太田述正コラム#3380(2009.7.7)
<皆さんとディスカッション(続x532)>
<雲豊>
–音楽というより劇です —
「表裏源内蛙合戦」
作/井上ひさし
演出/蜷川幸雄
出演/上川隆也、勝村政信、高岡早紀、豊原功補、篠原ともえ、高橋努、大石継太、立石涼子、六平直政他。
平賀源内の出生から終身までを描いた舞台です。誇り高く自信家である表の平賀源内(上川隆也)と、お調子者で欲のために露骨な真似もする裏の平賀源内(勝村政信)がコンビで活躍します。
彼らが目指すのは、立身出世して人や国に貢献すること。
この劇で頻繁に入る歌が面白いと思ったので幾つか紹介させて下さい。
私は特にエンディングを飾る歌が好きです。
舞台を見に行った人の感想をネットで読むとエログロな演出と全体で四時間という長時間の芝居などに賛否両論あり、好みが分かれたようです。
今月の14日(深夜)にWOWWOWでまた再放送があるので、興味のある方は是非どうぞ。
http://www.wowow.co.jp/pg/detail/075415001/index.php
長崎チャンポン
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7553341
高松藩禄仕拝辞願
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7554816
おいらん・れぼりゅーしょん
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7553873
エンディング(ラストシーンになります)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7553491
それと井上・蜷川コンビによる「道元の冒険」の再放送が13日(深夜)にあり、
http://www.wowow.co.jp/pg/detail/075404001/index.php
18日には「ムサシ」の放送もあります。
http://www.wowow.co.jp/pg/detail/075437001/index.php
<太田>
めずらしいものを見せていただきました。
では、私の方からも。
現在連載中の「トロツキーとその最期」シリーズ(未公開)の「その2」に登場する、トロツキーの亡命先を提供したメキシコの画家ディエゴ・リヴェラとその妻であってトロツキーと情事にふけった同じく画家のフリーダ・カーロ、のそれぞれの作品を紹介しているビデオクリップをどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=hL9JLugE8s8
http://www.youtube.com/watch?v=nE-UjfdIGEY
<FUKO>
マクナマラ氏が<93歳で>亡くなりました。
http://www.asahi.com/international/update/0706/TKY200907060374.html
とても残念です。
<太田>
FUKOさんが引用された朝日も、毎日↓も、電子版を見る限り、90万人及ぶ一般市民の犠牲者を出した日本の都市への戦略爆撃に対するマクナマラの気持ち(コラム#213)に、全く触れてませんね。
http://mainichi.jp/select/world/news/20090707k0000m030130000c.html
一体どこの国の新聞なんだろうね。
英米の主要メディアでは、触れていないケース↓もないわけじゃありませんが、
http://www.slate.com/id/2222288/pagenum/all/#p2
たいていは触れていますよ。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/michaeltomasky/2009/jul/06/robert-mcnamara-vietnam
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/3740700.stm
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070601197_pf.html
http://www.nytimes.com/2009/07/07/us/07mcnamara.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
ただし、この中でちょっと問題なのは、ガーディアンのコラムが、マクナマラの気持ちを、
・・・I don’t fault Truman for dropping the nuclear bomb. The US-Japanese War was one of the most brutal wars in all of human history — kamikaze pilots, suicide, unbelievable. ・・・
であったと誤って総括していることです。(コラム#213を参照されたい。)
この話とマクナマラのベトナム戦争についての反省については、基本的にコラム#122、123、213を読み返していただくとして、これらの記事等に書かれていたその他の興味深い事柄をご紹介しておきましょう。
ただし、ベトナム戦争に係る、上記コラムで書いていない話にまずちょっとだけ触れることにします。
この話↓は初耳です。
これが事実だとすると、ベトナム戦争は、文字通り、米国が引き起こした独り相撲的な戦争であった、ということになります。
返す返すも残念なのは、先の日米戦争において、ベトナム戦争における北ベトナムのように、日本が米国に「勝利」しなかったことです。
1947, when Ho Chi Minh wrote at least two letters to then-Secretary of State Dean Acheson basically saying: Look, I’m in Paris now, but one of these days I’m going back to Saigon and I’m going to lead this nationalist movement for independence, and we’d like your support.
Acheson never so much as wrote him back. ・・・
(ガーディアン上掲)
これ↓は、2003年の対イラク戦を踏まえた後づけ的な指摘ですが、真理ではあります。
“I do not believe that we should ever apply that economic, political, and military power unilaterally. If we had followed that rule in Vietnam, we wouldn’t have been there. None of our allies supported us. Not Japan, not Germany, not Britain or France. If we can’t persuade nations with comparable values of the merit of our cause, we’d better re-examine our reasoning.”
(NYタイムス上掲)
これ↓もなかなか含蓄のある指摘です。
“War is so complex it’s beyond the ability of the human mind to comprehend,” he concluded. “Our judgment, our understanding, are not adequate. And we kill people unnecessarily.”
