太田述正コラム#3602(2009.10.24)
<皆さんとディスカッション(続x637)>
<ΑΨΑΨ>(「たった一人の反乱」より)
 ザ・コーヴ<(コラム#3600)>ね。これってイルカの元調教師の個人的感傷と、イルカがかわいそう論理が通用しないことがわかったからイルカの体内の水銀量を問題(元々魚介類には水銀量が多いし、日本人は世界でも水銀摂取量が多いほうだが世界的長寿国家になってることからこの批判は的外れ)にしてイルカ漁反対のために日本の伝統あるイルカ漁の漁場を、確かヒーローズってドラマで有名になった女優が迫真の泣く演技をしながらイルカがかわいそうって叫んでる。猟師さんがしとめたイルカを奪い取って、死体を抱きながらね。
 外国でイルカ漁反対って言う自分たちの正義のためならありとあらゆる不法行為は許され、その漁で食べてる人たちの尊厳を踏みにじることも構わないっていう、まさにアングロサクソンが持つ歪んだ正義の発露そのものな映画。
 こいつらアメリカの最新鋭暗視装置付き隠しカメラで漁場の人のプライバシーを侵害しまくってるんだぜ。
 町山さんの映画紹介で知ってyoutubeとかでダイジェストやら何やら見たけどつまらない映画だったよ。
<ΑΑΨΨ>(同上)
 捕鯨(イルカ漁含む)はキリスト教的価値観=絶対的価値観からの批判じゃないっすか。
 クジラ(イルカ)は高い認知能力を持っているから食べるのは可愛そうって主張らしいけど。
 豚にも自己意識が?:鏡像を理解できる事が判明
http://wiredvision.jp/news/200910/2009101521.html
  ε ⌒ヘ⌒ヽフ     
 (   (  ・ω・) ブヒ
  しー し─J
なんて事がわかってきたとしても、豚は食べちゃ駄目なんて連中は主張せんだろうね。
 アングロサクソンというより太田さんが嫌いなカトリシズムじゃないか。
 なんにしても彼らのように日本人の思考を縛らなかった寛容な宗教には感謝だな。
<ψψΑΑ>(同上)
 そうですね。一神教の影響のほうが大きいかもしれないですね。
http://d.hatena.ne.jp/kanjinai/20090317/1237274630
のコメントしかソースが見つからなかったが、イルカ漁は元々養殖場を荒らすから間引きするためにしていて、ただ殺すだけではもったいないの精神からイルカの肉を売ってるだけ。だから流通量も少ないらしい。
 イルカ漁の何が問題なのかほんとにわからん。
 こいつらソナー音がイルカの体に悪いから可哀想っていうが、生まれてから死ぬまで檻に閉じ込めて、食用に殺される豚についてはなにも言わん。
 こういう異常な運動家連中は声だけは大きいから、政治運動にしやすいし力を持ちやすいけど、だからといって中身まで正しいとは限らないよね。
<太田>
 皆さん、よく分かっとるね。
 さんざん、捕鯨問題で過去書いてきてるので、関心あるむきは過去コラムをあたってね。
 ところで、米国の神がかり状況だけど、
 ・・・The tilt of religious change in the United States over the last half century has clearly been in the secular direction, ・・・but the pattern is complex and nuanced.・・・
http://www.nytimes.com/2009/10/24/us/24beliefs.html?_r=1&ref=world&pagewanted=print
とは言うものの、
 
 ・・・Nearly 6 out of 10 Americans pray one or more times each day・・・
 ・・・more Americans believe in a life after death and pray daily than in the 1970s. ・・・(同上)
ってんだから、改めてげんなりするよな。
 オバマ新政権になってどう変わるのか、あるいは変わらないのかまだよく分からないが、中央アジアは、アングロサクソンとロシアという従来からの構図からひと味変わって、現在は、これに支那が加わった形のグレート・ゲームになっている。↓
 その中央アジアも急速に再イスラム教化しつつある↓ってんだから、世の中真っ暗闇でござんすって言いたくなる。
 ・・・Central Asia is now the focus of a new “Great Game” as Russia, China and the US vie for a strategic foothold, partly with a view to the war in Afghanistan and partly because of the huge oil, gas and other mineral resources with which the region is blessed (or cursed).・・・
 The Soviets temporarily succeeded in damping religious sentiment but by 1987, notes Hiro, a poll of undergraduates with a Muslim background at Tashkent university showed that only 7 per cent described themselves as atheist. There was an upsurge of men with beards and women with headscarves as religion became a form of political dissent. When the Soviet Union fell apart, even leaders such as President Karimov, a brutal adversary of Islamic militants, visited Mecca and restored his first name to Islam. Only after the terrorist attacks of 9/11, did he, like other regional leaders, make airspace and military bases available to the Pentagon for its war against Islamist extremism. The Americans were subsequently expelled.・・・
 The acceptance of, even outright support for, authoritarian leaders is something Tayler encounters throughout his travels from Russia’s Red Square to China’s Tiananmen.・・・
http://www.ft.com/cms/s/2/cb05bc64-bf64-11de-a696-00144feab49a.html
 そんな場所で、欧州文明を継受したファシズムの支那、準ファシズムのロシア、アングロサクソン文明と欧州文明のキメラの米国のグレート・ゲームが展開するんじゃ、中央アジアの人々は救われない。
 「独立」後の人間主義的・世俗主義日本も、中央アジアでの有力プレヤーにならなくっちゃ。
<ψΑψΑ>(同上)
 コラム#3600の、岡田は軍事軽視の経済至上主義者ってところがよくわからないのだが・・・
↓何か間違った発言しているのか?
