太田述正コラム#3645(2009.11.14)
<皆さんとディスカッション(続x657)>
<友人TK>
太田君へ。
さっそくブログ<(コラム#3643)>に掲載いただいたようで拝見しました。
いつも気持ちのいい表現で すごいなと思います。
厚生労働省についての見解ありがとう。
社会科学系のレベルが低いということは、大学教育そのものに大きな欠陥があるということですよね?
アメリカのシンクタンクというのはたとえばどこを念頭に置かれていますか?
シンクタンク比較が載っていました。
http://www.tt2005.jp/documents/thinktanks_world.html
日本の私企業や独立行政法人でアメリカのシンクタンクのレベルへ向上する期待は望めないでしょうか? 人物交流とか留学とかくらいしか思い浮かばないですが。
<太田>
随分留学等はやってますが、問題なのは、彼等の受け皿が日本にほとんどないことです。
特に安全保障面ではそうですね。
<ΒΒββ>(「たった一人の反乱」より)
天皇陛下即位20周年に対しての朝鮮日報の記事のスレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1258067598/208-231
このへんの議論が太田読者を見てるかのようだった。
<太田>
上記スレまで読んでるヒマなかったけど、朝鮮日報の社説
http://www.chosunonline.com/news/20091114000016
は、今上天皇の真意(コラム#214、215)・・これは、恐らく昭和天皇の昭和史認識でもある・・を正しく理解してるね。
<ΒββΒ>(同上)
オバマが原爆について質問された動画のコメント
http://www.youtube.com/watch?v=Y1fzMa2Qifw
の中で、
VoxLibertari
Nice? dodge, Commander Clueless. The reason Japan was nuked was because the US estimated 1 million American casualties if the bombs weren’t dropped. Too chicken to tell the truth? Of course! What a wanker.
The Japanese began the war. They murdered (butchered) hundreds of thousands. They got back what they gave out. Screw ‘em.
こんな事言ってる奴がいるんですが、何てコメントすればいいでしょうか?
しかもプラス評価されてるわああああああああ。
落とさなければ多数が死んだって根拠が書かれたサイトってありますか?
<太田>
一番良いのは、ハセガワの本(コラム#2657、2661、2667、2669、2675(未完))にあたることです。
さて、コメントだけど、下掲のような感じでいかが?
American racist imperialists butchered something like 10 milion Asians (Filipinos, Japanese, Koreans/Chinese, and Vietnamese etc.), many of them civilians, since the end of the 19th century, absolutely in vain.
(Compare it with the ‘rational economic’ persecution of Indians and slaving of Africans, from which the racists earned enormously.)
This horrendous ‘irrational ideological’ folly is comparable both in size and criminiality to the follies conducted respectively by Russian communists and Nazis during the 20th century.
By cornering Japan into the war with them, collaborating with the Fascist Chinese Nationalists, and by defeating Japan, they assisted the power grabbings of Asia by the communists, including that of China by the Chinese Communists, who brought about the tragic death of tens of milions of Chinese under the terror of Mao.
The utmost sin comitted by them, which should be atoned by their offspring forever, is the annihilation of Hiroshima and Nagasaki (of the liberal democratic Japan with robust parliament and judiciary) towards the end of the above war, which had nothing whatever to do with Japan’s surrender.
<KT>
<自分は今まで>「意識を限定・・・」<しようとしてきたと思いますが、>太田コラム<#3577、#3579>を読んで、「意識が広がった」気がします。・・・
太田さんは30歳を過ぎて「単なる詩人」になったと書いておられましたが、本当に「詩人」になられたのでしょうか?
