太田述正コラム#3629(2009.11.6)
<皆さんとディスカッション(続x649)>
<ΩααΩ>(「たった一人の反乱」より)
レビ=ストロースが死んだ事は取り上げないのな。
構造主義のはしりなのに。
<太田>
じゃ、取り上げるか。
レヴィ=ストロース(Claude Levi-Strauss。1908~2009年。フランス系ユダヤ人。社会人類学者、民俗学者)
http://en.wikipedia.org/wiki/Claude_L%C3%A9vi-Strauss
の構造主義(structuralism)とは、こういうものです。↓
・・・he was interested in structures of thinking that endure over the very long term. ・・・
When you read a story about, say, the marriages of Henry VIII or the life of Caravaggio<(カラヴァッジョ。1571~1610。イタリアのバロックの画家にして、近代絵画の祖と称される)>
http://en.wikipedia.org/wiki/Caravaggio (太田)
, it’s easy to fool yourself into believing you are glimpsing(垣間見る) a world much like our own. To grasp the real, radical differences between one moment and another, you need to comprehend the vast web of everyday phenomena (food, illness, buildings …) that shaped everyone’s existence. These things tend to change very slowly (at any time before 1900) and Claude L���vi-Strauss directed our attention to them. ・・・
http://www.guardian.co.uk/artanddesign/jonathanjonesblog/2009/nov/03/claude-levi-strauss
このような方法論の下に、未開社会を対象とした、『悲しき熱帯(Tristes Tropiques)』 (1955)や、先進国における過去の社会を対象とした以下↓のような著作を世に問うたのです。
・・・One of his books, for example, examines the Santa Claus myth cleverly and thoroughly・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/05/books/05strauss.html?_r=1&hpw
引き合いに出すのも恐れ多いことながら、私の方法論もまた、構造主義的であると言ってもよいでしょう。
ただし、ストロースとは違って、「現在」における、「先進国/地域」に主たる関心、そして「発展途上国/地域」に従たる関心を抱き、これらの国や地域においても「構造」を見出そうとする点で、ストロースとは関心の置き所が微妙に違います。
オフ会の話題に移ります。
MSさん、転勤準備中でお忙しいことと思いますが、最初で最後、ちょっとだけ、ご専門に関わるお話を、今度のオフ会の時に、KTさんによるお話の時間帯の後半にやっていただけないでしょうか。
具体的には、
http://www.nytimes.com/2009/10/13/science/space/13lhc.html
を解説していただきたいのです。
相当易しく書いてある記事だけど、イマイチ理解できませんでした。
だけど、何だか哲学的ですごーく面白そうだ、と感じました。
無理なら無理でお断りいただいても結構です。
<MS>
プログラムに関してご提案ありがとうございます。
ご期待にそえるかどうかわかりませんが、30分ぐらいの長さでお話しさせていただきたく思います。
内容ですが、記事の解説はできると思いますが、ニールセンの理論の解説はできません。
少なくとも記事を読んだ限りでは、ニールセンの言っていることは本質的に実験で検証不可能だという意味で、科学ではなくて哲学やファンタジーの部類に入ると思います。
このため彼の論文を読む気にはならないのです。
代わりに、記事でも触れらている時間や人間の(時間に対する)意識に関する話を、太田コラムとからめつつできればと思っています。
<太田>
それでは、ご足労ですが、よろしくお願いします。
<Chase>
私、ここ2週間、風邪をこじらせたこと、その他諸事で、次回本の作業が進みませんでした。
大変申し訳ありません。
「「日本型経済体制」論 ――「政府介入」と「自由競争」の新しいバランス」(『日本の産業5 産業社会と日本人』)の次回本への組み込み(5.2 閉鎖的な日本型経済体制の箇所)を検討しました。この論文自体は、個人的には大変興味深く、これまたまだ論壇?では、提起されていない価値ある論点が満載だと思います。
ただ、MSさんのドラフトをベースとしました現在の目次案の同箇所に丸ごと(もしく
は要約)置き換えるのは、
一、中川氏の意向?により日本型経済が相当肯定的に記述されていること、
二、事例が古くなっていること、
三、間接金融から直接金融にシフトしている昨今の情勢とはずれが出てきている?こと等で少し難しいと思いました。
(過去の論文であることを強調し、今でもその骨格は有効と紹介するやり方もありますが、次回本の全体のバランスの中では少しボリュームがありすぎるのが難で。す)
MSさんのドラフトの文脈では、日本の閉塞状況の一端が日本型経済体制に拠ると理解しておりますし、私もその文脈での論拠に援用するほうが日本の現下の状況にはマッチするものと思います。
したがって、MSさんのドラフトの文脈(日本の閉塞状況)で、「「日本型経済体制」論 ――「政府介入」と「自由競争」の新しいバランス」に紹介されているヒト・モノ・カネの調達の事例を組み込めればどうかと考えております。
なお、「「日本型経済体制」論 ――「政府介入」と「自由競争」の新しいバランス」については、とりあえずテキスト全部をえっちら打ち込んでおりますので、打ち込みましたら別途送付いたします。
今後、目次の暫定最終案を考えて、切り貼り作業を再開したいと思っています。
<太田>
「「日本型経済体制」論」の次著での扱いについては、もともとおっしゃるようなイメージで提案させていただいており、図表を中心にそのさわりをご紹介いただければ、と思います。
また、この論文をファイル化していただいているとのこと、まことにありがとうございます。
できあがりましたら、有料会員の方々がダウンロードできるようにしたいですね。
次の12月5日のオフ会で再びお目にかかるのを楽しみにしております。
また、風邪やインフルエンザをひかれないように、体をお労りください。
<パイナップル>
–洋楽とアニメの紹介–
最近洋楽やアニメ(押井守)の話が出てきてるので僕からも乏しい知識を少しだけ。
海外だけでなく日本の若者のも熱狂的なファンが多いロックバンドにNIRVANAというバンドがいます。
http://en.wikipedia.org/wiki/Nirvana_(band)
とくにヴォーカルのカート・コヴァーン(正式にはコベインらしいが日本ではコヴァーンが一般的)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%B3
は亡くなってから10年以上たちますが、当時の世代だけでなく現代の10代、20代からもカリスマ的な存在として信奉されてます。実際、僕自身はファンでもなんでもないんですが、周りにはコヴァーンの熱狂的なファンが多数いますし(全員10代もしくは20代)。
音楽や歌唱力の良し悪しはよくわかりませんが、そういったものを超えた何か普遍的なものを若者に感じさせるのかもしれませんね。以下代表曲。
『Smells Like Teen Spirit』
http://www.youtube.com/watch?v=dXO3OMGKPpw
『Come As You Are』
http://www.youtube.com/watch?v=bOL5cpwTkes&feature=related
<太田>
