太田述正コラム#3524(2009.9.15)
<皆さんとディスカッション(続x598)>
<太田>
 核心さんから、「栗原利一資料」(CD-R2枚)が送られてきました。
 栗原利一とは、核心さんの御尊父です。
 以下は、添えられていた核心さんの手紙の中から、一部を転載したものです。
<核心>
 ・・・南京大虐殺の中核的出来事は日本陸軍による南京陥落時の大規模な中国兵(蒋介石軍兵士)捕虜の殺害です。
 これは中国共産党側にとっても<防衛庁防衛研修所(当時)>戦史部側にとっても不都合な事実です。
 中国共産党からすれば殺されたのは蒋介石軍であり、戦史部側からすれば日本軍による組織的な捕虜の殺害ですから。
 暫くは両方とも歴史的真実を認めることはないと思います。・・・
<親衛隊員>
 
 最近、諜報がらみの話題が盛り上がっているようなので、文献紹介します。
 太田さんを含め、この分野に関心のあるすべての方にお薦めしたいのが「日本軍のインテリジェンス・講談社刊・小谷賢著」です。
 著者の小谷氏は英国留学(ロンドン大学キングスカレッジ修士)、京大博士課程(学術博士)を経て現在は防衛研究所の教官を勤めておいでです。
 細かい内容は読んでいただきたいのですが「日本の主な問題点は、諜報活動を行う側でなく、諜報活動で得られた成果を活用する側にある」という見解を提示しておいでです。
 太田さんの見解に近いものがあるような気がしますね
 。なお、佐藤優氏が「わが国はその気になれば数年で世界レベルの諜報活動を取り戻せる」という趣旨の意見を開陳しているのは「国家情報戦略・講談社刊・佐藤優、コウヨンチョル共著」のことだろうと思われます。  
 この本は佐藤氏と韓国軍の情報将校(海軍少佐)だったコウ氏の対談集です。
 コウ氏によれば北朝鮮の秘密工作活動のベースとなっているのは日本の陸軍中野学校のノウハウであり、それに対抗してきた韓国もまた中野方式を採り入れているといいます。
 『日本が本格的に諜報機関を再建するにあたっては韓国に学ぶべきであり、その韓国のノウハウはもとをただせば中野学校にルーツがあるので短期間でスムーズに吸収することが可能である』というのがお二人の結論のようですね。
追記  余計な情報ですが、映画フリークの金正日は「陸軍中野学校・大映配給・市川雷蔵主演」の熱烈なファンなのだとか(評論家の辺真一氏がTBSラジオで語ってました)。
<ΑΠΠΑ>(「たった一人の反乱」より)
 「自民党「貸し剥がし倒産」の危機・・・
 ・・・借金を抱えて下野した自民を支えるのは、2兆円もの公的資金の注入を03年に受けたりそなグループだ。
 実質国有化され再建途上のりそなは、前述した自民への07年の融資残63億円のうち、約33億2500万円と過半を占める。05年には、実質的に他行の融資分を肩代わりした形で54億円もの融資残があった。国から救済された側が、政権党の台所事情を支えた形だ。・・・
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090914-00000001-aera-pol
 コレ、イイノカヨw
<太田>
 アエラ、頑張ってるねえ。
 話は全く変わりますが、長生きも幸せも(家族、とりわけ配偶者ではなく)友人次第だ、という事実が最近の米国における人間科学の研究によって明らかにされつつあります。(コラム#3228に「友人の効用」、#2523「友人の効用(続)」(未公開)、#2525(未執筆))
 ざっくりと申し上げれば、人生を歩む我々を機関車になぞらえるとして、愛人はよくも悪くもこの機関車の転轍手(方向を転換する人)であるのに対し、友人は機関車の機関士兼整備員(水・石炭の供給やメンテナンスを行う人)である、といったところでしょうか。
 ところで、「愛人は・・・転轍手」の典型だと私が考えているのが鳩山由紀夫と幸さんの事例です。
 「 「ぼくはおじいちゃんのような政治家になるんだ」と幼稚園児の頃か目を輝かせていたのが、弟の邦夫氏。一方、祖父一郎氏による鳩山内閣成立時、既に小学2年生になっていた兄の由紀夫氏は、「政治家はきらいだ」と言っていたという。どんな場面でどんな会話の中で出た話か忘れたが、鳩山一郎総理の秘書官を務めた石橋義夫氏(現・共立女子学園理事長、横綱審議委員会委員長)に聞いた記憶がある。・・・
 由紀夫氏は長じて学者の道を志し、東大工学部卒業後、スタンフォード大学でシステム工学の博士号を取得している。その間、人間社会におけるシステム工学をトコトン究めると政治の世界を避けては通れないという思いを強く抱くようになった、と。これは、由紀夫氏が三枝三郎氏(北海道副知事退任後、代議士を3期務めた)の後継候補を受諾した際、その後援会の会合で話したと、人づてに聞いた。・・・」
http://archive.mag2.com/0000074979/20060630163218000.html?start=120
 ノンポリ、というか政治嫌いだった由紀夫を180度回心させたのは、彼自身が語っているタテマエではなく、スタンフォード時代の幸さんとの略奪愛(不倫愛)であり、この愛が由紀夫がそれまで抱いていた様々な既成観念を木っ端みじんに粉砕したからだ、というのが私の考えです。
 その由紀夫について、弟の邦夫は、辛辣極まる評価をしています。↓
 「文芸春秋8月号鳩山邦夫の発言を要約抜粋・・・
(1)兄は日本一の「政界スイマー」