(NYタイムス上掲)
さて、世銀総裁時代に行った演説↓から、私はマクナマラは、オバマと同様、日米戦争を、米国の有色人種差別の産物と見るに至っていた可能性がある、と思いたいところです。
・・・in a 1982 speech ・・・in apartheid South Africa・・・he told his audience that America’s “century of delay in moving to end our shameful discrimination toward black Americans . . . was without question the most serious mistake in our entire history, and the hard truth is that all Americans will continue to [pay] a heavy price for it for decades to come.” He urged South Africa not to make the same mistake. ・・・
(ワシントンポスト上掲)
ところで、マクナマラは、実に幸せな結婚生活を、それも2度も送ったようですね。↓
・・・in 1940・・・, he married his college sweetheart, Margaret Craig. She created Reading Is Fundamental, a literacy program for poor children, while he was at the Pentagon. By the time she died in 1981, the program served three million children.・・・
(NYタイムス上掲)
In 2004, at the age of 88, he married 70-year-old Diana Byfield. It was his second marriage – his first wife Margaret, to whom he was married for 40 years <bearing 3 children>, died of cancer in 1981. ・・・
(BBC上掲)
また、マクナマラの最晩年の生き様↓は、私の理想とするところでもあります。
”I’m not wealthy, but I don’t have to do anything I don’t want to do,” he said, “and I decided not to do anything that doesn’t meet two criteria: expand my understanding of the world and allow me to apply whatever understanding I have in some productive way.”
(ワシントンポスト上掲)
マクナマラのご冥福を祈ります。
その他の記事です。
日本人が軍事戦略を語ることから逃げ回っていることについては、吉田ドクトリンのイデオローグの一人である岡崎久彦の責任も免れないというのに、よく言うよ↓って感じですね。
ただ、日米間で核協議がなされていないことを、外務省関係者が認めた↓のは、率直で大変よろしい。
「核問題に関する村田良平・元外務次官の発言を新聞で見た時は、私はこの問題の新たな発展を期待して胸を躍らせた。・・・
永年の牡蠣(かき)がらのように固まった政府答弁を崩すにはこの位の捨て身の業が必要なのであるが、その後の展開は従来と全く変わらないのには失望した。・・・
北朝鮮の核武装を前にして、日本に対する米国の核の傘の実効性の問題、いわゆる拡大抑止力の問題の議論が喧(やかま)しい。同盟国間で軍事戦略を論じる以上、核戦略論は避けて通れない。現にNATO(北大西洋条約機構)では、核計画グループNPGがNATOの核戦略を随時討議している。
日米間にも当然に同じような協議と計画の場が望ましい。しかし、日本がいったん約束したことまで知らないとシラを切っている状況で、共通戦略などどうやって議論するのだろう。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090707/plc0907070234001-n1.htm
これ↓は、朝鮮日報のスクープでは?
「新疆ウイグル自治区のウルムチで5日、1000人近い死傷者を出した大規模暴動は、先月末に中国南部の広東省で起きた漢族とウイグル族の労働者による集団衝突事件が直接の発端となった。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20090707000021
この新疆ウイグル自治区での暴動について、ニューヨークタイムス電子版が詳しく取り上げています。
全般については、
http://www.nytimes.com/2009/07/07/world/asia/07china.html?ref=world&pagewanted=print
また、この種事件に関する中共当局の情報統制のやり方が更に巧みになってきていることについては、
http://www.nytimes.com/2009/07/07/world/asia/07beijing.html?ref=world&pagewanted=print
を参照のこと。
ベルスコーニのイタリアは、完全に欧州の鼻つまみになったようです。↓
–Calls grow within G8 to expel Italy as summit plans descend into chaos–
While US tries to inject purpose into meeting, Italy is lambasted for poor planning and reneging on overseas aid commitments・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jul/06/g8-considers-expelling-italy
コラム#3378で紹介したイランでのムサヴィ支持者達の最新の動きの背後に、ラフサンジャニがいたようです。↓
・・・Rafsanjani has recently made a visit to the city of Najaf in Iraq to confer with Ayatollah Ali Husaini Sistani, a long-standing opponent of the Khamenei doctrines, as well as meeting in the city of Qum with Jawad al-Shahristani, who is Sistani’s representative in Iran. It is this dialectic between Iraqi and Iranian Shiites that underlies the flabbergasting statement issued from Qum last weekend to the effect that the Ahmadinejad government has no claim to be the representative of the Iranian people.・・・
http://www.slate.com/id/2222254/
このニュース↓、日本の主要メディアの電子版、もっと大々的に取り上げるべきじゃないのかな。
「李明博・・・大統領は6日、ソウル・・・の自宅と一部の動産を除いた自らの資産331億4200万ウォン(約24億7100万円)相当を、自らの雅号を取った財団法人「清渓」に寄付し、青少年の奨学金や福祉事業に役立てるという形で社会に還元していく考えを表明した。
李大統領はハンナラ党の大統領選候補だった2007年12月、「自分たちが住む家だけを残し、そのほかの資産は寄付する」と話していた。
李大統領の元に残る資産は、・・・<合計で>49億600万ウォン(約3億6600万円)だけとなる・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20090707000029
例えば、ニューヨークタイムスは大きく取り上げてますよ。↓
http://www.nytimes.com/2009/07/07/world/asia/07seoul.html?ref=world&pagewanted=print
皆さんとディスカッション(続x532)
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