太田述正コラム#3527(2009.9.16)
<日進月歩の人間科学(続x7)(その3)>(2009.10.20公開)
 「・・・それが効果的であるためには、褒め言葉は具体的(specific)でなければならないということを研究者達は発見した。・・・
 褒め言葉が心からのものであること(sincerity)もまた枢要だ。・・・
 7歳未満の小さい子供達しか褒め言葉を額面通りに受け取ることはない。
 年長の子供達は、大人達同様、褒め言葉には疑い深いのだ。・・・
 <ある>認知科学者の意見によれば、子供を褒める先生は、巧まずしてその生徒が彼の内在的能力の限界に達したというメッセージを送っているのかもしれないのに対し、生徒を批判する先生は、その子が彼の業績を更に改善することができるというメッセージを送っているのかもしれないのだ。・・・
 ある研究において、生徒達は二つのパズルのテストをやらされた。
 最初のテストと二番目のテストの間に、彼等は二番目のテストのためのパズル戦略を勉強するか、最初のテストで他の生徒達と比較して彼等の出来がどうであったかを知るか、を選択するように言われた。・・・
 知力を褒められた生徒達は、その時間を<二番目のテストの>準備をするために使うより、クラスでの自分達の順位を知る方を選んだ。
 もう一つの研究では、生徒達は、自分で自分の成績表をつくりなさい、それは別の学校の<君達が>会うことがない名前も知らない生徒達に送られる、と伝えられた。
 <すると、>その知力を褒められた子供達の40%がウソをつき、自分達の得点を水増しした。
 他方、その努力を褒められた子供達は、ほとんどウソをつかなかった。・・・
 生徒達がインチキに手を染めるのは、彼等が失敗に対処する戦略を培ってこなかったからだ。・・・
 <また、イリノイ大学アーバナ・チャンペイン校(University of Illinois at Urbana-Champaign)と香港大学が、一斉にそれぞれ現地で研究を行った。>
 母親達を控え室に待たせ、子供達に・・・非常にむつかしくて、半分くらいしかできないため失敗したという感覚を呼び起こすテストが課せられた。
 その時点で、子供達には二番目のテストまでの5分間の休憩が与えられ、母親達はテスト会場に入り、自分の子供と話すことが認められた。
 会場に入る途中、母親達には自分達の子供の得点が知らされ、それが平均を下回る結果であるとのウソを告げられた。・・・
 米国人の母親達は否定的なコメントを注意深く避けた。
 彼女達は、自分達の子供に対して、かなり楽観的かつプラスの(positive)であり続けた。
 面会時間の過半は、当面のテスト以外の、晩ご飯は何になるのか、といった話題に費やされた。
 これに対し、支那人の子供達は、「あなたは集中してなかったのよ」とか「テストを振り返ってみましょう」といったことを聞かされることが多かった。
 そして、休憩時間の過半は、テストとその重要性について議論することに費やされた。
  休憩の後、支那人の子供達の二番目のテストでの得点の伸びは、米国人の伸びの2倍以上の、33%に達した。
 このような差異は、支那人の母親達が厳しくかつひどい行動をとったから生じたように見えるかもしれないが、そのようなステレオタイプな見方は<必ずしも正しくない。以上は、撮影されているのだが、ビデオにだまされはいけない。>
 その言葉こそ確固たるものがあったけれど、支那人の母親達は、実際には、米国人の母親達と同じくらいほほえみ、子供達を抱きしめていたのだ。(顔を顰めたり声を荒げたりする程度も同じようなものだった。)・・・
 ・・・余りにも頻繁に<褒め言葉という形の>報酬をもらいながら大きくなった人は、報酬がなくなったとたんに<努力を>止めてしまうので持続力がなくなるのだ。・・・
 <以上から、>私は、自分の息子にお前は頭が良い(smart)と言わないということは、私が彼に自分の知力について自分自身で結論を下すようにしている、ということを意味する、と自覚した次第だ。
 すぐに褒めることは、宿題の問題への答えをすぐ見るのと同じようなものであり、自分自身で答えに到達する機会を彼から奪うに等しいのだと。・・・」(C)
 一言で言えば、子供は、余り褒めずに叱りなさい、そして褒める時は、頭が良いのねと褒めずに、努力したわねと褒めろ、ということのようですね。
3 終わりに
 このシリーズを読まれた子育て経験者の中には、自分達の子育ては理にかなっていたからこそ成功したのだなと思われた方、このとおりやらなかったけど子供は立派に育ったぞと首をかしげた方、しまった!だから失敗したんだなと後悔された方、等様々な方がいらっしゃると思いますが、いかがですか。
 子供のいらっしゃらない方も含め、ご感想をお待ちしています。
(完)