太田述正コラム#3477(2009.8.22)
<イギリス反逆史(外伝)(その1)>(2010.1.15公開)
1 始めに
本伝を書いていた時、ネタ本の著者のデーヴィッド・ホースプール自身によるコラムを目にし、ジョン・ウィルキス(John Wilkes。1725~97年)という痛快なイギリス人反逆者に出会いました。
イギリス反逆史の外伝として、このウィルキスという人物をご紹介しておきたいと思います。
典拠は次のとおりです。
A:http://en.wikipedia.org/wiki/John_Wilkes
(8月22日アクセス)
B:http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/john-wilkes-the-scandalous-father-of-civil-liberty-by-arthur-h-cash-469653.html
(8月22日アクセス。Arthur H. Cash; John Wilkes The Scandalous Father of Civil Libertyの書評)
C:http://www.historytoday.com/MainArticle.aspx?m=33580&amid=30288367
(8月16日アクセス。ホースプールによるコラム)
2 ジョン・ウィルキスについて
「・・・ウィルキスは、本、酒、セックスと自由が大好きで、それらを、自由奔放で、暢気で、濃密に生きた人生へとあざなった。
牢獄に出たり入ったり、借金漬けになったり借金から解放されたり、亡命したり帰国したり、気に入られたりそうでなくなったり、宮廷麗人達の寝室に出たり入ったりと・・。・・・
・・・18世紀においては、自由(liberty)とは、「拘束に抗って逃れる、通常、王室または司法に抗って逃れる、という含意があった。
ウィルキスの名前は、自由と事実上同義語となり、「ウィルキスと自由!」は、王室と議会による権力濫用(abuses)に対して抗議をする群衆が唱和する言葉となった。・・・
彼はまた、若かりし頃に、猥褻な韻文を上梓している。
彼の、『女についての随想(Essay on Woman)』は、ポープ(<Alexander> Pope。1688~1744年。イギリスの詩人)の『男についての随想』の卑猥なパロディーだったが、13部すら刷られなかったにもかかわらず、超有名になった。
タイトルが書かれた頁には屹立したペニスと10インチの目盛りを示す物差しとともに描かれていた。
<その頃、下院議員だった>ウィルキスは、<同じクラブのメンバーでクラブで恥をかかしたために>敵となったサンドイッチ卿(<John Montagu, 4th Earl of> Sandwich。1718~92年。サンドイッチを史上初めて近侍につくらせた人物として知られる>)・・彼自身、口汚い放蕩者だった・・によって、<その復讐のため、この韻文からの>下掲の抜粋を上院で読み上げられる羽目になった。
起きろ、ファニーちゃん、つまらんことは止めなよ、
今朝こそ、まぐわい(swiving)がどれほどの歓喜をもたらすかが分かるよ
(人生なんて、何回かの気持ちいい性交(fucks)をして、そして死ぬ、という、ただだけのことなんだから)やろうじゃないか
男の愛すべき姿についてぜひとも詳しく人に語ってくれよな、
立派な<オマンコの>迷路を立派なチンポ(pricks)が入念に探索する<姿を・・>。
・・・
<議場は>大騒ぎになった・・・。
<上院議員の中には、>笑っている者、ショックのあまり座ったまま動けない者、気絶する寸前の者がいた。
これは素晴らしい光景だった。
何と言っても、議員全員に、詩の中の「ファニー」が、サンドイッチの元の情婦のフランシス・ラドマン(Frances Rudman)を指していることが分かったからだ。・・・」(B)
「・・・1747年にウィルキスは・・・結婚し、・・・一人の子供・・・をもうけたが、・・・1756年に離婚した。・・・ウィルキスは、二度と結婚しなかったが、彼は放蕩者という評判を確立する。彼は少なくとも、このほか5人の子供をつくったとされている。・・・」(A)
ここまで読んで、おいおい、ウィルキスのどこが政治的反逆者なのか、と思われた方もおられるでしょう。
いや、ご心配なく。
これから分かってきますよ。
「・・・<冒頭に掲げた上院での椿事は1763年のことだったが、同年、それより少し前、時の英国王のジョージ3世が議会で行った演説を批判した文章を発表したウィルキスに対して、国王は、>個人的に侮辱されたと感じ、・・・ウィルキスとこの文章の出版社達を逮捕する一般令状(general warrants)を発出した。
ウィルキスを含む49人がこの令状によって逮捕された。・・・」(A)
(続く)
イギリス反逆史(外伝)(その1)
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