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20091017AT3S1602B16102009.html
<ψΑΑψ>(同上)
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102301000400.html
 岡田って天皇に権威を復活させたいみたいだし、不審船調査に肯定的だし、民主の中で限っていえば軍事を重視しているほうじゃないか。他の奴のほうがもっとひどい。
 議席数で圧倒的な民主が与党で、後数年は変わらないかもしれないんだから、鳩山とか平野なんかよりよっぽどましな岡田は大切にしてあげたい。
 (俺は記者クラブを解放したことで、民主で唯一評価に値する仕事をした男だと思ってる。)
<太田>
 記者クラブ開放は、民主党の公約だったのであり、岡田の功績じゃないさ。
 また、天皇に関する岡田発言は、
 「岡田克也外相が閣議後の閣僚懇談会で、国会開会式での天皇陛下のお言葉について「陛下の思いが少しは入ったお言葉をいただけるような工夫を考えてほしい」と述べ、宮内庁にお言葉の見直しの検討を求めた。・・・
 岡田外相は「大きな災害があった直後を除き、(毎回)同じあいさつをいただいている。国会に来ていただいているのだから、よく考えてもらいたい」とも述べた。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091024/plc0910240249005-n1.htm
だったわけだけど、岡田は、日本で言う、首相の所信表明演説に相当する、政府作成の演説を国会開会時に女王が行う英国
http://www.parliament.uk/about/how/occasions/stateopening.cfm
のことが念頭にあるのだろうが、これは国会主権(King in Parliament。国王は、議会(の多数派)に任命され、その議会の意思に従う)(コラム#省略)の国ならではの慣例であって、日本の天皇は、天皇主権の戦前も国民主権の戦後も、もうちょっとエライ、と言って語弊があれば、もうちょっと超然とした存在じゃないか。
 岡田は思いつきで発言したとしか思えないな。
 岡田が思いつきで発言することは、
 「岡田克也外相は23日、外務省で記者会見し、米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題について、沖縄県外への移設を断念し、日米が合意したキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設の代案として、米空軍嘉手納基地への統合が望ましいとの考えを表明した。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091024/plc0910240020000-n1.htm
からも分かる。
 もとより、白紙的には、空軍と海軍(海兵隊)の垣根を超えて、両者が嘉手納基地に同居できないわけはないんだけど、現在でも嘉手納では騒音訴訟で国が負けており、せっかく、少し空軍の戦闘機を減らす話が出ている(コラム#3520)というのに、そこに海兵の航空部隊を持って行ったら、騒音状況は元の木阿弥以上に悪化し、地元との関係が破綻してしまう。
 岡田は、県外移設にこだわる鳩山首相の足を引っ張ってどうするのかね。
 そんなことより、岡田は、率先、武器輸出三原則の運用大幅緩和に向けて動くべきだと思うけど、彼からは何も聞こえてこないねえ。↓
 「ゲーツ米国防長官が21日の北沢俊美防衛相との会談でミサイル防衛(MD)に関し、日米両政府が共同開発している海上配備型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)を欧州などの第三国へ供与できるよう対応を求めていたことが分かった。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009102301000882.html
 チェコに配備するのはレーダーのはずであったところ、今度は、SM3(レーダー込み)を設置するということかな。
 とにかく、米国は、話をどんどん進めてしまっている。↓
 ・・・The Czech Republic agreed on Friday to host elements of the reformulated American missile defense system・・・
 The Bush plan called for stationing 10 ground-based interceptors in Poland and a so-called X-band radar in the Czech Republic・・・
 The plan advanced by Mr. Obama would use smaller, mobile SM-3 interceptors to counter short- and medium-range missiles, based at first aboard Aegis-equipped ships and later on land in Eastern Europe. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/10/24/world/europe/24biden.html?ref=world&pagewanted=print
 元へ戻って、船舶の貨物検査についての岡田発言は正論だ。
 だけど、米国や日本自身の対北朝鮮防衛力ないし抑止力の強化の方は徹底的にネグっておいて、対北朝鮮経済封鎖だけ強化するってのおかしいんじゃないの、こりゃまさに経済万能的発想、すなわち吉田ドクトリンだねって言ってるんだよ。
 この報告書↓を踏まえて、岡田君、さあどうんすんだい?
