太田述正コラム#3669(2009.11.26)
<皆さんとディスカッション(続x669)>
<amida>
–信仰について–
アメリカ人の90%以上が神や超越的なるものの存在を信じているということから米国は病んでいると言われるが、どの国でも同じようなもので、むしろそれは社会が健全である証拠ではないでしょうか。
先生は頭がいいので、科学的な根拠に基づかないことは信じないと言われるのでしょうが、先生もニーチェのように宗教を畜群道徳とみなす立場に立っていらっしゃるのでしょうか。
人間の理性・知力は人間とこの世界のすべてを対象化し認識できるのでしょうか。
ルネサンス以降の啓蒙主義、近代合理主義にのっかて地獄を見たのが人類の歴史だったのではないかと思います。
まあ色々宗派があり宗派にそれぞれ独自の見方はあるでしょうが、信心はわたしのような愚物にとって愚物のままで魂を救ってもらうという単なる学問以上の貴重な体験であり、わたしのような凡夫の人間の人生に光をもたらす不可欠な道だと思うのです。
決してマルクスの言うような弱者のため息ではなかったと宗教を見直した経験があるので、そう確信します。
愚物の管見に失笑されるでしょうか。
<太田>
>ルネサンス以降の啓蒙主義、近代合理主義にのっかて地獄を見たのが人類の歴史だった
太田コラム読者がこんなことおっしゃっちゃいけません。
何度も申し上げてきたように、「<欧州における>ルネサンス以降の啓蒙主義、近代合理主義」は、要するに神抜きのキリスト教であり、(かつ、私見によれば、それに途中から、コンプレックスに起因するアングロサクソン超克のむなしい試みが加わったものであり、)「地獄を見た」のはそのためです。
もうじき、非公開シリーズで、裏付けとなるJohn Gray の本を、改めて紹介するので、このシリーズのコラムが公開された暁に、読んでみてください。
ところで、現在公開中の「「自分」は存在するのか」シリーズをお読みになればお分かりになるように、「自分」すら定かでなさそうです。
だとすれば、「神や超越的なるもの」が仮に存在するとしても、それが、何らかの意思をもってこの宇宙を統一的・整合的に動かしているとは、やはり思えません。
ということは、そんなものは存在していないと考えても、一向に差し支えないのではないか、と私は思うのです。
まあ、このあたりは、今度のオフ会でMSさんがされる話にも関連してきそうですね。
ついでながら申し上げておくと、私は、宗教の中で、無神論に立脚し、瞑想を重視する宗教・・代表例は仏教・・だけは評価しています。
金銭的な現世利益こそ得られないけれど、精神的/肉体的な「現世利益」が得られることが科学的にほぼ証明されているからです。
このことも、これまで何度かコラムの中で触れてきたと思いますが、(必ずしも最適のものではないけれど、)直近の典拠を一つだけあげておきましょう。↓
Could the mental relaxation produced by transcendental meditation have physiological benefits? ・・・
・・・it may, at least in the case of people with established coronary artery disease.・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/24/health/research/24regi.html?ref=health&pagewanted=print
では、上記以外の記事の紹介です。
これほど金銭感覚が麻痺し、かつ順法精神もない男は、禁治産者であると言ってもよろしい。
そんな男が、よりにもよって、一国の首相をやっているとはね。↓
「実母から首相に十数億円 実母の参考人聴取も検討・・・」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091126/crm0911260146004-n1.htm
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009112602000106.html
沖縄の皆さん、マッチポンプはもう止めようね。↓
「・・・社民党の重野安正幹事長らは25日に首相官邸を訪れ、普天間飛行場の県外・国外への移設を求める緊急提言を平野博文官房長官に手渡した。同席者によると、沖縄県出身の山内徳信参院議員は県内移設の動きに対し「私を殺してからやれ」と迫ったという。
在日米軍基地が集中する沖縄問題は平和を掲げる党の生命線だ。連立政権合意にも「基地のあり方の見直し」を盛り込ませた。緊急提言では普天間飛行場のグアム島や硫黄島への移転検討を要請。ある衆院議員は「県内移設なら離党を決意する」と語る。・・・」
http://www.asahi.com/politics/update/1126/TKY200911260007.html
「・・・ 沖縄の米軍用地のうち、八十一平方キロメートルが民有地で契約地主は四万五百人いる。防衛省は民法に基づき、原則二十年に一度契約更新しており、その際、地主一人につき十万円の更新協力費を支払っている。
沖縄が本土復帰した一九七二年から二十年経過した九二年ごろに一度支払い、今回、二度目の契約更新の時期を迎えた。一〇年度は七十二人、一一年度は五十人と少ないが、一二年度は三万六千人となり、支払額は約三十六億円にはね上がる。
契約を拒否している地主や、本土の米軍に土地を提供している契約地主六千五百人には更新協力費は支払われていない。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009112602000108.html
このまま行くと、次の台湾総統は、再び民主党が奪取することになりそうです。
