太田述正コラム#3855(2010.2.27)
<皆さんとディスカッション(続x757)>
<太田>
以下↓は、2010.2.27「講演」の前説(まえせつ)です。
鳩山首相と小沢民主党幹事長には皆さん呆れておられることでしょう。
せっかく政権交代がなったというのに、どうして、日本の政治家には、人格、識見、倫理感覚のいずれにも疑問符がつくだけでなく、危機管理能力も欠如している人物がかくも多いのかと。
それは、日本が米国の属国であって、安全保障と外交の基本という国政において最も重要な部分を米国に委ねているため、中央の政治家が矮小化してしまい、その多くが、政治家として何をやりたいかというよりは、鳩山首相のように、権力を掌握することが、あるいは小沢幹事長のように、権力の掌握に加えて金銭欲を充足することが、自己目的化してしまっているためです。
ですから、鳩山首相や、とりわけ小沢幹事長をめぐる政治とカネの問題に憤り、彼等が民主党の支持基盤を崩壊させつつあることに呆れ、彼等を首相や幹事長から引きずり下ろすだけではダメで、日本を米国から「独立」させない限り、根本的な問題解決にはならないのです。
このように、私は、「属国」という補助線的キーワードを用いることによって、一見複雑に見える戦後の日本の政治状況を読み解いた上で、改革の方向性を導き出しているのです。
私は、同様のやり方で、一見複雑に見える各種社会事象を読み解くことに努めてきました。
もう少し、例をあげてみましょう。
私は、戦後の日本は米国の属国であったと申し上げたところですが、それでは、属国でなかった戦前の日本は、一体どのような国であったのでしょうか。
それは、私が「横井小楠コンセンサス」・・もう一つの補助線的キーワードです・・と名付けたところの、横井(1809~69年)の主張・・ロシア脅威論を展開し、日本も米英に倣って自由・民主主義的政体を採用し、かつ米英と提携しつつ富国強兵に努め、支那の覚醒を促すとともに支那をロシアから守るべきことを勧めた・・に従い、安全保障上の必要性から、やむを得ずして東アジアに帝国を築き、勢力圏を拡大することを国是とした独立国だったのです。(コラム#1609、1613)
この戦前の独立国日本と戦後の属国日本とは断絶しているのでしょうか。
いや、決して断絶などしていません。
今申し上げた横井小楠コンセンサスにのっとり、日本は、大正期に立憲君主国から自由民主主義国となり、戦時中も自由民主主義国であり続け(コラム#47、48)、戦後ももちろんそうあり続けて現在に至っている上、この間、日本は、一貫して・・ただし、戦後は宗主国米国の影に隠れた形でですが・・ロシアの勢力拡大に対抗し続けたから、というのが戦前と戦後が断絶していない理由の第一です。
第二の理由ですが、それは、日本は、昭和に入ってまもなく、国際環境の変化等を背景として、資本主義から「日本型経済体制」(コラム#40、42、43)・・やはり補助線的キーワードです・・へと移行したところ、この体制、及びそれがもたらした経済高度成長は、戦災による中断期を除き、昭和が終わる頃まで一貫して続いたからです。
ちなみに、現在の日本は、資本主義と日本型経済体制の混合経済の状況下にある、というのが私の認識であり、前者の比重を更に高めるべくカネとヒトの面で開国することが求められている、と考えている次第です。
もう少し続けましょう。
それでは、一体全体、どうして戦後日本は米国の属国に成り下がってしまったのでしょうか。
それは、吉田茂が米国に対する怒りにかられて採用した一時的な属国化戦略を、吉田本人の意に反して、日本の政治家達が「吉田ドクトリン」・・極めて重要な補助線的キーワードです・・なる恒久的戦略にしてしまったからです。
つまり、「吉田ドクトリン」が「属国」状況を恒久化した、ということです。
吉田茂はどうして怒ったのか。
米国が、その固陋たる「人種主義的帝国主義」・・この補助線的キーワードもぜひ覚えておいて下さい・・に基づき、日露戦争の後、東アジアにおいてロシアの勢力拡大に抗してきた日本の足をすくうという逸脱行為を次第にエスカレートさせ、ついには日本に対米戦争を強い、日本帝国を瓦解させたというのに、手のひらを返すようにその日本に朝鮮戦争への参戦を含みに再軍備を迫ったからです。
こういった話をお聞きになって、すべてその通りだなと思った方、本当かなあと思った部分がある方等さまざまでしょうが、私の話には、すべて、それなりの典拠・・大部分は英米の典拠・・があります。
そして、典拠にそのまま拠ったのか、私自身の判断を加えているのか、私の著書やコラムにあたれば分かるようにしています。
さて、きりがないので、とりあえずはこれくらいにしておき、今やった前説(まえせつ)とだぶる部分もありますが、本題に入ることにしましょう。
これからのお話は、1月初めに早稲田大学で行った講義の際に用いたパワーポイント資料を使って行います。
講義案は、その時も学生諸君に事前に配布してあったのですが、皆さんも、事前か、少なくとも事後に、この講義案・・コラム#3754に転載してあります・・を読まれることをお奨めします。
というのも、講義の際、私は、この講義案をなぞった形でしゃべったのではなく、パワーポイント資料を見て、頭に浮かんだことをしゃべったところ、同じやり方で本日もしゃべるからです。
つまり、講義案の内容を全部カバーはしないし、講義案に書いてないことをしゃべることにもなるでしょうね。
<ΒΞΒΞ>(「たった一人の反乱」より)
・・・日本の公務員の数が他国と比べて少ないのは単に軍人が少ないからじゃないか?
