太田述正コラム#3354(2009.6.24)
<日本の自由民主主義を再生させよう(続)>
東京新聞の岩岡記者の電話取材を受けた記事(6月16日朝刊26~27頁)が送られてきました。おなじみの岸博幸慶大教授(コラム#2975、2982)も登場してましたね。
≪見出し≫
郵便不正は「政治案件」?–議員「圧力」 なびく官僚–法スレスレ 口利き普通–公文書偽造あまりに露骨「異常」–野党あしらえるけど与党は…–「汚れた仕事、難なくこなせば出世」–
≪記事≫
・・・議員の”圧力”があらわになった事例は数多い。2006年に東京地検が摘発した防衛施設庁(現・防衛省)の官制談合事件をめぐっては、防衛族議員らによる口利きが発覚、仙台防衛施設局長などを務めた元防衛官僚の太田述正氏は07年11月、同施設局発注工事の指名に関連して2000年に内閣官房副長官側から口利きを受けたと明かした。
翌12月には現・元国会議員ら14人の名前を列記した「斡旋利得議員等リスト」を記者会見して公表し、当時「仙台防衛施設局だけでこれだけの口利きがあった。防衛省全体ではどれくらいあったか、想像がつく」と説明した太田氏。今回の事件を「行政裁量の余地が大きい他の省庁では、もっと多く行われているだろう」とみる。・・・
・・・前出の太田氏は「防衛省でも、例えば防衛大の試験結果を議員から聞かれれば「配慮を加えて」という意味を含み、発表の一日前には教えるのが暗黙のルールだった」。議員に限らず、同省幹部の知人からの口利きもあったというが、「ばれてもすぐには逮捕されないように配慮しながらやるのが普通。今回のようにはっきりとした違法行為をするのは異常」と説く。・・・
性懲りもなく小沢弁護に狂奔しているのが郷原信郎(コラム#3131、3145、3157、3171、3340)です。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090623/198246/?top
1990年頃から小沢が西松から迂回献金をもらっていた2000年代初頭に至る日本の「談合」史を記した前半は、すばらしいできです。
この2000年代初頭の「談合」状況を、彼は次のように整理しています。
「・・・公共工事受注業者から政治家に対して行われる政治献金には、2通りあった。1つは、発注者側の意向、つまり「客先意向」に強い影響力を与える立場の政治家に対するもの、例えば、当該工事の事業に関して補助金を交付する官庁に関係している政治家や、その官庁から予算の割り当てなど、工事の発注予定に関する情報を提供してくれる族議員に対する政治献金だ。これらは、その献金の事実が明らかになると、その政治家に対する社会的非難や、あっせん利得罪、収賄罪での摘発につながりかねない性格の政治献金であり、裏金による献金か、下請会社名義などで、絶対に他者には分からないような形態で行われた。
もう1つは、地域において強い影響力を及ぼす有力な政治家や政党に対する献金である。例えば、その自治体の議会の与党の幹部などに対して行われる政治献金は、工事受注との直接的な対価関係を持つものではない。業界内の談合で受注予定者となることを希望している業者にとっては、工事を円滑に受注し施工するために地域の有力者の間で受注予定者になるためのコンセンサスを得ておくことが重要であり、有力者からの横やりで、そのコンセンサスが破られることを強く警戒する。そこで、地域における有力な政治家や政党に対しては、特定の工事の受注とは関係なく、恒常的に相当な金額の政治献金が行われることになる。この場合の政治献金は、受注を妨害されないための保険料的な性格が強かった。・・・」
後者・・政治家が暴力団的なみかじめ料をせしめるケースですな・・の典型的事例として郷原があげるのが、自らも検事として関わった自民党長崎県連違法献金事件です。
ちなみに、この事件は、
「<2002>年2月の長崎県知事選前、自民党長崎県連の浅田五郎幹事長(65)と安田実穂事務局長(65)=いずれも当時=が県発注の工事を受注していた福岡市内のゼネコン支店を回り、選挙資金として献金要求したほか、2001年の政治資金収支報告書にゼネコンの献金計約1440万円を記載しないなどしたとされる事件。長崎地検は公選法違反(特定人に対する寄付の勧誘、要求等の禁止)などの容疑で2人を逮捕、起訴。浅田被告に懲役2年6月、安田被告に禁固2年6月を求刑した。加藤寛治元幹事長(57)もパーティー券収入を簿外処理したとする政治資金規正法違反罪で罰金の略式命令を受け、県議を失職した。http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/display/423/
