太田述正コラム#3649(2009.11.16)
<皆さんとディスカッション(続x659)>
<βΒΒβ>(「たった一人の反乱」より)
≫アクセルやクラッチを知らない人は滅多にいないだろうけど、さすがにキルスイッチはマイナー過ぎる専門用語じゃね? ≪(コラム#3647。ΓΓΒΒ)
F1ファンなのでねw
マンセルがフィニッシュ直前にキルスイッチ押して優勝を逃したりだとか、佐藤琢磨がスタート前にキルスイッチ押してリタイアしたり。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%AB
http://blog.livedoor.jp/markzu/archives/27767689.html
<ΓΒΓΒ>(同上)
普天間移設非公式協議 98年3月当時、米「県外可能」を伝達(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152829-storytopic-53.html
<太田>
笑っちゃうね。
後出の木阿弥さん引用の日刊ゲンダイ記事を読めばお分かりになるが、こんな答えが明白な愚問を守屋や防衛政策課部員が米側に発していたとはね。
「・・・<日米非公式協議の概要 「普天間」移設関連部分(要旨)>1998年3月13日
防衛庁防衛政策課部員:県内移設の理由としてわれわれが言っているのが、沖縄の戦略的位置ということ。地元などには非常に言いにくいのは、沖縄に海兵隊を支えるためのインフラがあることそのものが、在沖海兵隊の県外移設を難しくしている、ということだ。
キャンベル国防次官補代理:それは違うのではないか。
事実は、日本政府が、沖縄以外で海兵隊のプレゼンスを支える基盤を米側に提供することが政治的に不可能だ、ということだろう。
日本側の政治的事情と米側の作戦上の理由を混同してはならない。
防衛政策課部員:仮に日本政府が北九州や四国なりに適当な基地や厚生機能など軍事インフラを提供すれば、沖縄の第3海兵機動展開軍(3MEF)は、そこに移駐することが可能か。
キャンベル氏:当然だ。沖縄以外にそのような場所があれば、われわれは瞬時に移駐を決断するであろう。
守屋武昌審議官:それは、これまで聞いている話と随分違う。
防衛政策課部員:沖縄の3MEFすべてではなく、例えば第36海兵航空群か第3海兵師団を県外に移駐することも理論的には可能か。
守屋審議官:沖縄所在の3MEFの具体的にどの部分が県外に移駐可能かについてのアウトラインを示すことは可能か。
キャンベル氏:そのような検討は、日本側が移駐先候補地を極めて具体的な形で米側に示してからでないと、とてもできない。
ポイントは政治的なリスクを減ずることだ。しかし、県道104号越え射撃訓練の分散実施だけで、各地で騒ぎが起こっており、何千という海兵隊員の常駐を受け入れてくれる場所が一体日本のどこにあるというのか。
守屋審議官:県外移駐が米側として運用上受け入れ可能ということがもっと以前に分かっておればと思う。」
<木阿弥>
太田さん、毎日メルマガを楽しみにしています。
私は過去に<コラム#3029で>、北海道新聞に載った書評を<「元の木阿弥」名で>報告させて頂いた者です。
その際せっかくメルマガにてご紹介くださり、当方の感想に対してコメントを下さったにもかかわらず、スルーしてしまったことをお詫びするしだいです。
頂いたコメントに釣られそうになりましたが、物臭な性分には勝てませんでした。
そんな物臭ですが、どうしても太田さんの分析と見解を伺ってみたいことがあり、メールを出してみることにしました。
勝手な言い分ですから、ご面倒であればスルーして下さってもかまいません。
実は最近になって、以下の記事を見つけました。
【普天間移設 ウルトラCは佐賀空港】(日刊ゲンダイ2009年11月9日掲載)
『米軍再編の日米交渉に関わった米外交官は、普天間移設先として佐賀空港が「ナイス・ロケーション」と判断し、日本政府に提起したというのだ。「佐賀空港は発着便が少ない。周囲に住宅もない。沖縄の普天間飛行場を移転するのにもってこいだ」と米外交官は言ったという。』
http://news.livedoor.com/article/detail/4446207/
実際の問題として、現在民間飛行場として運用されている佐賀空港を廃止したうえで周辺の農地などを買収しなければなりませんので、時間的な問題も含めて非現実的な選択肢だとは思いますが、はたして本当に米外交官がそんなことを言い、米国としての一案だったかが、まず一点。
次に、米軍は普天間移設に関して、キャンプ・シュワブとの統合運用を念頭に置いていると思われるのですが、逆にキャンプ・シュワブと飛行場をパッケージで設置できる代替地があれば、特に辺野古沖にこだわらずに九州か四国辺りならば容認できると考えているのか、という点です。
最後に、普天間の辺野古沖移設は避けられないものとして計画が進み、その代わり嘉手納基地を西日本のどこかにそっくり移転しても、米軍として運用には支障がないと考えているか、との点です。
その代替地を日本側が探して提供できるのかとの問題は残るものの、政府として決断できないことはありませんし、米軍が問題ないと考えているならば残るのは日本としての判断でしょう。
以上ですが、本当に米軍に出て行けと主張するならば、国防か極東の安定かによって質量的な程度の違いはあるものの、その削減分を自衛隊の増強によって補完しなければならないと考えます。
また、日本に駐留する米軍としてもリスクの分散を考えているならば、沖縄に集中するよりも可能な部分は部隊を移転したいとの意見を持っているのではないでしょうか。
拙い素人意見を述べましたが、ご所見を伺いたいと願います。 草々
最後になりましたが、天皇陛下御即位20年をお祝い申し上げます。
<太田>
あなたが引用してくれた日刊ゲンダイの記事中の
「・・・世界中に出撃する海兵隊は、沖縄の基地から単独で行くのではなく、まず佐世保港(長崎県佐世保市)から強襲揚陸艦が沖縄に出発、沖縄で海兵隊を乗せて目的地に向かう。朝鮮半島で有事の場合、佐世保から沖縄まで約2日かかり、沖縄での搭乗に数日、そこからまた九州方面に戻ってから朝鮮半島に向かうので、航路で4日分ロスしてしまう。海兵隊基地が佐世保に近い佐賀空港にあれば、大幅に出撃時間を短縮できるし、佐賀県は北朝鮮まで760キロ。沖縄の1400キロの半分だ。・・・」
は、(「佐世保から沖縄まで約2日かかり」のくだりを除けば・・その理由はすぐ後で書きます・・、)まさにその通りですよね。
さて、問題はそれから先です。
沖縄には、佐世保のような、高度な艦船造修機能のある港がないので、米国が揚陸強襲艦を日本に前方展開するとすれば、母港は日本本土の港しかないわけです。
しかし、揚陸強襲艦に乗っける海兵隊の地上部隊は、そりゃ揚陸強襲艦の母港の近くの方がいいに決まっているけれど、その母港の近くに演習場を確保できなければだめだ。だから、地上部隊は沖縄にとどまらざるをえない、という理屈なんだけど、地上部隊なんて、装備ごと輸送機で運べばいいはずだ。
