太田述正コラム#3341(2009.6.17)
<北朝鮮の「核」をめぐって(その3)>(2009.7.14公開)
(6)北朝鮮の核技術能力
「北朝鮮は3年以内に米国の西海岸の諸都市をそのミサイルで攻撃することができるようになるかもしれない、と米国の防衛官僚のトップが17日警告した。ただし、それくらいの時間で<北朝鮮がそのミサイルに搭載できるような>核弾頭の製造に成功するかどうかは分からないと。・・・
米統合参謀本部副議長のジェームス・カートライト(James Cartwright)大将が議会証言で行ったこの3年から5年という推定は、これまで米軍部が行ってきた推定より長いものだ。・・・
分析者達は、テポドン2は不正確である上、これまでのところ、米国を攻撃するために不可欠な技術革新であるところの、三段目のロケットを飛翔させることに成功していない。・・・
カートライトは、「90%プラスアルファ」の確信でもって北朝鮮から米国に向けて発射されたミサイルを撃墜することができると述べた。
ロバート・M・ゲーツ国防長官は、米国のミサイル防衛予算の総額を削る提案を<米議会に対して>行ったが、現在、カリフォルニアとアラスカに配備されている迎撃ミサイルを維持し改善するための9億ドルの予算は要求している。・・・」
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fgw-north-korea-missiles17-2009jun17,0,3763138,print.story
(6月17日アクセス)
「・・・<韓国の>国防科学研究所(ADD)の朴昌奎(パク・チャンギュ)所長が、15日に開催された<与党>ハンナラ党の北朝鮮核挑発・対策特別委員会の会議で、「北朝鮮は、スカッド、ノドン、テポドン・ミサイルに搭載できるだけの核兵器の小型化が可能な状態と見られる」と述べた・・・これは、「北朝鮮は核兵器の小型化を推進中だが、まだ成功したとは見られない」という韓米当局の公式判断とは異なる評価で、注目される。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20090616000020
(6月16日アクセス)
→当然のことですが、韓国政府の方が米国政府よりもはるかに北朝鮮の核に対する危機意識を抱くに至ったようです。遺憾ながら、日本政府も日本国民も依然として危機意識ゼロですが・・。それにしても、一体ノドンに搭載できるくらいには北朝鮮は核弾頭を小型化できているのでしょうか? できていないと思いたいところです。(太田)
(7)米国による韓国への核の傘保証
「・・・北朝鮮が2006年に初めて核を爆発させたちょっと後で、時の国防長官のドナルド・H・ラムズフェルトは韓国の国防相に対して、米国は<韓国に対する>核の傘を継続することを確約した。
しかし、現在では、韓国はホワイトハウスから文書でこの約束を欲しがっている。・・・
米国の核兵器は、1991年に韓国から撤収された。
しかし、核の傘は、弾道ミサイルを装備した太平洋所在の米海軍の潜水艦群と米国で保管されている核兵器によって維持されてきた。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/06/15/AR2009061500944_pf.html前掲
「・・・オバマは<米韓首脳会談後の記者会見で、>李明博大統領からの、北朝鮮の攻撃から韓国を守るという長く続いてきた米国の誓約を継続して欲しい・・・との要望を・・・文書の形で承諾した。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/06/16/AR2009061601223_pf.html
(6月17日アクセス)
→文書の文面を見ないで論評することは危険ですが、これでは、必ずしも、北朝鮮による韓国への核攻撃に対して米国が核報復することを確約したことにはならないのではないでしょうか。もちろん、米国は日本に対してもそんな確約は口頭でも文書でもしてはいません。(太田)
(8)オバマ政権の当面の対北朝鮮政策
「<国連安保理決議1874(注)を受けて、>オバマ政権は、<北朝鮮の最後の金づるを絶つために、>米海軍に対し、武器や核技術を積んでいると疑われる北朝鮮の船を海上で追いかけ、臨検許可を求めるよう命ずることになろうが、強制的にその船に乗り込むことまではさせない。・・・
(注)http://www.un.org/News/Press/docs//2009/sc9679.doc.htm
・・・米国は、北朝鮮の船と飛行機を追跡するに十分な諜報と海軍部隊を日本海で保持していると考えている。
北朝鮮の貨物船団の規模は小さい上、米国の役人達に言わせれば、北朝鮮は国連決議で禁止されたものを運ぶのにパナマ船籍等の船に託すことは避けるだろうというのだ。・・・
<怪しい>船の船長は、それが北朝鮮の船であればほぼ間違いなく。臨検を拒否するだろうが、オバマ政権の役人達は、ほとんどの北朝鮮の船は航続距離が短く、燃料や補給品のために港を探さなければならないことを知っている。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/06/16/world/asia/16korea.html?_r=1&hp=&pagewanted=print前掲
「・・・仮に北朝鮮の船が臨検を拒否すれば、米国の船はこの問題の船の「舵取(steering)」をしたり、追っかけをしたりして最寄りの港へと追い込む。その港で、この北朝鮮の船は悪評の対象となってその船が搭載し、あるいは搭載していなかったものに対する関心を呼び起こすことになろう。
国際社会は、この船への再給油を拒否したり、その他、この船が航行を続けるために必要なサービスの提供を拒むことができよう。・・・
しかし、このような<米国等による>動きは、実際に北朝鮮船を臨検しようとするというよりは、国際社会に対しみんなが一緒になって仕事をするように電気ショックをかけるためのものだ。・・・
「「情報共有と諜報収集という観点から、この措置はとても有意義であると思う。」・・・」
http://www.csmonitor.com/2009/0617/p02s01-usfp.html
(6月17日アクセス)
「・・・<安保理決議は採択されたが、>それは、米国その他の世界の国々は北朝鮮の船を公海上で阻止するために武力を使おうとしている、ということを必ずしも意味するわけではない。
多くの国々は、このようなアブナイ措置をとりたくはないだろう、と・・・ヴィクター・チャは12日・・・語った。
しかし、税関の検査を厳重にするとか、積載されていたコンテナの検査を徹底的にやるとか、その船が最終目的地に到着するまでに寄港した際に精密な調査をやるとか、他にやれることがある。・・・」
http://www.csmonitor.com/2009/0614/p02s04-usfp.html
(6月15日アクセス)
→米国が音頭を取り、国際社会が一丸となって、いわば北朝鮮にパワハラを繰り返し行い、北朝鮮を名実ともに追い込んでいく、という作戦です。中露もこの安保理決議に賛成したのですから、協力することでしょう。(太田)
(9)北朝鮮の予想される対応
「・・・北朝鮮は、先週末、公海上で違法な核や兵器を積んでいると目される同国の船を停船させて臨検しようとするいかなる国に対しても開戦すると脅した。・・・」(クリスチャンサイエンスモニター上掲)
「・・・「現在、我々が一番心配しているのは、北朝鮮の船長が何かアホな対応をしでかすのではないかということだ」と15日、米太平洋軍司令部の上級士官は言った。
「船の進路を妨害して停船せよと伝えた場合、誰かがアドレナリンをコントロールできなくなる危険性がある。そうなると、ドンパチが始まるということになりかねない」と。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/06/17/world/17sanger.html?ref=world&pagewanted=print
(6月17日アクセス)
→どっちみち野垂れ死にならと、北朝鮮は小暴発ぐらいはしそうな予感がしますが、果たしてどうなりますか。(太田)
3 終わりに
金正日の命が尽きるのが先か、北朝鮮の体制が崩壊するのが先かという感じになってきました。
北朝鮮の命運は尽きかけている、とあえて申し上げておきましょう。
(完)
北朝鮮の「核」をめぐって(その3)
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