 兄は努力家です。しかし信念の人ではまったくないと思います。自分の出世欲を満たすためには信念など簡単に犠牲にできる人です。いまは虚像が前面に出ていますが、実像はしたたかを絵に描いたような人で、自分のためになるのなら、どんな我慢もできるんですよ、あの人は。
(2)兄は宇宙人
 私から見れば宇宙人ですね、まさに。自分の権力欲にここまで忠実に生きてこれるというのは大したものです。かっては「小沢一郎の金権政治と派閥中心の政治」を非難していました。そこまで嫌っていた小沢一郎さんにゴマをすって、べったりくっついていったことです。やはり信念のないのが宇宙人なんでしょうね。私も麻生太郎も地球人ですが、兄貴の宇宙人ぶりは際立っている気がしますね。自民党にいたころ兄は公共事業を引っ張ってきて橋を作るのに懸命だったのに、立場が変われば言うことが全く変わる。・・・」
http://blog.livedoor.jp/gold_7777/archives/51202553.html
 こんな由紀夫が、いや、こんな由紀夫だからこそ、自民党政権の打倒をなしとげ首相になったわけですが、事実は小説より奇なり、としか言いようがありませんねえ。
 それでは、記事の紹介です。
 あの田母神閣下を生んだ空自よりも更に内局キャリア(ただし、現在トップは財務省キャリア)の方がKYとは、目も当てられないねえ。
 最低限、PAC3をライセンス生産している三菱重工への防衛省からの天下りの全員を引き上げてから予算要求しろよな。↓
 
 「・・・消極的だった航空幕僚監部を内局が押し切り、九百四十四億円の・・・PAC3・・・追加配備費を計上した。
 内局関係者によると、今年四月、北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン2」を発射した際、民主党議員からも「地元へのPAC3配備」を求める声が出たという。
 PAC3は、〇四年十二月に閣議決定された〇五年度以降の「防衛計画の大綱」の別表で、「基幹部隊」「三個高射群」と明記されている。
 高射群は侵攻する航空機を迎撃する目的で全国に六個あるが、弾道ミサイル対処のPAC3は埼玉、岐阜、福岡各県の三個高射群に限定して置かれている。
 追加配備は北海道、青森、沖縄各県が増え、「六個高射群すべて」となるため、「防衛大綱の修正が欠かせない」(外薗健一朗空幕長)。だが、民主党は今年十二月に予定される防衛計画の大綱の見直し作業を先送りさせる方針だ。
 関係者は「部分修正なら民主党も応じるはず」というが、「まず空気を読め」と批判する制服組幹部もいる。政権政党となる民主党は「官僚支配の打破」を打ち出しており、防衛省の思惑通りにいきそうもない。
 もともとMDは官僚主導で導入が決まった。事務次官だった守屋武昌被告(収賄罪で有罪判決、控訴中)が「米国は開発に十兆円を投じた。同盟国として支援するのは当然だ」と自民党を説き伏せ、〇三年十二月の閣議で導入が決定した。
 日本のMDは、飛来する弾道ミサイルを洋上のイージス護衛艦が発射する艦対空ミサイル「SM3」で迎撃し、撃ち漏らしたら、PAC3で対処する二段階方式。防衛省は米国からの導入に約八千五百億円を投じている。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009091502000049.html
 帝国の崩壊と、アル中による人口減少によって、ロシア語を第一言語とする人々の数が激減しつつあります。↓
 ・・・Russian is one of the few major languages to be losing speakers, and by rough estimates, that total will fall to 150 million by 2025, from 300 million in 1990, a year before the Soviet collapse. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/09/13/weekinreview/13levy.html?ref=world&pagewanted=print
(9月14日アクセス)
 和歌山県の太地(たいじ)におけるイルカ撲殺漁(コラム#3520)を今度はガーディアンがとりあげました。↓
 いやな予感がするなあ。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/sep/14/dolphin-slaughter-hunting-japan-taiji
 コラム#3509~3513(未公開)で紹介したばかりのヘースティングスの本の新しい書評がまた英国で出ました。↓
 ・・・Hastings shows that the wartime connection between Britain and the US was more tenuous, instrumental and less sentimentally driven than postwar Britain liked to believe. In fact, the two partners were deeply suspicious of one another; their leaders never believed that their interests must converge once Hitler was defeated. They also had sharply differing assessments of how to achieve victory. What was striking was not the existence of these differences, but the degree to which they were overcome. ・・・