佐世保のケースであれば、その近傍の長崎空港かその対岸の自衛隊の大村飛行場に運べばいいんだな。
ということは、この地上部隊がグアムにいたっていいわけさ。
何せ、空輸するのであれば、沖縄とグアムとの差は数時間のオーダですからね。
だから、米国が在沖海兵隊の司令部機能をグアムに移転するのであれば、地上部隊も一緒に移転すればいいんです。
なぜ、それをやらないか。
その理由は、米国が、意地汚く、日本の思いやり予算の分け前に与り続けようとしているからだけでしょう。
地上部隊にとって不可欠であるところの演習場が沖縄にあるたって、火砲の長距離射撃訓練さえままならず、日本本土の各地の演習場を転々として火砲の射撃訓練をやっている・・しかも、その追加的経費を日本政府に支払わせている・・ような始末なんですぜ。
二点補足しておきましょう。
第一に、沖縄の米軍全体としては、兵士が重大犯罪を犯す度合いは決して高くはないけれど、その中で、海兵隊は相対的に高い。その海兵隊の上澄み部分である司令部をグアムに移転させてアブナイ手足の部分を沖縄に残すというのはいかがなものか、ということですよ。
しかも、日本側からしてみれば、駐留なき安保じゃ日米安保の信頼性が低下してしまうので、若干は米軍を日本に残して置きたい。
その場合、一番いいのは、家族帯同者を日本に駐留させることです。
言うまでもなく、米国にとって、いかに属国であろうと外国である日本を自分自身ほど真剣に守ろうとはしない。
しかし、米軍の兵士がいる、しかも、その家族もいるとなれば、その安全を図らなければならない。その結果として日本が守られるという反射的利益を日本は受けることができるわけです。
しかし、海兵の地上部隊じゃ、大部分の兵士は数ヶ月のローテーションで他に移ってしまい、家族も帯同していない。
となると、日本側にとっては、もっとも人質としての値打ちの低い人々だ、しかも、犯罪率も高い、ゆえに好ましからざる連中だ、ということになっていまうということです。
第二に、世界広しと雖も、海兵隊が(形の上では海軍に所属しているけれど)事実上陸海空の3軍と対等な存在であるのは米国だけです。
どうしてそうなったのか、説明は省きますが、冷戦終焉後の米軍の全面的削減にあたって、海兵隊のこのような地位が引き下げられるどころか、海兵隊の兵力削減割合すら他の3軍に比べて相対的に少なかったのです(典拠省略)。
これは、全面解体されても不思議ではなかった在沖海兵隊を、日本の思いやり予算を一つの有力な根拠として死守することに成功したからだ、と私は勘ぐっているのです。
こんな、米軍内部での勢力争いに日本が関与する必要は全くない、というのが私の考えです。
(若干補足しておきますが、米軍による上陸作戦だって海兵の専売特許ではなく、朝鮮戦争当時の仁川上陸作戦だって、(第一)海兵師団だけで実施したのではなく、陸軍の(第7)歩兵師団と韓国軍の一部と一緒に行ったものです
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%81%E5%B7%9D%E4%B8%8A%E9%99%B8%E4%BD%9C%E6%88%A6
し、現在は、海兵師団は、もっぱら、イラクやアフガニスタンといった内陸部で、軽歩兵師団として運用されているところです。)
なお、
>本当に米軍に出て行けと主張するならば、・・・その削減分を自衛隊の増強によって補完しなければならないと考えます。
についてですが、日本が集団的自衛権を行使すると決意さえすれば、自衛隊を増強するまでもないでしょうね。
(揚陸強襲艦は日本に残るとすれば、別段海兵隊が日本から撤退したことにはならないことを考えればなおさらです。)
<通りすがりのPD>(2009.9.22)
–呆れた東京大学工学部の教員採用の失態–
去る8月29日の朝日新聞Be フロントランナーで知ったのですが、このような人物を何の疑いも無く採用するとは、↓東大工学部も随分質が落ちたものです。
http://www29.atwiki.jp/serkan_anilir/
まだまだ日本には(東大ですら)外人コンプレックスがあるのかもしれませんね。
<通りすがりのPD>(2009.11.15)
朝日新聞が調査をした結果、下記のような記事が掲載されました。
http://www.asahi.com/national/update/1114/TKY200911130453.html
また、先の朝日新聞Be フロントランナーについては、(紙面のみですが)訂正とおわびを掲載したようです。
<太田>
お気づきにならなかったようですが、コラム#3645(2009.11.14)で、その朝日の記事を紹介したところです。
<通りすがりのPD>
これは大変失礼致しました。太田様もよく覚えていらっしゃいました。
この事件、大学教育の有り方や高等教育に携わる教員の資質とは?といった問題以上に、「人は何を持って信用に足ると信じてしまうのか?」といったある種の社会科学の実験めいた側面もあり、なかなか興味深いものです。
<太田>
記事の紹介です。
手塚治虫、もっともっと世界に知られていいですよね。↓
・・・In her lavish new book The Art of Osamu Tezuka: God of Manga, Helen McCarthy acknowledges that her subject is not exactly well known in the west. The first chapter is titled: “Osamu Who?” The fact that the question needs to be asked is indicative of the enduring bafflement with which we regard Japanese pop culture. And the Japanese are not nearly as insular as us: were you to launch a book about Walt Disney over there, its opening chapter would not have to be titled: “Walt Who?”・・・
That disconcerting blend of seriousness and farce is, perhaps, one reason why manga’s penetration into western culture is still somewhat limited. But thematic seriousness and low comedy coexist in Chaucer and Shakespeare, while emotional truth and physical caricature get along just fine in Dickens. So Tezuka might yet take off in Britain, especially if Astro Boy is a hit.・・・
