太田述正コラム#3693(2009.12.8)
<皆さんとディスカッション(続x678)>
<文十郎>
–新著『日本「独立」論(仮称)』の出版について–
出版社を見つけるよりも、いっその事、iTunesで電子ブックとして配信出来ないのでしょうか?
もちろんiTunesでなくてもいいのですが。
近い将来著者自身が電子ブック出版出来る様になる気がします。
<太田>
電子ブックであれ、自費出版であれ、出版社を介して出版する場合に比べるとどうしても質が低くなりがちです。
出版社は、採算がとれるかどうかというリスクを背負うことから、編集、校正に力を入れざるをえないからです。
もとより、カネを出して出版社に本を出してもらうこともありますが、その場合でも、定評のある出版社なら、編集、校正に手を抜くことはありません。
<Chase>
先日はお世話になりました。
新しいレジュメ案、斬新で新鮮です。
気づくことがあれば、考えてみます。
次著で少しでも力になれるように頑張りたいと思っております。
また私の方でも、別途、支援サイトのようなものを立ち上げ、太田テーゼの整理や
図解化の作業等、太田思想の体系化?
の試みを非力ながら続けていきたいと考えておりますので今後ともよろしくお願いします
<太田>
こちらこそ、どうぞよろしく。
<KT>
オフ会で発表できなかった自分の感想文です。
–自由とは何か?–
1.自由の言葉と意味
辞書で調べると、
自由(名・形動)
1)〔freedom; liberty〕他からの強制・拘束・支配などを受けないで、自らの意志や本性に従っている・こと(さま)。
自らを統御する自律性、内なる必然から行為する自発性などがその内容で、これに関して当の主体の能力・権利・責任などが問題となる。
とあります。
日本では往生楽土、楽市楽座の語に見られるように、「楽」を「自由」という意味で使う用法があった。
中国では本来、「自由」は、好き勝手や自由気ままという意味で用いられて、日本も当初中国と同じ用法(自由出家、自由狼藉)で用いられてた。(日本語wikiより)
つまり、「楽」が今の「自由」の意味、昔の「自由」は、責任から逃れる、退く、という意味があった。
(→こりゃ知りませんでした。ご教示どうもありがとう。(太田))
福沢諭吉が「liberty、」を訳するに際して、仏教用語より「自由」を選んだそうです。(日本語wikiより)
(仏教用語の「自由」を少し調べましたが、個人限定の心のありよう、自律、自己救済、という意味の「自由」(悟りをえる)としている文が多かったです。
(→これは私も知っていたけど、仏教用語と言ったって、日本で使われていた仏教用語でしょう? だとしたら、先ほどの「昔の「自由」」とこの仏教用語としての「自由」・・やはり昔から使われてきた・・との関係を説明しなきゃいけません。(太田))
でも、アフガニスタンやイラク、ソマリア等で同じように個人限定の自由を唱えれば、それは本当に自由なのかな?という疑問がわきます。)
(→ここは意味不明です。この文章で、「個人限定の自由を唱え」ているのは、一体誰なのでしょうね? それに、そもそも、世界中のどこかで誰かが、本当に「個人限定の自由を唱え」ているのだろうか、と首をひねってしまいます。(太田))
次に、「独立」という言葉の意味を調べますと、
1 他のものから離れて別になっていること。
2 他からの束縛や支配を受けないで、自分の意志で行動すること。
3 自分の力で生計を営むこと。また、自分で事業を営むこと。
4 (法律の拘束を受けるが)他からの干渉・拘束を受けずに、単独にその権限を行使できること。
5 一国または一団体が完全にその主権を行使できる状態になること。
とあります。
「自由」と「独立」は意味が近く感じます。
(→個々人の自由を論じていたはずなのに、急に国の自由の話が出てくるのでとまどってしまいます。(太田))
この言葉の通りだと、日本は、「独立」しているのかというと、「独立」していません。
太田コラム読者ならご存じと思いますが、日本はアメリカに安全保障を丸投げしています。
(→このくだりは、3に持って行くべきでした。(太田))
2. 「自由」が最初に提唱された所
さきほど、アフガニスタンやイラク等で同じように個人限定の自由を唱えれば、それは本当に自由なのか?という疑問からですが、太田さんのコラムを読みますと、国全体が自由だったというのがアングロ・サクソン文明のイギリスです。
イギリスの歴史は、まだ少ししか知りませんが、エリザベス朝時代にスペインの無敵艦隊に勝利して、プロテスタント・カトリックの対立が終わり、文化的に充実した時代だということが国としての自由なのかなと感じました。
(→「プロテスタント・カトリックの対立」というのは、やや単純化しすぎた、かつ少しズレた整理の仕方です。いずれにせよ、典拠が必要です。(太田))
