太田述正コラム#3606(2009.10.26)
<皆さんとディスカッション(続x639)>
<ΩΑΩΑ>(「たった一人の反乱」より)
 ・・・
≫記者クラブ開放は、民主党の公約だったのであり、岡田の功績じゃないさ。≪(コラム#3602。太田)
 岡田氏の名誉のために・・・
http://agora-web.jp/archives/768985.html
 民主党が記者会見を全てのメディアに開いたのが2002年の岡田幹事長代理の時であり、その後、岡田氏が幹事長・代表と党内で出世するにつれて記者会見を開放。代表を辞めた後もオープン化を閉める理由が無かったため、その後も民主党の記者会見はオープンであり続けた。
 民主党が記者クラブ開放を公約に掲げたのも岡田氏の功績です。
<太田>
 了解。
<ΩΑΩΑ>(同上)
 ちなみに・・・前原氏<については、>・・・、ダムとかハブとか政権前に練られた対策に対しては青年将校といわれる前原氏の猪突猛進の性格がプラスに働いたけど、メール事件の時のように事前に周到に練られていない事態では大きくこけているので単に今回、性格がたまたまプラスに働いただけともいえる。
 それは岡田氏の生真面目で融通が利かない性格が記者クラブ開放問題でプラスに働いたことと同じなんだが・・・両者とも状況によって態度を使い分ける器用さが無いのが欠点なんだなあ。
 今後、性格が災いして躓かないよう祈っています。
 ところで、個人的に一番、好きな漫画家は諸星大二郎なのだが・・・
 手塚治虫、高橋留美子、宮崎駿、更には士郎正宗(攻殻機動隊)、そして今回、おーたんが<コラム#3604で>取り上げた星野之宣(彼が「宗像教授」などの古代史ミステリーを描く様になったのは諸星氏の影響)など<が>多くの世界的に評価の高い日本のサブカルのクリエイターたちに影響を与えているのにも関わらず、<諸星大二郎については、>アメリカでもフランスでも評価は散々なんだよなー。
<太田>
 <>のように手をいれさせてもらったけど、これでいいかな?
<Chase>(2009.10.25)http://blogari.zaq.ne.jp/fifa/
 (コラム#3604の続き)
3 政権交代が日本の独立を回復させるメカニズム
・日本は外交・安全保障を丸投げした米国の保護国であり、外交・安全保障政策が選挙の争点になることはない。
・アルゼンチンの衰退の原因は、「客観的ルールによらない国家権力の裁量的介入による民間活力の衰退」であり、これは日本の現在の閉塞状況の原因そのもの。
・構造改革とは、このような状況の根底からの打破をめざすものでなければならない。そのためには、何より国民一人一人が自らの中の「斡旋利得」志向、「長いものにまかれろ」志向を断罪しなければならない。
・「談合政党」は利権の維持しか念頭にない政党で権力の座にある限り、外交、安全保障政策といった目先の利権と全く関わりのない日本の根本問題に取り組むわけがない。
・政権交代を繰り返すうちに、必ず保護国的地位から脱却、外交・安全保障政策の転換がなされることになる。
5 カナダはいかにして米国に併合されてしまったか。
・英米関係に軋轢が生じている。
・その大きな理由は、米国は戦時を生きており、同盟諸国は冷戦後の平和な時代を生きているため。
・英国は米国の(建国後)最大の脅威であり続けてきた。
・1939年まで、米国は日本、英国を敵視し、ドイツを友邦視していた(ドイツを見限っていた)。
・20世紀初頭の時点で、米国が最も敵視していたのが日英同盟であり、解消後、第一の敵は英国、第二の敵は日本となった。
・ソ連や蒋介石政権や中共に肩入れして日本と敵対した米国は度し難い。黄色人種に対する強い偏見が米国の反日感情を増幅させた。その結果、未曾有の戦禍、災厄を東アジアにもたらし、シナ、北朝鮮等、反自由民主主義体制を強いる原因を作った。
・米英の特殊関係は、イラク戦争後さざ波が立っているが、それでもその関係は続いていく。英国は米国の最大の不沈空母である。
・英国の相対的国力の衰退が米英の特殊関係の米国から見た意義を減退させつつある。
・英国の現在の核戦略は米国に首根っこを押さえられている。
・もし米英の特殊関係が立ち枯れ、もしくは解消されてしまえば、世界の平和と安定を維持する主体はどこにもなくなる。わたしは、米英に日本が一枚加わった米英日特殊関係を構築し、その中枢グループが、NATOのグローバル化を実現するほかないと考えている。そのためにも、日本の米国からの自立が強く望まれる。
6 民主主義インドはアジアの覇権国になれるのか