自分は太田さんは「不条理なこと」と戦う気持ちは常に持ってらっしゃるように感じます。
だけど、それは自由の観点からであるので、じゃあ自由とは何だろうか?というのが
自分の今の疑問です。
今度、<オフ会で>その疑問を話させていただきます。・・・
(自由について調べてて、たぶん、自分の主張はジョン・スチュアート・ミルの「功利主義」に近いようです。)
<太田>
ミルについては、下掲の記事も、できれば参照したらどうでしょうか。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/belief/2009/oct/30/john-stuart-mill-on-liberty
それはそうと、次回12月5日のオフ会の出席申込み状況が極めて低調です。
出席ご希望の方は、ふるって↓へ。
http://www.ohtan.net/meeting/
<近藤隆雄>
–Re.Kill Switch 太田述正コラム#3639(2009.11.11)皆さんとディスカッション(続x654)–
Hello Nobby,
君もよく知っている通り、killにはいくつもの意味があります。
http://www.wordreference.com/definition/kill
cause to cease operating; “kill the engine”
kill即殺人の意味なら、kill some time というのは「時間をつぶす」のではなく、「時間を殺人する」ことになる。Killが「殺人」であるためには、objective,行為の対象が「人」でなければならない。
目的語が無い場合はコンテクストで判断します。
<太田> 問題のコラムで、私は「レーダーを殺すために組み込まれた殺人スイッチ」と書いたのだから、読者に誤解を生じる余地は皆無だよ。
だから、これは誤訳とは言えないの。(太田述正コラム#3639)
これでは、レーダー=人といっていることになります。
本文のコンテクストを見ても、このKill Switchに「人を殺す」機能はありません。本文に無い意味を、訳文が持つことは「誤訳」です。
したがって「殺人スイッチ」は明確な誤訳、Nobbyの筆の走り過ぎです。
気のせいかもしれないがおーたんが素直に誤りを認めるのってあんまり見かけないなぁ・・・気のせいかな。
そう、完全に気のせいだな。
だって、典拠、一つもあげられないだろ。(太田述正コラム#3639)
こんなことでつっぱらないで、BE A GOOD LOSER.というのもたまには愛嬌だね。
<太田>
エジプトから帰国して編入した永田町小学校の時(だけ)の私のニックネームを使ったところを見ると、同級生だった近藤君だな。ご無沙汰してます。
件のコラムは、その冒頭に掲げたような理由で、急遽配信することにしたわけで、訳語、訳文は、同時通訳レベルのものだと思って欲しいな。
その上で、「レーダーを殺すために組み込まれた殺人スイッチ」という訳文についてだけど、これ読んだ読者は、「レーダーのオペレーターを殺すために組み込まれた・・・」とは読まず、「レーダーの機能を殺すために組み込まれた・・・」と読むはずだ。
そういう意味で誤訳ではないと言ったのさ。
(しかし、「殺しのスイッチ」なら満点だったねって付言したってわけ。)
全然おかしいこと言ってないだろ。
これで十分だと思うけど、もうちょっと書いておこうか。
実は、私が「殺人スイッチ」という訳語をあてたのには理由があるんだな。
そのコラムの末尾の部分を思い出して欲しいのだけど、自衛隊の米国由来の装備にも kill switch が組み込まれてるんじゃないかって書いただろう。
この末尾の部分を念頭に置きながらあの箇所を書いたため、kill switch がオンになると、その装備を使っている自衛官が殺される、例えば指揮統制システムを「殺」された護衛艦の乗組員達が「敵」の一方的攻撃によって集団「殺人」の対象となる、という光景が頭をよぎり、「殺人スイッチ」という訳語が自然に出てきた、ということさ。
機械的に訳語を導き出したのではなく、一瞬考えてからあの訳語をあてたことを今でもはっきり覚えているよ。
君までもそうだとは言わないが、2ちゃんで本件についてイチャモンをつけたヒト、命のやりとりである実戦をまるでゲームのように見てる脳天気な吉田ドクトリン中毒症の日本人じゃないかって思わず言いたくなるんだなあ。
それでは、記事の紹介です。
太田述正掲示板に9月22日に投稿した「通りすがりのPD」さん、あの時は削除させていただいたけれど、件の人物について、ようやく主要メディアで実名報道がなされるようになりましたね。↓
http://www.asahi.com/national/update/1114/TKY200911130453.html
市橋等の事件の英国での報道ぶりについて、日本人の夫を持つ明治大学講師の英国人女性が批判しています。↓
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/nov/13/lindsay-hawker-japanese-men
話変わるけど、太田コラム用に、これくらいのレベルのコラムを書いてれる日本人の女性、現れないものかなあ。
その日本の女性の皆さん、下掲を読んで意識革命を!↓
・・・experimental economists Uri Gneezy and John List teamed up with Ken Leonard, a development economist, to test whether the “male warrior” stereotype is actually a universal phenomenon. The researchers <conducted> experiment with participants drawn from the Maasai of Tanzania and the Khasi of northeast India. (Subjects were paid for the number of balls they tossed into a basket, rather than doing arithmetic.)
The Maasai are a patriarchal society of cattle herders. The researchers note that among the Maasai, wives are seen as less valuable than a man’s cattle. By contrast, the Khasi are a matrilineal culture, in which family life centers around the mother’s house and both inheritance and clan membership are passed on through daughters. Among the Maasai, the researchers found a male preference for competition that was comparable to that of University of Pittsburgh undergrads. By contrast, in the Khasi group, the pattern reversed itself?it was women who preferred competition. ・・・
http://www.slate.com/id/2234066/
米国の対イラク戦は、途中経過は酷かったけれど、米人種差別的帝国主義者達による ‘irrational ideological’ follyがプラスの成果をあげた珍しい例の一つと総括できそう。↓
しかし、それにしても米国、その見返りに何も得られないなんて可愛そうね。
ま、途中経過が酷すぎたからしゃーないか。
・・・“Following this initial U.S.-dominated reconstruction phase, U.S. private investors have become negligible players in Iraq,” ・・・
It is almost an article of faith among many Iraqis, judging from opinion polls, that the United States invaded Iraq not to topple Saddam Hussein, but to get their country’s oil.
