太田述正コラム#3921(2010.4.1)
<皆さんとディスカッション(続x790)>
<こくぴと>
 日本はアメリカの保護国。でも小沢は礼賛しているようです。
日本政治再生を巡る権力闘争の謎(その1)=カレル・ヴァン・ウォルフレン
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20100319-01-0501.html
日本政治再生を巡る権力闘争の謎(その2)=カレル・ヴァン・ウォルフレン
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20100319-02-0501.html
日本政治再生を巡る権力闘争の謎(その3)=カレル・ヴァン・ウォルフレン
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20100318-03-0501.html
2010年3月19日 中央公論
<太田>
 平素、国内論壇を全くフォローしていないので、久しぶりにその一端をかいまみさせてもらいました。
 外国人でも、日本に長く滞在し、日本の論壇ズレすると、こんなスジワルの論考しか書けなくなるのか、というのが率直な感想です。
 吹き出した箇所に適当にコメントをつけてみました。↓
 「国際社会の中で、真に独立した国家たらんとする民主党の理念を打ち砕こうとするのは、国内勢力ばかりではない。アメリカ政府もまたしかりである。」
→「真に独立した国家たらんとする民主党の理念」? 典拠は?
 「真に独立した国家たらんとする」日本に立ちはだかる国内勢力とは、後の方を読むと、検察を「頂点」とする官僚機構らしいが、そうじゃなく、吉田ドクトリンに毒された国民世論だろが。
 「アメリカ政府もまたしかりである」→エ! 正気? その正反対だよ。
 「チャンスは昨年八月、民主党が選挙で圧勝したことでようやく巡ってきた。」
→ここだけは正解。
 「明治時代・・・、選挙によって選ばれた政治家の力を骨抜きにするための仕組みが、政治システムの中に意図的に組み込まれたのである。そして民主党は、山県有朋(一八三八~一九二二年、政治家・軍人)によって確立された日本の官僚制度(そして軍隊)という、この国のガバナンスの伝統と決別しようとしているのである。」
→それは、(規範性のなかった)明治憲法が描くタテマエの世界の話に過ぎない。
 明治、大正、昭和の各天皇は、そんな憲法の文言は無視し、自由民主主義を一貫して追求した。
 そして、日本にそんな「ガバナンスの伝統」などない以上、そんな伝統と「決別」しようもない。
 「山県が密かにこのような仕掛けをしたからこそ、日本の政治システムは、その後、一九三〇年代になって、軍官僚たちが無分別な目的のために、この国をハイジャックしようとするに至る方向へと進化していったのである。山県の遺産は、その後もキャリア官僚と、国会議員という、実に奇妙な関係性の中に受け継がれていった。」
→当時、臨時に官僚(そして軍)に国家運営の主導権を委ねたのは、有事における国民の選択だった。
 その結果は、おおむねうまく行った。米国が日本の足さえ引っ張らなければ・・。
 戦後における吉田ドクトリン/属国「戦略」の墨守もまた、国民の選択の結果。
 「実は非公式な日本のシステムは、過剰なものに対しては脆弱なのである。・・・
 選挙資金・・・があるひとりの政治家に集中し、その人物がシステム内部のバランスを脅かしかねないほどの権力を握った場合、何らかの措置を講ずる必要が生じる。その結果が、たとえば田中角栄<や小沢一郎>のスキャンダルだ。・・・この免疫システムの一角を担うのが、メディアと二人三脚で動く日本の検察である・・・」
→日本の検察を「買いかぶり」過ぎ。巨大疑惑が浮上・・この二人に関しては米国がその出所である可能性が強い・・した場合、検察は、苦心惨憺、使える法的手段を駆使してそれを追及してきた、というだけのこと。
 日本のメディアに至っては、論評にも値しまい。
 「日本の超法規的な政治システムが山県有朋の遺産だとすれば、検察というイメージ、そしてその実質的な役割を確立した人物もまた、日本の歴史に存在する。平沼騏一郎(一八六七~一九五二年、司法官僚・政治家)である。・・・
