May 19 directive as petty, as C.I.A. station chiefs are likely to remain America’s senior intelligence representatives in a vast majority of countries. These officials say nevertheless that in some countries it may be more appropriate for a representative from another agency, like the National Security Agency or the Drug Enforcement Administration, to be the senior intelligence representative.
For instance, the National Security Agency, responsible for electronic eavesdropping, has a large listening station in Britain that is part of an extensive eavesdropping partnership between the United States and Britain. Some argue that the national intelligence director’s office should designate an N.S.A. official to coordinate intelligence activities in London.
Other examples that officials raise are countries like Iraq and Afghanistan, where a large American military presence might lead the national intelligence director to pick an official from the Defense Intelligence Agency. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/06/09/us/politics/09intel.html
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太田述正コラム#3325(2009.6.9)
<改めて民主主義について(その3)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x510)
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