 <Britain>’s weakness as a military power is Hastings’ second and related theme. ・・・
 He exonerates(赦す) the air force and praises the navy but finds little to admire in the performance of the British army — out-fought by the Germans for most of the war and unable to affect the outcome until the Russians and Americans came in. ・・・
http://www.ft.com/cms/s/2/58bbbf8c-9e62-11de-b0aa-00144feabdc0.html
 英国の人々が、依然としていかに先の大戦の悪夢にうなされているかってことです。
 ついでに、先の大戦直前まで仇敵だった英米両国の先の大戦中の関係、そして、英軍、とりわけ英陸軍の(ナチスドイツ軍や旧日本軍と比較しての)ダメさかげん↑を頭に入れようね。
 世界的にいかに女性が虐げられているかを糾弾する本が出ました。↓
 ・・・Today, now, more than 100 million women are missing. They have vanished. In normal circumstances, women live longer than men–but China has 107 males for every 100 females in its overall population, India has 108, and Pakistan has 111. Where have these women gone? They have been killed or allowed to die. Medical treatment is often reserved for boys, while violence against women is routine. More girls are killed in this “gendercide” each decade than in all the genocides of the 20th century. This year, another 2 million girls will “disappear.”・・・
 ・・・who has heard of fistula(瘻孔)? It is today’s leprosy, causing 2 million women to live and die as despised outcasts・・・
 ・・・how about the enslavement of women in brothels, which is now far larger than the trans-Atlantic slave trade at its height– Some 3.5 million women are being jailed, drugged, and raped for cash today. ・・・
 What have I done, with almost none of the odds stacked against me that Mukhtar< Mai> had?・・・
http://www.slate.com/id/2227598/pagenum/all/#p2
 ムクタール・マイ(Mukhtar Mai)という名も無き一女性がパキスタンのパンジャブ州でどんな理不尽な目にあったかを引き合いに出し、我々に自分ができることを少しでもやって、女性差別の緩和、撤廃のために貢献せよ、と迫る最後の一文↑を、皆さん、特に日本の女性はかみしめて下さい。
 第三世界の女性達の窮状と取り組むNGOへの献金でもいいし、先進国最悪の日本の女性差別状況克服に向けての何らかの貢献でも結構です。
 日本の女性の皆さん、「虐げられている」チベット人やウィグル人への同情をネット上で匿名で表明しあってヒマをつぶすだけで自己満足するなんてのは、何もしないのより悪質だぜ。
 コラム#3491(未公開)や#3506で紹介したソルニットの本の新しい書評がまた出ました。↓
 この本が米国を震撼させてるってことです。
http://features.csmonitor.com/books/2009/09/14/a-paradise-built-in-hell/ 
 大災害の時に人間がいかに人間(じんかん)主義的に行動するのか、その具体例があげられています↑。
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太田述正コラム#3525(2009.9.15)
<友人の効用(続)(その2)>
→非公開