あと、チャールズ1世が議会と対立して、1628年に議会が「権利の請願」を提出して、一旦はチャールズ1世は受託するのですが、翌年に議会を解散させて、議会の指導者を投獄し、専制政治を行うのですが、スコットランドにも国教をおしつけるので、反乱が各地で起きます。その反乱を抑えるために、戦費を得る目的で1640年に議会を召集したけど、議会は国王批判の場になってしまいました。
1642年にチャールズ1世は、反国王派の5人の議員を逮捕しょうとして失敗し、ついに、王党派・議会派の内戦が起きます。
これが清教徒革命のはじまりです。
この時、チャールズが戦費を得るために、議会を召集したというのが疑問に思って、普通の独裁政治なら、議会を開かずに戦費を得れるんじゃないかと思いました。
たぶん、ここが自由主義の重要な部分だと思います。
つまり、国民が偏った権力を認めないという意思を持ってれば、自由は機能するのかなということです。
(→イギリスは、ずっと昔から議会主権の国であり、自由主義の国でもあります。これは、私のアングロサクソン論の基本中の基本であり、過去の関連コラムを読んでよく勉強して下さい。なお、清教徒革命(イギリスの内戦)そのものを扱ったシリーズも太田コラムにはありますよ。また、これ以上繰り返しませんが、典拠を付けましょうね。(太田))
イギリスでの「自由」についての哲学は、清教徒革命以降、イギリス経験論や啓蒙思想、功利主義等、個人の自立・国の自立について考えたものが、イギリスで多く生まれてます。
個人的には、功利主義と実存主義が好きです。
(→実存主義は欧州の現代哲学であり、イギリスで生まれたものではありませんよ。また、あなたがどうしてこの両主義が好きなのか、理由を述べる必要があります。(太田))
功利主義・・・功利主義とは、善悪は社会全体の効用(英: utility)あるいは功利(功利性、公益)・機能(有用性)によって決定されるとする立場である。基本的に倫理学上の立場
実存主義・・・人間の実存を哲学の中心におく思想的立場。あるいは本質存在 (essentia) に対する現実存在 (existentia) の優位を説く思想。
3,自分の考えてる「自由」
太田さんは「たかじん」の番組で、今の政治家たちを「被害者」だとおっしゃいました。
なんの被害を受けたのか。理念の欠如、国民の「最大多数の最大幸福」を考えるガバナンスの欠如、等です。
なぜ被害が起こったのか。吉田茂が晩年に後悔した「吉田ドクトリン」です。
安全保障をアメリカに任せて、経済のみに集中する考えです。
自民党がずっと持ち続け、政官業の癒着が蔓延して、民主党政権になり、現在に至っています。
自分の考えてる自由とは、自分の問題を他人のせいにしない、同調圧力をしない、自立した生活をする、世界がどういう状況か理解する、それが国(=自分たちのこと)の問題であるならば対応する。
軍隊は自分たちの問題に軍事力で対応するため、主権を守るか行使するためにある。
だけど、この国には軍隊をもってはいけない事になってる。
(→このくだり、太田コラムをおおむねきちんと消化していただいているようで、大変結構だと思います。(太田))
自分は、人間が進化してきた動物で、霊長類サル目ヒト科、ホモ・サピエンスだというのを知ってます。
そして、なぜか今現在、この国にいて、自由で法がある、ということを太田コラムで気づきました。
(→ここのところ、残念ながら意味不明です。(太田))
まだ細かく言えませんが、イギリスの自由の土台は個人主義、日本の自由の土台は人間主義なのかな、と太田コラムを読んで思ってます。
(→当たらずといえども遠からずですが、これまであなたが述べてきたことと、この最後の文章はつながっていません。いずれにせよ、「細かく言え」ないようなことを、そもそも言ってはいけませんね。(太田))
<太田>
真面目な話をする時、こんな風に自分が話す内容を書きだしてみることはとても良いことです。
オフ会の設営をやっていただいた上に、これだけむつかしい話の準備もされたのですから、大変だったでしょう。
頑張りましたね。
引き続き、よろしくお願いします。
では、記事の紹介です。
北朝鮮の人々ができる、金王朝打倒運動は、子供をつくらず、北朝鮮を自然消滅させることくらいだけど、やってごらんなさい、と言いたくなるね。↓
「・・・<北朝鮮の>今回のデノミは、外貨保有の割合が高い北朝鮮の中間層以上の階層には影響が大きくない一方、一般住民の生活を急激に悪化させる見込み・・・」
http://www.chosunonline.com/news/20091208000022
オフ会の話の中ででMSさんが言及したヒッグス粒子のヒッグス氏(Peter Higgs)のインタビュー記事がシュピーゲル誌に載ってました。ヒッグス氏、影響を受けた科学者の筆頭に南部陽一郎(Yoichiro Nambu)氏をあげてますよ。↓
http://www.spiegel.de/international/europe/0,1518,665144,00.html
