太田述正コラム#3388(2009.7.11)
<皆さんとディスカッション(続x536)>
<さるべーじ>
≫幹細胞から精子ができたってニュースは、考えてみりゃ、我々男性にとっては、その存在根拠に関わる大事だったんだ!≪(コラム#3386。太田)
 先週のTVタックルで500年後には男は居なくなっているというのを思い出しました。
 蟻の様にオスの存在意義は究極的な所、遺伝子に色を付けるくらいの役割しかありませんからね。
参考資料
http://ja.wikipedia.org/wiki/蟻#.E7.B9.81.E6.AE.96
<太田>
 「・・・年に一度(一定の期間)、成熟した巣から羽を持つ処女女王アリと雄アリが多数飛び立ち、結婚飛行を行い空中で交尾をする。結婚飛行の時期は種類や地域によって大きく異なり、春から秋にかけて行われる。空中で交尾した雄アリは力尽きて死ぬが、処女女王アリは貯精嚢に交尾した雄アリから得た一生分の精子を貯蔵し、地上に降り立った後に自ら羽を落とし、巣穴を掘るか木の皮の隙間などに潜むなどして女王アリとしての最初の産卵行動に入る。アリはハチと同様に、受精卵からは2倍体の雌が、未受精卵からは半数体の雄が生まれる。・・・」(ウィキペディア上掲)ですかあ・・。
<ΑΑΘΘ>(「たった一人の反乱」より)
 先の<チベットでの>事件の時には
・ダライラマって政治家としては劣るよね
・チベット亡命政府が発表してる「中国政府によって殺されたチベット人の数」には何の根拠もないよね
みたいなコラムを<おーたんは>書いてたよ
 それ自体は正しいけど、
・じゃあ暴動を招いたチベット自治区主席は政治家としてどうなのかな?
とか
・北京政府の発表と比べてどっちがマシ?
とかいう違和感沸くよね
<ΑΘΘΑ>(同上)
 そのケースでは、中国は悪でチベットは善良な被害者、という世論に傾いてたから、バランスをとる意味であえて言わずもがなの中国には触れずにチベットのほうだけそういう風に書くのは有りだと思うけどなあ。
 個人的には。
 まあでも違和感ってのは人それぞれのバランス感覚に基づいてるのだろうから、違和感を感じてしまったのならそれを他人が間違ってると言うのは傲慢だろうけど。
<深雪>
 中共によるウイグル人労働者、強制連行のからくり。ご参考までに。
http://www.youtube.com/watch?v=Fqd4yb8B5Ho&eurl=http%3A%2F%2Fmixi%2Ejp%2Fview%5Fbbs%2Epl%3Fid%3D21432282%26comm%5Fid%3D2428880&feature=player_embedded
<太田>
 視聴させていただきましたが、いい意味でも悪い意味でも日本の大衆週刊誌の記事程度のオハナシ、と受け止めるべきでしょうね。
 本件について、皆さんが熱心に議論されていることに敬意を表して、「新疆ウイグル自治区での騒乱(続)」シリーズ(コラム#3385、3387。未公開)の私の結論の部分を特別に公開しましょう。
 「・・・どうやら、中共当局は、日本帝国の台湾、朝鮮半島、関東州、満州等の統治を深く研究し、それを彼等なりに更に改善してチベットや新疆におけるチベット人やウイグル人統治に応用して来たようですね。
 もちろん、中共は非自由民主主義国であり、自由民主主義的な国であった日本帝国とは違います。チベットや新疆の統治にあたって、自由民主主義的土壌の涵養など全くといってよいほどやっていないでしょう。
 だからと言って、中共の少数民族支配を、場合によっては事実を歪曲までして一方的に悪と決めつけるようなことは慎むべきでしょう。
 そもそも、日本帝国と台湾、朝鮮半島との関わりの歴史に比べれば、チベット人とウイグル人とでは関わりの歴史の長さにおいて差があるとはいえ、漢人と彼等の関わりの歴史ははるかに長く深いわけです。(注:「長い」→「長く深い」に訂正した。)
 それに、日本帝国にとっての台湾、朝鮮半島等の住民とは違って、チベット人やウイグル人は特定の宗教の影響を強く受けている人々であり、それだけ彼等を統治することも近代化させることも容易ではないことも考慮すべきでしょう。
 ウイグル人の間に原理主義的イスラム教が広まる懼れについても、当然考慮すべきです。
 日本人は、韓国人が日本の朝鮮半島支配を全面否定すると腹立たしい思いがするでしょう。
 日本だって植民地支配でいいこともたくさんやったと言いたいでしょう。
 ウイグル人が漢人の新疆ウイグル地区支配を全面否定したら、漢人がどんな思いがするか、想像力を働かせるべきです。
 いや、日本の朝鮮半島支配等を全面否定したくないのなら、我々は想像力を働かせる必要があるのです。
 このことと、中共の非自由民主主義性を非難することとは切り離すべきだ、というのが私の見解です。」
 ところで、本件に係る本日の非公開コラムのテーマは、どうして広東省でも新疆ウイグル地区でも漢人の若者達はすぐ(例えばウイグル人に対して)燃え上がるのか、です。
 すぐ上で書いたことに加え、彼等がウイグル人に比べて逆差別されてるからだってのが簡単な答え方ですが、もう少し深刻な諸問題が背景にある、というのが私の見解です。
 一つは中共固有の問題であり、もう一つは世界共通の問題です。
 乞うご期待。
 その要旨は明日のディスカッションでご披露しますね。
 では、記事の紹介です。
 カーディア(ル)女史も白髪三千丈の漢文明の影響を免れていないようですね。↓
 「「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長は10日、・・・「中国当局はウイグル人の死者数を150余人と発表しているが、われわれが現地から得た情報では1000から3000人に達する」と言明した。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090711/amr0907110126000-n1.htm
 米国人一般、ひいては米国の主要メディアの今次新疆ウイグル地区騒乱に対する腰の引けた対応の背後にあるものはこの2つ↓なんですな。
 
 ・・・The State Department’s designation of the small East Turkestan Independence Movement as a terrorist organization ・・・
 Moreover, the detention of fewer than two dozen Uighurs at Guantanamo Bay dominates American perceptions of this ethnic group. Testimony before Guantanamo review panels and press interviews have indicated that the detained Uighurs were focused on China, not the United States, and most were cleared for release in 2003. Nevertheless, their cases, and the domestic political battle over closing Guantanamo, have unfairly stigmatized all Uighurs. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/09/AR2009070902425_pf.html
 新疆ウイグル地区の大御所、王樂泉Wang Lequan(コラム#3385)のことがちょっと詳しく出てました。↓
 ソ連崩壊後の同地区の危機を救ったのは彼だったんだ。
 they have let him run Xinjiang for 15 years, well beyond the usually strict limit of a decade in one powerful post. They have elevated him to the Politburo, the ruling party’s inner sanctum.・・・