 山県のように彼もまた、国体思想が説く神秘的で道徳的に汚れなき国家の擁護者を自任していた。マルクス主義、リベラリズム、あるいは単に民主的な選挙といった、あらゆる現代的な政治形態から国を守り抜くべきだと考えていたのである。」
→前述したように、これらは明治憲法が描くタテマエの世界に過ぎない。
 実際には、戦前、戦中の日本は、自由民主主義<的>国家だった。
 「小泉は・・・ただ、財務省官僚の要請に従い、改革を行ったかのように振る舞ったにすぎない。」
→めずらしく、ここは同意。
 「そして山県有朋以降、連綿と受け継がれてきた伝統を打破し、政治的な舵取りを掌握した真の政権を打ち立てるチャンスをもたらしたのは、小沢の功績なのである。小沢がいなかったら、一九九三年の政治変革は起きなかっただろう。あれは彼が始めたことだ。小沢の存在なくして、信頼に足る野党民主党は誕生し得なかっただろう。そして昨年八月の衆議院選挙で、民主党が圧勝することはおろか、過半数を得ることもできなかったに違いない。 
 小沢は今日の国際社会において、もっとも卓越した手腕を持つ政治家のひとりであることは疑いない。ヨーロッパには彼に比肩し得るような政権リーダーは存在しない。政治的手腕において、そして権力というダイナミクスをよく理解しているという点で、アメリカのオバマ大統領は小沢には及ばない。」
→プ! 日本の劇画読み過ぎじゃないの。それにしても、余りにもオバマに失礼。
 「アメリカ政府<は>これまで日本を完全な独立国家として扱ってはこなかった・・・。ところが鳩山政権は、この古い状況を根本的に変えてしまい、いまやこの問題について公然と議論できるようになった。この事実は、以前のような状況に戻ることは二度とない、ということを意味している。」
→日本が勝手に属国やってる限り、米国が日本を独立国として扱えなかったのは当たり前。
 米国は、朝鮮戦争勃発以来、一貫して日本が独立してくれることを希ってきた。
 鳩山政権は、私の予想通り、全くそんな意図なくして、結果として日本独立の可能性をもたらしつつあるに過ぎない。
 ただし、それだけに、「以前のような状況に戻」ってしまう可能性だって排除できない。
 「日本の検察が、法に違反したとして小沢を執拗に追及する一方、アメリカは二〇〇六年に自民党に承諾させたことを実行せよと迫り続けている。このふたつの事柄からは、ある共通点が浮かび上がる。両者には平衡感覚とでもいうものが欠落しているのである。」
→前段については、前述したように、検察を「買いかぶり」過ぎ。
 後段については、オバマは百も承知で、うれしさをかみ殺しながら、その存亡がかかっている海兵隊に突き上げられて、国防、国務両省の役人連中が日本の民主党政権を批判するのを放置している、と見るべき。
 「アメリカはこれまでも日本を、外交には不可欠な前提条件であるはずの真の主権国家だとは見なしてこなかった・・・。そして日本は最後にはアメリカの望み通りに従うと、当然視されるようになってしまった・・・」
→繰り返しになるが、日本が勝手に属国やってる限りは当たり前。
 「第二次世界大戦後の占領期、アメリカは日本を実質的な保護国(注:他国の主権によって保護を受ける、国際法上の半主権国)とし、以後、一貫して日本をそのように扱い続けた。」
→何度でも繰り返すが、「扱い続けた」のではなく、日本が勝手に「扱ってもらい続けた」に過ぎない。
 「日本<には>病的と呼びたくなるほどの対米依存症<が見られるとともに>、日本には政治的な舵取りが欠如している」
→この文章の前半と後半を並列させるのは間違い。後半は前半の論理的帰結に他ならないからだ。
 「アメリカが、中国を封じ込めるための軍事包囲網の増強を含め、新しい世界の現実に対処するための計画を推進していることは、歴然としている。そしてその計画の一翼を担う存在として、アメリカは日本をあてにしているのである。 
 かくしてアメリカにとって沖縄に米軍基地があることは重要であり、そのことにアメリカ政府はこだわるのである。」
→前段には基本的に同意。
 しかし、後段は正しくない。海兵隊独自の存在根拠なんてなくなっている上、沖縄は中共に近すぎるからだ。グアム以遠にホントは米軍を引き上げたい米国の足を引っ張っているのは日本の思いやり経費負担だ。
 「たとえ日本が五月と定められた期限内に決着をつけることができなかったとしても、日本に不利なことは何ひとつ起こりはしない。」
→偶然、私の見解と合致している。
 以上、読者の方、何かご質問は?