しかも、女性の総統の誕生です。↓
Voters’ confidence in Democratic Progressive Party (DPP) Chairperson Tsai Ing-wen (蔡英文) surpassed that of her Chinese Nationalist Party (KMT) counterpart, President Ma Ying-jeou (馬英九), for the first time since the two took charge of their respective parties・・・
http://www.taipeitimes.com/News/front/archives/2009/11/26/2003459449
元英諜報機関MI6の中東要員によるコラムです。
マクロ的に見ると、米国の力の相対的減衰が、世界中を不安定化しつつある、ということでしょうか。
読むと脂汗が滲んできますよ。↓
・・・In recent months, a spate of new agreements have been signed by Turkey with Iraq, Iran, and Syria that suggest a nascent commonality of political vision. A new treaty with Armenia further signals how seriously Ankara means its “zero problem” good-neighbor policy. ・・・
Political players in the region can’t but notice the drift of power from erstwhile US allies Egypt and Saudi Arabia toward the northern tier states, and, as is the way in the Middle East, are starting to readjust to the new power reality. This can be most clearly seen in Lebanon today, where a growing procession of former US allies and critics of the Syrian government, including Prime Minister Saad Hariri, Walid Jumblat, and, reportedly, some of the March 14 movement’s Christian leaders, are making their pilgrimage to Damascus. ・・・
If the Obama administration is not fully cognizant of these developments, its awareness will surely be raised as it attempts to mobilize the world for a new round of punitive sanctions against Iran.
These sanctions are likely to fail not only because Russia and China won’t go along in any serious way, but precisely because the much touted “alliance of moderate pro-Western Arab states” is turning out to be a paper tiger. ・・・
http://www.csmonitor.com/2009/1125/p09s14-coop.html
故アイン・ランド(コラム#3661)がいまだに大きな影響力を米国で持っていることの現れです。コワーイねえ。
こんな協会があるんですなあ。
その協会の副会長が感謝祭(Thanksgiving Day)にコラムを寄せています。↓
<筆者の>Debi Ghate is vice president of academic programs at the Ayn Rand Institute, which promotes the philosophy of Ayn Rand, author of “Atlas Shrugged” and “The Fountainhead.”
http://www.csmonitor.com/2009/1125/p09s01-coop.html
最後になりましたが、一昨日夜、事業仕分けについて、某TV局の録画撮りが拙宅で行われるはずのところ、急遽プログラムが変更になったとして中止になったのですが、その時話すつもりだったことを、ご披露しておきましょう。
立法府の議員の仕事のメインは予算作りと法律作りであり、議員内閣制の下では、与党の議員は、もっぱら、行政府内で非公開での予算案作りと法案作りを、そして野党の議員は、もっぱら、立法府で、原則公開で予算案と法律案の批判を行うべく、選挙民の付託を受けている。
ところが、予算案作りのプロセスで、統一的査定方針が示されないまま、議員以外の、実質的にも形式的にも資格があるのかどうか不分明な「有識者」達が中心となって、しかも公開で、事業仕分けなる予算案作りが行われていることは、理解に苦しむ。
そもそも、多くの予算には、公開の場での議論になじまない部分がある。