聴かせてもらった印象ですが、こりゃロックというより、声明(しょうみょう)だな、といったところかな。
Nirvana(涅槃)というグループ名は、
・・・Cobain said was chosen because “I wanted a name that was kind of beautiful or nice and pretty instead of a mean, raunchy punk rock name like the Angry Samoans.”・・・
http://en.wikipedia.org/wiki/Nirvana_(band)
程度のノリでつけられたようですが、ひょっとしたら、そうではなく、実際、彼、仏教的な音楽の影響を受けているのかもしれませんね。
聴いていて、心がなごみました。
<パイナップル>
次にアニメの紹介。
宮崎駿、押井守の名前が出るなら次にくるのは庵野秀明じゃないでしょうか
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%B5%E9%87%8E%E7%A7%80%E6%98%8E
三人の中では今一番勢いのある人物じゃないでしょうか、一部では宮崎駿の後継者とも言われています(作風は全く違いますが)。
僕自身は宮崎の後継者というよりはアニメ界の黒澤明のような気がします(異論はもちろん認めます)
代表作はなんといっても20世紀末を代表する作品、『新世紀エヴァンゲリオン』と12年ぶりに現在公開及び制作されている『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』でしょうね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B1%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%B2%E3%83%B3%E6%96%B0%E5%8A%87%E5%A0%B4%E7%89%88
『新世紀エヴァンゲリオン』は当時、若者・学者・宗教家を巻き込んで社会現象にもなった作品です。よく言うと純文学的、悪く言うとあいまいな作品ですね。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』は前作のあいまいな部分をそぎ落として、エンタテイメント性を追求した作品といえるでしょうか。
テレビ版は一部youtubeで観れるようなので一応載せますが、長いのであえて全部見る必要はないでしょう(全26話+劇場版)。
http://www.youtube.com/watch?v=QXtDzU4tWrU&feature=related
新劇場版も少し載せておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=wowHngrWJOw&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=hh9bJqJ_NHY&feature=related
興味が湧いたら是非ビデオ屋へ足を運んでください。日本のアニメ界の総力と言っても過言じゃない作品です(異論は認めます)。
<太田>
最初のだけ、とりあえず拝見しました。
確かに面白そうですねえ。
それでは、記事の紹介です。
朝鮮日報の記事、
http://www.chosunonline.com/news/20091105000043
http://www.chosunonline.com/news/20091105000044
「・・・これまで韓国の成長戦略は、日本が歩んだ道をそのまま追い掛ける方式にすぎなかった。われわれの父親世代は、日本の資金と技術を導入し、日本式制度とノウハウを引き写して、圧縮された成長を成し遂げた。約40年にわたり懸命に追い掛けた結果、日本を射程圏内に収めるまでに格差を縮めることができた。・・・」
は率直でよろしいが、
「先週、東京への出張途上で出会った日本の有力紙幹部は、「日本の政治はやっと韓国に追い付いた」と語った。自民党の約50年にわたる長期政権が崩壊したことを指しての言葉だった。韓国人は韓国政治を「三流」だというが、それでも政権交代の経験は日本よりも11年早かった。それが日本から見てうらやましかったようだ。・・・」
については、この「日本の有力紙幹部」も、この記事を書いた記者も、両方とも失格です。(「有力紙幹部」は、分かっていてお世辞か冗談でそう言ったのかもしれませんが・・。)
大正デモクラシーの時代には、日本でも政権交代なんてありふれた現象だったのですから。
シリアが、それは自国用に自分達が買ったものだ、と言わないところをみると、イスラエルの主張が正しそうですね。↓
・・・Israel displayed on Wednesday the contents of the ship it seized off Cyprus – crates filled with rockets, missiles, mortars, anti-tank weapons and munitions – the largest such haul in the country’s history. Israel’s claim that the weapons came from Iran were bolstered by Iranian markings on the sides of the containers and what it said was a document proving the ship had set off from an Iranian port. ・・・
Israel said the arms were destined for a Syrian port before being handed over to Hezbollah. ・・・
Israeli defense officials said the arms cache would have given Hezbollah, which fought a monthlong war against the Jewish state in 2006, enough firepower to sustain a full month of fighting on the scale of that war. ・・・
Israel has not publicly shown the document, however, nor offered evidence to back its assertion that the weapons were headed for Lebanon’s Hezbollah fighters.http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/11/05/AR2009110501046_pf.html
ヒラリー・クリントンは、上院議員経験だけじゃ、国務長官としては経験不足だったということになるんじゃないかな。↓
・・・The <Obama> administration’s key error <in its Mideast efforts>, many analysts say, was to insist that Israel immediately freeze all settlement growth in Palestinian-occupied territories. The United States has never accepted the legitimacy of Israeli settlements, but the Obama administration took an unusually tough stance. It refused to acknowledge an unwritten agreement between Israel and Bush to limit growth in settlements, with Clinton leading the charge to demand a full settlement freeze. ・・・