 それでは、記事の紹介です。
 中共の記者による、オモロイ日本人論です。↓
http://j.peopledaily.com.cn/94473/6935756.html
 日本におけるカネ鎖国体制を打破しよう!↓
 「日本IBMが4000億円の「申告漏れ」を指摘された。・・・
 今回、日本IBMの税務アドバイザーを務めたと見られるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)グループが・・・米IBMの税務担当者の意をくんだ意見書が出された可能性もある。・・・
  今年10月にグループ納税制度が導入されれば、100%親子間の損益認識はされなくなりこの手法は使えない・・・
  海外に比べ法人税率が高いだけでなく、租税回避行為の定義が曖昧な日本。実務家は「税務当局がもう少し予見可能性を示してくれないと、税務戦略は何も立てられない」と悲鳴を上げる。グローバル企業にとって日本という市場の魅力が揺らぐ中、ジャパン・パッシングを助長する当局の運用は避けるべきだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100326/213638/?top
 近々、タイガー・ウッズがゴルフを再開することから、彼の話題で再び米国の主要メディアが盛り上がっています。
 以下は、彼が最初にプレーする場所が話題になった対談です。
 ゴルフコースもまた、米国の多数派の差別意識が色濃く反映してきた場所なんですよね。↓
 ・・・what about the fact that <Tiger Woods>’making his comeback at the Augusta National Golf Club, which is famous for refusing to take women members? When you’re trying to get back on your feet after a monster scandal that was, at bottom, about your bad choice in women, the best place to start is not at a club whose choice is no women whatsoever.・・・
 Now, obviously there are a few courses left that don’t allow women and other suspect groups. There’s a course near me that didn’t allow Jews in for decades. Barry Goldwater tried to play there and they refused him. He said, “Well, I’m only half Jewish, so can I play 9 holes?” But these are creepy remnants.・・・
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2010/03/31/what-tiger-woods-could-do-for-women/?pagemode=print
 ウッズがらみで、セックス依存症は精神障害か、という議論がこのコラムでも少し前になされましたが、復習を兼ねて、以下のやりとりをどうぞ。↓
 ・・・Here’s Dr. Andrea’s definition:
 ”Sex addiction — though its diagnosis is controversial — is much more than the urge to get some on the side. It is an all-encompassing, often compulsive preoccupation with sexual thoughts and behavior. It takes over a person’s life and determines so many aspects of their day– and they’re unable to tone it down.”
How is it treated?
 ”[I]deally you’ll be learning how to live within more appropriate boundaries, and to find a healthier way to address the emotional void that the sexual behavior was attempting to fill. A lot of people also need to deal with fundamental deficits in their ability to form healthy relationships — like trust, emotional intimacy, self-esteem, and respect.”
 But, Dr. Andrea, are all cheaters sex addicts?
 Of course, not all cheaters have an actual psychological disorder. Or sometimes they might, but it might not be in the form of a sex addiction but a personality issue that’s even tougher to address. And it’s fair to wonder if sometimes rehab serves as a copout (‘I made irresponsible choices, but it’s an illness!’) or an empty promise for a broken or mismatched relationship (‘I’ll go to rehab! I’ll totally change!’) But if someone really does have sexual pathology, rehab can help them develop the tools to learn the roots of it and fight it.・・・
http://voices.washingtonpost.com/celebritology/2010/03/jesse_james_the_latest_in_a_st.html?hpid=talkbox1
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太田述正コラム#3922(2010.4.1)
<モスクワでの自爆テロ(その3)>
→非公開