太田述正コラム#3534(2009.9.20)
<皆さんとディスカッション(続x603)>
<ΠαΠα>(「たった一人の反乱」より)
≫レーニンと会談した事実も、レーニンが上記のような発言を行った事実も確認されず・・・(中略)・・・<明石は、>シベリア鉄道の爆破工作も画策したが、これも失敗している。≪(コラム#3532。太田)
 これって
「単に明治期のまともでなかった諜報活動は無いことにされて昭和期のは敗戦で諜報活動が全部、曝け出された上にまともでない部分だけ強調されて宣伝された結果、そういう印象をもたれているこということではないだろうか? 」
を補完するつもりで出した典拠ですかね?
 だとしたら明治期の諜報活動が昭和になってダメになったという訳ではないということを太田先生も一面の真実はありそうだと認めてくださったと解釈してよろしいのかな。
<ΠααΠ>(同上)
 違うと思うよ。
 司馬遼太郎がいかにいい加減な人であるかを説明する典拠でしょ。
<核心>
 太田さんのコラム「南京事件」<(「南京事件と米国の原罪」シリーズ。コラム#253、254、256~259。(#3251も参照されたい:太田))>を読ませて頂きました。
 太田さんの南京に対する理解を知ることが出来ましたので、それと肯定派との違いを指摘させて頂きます。
 ・・・
 ・・・ジョン・ラーベの日記について説明させて頂きます。
 南京陥落時の城外における捕虜の殺害は昭和12年12月15日、16日、17日の三日間に行なわれたものです。
 <父が在籍した>65連隊による大湾子の殺害も17日に行なわれ、18日、19日は死体の処理に充てられています。
 ラーベなどの欧米人は南京城内に足止めされています。
 したがってこの城外での大規模な捕虜の殺害を眼にすることは出来ませんでした。
 南京城内では大規模な捕虜の殺害は行なわれていません。
 太田さんが故意にラーベの日記だけを読まれて結論を出されたのでなければ、南京城外で大規模な捕虜の殺害があったことはご理解いただけると思います。・・・
 以下は<朝日新聞の>本多<勝一>氏の『南京への道』P307-318<における>父の証言です。
 ・・・<栗原利一さん>(七三)<は>、福島県出身で警視庁に長くつとめて引退した。剣道八段をはじめ、柔道・居合道・杖道などでも高段者・・・
 <栗原>・・・さんは第一三師団(仙台)に属する山田旅団第六五連隊(会津若松=両角部隊)の第一大隊第二中隊にいた。現役入隊のころ「満州事変」(中国でいう「九・一八事変」)に参戦しているので、南京攻略戦に際して召集されたときは二四歳の下士官だった。・・・
 <以下、省略>
 以下は<上記とほぼ同じ内容で、よりコンパクトな>毎日新聞の福永平和記者の記事です。・・・
毎日新聞 昭和59年8月7日
元陸軍伍長、スケッチで証言/南京捕虜1万余人虐殺
-「真実はきちんと後世に伝えたい」-
南京大虐殺に加わった元陸軍伍長が、半世紀近い沈黙を破り、当時のスケッチ、メモ類をもとに中国兵捕虜1万余人の虐殺を詳細に証言した。
問題の捕虜大量射殺事件はこれまで上級将校の証言などから「釈放途中に起きた捕虜の暴動に対する自衛措置」とされてきた。
今回の証言は、これを覆すものだ。
上海から南京攻略、さらに徐州占領まで従軍、軍曹になって漢口攻略の途中、負傷して日本国内に送還された栗原さんは、昭和十三年暮れから療養生活中、従軍した戦闘の記録をスケッチブックにまとめた。
南京附近の戦闘に関するものは計六枚。
昭和十二年十二月十三日紫金山東北の鳥龍山砲台を、翌十四日南京城北側の幕府山砲台を占領したところから始まっている。
「第一大隊百三十五名で一万三千余捕虜を降し、敵を武装解除」。そして「島流し」と書かれたスケッチには虐殺の模様が詳述されている。
「中央の島に一時、やる(送る)ためと言って船を川の中ほどにおいて、船は遠ざけて四方から一斉に攻撃して処理したのである。
その夜は片はしから突き殺して夜明けまで、その処に石油をかけてもし、柳の枝をかぎにして一人一人ひきずって、川の流れに流したのである。
わが部隊(が殺したたの)は13500であった。
今、考えても想像できないことである」
栗原さんによると、捕虜を殺したのは、十二月十七日から十八日の夜で、昼過ぎから、捕虜をジュズつなぎにし、収容所から約四キロ離れた揚子江岸に連行した。
一万人を超える人数のため、全員がそろった時は、もう日が暮れかかっていた。沖合いに中洲があり「あの島に捕虜を収容する」と上官から聞いていたが、突然「撃て」の命令が下った。
約一時間一斉射撃が続いた。見渡せる範囲の捕虜は必死に逃げ惑うだけで、水平撃ちの弾を避けようと、死体の上にはい上がり高さ三、四メートルの人柱ができた。
会津若松出身の第六十五連隊、両角部隊の捕虜収用は、占領当時、新聞で「大戦果」と報道され、総数は一万四千七百七十七人とされていた。
その後、捕虜がどうなったかは報道がない。