そうか、選挙で共産党政権が樹立された例もあったんだ。
また、戦間期に高度経済成長した国が日本以外にもあったんだ。↓
・・・After 1945, the reborn Czechoslovakia was unique in central Europe in “voluntarily” courting Soviet support and voting the Communists into power, writes Heimann. Subsequently, it developed into “one of the most hardline, authoritarian European states”.・・・
It is true that Czechoslovakia’s postwar transition to Communism was uniquely smooth. However, to say it was voluntary is stretching a point. What choices did Prague have? The brutal imposition of Communism in other east European states shows how limited Czechoslovakia’s options were.
・・・its economic transformation between 1918 and 1938 into one of the world’s richest states・・・
http://www.ft.com/cms/s/2/325858d4-e05a-11de-8494-00144feab49a.html
米国人はより孤独になりつつあるというけれど、デイヴィッド・リースマン(David Riesman。1909~2002年)の『孤独な群衆(The Lonely Crowd)』は、米国人そのものなんだな、と改めて思います。
移民の国の中で、個人主義でかつ母国と意識的に自らを切り離したのは米国だけですからね。
そんな孤独な米国人達が、人種主義的帝国主義というイデオロギーにかぶれたのは、当たり前ってことになりそうです。↓
・・・like a virus, loneliness is contagious. People become lonely because of who they know as much as who they don’t know. It makes sense, really. When people are lonely, they tend to be less trusting and even irritable toward others. This type of behavior can easily make those on the receiving end feel a sense of isolation and loneliness themselves. In other words, lonely people pass on their loneliness. Before alienated people check into a cave, they alienate others, thereby continuing the chain. As the researchers put it, this means that loneliness is “both a cause and consequence of becoming disconnected.”
Just as bad news travels faster than good news, the authors find that the spread of loneliness is “more powerful than the spread of non-loneliness.” In fact, loneliness is so pernicious, it stands to reason that people would go to great lengths to curb its spread. ・・・
・・・loneliness, like fear, is a useful emotion. Ideally, it ought to cause people to seek comfort and safety in other humans, ultimately solidifying necessary social bonds rather than destroying them.