というものです。
ところが、それからがいけません。
郷原は、小沢事務所が出した「天の声」という言葉は、前者にだけあてはまるのであって、後者においては、関わった政治家が「天の声」など出すわけがないところ、小沢の事件は、小沢の野党時代のものなのだから、後者なのであるとします。
その上で、彼は、
「・・・「天の声」に関する検察の冒頭陳述の内容は、談合構造の歴史的経過から考えると、極めて不自然であり、西松建設の関連団体から小沢氏側への政治献金の原因・動機に関して真実を述べているとは到底思えない。」
と言うのです。
しかし、小沢は、自民党時代も、新進党時代も、そして自民党と連立を組んでいた自由党時代も与党の、しかも実力者であり、国の東北地方の出先機関や県の上層部は、小沢がいつ与党に復帰したとしても不思議はないと思っていたでしょうし、そもそも、岩手と秋田の県知事にはずっと小沢の息のかかった人物が就いていました。
従って、当時、引き続き小沢事務所が「天の声」を出していたとしても全く不思議ではありません。
それに、仮に前者ではなくて後者だとして、だからどうだと言うのでしょうか。
自民党長崎県連違法献金事件でも関わった政治家達は立件されています。
時効にかかっているという意味では、前者であれ後者であれ同じですが、どちらであったとしても、小沢が談合に関わったことには違いがなく、彼の政治的道義的責任は免れません。
郷原をして、ここまで小沢弁護に駆り立てているものは一体何なのか、興味が尽きないところです。
検事と言えば、「たった一人の反乱」で、一読者が飯田章という人の文章
http://www.ztv.ne.jp/kyoiku/Dokusyo/71uragane.htm
を紹介していました。
「告発! 検察の裏ガネ作り」(元大阪高検公安部長 三井 環著、光文社)
平成14年4月22日、各種マスコミに検察の裏金作りを暴露することを公表していた、元大阪高検公安部長 三井 環氏が逮捕された。逮捕状に記載された、氏の罪状の軽微であることとともに、検察告発の主張を何も言わさないままに、検察当局が当事者の三井氏を逮捕してしまったのは、「口封じ」以外の何者でもないと思った。
逮捕以来、氏の動向と検察当局の対応を注意してみてきたのだが、保釈されて裁判を係争中の氏が、告発すべき内容と逮捕劇の一部始終を「告発!検察の裏ガネ作り」と題する本にまとめた。氏の裁判の行方を見守るとともに、この本の内容を検証してみよう。
三井氏の告発 -検察の裏金 調査活動費-
三井 環氏は、この本の中で、実名を出して、検察庁の年間5億円の調査活動費(以下、調活費)のほとんどが、検察首脳の私的な飲食費に使われていたと告発した。自らの名前はもちろんであるが、調活費を私費に濫用したとする検察首脳も実名で挙げ、その金額も具体的に土肥孝治元検事総長は平成5~10年度中に1億1590万9000円、逢坂貞夫元大阪高検検事長は平成7~10年度中に4161万円、荒川洋二元大阪高検検事長は平成5~9年度中に4589万8000円など、数字を挙げて追求している。昭和58年以降の累計は65億円にのぼり、法務・検察当局はこれを認めて国民に謝罪し、使い込んだ公金を返済せよとしている
警察もそうだったけれど、日本の捜査機関は、機密費的なものがあり余っていて仕方がないようですね。
日本の治安がいかに良いか、と喜ぶべきかも(?!)。
「与謝野馨財務・金融・経済財政担当相と渡辺喜美元行政改革担当相が総務省に後援団体として届け出ていた政治団体が、商品先物取引会社「オリエント貿易」(東京都新宿区)などグループ5社が企業献金をするためのダミー団体だったことが分かった。団体は92~05年、与謝野氏側に計5530万円、95~05年、渡辺氏側に計3540万円を献金していた。・・・」
http://mainichi.jp/select/today/news/20090624k0000m040158000c.html