http://www.rosenet.ne.jp/~nbrhoshu/milexhikaku2003.html ・・・
<太田>
何か思いついたら、もう少し掘り下げなくっちゃ。
軍人数を除いた公務員数でも、日本は人口比で世界有数の少なさだよ。
調べてごらん。
<けいc。>
アメリカ海軍関連ニュースです。
カリブ海に続き、
http://www.hhs.gov/disasters/press/newsroom/pictures/070711-photo.html
アメリカ政府が太平洋でも自らの軍事的アセットを活用して友好関係構築(=宣撫工作)に必死です。
海軍の医療部隊、工兵によるインフラ設備の修繕。
Navy plans Asia-Pacific humanitarian mission
http://www.navytimes.com/news/2010/02/ap_navy_humanitarian_022510/
ハイチに展開するアメリカ軍基地では国旗掲揚を自粛しているようです。
Officials: No rule against U.S. flags in Haiti
http://www.navytimes.com/news/2010/02/military_haiti_flags_022510w/
士官に限定して女性の潜水艦勤務者を許すようです。女の潜水艦艦長が誕生する日もそう遠くないのか・・・。
Pentagon announces end of ban on women on subs
http://www.navytimes.com/news/2010/02/navy_women_subs_022310w/
http://www.militarytimes.com/multimedia/video/?bctid=68367735001
アメリカ海軍が女性兵士の扱いに関して気を使っているのが下のニュースでも分ります。
「今年の1月に横須賀を母港にしているイージス艦カウペンスの女艦長は部下の扱いが冷酷過ぎて適切ではなかったとして解任になっています。
ただ、通常艦長が解任されると艦長職を解かれた艦隊の参謀として勤務して退役を待つのが通例だが、今回解任されたグラフ大佐は通例通りの処置ではなくはペンタゴンの参謀職としての任務が与えられた。」
Cruiser CO relieved for ‘cruelty’
http://www.navytimes.com/news/2010/01/ap_cowpens_cofired_011310/
少し昔ですが、
「1994年にアメリカ海軍で女性初の戦闘機(F-14)パイロットが空母への着艦失敗で事故死した事件でも性差別につながるからの配慮から、事故原因についてはパイロットエラーが1次原因でエンジン故障が2次的原因であったという非公式の調査よりも、1次原因はエンジン故障であったと発表されていた。」
http://en.wikipedia.org/wiki/Kara_Hultgreen
http://www.youtube.com/watch?v=yLSnlZSPsOs
アメリカ軍は女性の手も借りたいくらいなのに、マッチョ的カルチャーが強い軍において性差別を防止するためにもしくは、世論を意識し海軍と軍組織が“politically correct(affirmative action)”を貫くために上層部は必死になっているという構図でしょうか?
<けいc。>
太田さま、日本独立への活動お疲れ様でございます。
ブログへの投稿・・・の最後の部分がNGワードを含んでいるようで貴殿のブログに書き込みできませんでした。・・・
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一方で兵隊たちに長期的な禁欲生活を強いる戦地においてはco-ed military(男女が同居する軍隊)の問題もあったりします。
アフガンに駐留する女性アメリカ軍兵士10人が妊娠テストで陽性になり、戦地での性行為を禁止するルールに違反したとして本土に帰還させられニュース。
Ten pregnant soldiers sent home from Afghanistan after
breaking ‘no sex’ rule
http://www.mirror.co.uk/news/top-stories/2009/11/22/ten-
pregnant-soldiers-sent-home-from-afghanistan-after-breaking-
no-sex-rule-115875-21839818/
2006年にアメリカ軍がキルギスタンから借りているマナス空軍基地で同基地駐留の既婚の空軍女性少佐が市内のショッピングセンターへ外出したきり3日間行方不明になった事件。
http://en.wikipedia.org/wiki/Jill_Metzger
アメリカ軍内では公然と彼女が基地内での不倫の結果妊娠して中絶手術のために行方不明になったと噂されている。
http://scaredmonkeys.com/2006/09/08/major-jill-metzger-
still-missing-in-kyrgyzstan/
文字ソースはありませんが、現地駐留アメリカ軍兵士から聞いた話として妊娠する女性が後を絶たないアフガンのカンダハール基地では、病院に無料のコンドームが置いてあるそうです。
<太田>
ですから、とりわけ長い投稿をされる方に対して、もっと太田述正掲示板を活用して下さいとお願いしてるんです!