防衛省の予算はもとよりだが、科学技術予算の大部分も軍事安全保障と無縁ではないところ、そんな議論を公開の場で行うわけにも行くまい。
より一般的に言えば、予算には多かれ少なかれ、経済合理的要素以外の政治的要素があるわけだが、とりわけ外国と何らかの関係がある予算について、かかる政治的要素を公開の場で摘示して議論するなどということは、いらざる軋轢を招く恐れがあることから、慎むべきだろう。
逆に言うと、かかる議論を公開することで、事実上こういうホンネの議論を要求元が行うことを封じておいて、一方的にかかる予算を批判の俎上に載せることは、一種の人民裁判であり、害がはるかに利を上回っているように私は思う。
もっとも、以上のような制約はあるものの、私は、公開の場で予算を審議する意義そのものを否定しているわけではない。
まさに、そのためにこそ、立法府内に、(委員会の中で最も規模と格式が上の)予算委員会が衆参両院に設置されているのだ。
(更に言えば、必要な場合、秘密会を開くことも認められている。)
ところが、戦後長らく、予算委員会でまともな予算審議が行われたためしがない。
事実上戦後初めて政権交代がなった現在、与党議員が責任を持って作り上げた予算案を、野党議員が予算委員会で徹底審議する絶好のチャンスが到来したはずだ。
ところが、与党議員は、予算案作りを放り投げ・・小沢民主党幹事長は民主党一年生議員に事業仕分けに参加することすら禁じた!・・、野党は、事業仕分けが国会ないし国会議員軽視であるという本質的批判すらしない、というのだから、嘆かわしい限りだ。
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太田述正コラム#3670(2009.11.26)
<米国の世紀末前後(続々)(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x669)
- 公開日:
太田さんは『Ayn Randがいまだ大きな影響を米国で持っている』とおっしゃってますが、米国在住の者の感覚としては、現代米国イコールAyn Randといいたくなります。
片田舎の大学でも芸術・建築関係のコンテストがあれば、Howard Roark (Rand の出世作、The Fountainhead の主人公)がどうしたこうしたというコメントや落書きが良く見られるますよね。Obama の医療保険制度改革に反対するワシントンのデモ・集会のプラカードにはAyn Rand Was Right(CATO Institute のEdward Crane 2007年の記事、http://www.cato.org/pubs/policy_report/v29n6/cpr29n6-2.htmlの題名をパックものか?) ヒラリー・クリントンは若いころにAyn Randに影響を受けたといわれていますが(http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2009/11/ayn-rand.html)
彼女を批判する論説もしばしばAyn Randに引っ掛けて行われるといった具合で
右も左も何かといえばAyn Randですよね。引用されているDebi Ghate の記事もAyn RandのThe Virtue of Selfishnesssそのもの。Howard Roarkならこんなくだらない記事書かないと思いますが
最近、Ayn Randの身内以外の研究者・ジャーナリストによる評伝が二冊出て
(Goddess of the Market: Ayn Rand and the American Right (Oxford University Press, 2009) by Jennifer Burns とAyn Rand and the World She Made (Doubleday, 2009) by Anne C. Heller)面白かったと思ったら、太田さんが(未公開)コラムを執筆されたのを発見して、もし公開されるのであれば、ぜひ読ませていただきたいです、楽しみです。
ただ太田さんが The Ayn Rand Institute (http://www.aynrand.org) のことをご存じない(本当に?)のにはちょっと以外な感じがしました。家元のThe Ayn Rand Institute 以外にもThe Atlas Society (http://www.objectivistcenter.org/) やThe Journal of Ayn rand Studies (http://www.aynrandstudies.com/) は活発に活動してますよね。あとAyn Rand の小説ファンの紳士淑女の出会いを請け負うサービスThe Atalsphere(http://www.theatlasphere.com)なんてのもありますが・・・いかがでしょう?
核心に迫る太田先生のコラムを読むのをいつも楽しみにしているものです。
>自衛隊の編成装備は「有事」を前提として定められていることから、当然、自衛官の数は余裕をもっていなければならない。
と太田さんはおっしゃいますが、
自衛隊が本当に有事を前提としているなら、自衛隊の現在の予備役の数は適正だと思われますか?
もしくは、日本の世論の理解が少な過ぎるので、防衛省は予め予備役の余力を現役兵の中に組み込んでいると見るのが正解なのでしょうか?
自衛隊が米軍を補完する戦力であるとしても、自衛隊の現役兵対比予備役充足率をみていると、本当の有事にDefconレベルが上がる毎に過労死する隊員が出るのでは?と思ったりもします。
太田先生のご見解をお聞かせください。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ampobouei/dai8/8siryou1.pdf