太田述正コラム#3345(2009.6.19)
<イラン燃ゆ(その2)>(2009.7.17公開)
「・・・ユーチューブは、イランからの画像が世界中に到達するように、暴力的なビデオに対する通常の規制を緩和したと述べた。
「一般論として、我々は赤裸々かついわれなき暴力をユーチューブに<投稿すること>は認めない」と同社は声明の中で述べた。
「しかし我々は、教育的、ドキュメンタリー的、あるいは科学的価値のあるビデオに関しては例外を設けている。
イラン国内からの主要メディアによる報道に規制が課されている中で、イランの市民達がユーチューブを使って彼等の体験したことを撮影して世界中の人々に見てもらうことを可能にするためであれば、例外扱いすることはなおさら必要だ。」・・・
同時に、反対派の<大統領>候補であるミル・フセイン・ムサヴィは、彼のフェースブックの公開プロファイルページを・・・抗議活動を組織するために使ってきた。・・・
・・・抗議者達の世界中の支援者達は、彼等自身のコンピューターをイラン政府の検閲を回避しようと欲しているイラン人達のために提供してきた。
これらの人々は、彼等のコンピューターのIPアドレスをツイッターのような公開フォーラムに公開することによって、それをいわゆるプロキシ・サーバーとして提供してきたのだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/06/18/world/middleeast/18press.html?hp=&pagewanted=print
「・・・「フェースブック」の「<今回のイランでの>穏健な革命」との関係は、「モスク」の「イランの<1979年に起こった>イスラム革命」との関係と同じだろうか。
「ツイッター」の「イランの穏健派」との関係は、「祈祷時刻告知係(muezzin)達」の「イランのムラー(mullah)達」との関係と同じだろうか。
そして最後に、果たしてこれらのことは、ユダヤ人達、とりわけイスラエルの首相であるビビ・ネタニヤフにとって良いことだろうか。・・・
過去8年間の間に、イラク、レバノン、パレスティナ(の2地域)、そして、(これらに比べればささやかなものだが)エジプトにおいて、より民主主義的な選挙のための空間が開けられた。
これは良いニュースだ。
しかし、残念ながら、この新しい空間を活用したところの、最も草の根の支持があり動員能力があり、そして、最も活性化した支持者達を持っていた集団はイスラム主義者達だった。
すなわち、レバノンのヒズボラ、ガザと<ヨルダン川>西岸のハマス、イラクの種々のスンニ派とシーア派の諸政党、それにエジプトのイスラム同胞団だ。
中央主義的主流(centrist mainstream)は影も形もなかった。
イスラム主義者達は、ひそかに組織化し動員することができ、彼等の社会の蓋がゆるめられた時の準備ができていたわけだ<が、どうしてそんなことができたのだろうか。>
その最も大きな理由の一つは、彼等が、国家の完全なコントロールの埒外の「モスク」という、彼等に付き従う者達の集合、教育、鼓吹の場があったことだ。・・・
しかし、昨年、これらの強硬派達は、そのすべての国で、これらのイスラム主義者集団が大嫌いな中央主義的多数派(majority)によってしっぺ返しを食らった。・・・
・・・穏健でより世俗主義的な勢力は、彼等が、国家の掌握範囲の埒外で、その支持者達を集合し、動員し、計画し、情報伝達し、活性化する場として、フェースブック、フリッカー(Flickr)(注3)、ツイッター、ブログ、そしてテキスト・メッセージといったテクノロジーを、彼等のバーチャルな「モスク」として用いたのだ。・・・
(注3)http://ja.wikipedia.org/wiki/Flickr
・・・ムサヴィ<大統領候補>のフェースブック上のファン集団だけで50,000人以上の会員数に達した・・・
イスラエルにとって、<先般の選挙でヒズボラが敗北した>レバノンと<今回の>イランでの出来事は青天の霹靂だった。
そもそも、イスラエルの役人達は、アハマディネジャドが今回も選挙に勝つ方がずっと良いと言い続けてきた。
イスラエルが彼を本当に好んでいるというわけではなく、彼のやくざチックな反ユダヤ的言動がイランの現体制の真の、そして不変の性格を反映していると信じているからだ。
イスラエルは、仮に穏健派が彼にとって代われば、それはイランやイランの核に関する大望の真の変化を予告するどころか、単にそれをより巧妙に隠すかもしれない、ということを懸念している。
しかし、まだ微弱ではあるものの、もう一つの趨勢がこの地域で生じつつある。
イランの体制が、その頂点において分裂し始めているように見えることだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/06/17/opinion/17friedman.html?ref=opinion&pagewanted=print
「・・・ロンドンのウェッブ制作者は、イランの選挙抗議者達がイランの大統領のウェッブサイトの攻撃に彼が余暇に開発したソフトウェアを使っているのを発見してびっくりした。・・・
・・・<彼等は、>ウェッブのページを数秒ごとに更新する<ことによって、>ホスト・サーバーの負荷を過剰にしようとしているのだ。
このページをリブートするソフトウェアは、反政府者達をして、様々なサイトにヒットを浴びせかけること・・業務妨害攻撃(denial of service attack)として知られている・・によって、この様々なサイトが利用者から「アクセス不能(unobtainable)」になったように見せかけることができるわけだ。
・・・イラン大統領のマハムード・アフマディネジャドのウェッブサイトは、15日に「アクセス不能」のメッセージを表示しているものの一つとなった。 もっとも、16日には正常に表示されるようになっている。・・・」
http://edition.cnn.com/2009/WORLD/meast/06/17/iran.elections.hackers/index.html
(続く)
イラン燃ゆ(その2)
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