それはさておき、労作、どうもありがとうございました。
男社会で女性を活用しようと思ったら、最初のうちはアファーマティブアクションが不可欠である、というのがかねてよりの私の主張です。
ご教示いただいた米軍の姿勢、まさにそうあるべきでしょう。
また、後の方の話については、どの組織にもある話ではあるけれど、有事即応の軍隊、とりわけ戦場の軍隊では、より頻発して当然でしょうね。
本日はオフ会があるので、記事の紹介は、明日回しです。
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一人題名のない音楽会の「ロシアとウクライナ」の第三弾です。
ロシア民謡の続きを一挙にご紹介しましょう。
コロブチカ(Korobushka=行商人)フォークダンス/テトリスの懐かしい懐かしい歌!
男性歌唱 二人の歌手が歌っているが、後半の方がお奨め。
http://www.youtube.com/watch?v=U326XbVeG0s&feature=related
その日本語歌詞
http://www.youtube.com/watch?v=4dAkZmWjQSw&feature=related
カチューシャ(katyusha)(1938)Matvei Blanter作曲、Mikhail Isakovsky作詞
男性歌唱
http://www.youtube.com/watch?v=HMupcgLfF9o&feature=fvw
その女性歌唱
http://www.youtube.com/watch?v=T1q_0PXmJOk&feature=related
赤いサラファン(The red sarafan)Nikolaj Grigorjewitsch Ziganof作曲Alexander Warlamoff作詞
合唱
http://www.youtube.com/watch?v=WC0AKZD99xk&feature=PlayList&p=5FF5C0CDB909FB5B&playnext=1&playnext_from=PL&index=4
その器楽演奏
http://www.youtube.com/watch?v=kXHmcScO4g0&feature=related
その口笛
http://www.youtube.com/watch?v=XRCcjWyGKcU&feature=related
カリンカ(Kalinka? Malinka) 男性歌唱
http://www.youtube.com/watch?v=SSiFASGKjBI&feature=related
そのバイオリン重奏
http://www.youtube.com/watch?v=ClG2IIh4I3c&feature=related
ワルツ アムール河のさざ波(The Amur waves) M. A. Kuess作曲
合唱
http://www.youtube.com/watch?v=dOeHsMJaULk&feature=related
吹奏楽
http://www.youtube.com/watch?v=l–nVhck574&feature=related
その日本語歌詞
http://www.youtube.com/watch?v=_xl88vfS5UU&feature=related
ボルガの舟歌(Song of the Volga Boatmen) 男性歌唱
http://www.youtube.com/watch?v=8WD0WVL-HjE&feature=related
その器楽演奏 グレンミラー楽団
http://www.youtube.com/watch#v=LJRts1kwzKc&feature=fvw
ステンカラージン(Stenka Rasin)男性歌唱
http://www.youtube.com/watch#v=rXc4AXAm7l0&feature=related
モスクワの夜(Moscow Nights)男性歌唱
http://www.youtube.com/watch?v=OmPI2WNuUzE&feature=related
山のロザリア(Rozaria In The Mountain)Alexandrovsky作曲 日本語歌詞
http://www.youtube.com/watch?v=Ymk5byRkxNU&feature=related
Oy, to ne vecher タイトル翻訳して! 黒髪の美人が歌います。
http://www.youtube.com/watch?v=1KoNUYLBnX8&feature=related
黒い瞳の 日本語歌詞 どなたか、ロシア人が歌っている映像探して下さい!
http://www.youtube.com/watch?v=JjdADvYbdhM&feature=related
Dark Moldavian
http://www.youtube.com/watch?v=Epm6FP54Cec&feature=related
トロイカ(Troika)
http://www.youtube.com/watch?v=kClziLgk65c&feature=related
I met You バラライカとギターの合奏
http://www.youtube.com/watch?v=80_x_4xVeZo&feature=related
ポールシュカポーレ(Poljushko Polje) 英語歌詞が混ざります。
http://www.youtube.com/watch?v=lJncDnmbG0E&feature=related
ブブリチキ(Bublitchki) Bogomazow作曲
http://www.youtube.com/watch?v=hc6FsLCH2GY&feature=related
これにイーディッシュ語(=ドイツ語のユダヤ訛り)歌詞がつき、ジャズ編曲が行われ、世界に広まりました。
http://www.youtube.com/watch?v=Dy45r6rOrdw&feature=related
最後の最後にポップスも一つだけ。金髪の美人が歌います。
http://www.youtube.com/watch?v=9pxl-W645-I&feature=related
ロシアは、B級クラシック(ないし準クラシック)も凄いですねえ。
(この名曲が抜けてるよってのがあったら、ご教示ください。)
そして、ロシアには、多彩な、恐るべき美人がいますねえ。ただし、若いうちだけだけど。
(続く)
皆さんとディスカッション(続x757)
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