If true, then the war failed in even more ways than some critics charge.
It wasn’t until last week that the first major oil field exploitation contract was signed with a foreign company ? BP, in a joint deal with China’s state-run China National Petroleum Corporation.・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/13/business/global/13iraqbiz.html?ref=world&pagewanted=print
これ、ガーディアンご推奨の線(コラム#3639)だな。↓
・・・The White House sent its strongest signal yet Thursday that it is searching for an eventual way out of Afghanistan even as it considers sending thousands of additional troops to join the war there.
Emphasizing the importance of timetables for U.S. involvement, administration officials stressed that President Obama is concerned about how long American troops will remain in the country and wants to avoid an “open-ended” commitment.・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-obama-afghan13-2009nov13,0,6833129,print.story
世界に天才集団が3つあり、ギリシャ、ユダヤ、イギリスがそうだという趣旨のことを申し上げたことがあったように思います。
では、それぞれ、音楽の面ではどうなのでしょうか。
イギリスについては、音楽は不毛であると以前に書いているので、ギリシャとユダヤを取り上げましょう。それが、今回の一人題名のない音楽会のテーマです。
とここまではよかったのだけど、ユダヤでまず躓いてしまいました。
イスラエルの音楽は、イギリスどころではない、不毛さなのです。
これでは、ユダヤの音楽ということではなく、ユダヤ人の音楽・・共通のユダヤ性を見出すことは困難・・を対象にせざるをえない、という結論になりました。
こういうわけで、今週はギリシャをとりあげたいと思います。
ギリシャは、昔は天才集団だったかもしれないけれど、その後時代を経るに従って冴えなくなってしまいました。
しかも、イギリスの例があるので、古典時代を含め、ギリシャの音楽がそもそも不毛であっても不思議はないのですが、一人屹立しているのが、まだ存命のミキス・テオドラキス(Mikis Theodorakis。1925年~)です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mikis_Theodorakis
さっそく、彼の音楽を聴いてみましょう。
この曲↓を聴いたことのない人はまずいないのでは?
ゾルバ(Zorba)です。これは、1968年初演の、戦前のギリシャを題材にとったブロードウェー・ミュージカルのテーマ曲です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Zorba_(musical)
http://en.wikipedia.org/wiki/Zorba_the_Greek
ギリシャ風景を楽しみながらどうぞ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=8UgndyMfe-8&feature=related
高音質で聴きたい方はこちらもどうぞ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=tytVk-oe984&feature=related
1997年にノーベル文学賞を受賞した詩人オデュッセアス・エリティス(Odysseas Elytis。1911~96年)愛の詩に曲をつけた歌曲MARINAです。(ギリシャからは、もう一人、1963年にG. セフェリスがノーベル文学賞を受賞しています。)
英語の訳詞がテロップで示されます。↓
http://www.youtube.com/watch?v=uMhNwQuX5aU&feature=related
我が子の死を悼む詩に曲をつけた歌曲A day in Mayです。
解説の中で英語の訳詞が示されます。
http://www.youtube.com/watch?v=exHsOVHXPVI&feature=related
テオドラキスは、積極的な政治的活動、とりわけ、軍政(1967~74年)への反対で知られています。
彼の軍政糾弾歌の最高傑作をどうぞ。
テオドラキスが自分で歌ってますよ。
7:06からの最後の歌Imaste dyoだけでいいでしょう。↓
http://www.youtube.com/watch?v=XcdZFiQWwEs&feature=related
彼の軍政終了奉祝歌To gelasto pediもすばらしい。
ドイツ語の訳詞がテロップで示されます。
テオドラキスが指揮をしています。↓
http://www.youtube.com/watch?v=MZGsmH7k25M&feature=related
随分、ギリシャの音楽を聴いてみましたが、テオドラキスの域に達しているものには全く出会いませんでした。
誤解を恐れずに申し上げれば、アラブ(イスラム)の音楽によって「汚染」されているものが多いのです。
唯一、印象に残っているのが下掲の歌turkey taverna tavernです。
ほんのちょっとだけど、アラブ・チックでしょ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=2HLv2rikUFk&feature=related
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太田述正コラム#3646(2009.11.14)
<東欧の解放(その1)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x657)
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