・経済学とは、「アングロサクソン・ウェイ・オブ・ライフ」たる資本主義のメカニズムを研究する学問である。個人主義を所与の前提とする学問である。
・アングロサクソンたる経済人の理念型であるところの、自分の効用関数とリスク選好度に従って経済行動を行うという合理的人間を政治の世界で置き換えれば、アングロサクソンたる政治人、議論と寛容を旨とする合理的人間である。
8 イスラム圏諸国はいつ世俗化するのか
・中東世界は、イギリスの端を発する世界の近代化のうねりに決定的に乗り遅れてしまった。
・西欧ゆずりのナショナリズムは、アラブ世界では機能しないことが明らかになってきている。
・西欧に淵源を持ちマルクスレーニン主義は、無神論である以上、イスラム教的なものを「必要」とする中東世界に浸透するのは困難。
・西欧由来のファシズムはイラクとシリアにて一定の成功をおさめ、近代化が成功する可能性がでてきた。
・イスラム社会の惨状を改善していくには世俗化が必要。
・イスラム教圏の人々は、歴史と文化を軽んじ、事実を直視しようとせず、しかるがゆえに教育と科学をおろそかにし、しかも政治的自由もないか著しく制約されており、その結果として退廃と貧困の生活を送っている。
・イヴン・ワラックは、暴力的原理主義はイスラム教の本質的属性ととらえている。
9 移民を大量に受け入れれば良いことがある。
・英国は移民を大々的に受け入れて成功した。多様な移民を受け入れ続けることによって英国は活力を失わずにきた。
・外国人留学生の飛躍的増加を図る必要がある。
・その他全編だぶりに注意。
<太田>
 それでは、記事の紹介です。
 米海軍大学の準教授がここ↓までホンネを語るようになっただけでも、鳩山政権樹立の意義は大きいなあ。
 ・・・The Prussian theorist・・・Clausewitz・・・declares laconically(簡潔に): “One country may support another’s cause, but will never take it so seriously as it takes its own.” It may dispatch a “moderately sized force,” but “if things go wrong the operation is pretty well written off, and one tries to withdraw at the smallest cost.”・・・
 Much as I would like to assure my Asian friends that the US will honor its commitments in Asia under all circumstances, such a promise would collide both with history and with strategic logic. US and Japanese leaders must manage their alliance relations wisely, so as to reduce the chances of a miscalculation that overstrains US extended deterrence(拡大抑止). Let’s not put US credibility to the test.・・・
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2009/10/26/2003456875
 米国の核抑止力に依存するたって、鰯の頭も信心からの類かもしれないよ、とまで米国のセンセに言われりゃ、こちらとしても核オプションの研究くらいはマジメにしてなきゃいけません。
 要するにイスラエルの核抑止政策・・核巡航ミサイル搭載在来型潜水艦の保持・・を見倣えと言ってる英国内での声↓は参考になるねえ。
 巡航ミサイルは射程と速達性に問題があるけど、幸い、平壌も北京もすぐそばだもんな。
 ・・・In a sweeping attack on the government’s defence policy, Lord Owen・・・a former Labour foreign secretary・・・ describes the estimated £15bn-£20bn cost of replacing Trident in its 2006 white paper as “no longer credible”.