In this study, however, the authors suggest that・・・humans may also shun isolated members of their own species. They speculate that this collective rejection may serve to protect “the structural integrity of social networks” necessary to society. ・・・
Americans are already lonelier than they have ever been. Studies show that we move in smaller social circles and have fewer confidants than we used to. Add to this the probability of loneliness contagion and you get a snowball effect. And there’s more. Because the rest of us shun the lonely, we’ve got a prescription for deep divides and levels of isolation that could threaten the cohesion required for any society to function. ・・・
The more lonely, divided and isolated we become, the less we participate and associate. The fewer people who participate actively in democracy, the more everyone is at the mercy of the loudmouthed extremists and demagogues who do engage.・・・
Research already suggests that social isolation leaves individuals more willing to embrace the abstract certainties of rigid ideologies.・・・
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-rodriguez7-2009dec07,0,1032804,print.column
つい最近まで、その米国が、いかに醜悪な人種差別社会であったか、改めて分かると同時に、ここにも素晴らしいユダヤ人2世がいました。↓
・・・Alice McGrath・・・・played a key role in one of California’s first civil rights cases, coordinating efforts to overturn the wrongful convictions of 12 Mexican American men for the murder of a man found dead near a reservoir known as Sleepy Lagoon. The men were tried en masse in 1940s L.A., amid a climate of racism and open hostility that extended into the courtroom. ・・・
Alice was born on April 5, 1917, the daughter of Russian Jewish immigrants who fled their country because of discrimination.
She died on Nov. 27, with the satisfaction, she told me not long ago, of having seen Barack Obama elected president.・・・
She helped organize a birthday celebration in Los Angeles in 1951 for the distinguished African American author W.E.B. Du Bois, who later became a dear friend; she taught martial arts to women (because she believed it would empower them) and wrote a book about it called “Self-Defense for Cowards”; though not a lawyer herself, she developed a legal aid program for the poor in Ventura County; and she led 85 humanitarian aid trips to war-scarred Nicaragua.・・・
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-lozano6-2009dec06,0,1216740,print.story
ドイツ人一般の心底奥深く蟠っている激しい反米感情や東独時代の反米プロパガンダの影響を割り引かなきゃいけませんが、(東)ベルリンの広島/トルーマン記念館の話は心を打ちます。
これに対して不快感を表明する米国人の愚昧さには、哀れみすら覚えます。↓
・・・ Handsome villas on Karl Marx street here look out on the bending Griebnitzsee River. In one villa, occupied by Harry Truman in July 1945, history itself would fatefully bend.
President Truman called it “the little White House” ? and it was here, while he was in Berlin for the Potsdam Conference, that word arrived of the first atom bomb test in New Mexico July 14. ・・・
・・・Hiroshima memorial, to be privately funded, was approved; the project has a website with lecture notices and bank account numbers for donations. Text for the not-yet-built memorial is now tacked to a leaning 1-by-4-foot wooden slat, on site; it reads in part:
”[F]rom 17 July to 2 August the US President Harry S. Truman lived in the villa opposite. During this period the order to drop the Atomic Bomb was given … by the president. Its destructive power killed hundreds of thousands and brought terrible suffering to the people.”
Sources at the “Hiroshima Platz Potsdam” say・・・<t>hey’ve raised $15,000 of $45,000, with another $15,000 pledged from Japan ? to keep “the memory of the victims of Hiroshima and Nagasaki alive,” as the website states.
Expat Robert Mackay, founder of Friends of Truman House, says the memorial is a “bad idea.” He calls it provocative, a distortion of Truman and the history of the decision to drop the bomb, and possibly offensive to publics in East Asia and other places liberated from Japanese occupation when the war ended shortly after the Nagasaki atomic blast. ・・・
Mackay・・・say<s> that Joseph Stalin also lived a few houses away during the Potsdam Conference. But the city has not remembered millions of victims of Stalin’s Gulag. (The conference divided Europe into zones of Allied responsibility after the war, and arguably initiated the cold war.) “There is no rush to put a plaque up at Stalin’s villa, protesting that he killed 30 million kulaks. But there is approval for an ‘anti-Truman memorial,'” Mackay says. ・・・
http://www.csmonitor.com/2009/1207/p06s19-woeu.html
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太田述正コラム#3694(2009.12.8)
<米国とは何か(続x5)(その3)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x678)
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