 以下は・・・<上掲の>毎日や朝日への証言から2年ほど過ぎ<た時点に出た、>藤原彰氏などの係わった・・・南京大虐殺研究札記(1986年12月13日発行)の16頁に掲載された「証言で綴る南京大虐殺<PART1 従軍兵士に聞く>戦争というのは、殺すか殺されるか、なんです。一兵士」<における>父(栗原利一)の証言です。
 ・・・
 「自分の部隊がやった(殺した)のは一万三五○○人。私自身数えたわけではないが、そう言われたし、新聞にもそう報道された。しかし、暴行・強姦なんてなかった。第一、捕虜のなかには、女なんて一人もいなかったしね」
・・・
 「私たちが幕府山で捕えた1万何千人という捕虜を、初めから、”殺してしまえ”ということではなかったんです。彼らを連行し、揚子江の中央の島に送るため、1ヶ所に集めた。船も用意されていたんです。もうすぐ日が暮れるという頃になって”何々少尉やられる”という声が聞こえたんです。その後”撃て”という命令がくだった」
 「細かい点はわかりませんよ。そこに策略があったかどうかわかりませんが、トラブルが起れば”殺すしかない”という用意はあった。こっちは百何十人、あっちは1万数千人ですからね。彼らをとり囲んで、機関銃が構えていました。将校以下、7名が殺されたわけですから”やっちまえ”ということになった」
 「・・・”捕虜取扱法”という赤十字条約があって、捕虜は殺しちゃいけないということは決まっていたけど、私たちは兵隊でしたから、そんなことは知らなかった。将校は知っていたかも知れませんが、私たちは”反乱したらやる”ということだった。それに、上官の”命令”は、そむくことのできぬ、天皇の命令でもあったわけですからね」
・・・
 「彼らが後ろ手にしばられていたのは事実です。こっちは百何人ですから、後ろ手にしばらないとやられてしまいますよ。連れてくるまでは、彼らとしても納得していたわけですよ。だけど、そこでトラブルが起きた。起こしたのか、起こさせたのか知りませんが、捕虜の中から”あの岸に行かせるなら早く行かせろ”ということで、将校の刀をとって、将校をやってしまった。それで”撃て”となって...。私は機関銃で撃たれるのを監視していました」
・・・
 「当時、1万3500人と聞いていたし、内地の新聞でもそのように書いたのだけど、ほんとうにそれほどいたのかどうか...。それは誇張で、連れてきたのは、せいぜい4、5千人から6千人ぐらいの間じゃなかったのかなあ。人間1万人というのを坐らせたら容易じゃないですよ。言われて聞いて、1万数千人ということであって、実際は...」 「他の部隊でも捕虜にし、殺した例もあります。紫金山のほうでは、4万5千人やったという話を聞いたりしています。全部で7万ぐらいを捕虜にしたのかなあ。内地でどういう報告をし、陸軍でどういう報道をしたのか知りませんが、やっぱり誇張もあったのではないですか。内地の人を安堵させるために、”これこれの戦果をおさめた”という書き方をしたのでしょう。・・・」
 ・・・
 「兵隊が充分食っていなかったほどですから、1万5千人の捕虜の処置に、第一、食わせることに上官も困っていた。捕虜にしたその晩は結局食わせられず、鳥竜山に米があると聞いて、馬でとばし、翌日になってやっと食事を与えることができた。・・・」
・・・
   
 太田さんのコラム<#253>で「<南京での虐殺は、>日本軍による組織的な行為ではなかった」とのコメントがありましたがこれは決定的誤りです。
 これに関してはアイリス・チャンの「レイプ・オブ・南京」にあるように最終的な決断者は朝霞宮です。
 7万人以上の大規模な捕虜の計画的な殺害ですから当然「日本軍が組織的に行なった」ことなのです。
 長勇とか自衛発砲というのは殺害を計画した将校側の事前に用意された言い逃れです。
<太田>
 お父上の証言自体が揺れ動いており、捕虜の殺害数も、それが意図的なものであったのか偶発的な事件であったのかも定かではありません。
 (もとより、偶発的な事件であったとしても、捕虜を一人残らず斬首/射殺したというのが仮に事実であったとすれば、それが過剰防衛であったことは間違いありませんが・・。)
 よって、南京城外での捕虜の大量殺害が仮に事実であったとしても、これを「虐殺」であると断定するのは、現段階では、なお躊躇せざるをえません。
 以上から、いわゆる南京事件は「日本軍による組織的な行為ではなかった」との私の指摘を改める必要があるとも、現時点では考えていません。
 少なくとも、もうお一方以上の証言者、これが困難だとしても、もうお一方以上の日記、スケッチ等の物証が出現しない限り、いわゆる南京事件に際し、日本軍による組織的な捕虜の殺害「も」行われたかどうかの決着はつかないでしょうね。
 ところで、どなたでも結構ですが、アイリス・チャンは、いかなる根拠に基づき、朝霞宮が捕虜の殺害を命じたと主張しているのかご教示願えませんか?