 「北朝鮮はも最も抑圧的な政権。国連安全保障理事会が北の人権問題に介入すべきだ」
 国連のウィティット・ムンタボーン北朝鮮人権特別報告官は22日、国連総会第3委員会に年次報告書を提出し、「北朝鮮の住民は食糧不足や公開処刑、拷問、広範囲の抑圧に直面している。国際社会を活用すべきだ。安保理が取り組む必要がある」と主張した。・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20091024000012
 岡田にばかりケチつけたけど、鳩山御大自身もヨタってるから、困っちゃうんだな。↓
 「鳩山由紀夫首相は24日にタイ中部のフアヒンで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議など一連の会合で、自らが提唱する東アジア共同体構想に関して、米国の参加を求める考えを表明する。・・・
 東アジア共同体構想をめぐっては、岡田克也外相が米国は参加しないとの考えを表明。・・・」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091024k0000m010153000c.html
<ψΑΑψ>(同上)
≫主君「押込」の構造―近世大名と家臣団・・・≪ (コラム#3600。太田)
 「押込」などという不忠行為が許されていたとは初めて知った。
 治世期の侍にとっては武士道の忠義を貫く事よりも日本人に普遍的な和の精神のほうが優先順位が高かったようですね。
≫コラム#614≪(同上)
 武士道に在野武士道と公定武士道の二種類あるとは知りませんでした。
 うーむ確かに勉強不足な上によく分からない。
http://www.youtube.com/watch?v=3KRreGxUHCE <(コラム#3600。ΨΨΑΑ)>
 ↑そのシリーズ最後まで見た。隊長の行動は尊敬に値するし感動的ではあった。
 あとは彼の証言のすべてが客観的事実である事を祈るのみ。
 最高裁でどういう結論が出されるのか注目したい。
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 鳩山首相、要するに自分のカネや自分の尊属のカネと自分の政治活動のカネがごっちゃになってるってことだよね。↓
http://www.asahi.com/politics/update/1023/TKY200910230496.html
 今後、亀井静香から、この類の話↓は続々と出てくるんでねえの。
http://www.asahi.com/politics/update/1023/TKY200910230488.html
 現在公開中の「よみがえるケインズ」シリーズ(コラム#3535、3537、3539、3541)でその新著をとりあげたスキデルスキーが、新ケインズ主義の旗手たる、プリンストン大学のポール・クルーグマンと新しい古典派の旗手たる、シカゴ大学のジョン・コクレーン(John Cochrane)との論争について、前者に軍配をあげつつ、以下↓のように前者に苦言を呈しています。
 ・・・On the question of what caused the crash, the debate is more even. Krugman is hampered by the fact that he attributes the crash to “irrationality,” which, as Cochrane points out, is no theory.
 This is because Krugman refuses to take seriously Keynes’ crucial distinction between risk and uncertainty・・・
 ・・・what happens in a crowded theater if someone shouts “Fire!”<?> Everyone rushes to get out. This is not “irrational” behavior. It is reasonable behavior in the face of uncertainty. In essence, this is what happened last autumn.・・・
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2009/10/24/2003456711
 最後に、週末恒例の一人題名のない音楽会です。
 リベルタンゴは、これまで何度もとりあげてきています(コラム#3235、3428、3504)が、改めて、えり抜き特集と行きましょう。
1 踊り等
Elisa(日系人)とSteve。青春よ永遠なれ。
http://www.youtube.com/watch?v=2SiGDRuOzPk&feature=related
GrishukとPlatovの世界一ペアによるアイスダンス。形容できないほど美しい。
http://www.youtube.com/watch?v=2mVexkUXy3U&feature=related
2 歌
Josefina Scaglioneによるソプラノ歌唱。心が洗われる。
http://www.youtube.com/watch?v=Sq_ukRvEEWQ&feature=related
3 器楽
Viktor Romankoによるアコーディオン。名人芸。
http://www.youtube.com/watch?v=ccOVCnT7BZc&feature=related
トランペット、等。編曲の妙。
http://www.youtube.com/watch?v=aokERMyWzds&feature=related
赤木りえによるフルート、等。日本の女性達の音楽面での活躍に乾杯。
http://www.youtube.com/watch?v=8k_U1x2qV14&feature=related
ケーナ+ピアノ+パーカッション。日本人トリオの挑戦。
http://www.youtube.com/watch?v=pS5I1ycd_m8&feature=related
ハープ+バイオリン+チェロ。支那人トリオも頑張ってるよ。
http://www.youtube.com/watch?v=Bjps_apYdKw&feature=related
ジャズ。こいつは凄い!の一言。
http://www.youtube.com/watch?v=bK3NE8w1B-0&feature=related
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太田述正コラム#3603(2009.10.24)
<つい最近まで超男女差別社会だった米国>
→非公開