http://www.guardian.co.uk/books/2009/nov/15/sam-leith-astro-boy
支那における黒人差別も根強いものがあるようです。↓
・・・As the country gets ready to welcome the first African American U.S. president, whose first official visit here starts Sunday, the Chinese are confronting their attitudes toward race, including some deeply held prejudices about black people. ・・・
The racial animosity here reflects a prejudice dating to China’s mainly agrarian past: Darker skin meant you worked the fields; lighter skin put you among the elite. The country is rapidly industrializing and urbanizing, but that historical prejudice remains. High-end skin-whitening products are a $100 million-a-year business in China・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/11/14/AR2009111401147_pf.html
要するに、米国のアジア政策は、いつも目先の利益だけを追求したものだったってことさ。↓
・・・The bluntest criticism, made just a few hours before Obama’s arrival in Singapore, came from Mexican President Felipe Calder���n who accused the United States of moving “in the opposite sense of free trade.” Chinese President Hu Jintao and his Russian counterpart, Dmitry Medvedev, in separate speeches, also assailed protectionism. They didn’t finger the U.S. directly, but they pointed in Washington’s direction.
China has been particularly vociferous in recent weeks with complaints that Washington is unfairly restricting imports. This follows a series of disputes involving car tires, steel pipes and other goods.
Such complaints mark a curious reversal of roles: The United States established itself as a power in Asia at the end of the 19th century by championing free trade with China, a push that President William McKinley dubbed the “open door” policy.
Lee Kuan Yew, Singapore’s founding father, warned Friday that the United States has lost its way on trade, declaring that it “will have aircraft carriers” but no real clout unless it takes a page from China’s playbook and puts economics at the center of foreign policy. If Washington continues on a course set under the Bush administration, added Lee, who goes by the title minister mentor, “you are out of the economic race.” This will undercut America’s role as a military power, too, he said. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/11/14/AR2009111401418_pf.html
チェコのビロード革命に結果として大きく貢献したロックバンドの話(コラム#3506、3648)がまた出てました。
歴史は、やりたいことをやろうとしただけのフツーの人を、時として英雄に仕立て上げちゃうことがあるんですね。↓
・・・Many members of the younger generation <in Czech> have no idea who they are. While other rock stars tour the world and drive flashy cars, Mr. Janicek makes a living by delivering hot meals to a nursery school where the children know him as “Mr. Lunch.”・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/16/world/europe/16iht-czech.html?_r=1&ref=world&pagewanted=print
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太田述正コラム#3650(2009.11.16)
<東欧の解放(その3)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x659)
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