                                     
<Chase>
≫私の考えの一部について、英訳もお願いしたことがあると思いますが、ついでに、オフ会の時のMS小冊子を踏まえた私の新著の原稿をつくってみませんか。「福岡国際問題研究所編」と銘打って、出版されたらいかが?≪(コラム#3526。太田)
 私の能力ではありあまるところですが(仕事もてんこ盛りで体調が芳しくないですが)、太田さんの所論を自分なりにまとめてみたい気持ちもありますので、できる範囲でMSさんの冊子をベースに考えてみたいと思います。
 また、別途に私のブログでも、新著のアイデアに寄与できるようなメモを残していきたいと思います。
<太田>
 まことにご苦労様です。
 ご存じかと思いますが、『属国の防衛革命』の編集作業に私は全く関わっていません。 共著者の協力者のお一人が一手にやられました。
 私は、最終場面で、1~2カ所手を入れただけです。
 ですから、あなたにも必ずできますよ。
 ただ、『属国の防衛革命』と違って、今回は私だけの本でストーリーとして自己完結した構成にしなければならないので、ここが一番の腕の見せ所でしょう。
 幸い、MSさんの案があるわけですから、「べじたん」さんの案やオフ会時のHさんと私の問答も参照され、余り時間をかけすぎずにChase案をおまとめください。
 ただし、余り何もかも詰め込もうとしない方がよいと思います。
 むしろ、原稿を確定する目途がついた暁に、それを出版する段取りをつける方が大変でしょうね。
 第三者的な言い方で恐縮ですが、ご健闘を祈ります。
 さて、一人題名のない音楽会の坂本龍一の第二部です。
 映画「ラストエンペラー」のための音楽は、アカデミー賞オリジナル作曲賞受賞曲であり、坂本の最高傑作と言って良いでしょう。
1 テーマ
http://www.youtube.com/watch?v=xulOCPkcxqQ&feature=related
上記の本人によるピアノ演奏
http://www.youtube.com/watch?v=viEbS9n-z58&feature=related
2 Rain (I Want a Divorce)
http://www.youtube.com/watch?v=YkuCP3bZzG4&feature=related
3 Open the Door
http://www.youtube.com/watch?v=96hNhZksfo0&feature=related
 上記3曲のアナスタシア・チェボタレヴァ(Anastasia Chebotareva)・・美女です!・・によるバイオリン演奏です。↓
http://www.youtube.com/watch?v=UDpKq_9KLro&feature=related
 ユーチューブに掲げられている彼の曲で映画曲以外では、下掲くらいしか、私の琴線に触れるものはありませんでした。
 ピアノ曲 Energy Flow の坂本による演奏
http://www.youtube.com/watch?v=btyhpyJTyXg&feature=related
 それでは、記事の紹介です。
 おめでとうございます。↓
 「フランス東部ブザンソンで19日、第51回国際若手指揮者コンクールの決勝が行われ神奈川県出身の山田和樹さん(30)が優勝した。・・・
 同コンクールは若手指揮者の登竜門で、小沢征爾さんのほか、89年には佐渡裕さんが優勝している。」
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/music/090920/msc0909200949004-n1.htm
 学業も課外活動もその他もと欲張りな米国の一流大学学生の間で、一種のヤクがはやってるらしいよ。↓
 In recent years Adderall and Ritalin, another stimulant, have been adopted as cognitive enhancers・・・
 Adderall, a stimulant composed of mixed amphetamine salts, is commonly prescribed for children and adults who have been given a diagnosis of attention-deficit hyperactivity disorder (ADHD).・・・
 High-functioning, overcommitted people take to become higher-functioning and more overcommitted・・・
http://www.guardian.co.uk/science/2009/sep/20/neuroenhancers-us-brain-power-drugs
 オバマによる欧州ミサイル防衛システムの政策転換(コラム#3531。未公開)を受けて、ロシアも政策転換した・・かのように見えます。↓
 ・・・After President Obama decided last week to scrap the U.S. plan for missile facilities in Poland and the Czech Republic, Moscow was widely expected to follow suit and abandon its threat to deploy Iskander missile systems in the far western Russian enclave of Kaliningrad.・・・
 On Saturday・・・the Russian government sharply criticized Ahmadinejad for calling the Holocaust a “myth.”
 ”Statements to that effect, no matter where they come from, signify a departure  from the truth, and are unacceptable,” Foreign Ministry spokesman Andrei Nesterenko said. “Attempts to deny the Holocaust . . . are an insult to all [World War II] victims and to all those who fought against fascism.”・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-russia-missiles20-2009sep20,0,6965380,print.story
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太田述正コラム#3535(2009.9.20)
<よみがえるケインズ(その1)>
→非公開