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090624k0000m040159000c.html
小沢的なものが、自民党の中枢・・渡辺は飛び出したばかりだけど・・から次々に出てきますね↑。
自民党議員や旧自民党議員は全員犯罪者、またはその共犯者だと思ってもあながち誇張じゃありません。
皆さん、後生だから、このことを肝に銘じてください。
モチ、彼等をしてこのような犯罪に手を染めさせてきた黒幕は、彼等に性懲りもなく投票し続けてきたあなた方だけどね・・。
「民主党の衆院選マニフェストの土台となる09年版政策集の外交・安全保障分野の原案がわかった。・・・
日米同盟については・・・「対等なパートナーシップ」を強調。国内での米兵犯罪の扱いなどを定めた日米地位協定の「抜本的な改定に着手」するとし、在日米軍の再編についても基地負担軽減などの観点から「不断の検証を行う」と記した。
「テロとの戦い」で対米協力の象徴である海自のインド洋での給油活動は、根拠法の期限である10年1月までに終了。アフガン本土への自衛隊派遣は「抗争停止合意の後、人道復興支援等の実施を検討する」と記すにとどめた。」
http://www.asahi.com/politics/update/0623/TKY200906230426.html
↑民主党よ、アフガン云々は、社民党との連立を念頭に置いたものと理解するけど、地位協定の「抜本的な改定」などにうつつを抜かさずに、思いやりの大幅削減、全廃を目指しなさい。
何度も言うけど、キルギス↓のように、米国から米軍基地使用料をふんだくる方がグローバルスタンダードであることを考えれば、たとえ思いやりを全廃してとしても米国は御の字なんだぜ。
「・・・中央アジア、キルギス・・・は・・・、閉鎖が決定していた同国内のマナス米空軍基地について、・・・米国は年間基地使用料として現行の三・五倍増となる六千万ドル(約五十七億円)を支払う。管制インフラの整備費三千万ドルなども負担する。・・・<という条件で>存続することで米国と合意した・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009062402000070.html
——————————————————————————-
記事の紹介です。
ナショナリズムが現在の韓国をいかに毒しているか、という記事↓が出ていました。
http://www.chosunonline.com/news/20090623000056
(6月24日アクセス)
—————————————————————————
太田述正コラム#3355(2009.6.24)
<イラン燃ゆ(その6)>
→非公開
日本の自由民主主義を再生させよう(続)
- 公開日:
警察・検察・裁判所の裏金の実態
ジャーナリストの西島博之氏が、10月12日号週刊プレイボーイNO.41でレポートしているところによると、最高裁事務総局の主計課長や山形地裁所長などを歴任した石川義夫氏が、回顧録『思い出すまま』(れんが書房新社)で最高裁判所に裏金や予算の不当流用があったことを告白。山形地裁時代には、職員のカラ出張で蓄えた裏金の出納を記載した大学ノートがあり、石川氏が焼却を命じたことも記されている。裁判所のカラ出張については、90年度、東京、広島、福岡など7地方裁判所で1620件、総額1973万円の旅費が「不適正支出」されていたことが会計検査院の検査で発覚。これについて、ある元裁判官が嘆く。「私自身、行ってもいない出張の書類に判を押してくれと言われたことがあります」と。
石川氏は、カラ出張のほか、事務総局幹部が旧大蔵省主計局幹部や自民党政治家などを一流料亭やキャバレーなどで接待していたとも記述。経理局主計課長時代、事務総局の人事局長と経理局長のお伴で、銀座の某クラブや某寿司店で飲食した。そのつけは「会議費」名目で処理。つまり、予算の不当流用があったわけである。
三井環(検察庁内部告発者)のホームページより「裏金の作り方教えます」をご覧ください
http://www012.upp.so-net.ne.jp/uragane/jiken2.htm