 Mr. Wang arrived in Xinjiang as the Soviet Union was dissolving, its central Asian pieces shedding their colonial chains. Millions of Han citizens transplanted by Mao after China’s army occupied the region in 1949 were leaving. Beijing feared that Xinjiang’s growing Muslim Uighur population would try to follow its Soviet neighbors into independence.
 Mr. Wang’s antidote was a heavy dose of modernization for the ancient Uighur culture. He opened the region’s oil and gas fields to drilling, laid pipelines east to the Chinese heartland and west to Kazakhstan, and turned the Production and Construction Corps, a creaky make-work project for mustered-out Han soldiers, into a moneymaker listed on the Shanghai stock exchange.
 Han workers began flowing back, lured by industry and government jobs・・・
http://www.nytimes.com/2009/07/11/world/asia/11xinjiang.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
 ウルムチでの治安部隊によるウイグル人デモ隊射撃は、針小棒大に伝えられているか、空砲ないし威嚇射撃のたぐいだったか、すべてがデマだったのか、の可能性が高くなってきました。↓
 だからこそ、チベットの時と違って、中共当局は、積極的に外国メディアを現地に連れて行き、取材活動をさせることにしたってことなんでしょうね。
 ・・・The initial assumption among most Western observers was that most of the dead must have been Uighur demonstrators, cut down by police gunfire. Although the authorities have not given an ethnic breakdown of the victims, reporters interviewing eyewitnesses began to suspect that in fact the majority of the dead may well have been Han Chinese, killed by Uighur rioters. ・・・
 
http://www.csmonitor.com/2009/0710/p06s05-woap.html
 カーディア女史(コラム#3385等)について、また記事が出てました。↓
 女傑やねえ。
 それにしても、TPOをわきまえない電話はマズかったねえ。
 ・・・At the 1997 meeting of the CPPCC she rose to speak. “Is it our fault that the Chinese have occupied our land? That we live under such horrible conditions?” she asked. ・・・
 Allegations that Kadeer was responsible for starting Sunday’s riot, at least publicly, are based on a phone call she made to her brother in Urumqi on Sunday during which she said “something might happen in Urumqi tomorrow night,” according to the state-run Xinhua news agency. ・・・
http://www.csmonitor.com/2009/0709/p06s15-woap.html
 本件以外の記事で紹介すべきものはありません。
 最後に、一人題名のない音楽会です。
 庄司紗矢香によるカルメン幻想曲(サラサーテ作曲)の演奏をこの前(コラム#3382で)ご紹介しましたが、あれは特殊な編曲でした。
 今回は、原曲通りの演奏をお聞きください。
 バイオリン演奏については、名演奏が多くて目移りするのですが、ここは、同じ日本人ということで、まずは諏訪内晶子の演奏をどうぞ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=MRUSGFcOVD8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=ZFFSrz6Id54&feature=related
 ただ、この曲の曲想により合致していると思うのは、レイラ・ブロニア・ヨセフォヴィッツ(Leila Bronia Josefowicz)による演奏です。↓
http://www.youtube.com/watch?v=2TVXAyTneHI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=14rWB41lbws&feature=channel
 今度は、Mate Bekavacによるクラリネット演奏です。信じられないうまさです。↓
http://www.youtube.com/watch?v=JrS-CanzAtU&feature=related
 ホロヴィッツによるピアノ演奏もすごいよ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=Qnla_5zrHAE&feature=related
 どうでもいいけど、キーシンによるピアノのダメ演奏ぶりもご参考まで。↓
http://www.youtube.com/watch?v=87bJeGClmHk&feature=related
 ついでにおまけで、サラサーテならぬワックスマン(Waxman)作曲のカルメン幻想曲・・超絶技巧を要求される・・もどうぞ。
 ハイフェッツのバイオリン演奏です。↓
http://www.youtube.com/watch?v=LKAwWVRBw5w&feature=related
 神尾真由子(1985年~)(4年に1度開催されるチャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門で2007年に優勝。日本人としては1990年の諏訪内晶子以来)の演奏です。↓
http://www.youtube.com/watch?v=XMouQdQwS3k&feature=related
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太田述正コラム#3389(2009.7.11)
<新疆ウイグル自治区での騒乱(続々)(その1)>
→非公開