Abbas, emboldened by the U.S. rhetoric, announced that he would not begin negotiations until settlements were frozen. Facing Israeli opposition, the administration appeared to back off the demand for a full settlement freeze, first exempting East Jerusalem and then signaling approval of an Israeli plan to exempt nearly 3,000 housing units on the West Bank.
Meanwhile, Abbas got into political trouble at home when he succumbed to U.S. pressure to delay U.N. consideration of a report accusing Israel of war crimes in Gaza; he later reversed himself. When Clinton met him Saturday and pressed him to accept the limited Israeli settlement plan as a basis for talks, he refused.
Hours later, Clinton met with Netanyahu in Jerusalem and pronounced the Israeli offer “unprecedented” — sparking Arab outrage, which she spent the next several days trying to dampen. ・・・
Elliott Abrams, a former White House aide who helped negotiate the unwritten agreement on settlements in the Bush years, said there is little difference between that agreement and what Clinton claimed as unprecedented. “It really is the same deal that presumably could have been had on January 20,” he said.
Instead of demanding an unrealistic freeze, Abrams said, the administration could have made the Bush deal public, noted that Israel had not consistently lived up to it and declared that it would now be enforced. “Instead, we had nine months of nonsense,” he said. “Palestinians and Israelis are not sure what the United States stands for.” ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/11/04/AR2009110404408_pf.html
その結果、パレスティナ当局(自治政府)のアッバス議長が、来年1月の議長選に立候補しない旨の表明に追い込まれました。↓
・・・Even・・・the Palestinian president, Mahmoud Abbas・・・ could not stop the US secretary of state, Hillary Clinton, saying in Cairo at the weekend that Binyamin Netanyahu’s offer of a partial freeze (the continued construction of 3,000 settler homes, continued building in East Jerusalem and all public projects in settlements) was “unprecedented”. Mr Abbas has threatened to quit before. This time he means it.
If he does, a large building block, if not the foundation stone, of the US and Israel’s plans to fashion a settlement with <ヨルダン川西岸に住んでいるところの>one half of the Palestinian people could disappear with him. ・・・
The absence of Mr Abbas would more likely clear the path for Marwan Barghouti<(1959年~)> to run. He is a popular leader, recently elected to Fatah’s central committee. He is all the more acceptable to the Palestinian street for the fact that he is currently serving five life terms(終身刑) in an Israeli jail. Mr Barghouti’s ascension would complicate life for the Fatah old guard. But as a Palestinian who still regards resistance as a legitimate response to the occupation, Mr Barghouti would narrow the gap between the leadership in the West Bank and Hamas in Gaza on this point alone.・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/nov/06/palestinian-president-mahmoud-abbas
国民皆保険制度の意義がいかに大きいか、直感的に分かる記事です。↓
・・・The United States ranks 31st in life expectancy(平均寿命) (tied with Kuwait and Chile)・・・
・・・there is one American health statistic that is strikingly above average: life expectancy for Americans who have already reached the age of 65. At that point, they can expect to live longer than the average in industrialized countries. That’s because Americans above age 65 actually have universal health care coverage: Medicare. Suddenly, a diverse population with pockets of poverty is no longer such a drawback.・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/05/opinion/05kristof.html?ref=opinion&pagewanted=print
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太田述正コラム#3630(2009.11.6)
<アラブの近現代史(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x649)
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