 Abandoning Trident <fleet equipped with long-range ballistic missiles >and instead having a number of cruise missiles equipped with nuclear warheads・・・and deployed on smaller submarines・・・ would be cheaper and more flexible, making it easier for the UK to contribute to disarmament measures over the coming decades, Owen said. The option is favoured in some quarters of the Ministry of Defence and is being considered by the Liberal Democrats.・・・
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/oct/25/trident-defence-policy-david-owen
 ペトラユースが対イラク軍事戦略転換に果たした大きな役割については、これまでコラム#1889等で累次とりあげてきたところですが、チアレリ(Peter W. Chiarelli。陸軍大将)米陸軍副参謀長なんて人物も重要だったんですな。↓
 ・・・Abizaid and Casey, for all their talents, conceived and directed the strategy in Iraq that brought America to the brink of defeat. The essence of that strategy was to train Iraqi forces as quickly as possible so that American soldiers could come home. In practice, that meant pulling American troops from the streets and replacing them with Iraqi soldiers who were unwilling or incapable of fighting for their government. The result was anarchy and civil war. ・・・
 ・・・it was only the efforts of Generals Petraeus and Chiarelli, and other like-minded officers, that saved America from a cataclysm(大試練) in the Middle East. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/10/25/books/review/Filkins-t.html?_r=1&ref=world&pagewanted=print
 そのイラクの治安状況が再び悪化してます。↓
 ・・・For the second time in two months, two synchronized suicide car bombings struck at the heart of the Iraqi government, severely damaging the Justice Ministry and provincial council complexes in Baghdad on Sunday, killing at least 132 people ・・・
 It was the deadliest coordinated attack in Iraq since the summer of 2007 and happened just blocks from where car bombers killed at least 122 people at the Foreign and Finance Ministries in August. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/10/26/world/middleeast/26iraq.html?ref=world&pagewanted=print
 しかし、この間、イラクの自由民主主義化はゆっくりと、しかし着実に前進を遂げてきています。↓
 今後は保証の限りではないけれど、35年間にわたったサダム・フセインによるファシズム的統治は、やはりイラクの自由民主主義の基盤を形成していた(上出のChaseさんによるまとめ参照)、と今のところは言えそうです。
 ・・・the Obama team needs to make sure that Iraq’s bickering(口喧嘩ばかりしている) politicians neither postpone the next elections(総選挙), scheduled for <16th> January, nor hold them on the basis of <候補者の名前が明らかになると生命の危険があったことからとられてきた>the 2005 “closed list” system that is dominated by the party leaders. We must insist, with all our leverage, on an “open list” election, which creates more room for new faces by allowing Iraqis to vote for individual candidates and not just a party. ・・・
 What is tantalizing(興味深い) is that the Iraqi prime minister, Nuri Kamal al-Maliki, who emerged from the Shiite Dawa Party, has decided to run this time with what he calls “The State of Law Coalition,” a pan-Iraqi, nationalist alliance of some 40 political parties, including Sunni tribal leaders and other minorities.・・・
 If this election comes off, it will still be held with U.S. combat troops on hand. The even bigger prize and test will be four years hence, if Iraq can hold an election in which multiethnic coalitions based on differing ideas of governance ? not sectarianism ? vie for power, and the reins are passed from one government to another without any U.S. military involvement. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/10/25/opinion/25friedman.html?ref=opinion&pagewanted=print
 ・・・フィクションを紡ぎ出すプロが政治になんか手を出しちゃダメだといういい例ですね。↓
 そういえば、どっかの国の首都のガバナーもフィクションを紡ぎ出すプロだったねえ。
 ・・・Some Nobel <literature >laureates have been forgotten. ・・・
 Knut Hamsun. The Norwegian author’s book “Hunger” (1890) was praised both as a modernist work and for its critique of modernity. When he won the Nobel in 1920, he was thought of as a leading humanist, but 20 years later, he became a Nazi. An enthusiastic one: after meeting Joseph Goebbels, he mailed him his Nobel medal in admiration. After the war, he was found guilty of crimes against Norway.・・・
http://latimesblogs.latimes.com/jacketcopy/2009/10/nobel-laureates-in-literature-the-good-the-bad-and-the-nazi.html
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太田述正コラム#3607(2009.10.26)
<「自分」は存在するのか(その2)>
→非公開