太田述正コラム#3858(2010.2.28)
<米国での軍事論争2題(その3)>(2010.4.2公開)
本日は、2日分の記事を元にディスカッション・シリーズを書き上げるだけでタイムアウト気味です。
ホンチャンのコラムがやや雑なものになってしまったことをご容赦下さい。(太田)
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3 空爆の有効性
「・・・2006年戦争より以前には、ヒズボラが、緊張を高めようと欲した時にはいつもイスラエル北部に向けてロケット群を発射した。
しかし、2006年8月14日の<イスラエルとの>停戦以降、ヒズボラは厳格なまでにそれをやらなくなった。
にもかかわらず、ロケット群が発射されたような場合には、<ヒズボラの最高指導者の>ナスララの広報官は、大慌てでヒズボラがそれと全く関わりがないという声明を出す。
明らかに、イスラエルによる、いわゆる効果なき空爆がその目的を達成しているということだ。・・・
<つまり、>より良く、かつより安価な代替案は、タリバンの数多くの敵にありとあらゆる武器を与えるとともに、間歇的空爆でもってアフガニスタン駐留米軍部隊にとって代わらせることだ、ということになる。
その上で、タリバンが一定数集まった時を見計らって、それを空爆するわけだ。・・・」
http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/02/22/in_praise_of_aerial_bombing?print=yes&hidecomments=yes&page=full
この軍事史学者ルトワク(Edward N. Lutwak)による論考に対する読者の代表的な投稿は、以下のようなものです。
「これは、ルトワク教授が長年書き綴ってきた論考中、最も議論を呼んだり挑発的であったりすることのないものの一つだ。
というのは、彼の言っていることは、要するに、戦略爆撃には限界があるが、・・・全く役に立たないというわけではなく、恐らくは、一定の状況下においては、地上作戦や国家形成(nation building)<への協力>より好ましい(=費用対効果がある)ということ以上でも以下でもないからだ。・・・」
ところで、どうして、「最も議論を呼んだり挑発的であったりすることのないもの」というくだりがこの投稿中に出てくるのでしょうか。
それは、上出以外の投稿者が、大統領選真っ最中の2008年6月初頭のニューヨークタイムス準社説
http://www.nytimes.com/2008/06/01/opinion/01pubed.html?_r=2&pagewanted=print
に言及していたところ、この準社説を読めば分かります。
この準社説の一部を以下に掲げました。
「・・・「イスラム法」の下では、オバマはイスラム教徒として生まれ、彼のキリスト教への「改宗」は、背教行為であり、重大な非違行為であって「イスラム教徒が犯しうる最も悪い犯罪である、という理解が普遍的である」とルトワクは記した。
そして、いかなるイスラム教国も彼を起訴はしないだろうが、彼がこのような諸国を国賓として訪問することは、「イスラム教徒たる護衛達にとって彼を守ることは罪深いことなので」深刻な安全上の問題を引き起こすことだろう、とルトワクは述べた。・・・
オバマは、ハワイで、キリスト教のルーツを持つカンサス州出身の母親とその父親<(オバマの祖父)>がイスラム教に改宗したところの父親の間に生まれた。
オバマが幼児であった時に彼の父親は家族を去った。
彼の母親は、その後、インドネシアのイスラム教徒と再婚し、オバマはジャカルタで5年間過ごした。
その地で、彼は、カトリックの学校とイスラム教の学校に通ったが、ロサンゼルスタイムスによれば、第三学年と第四学年にはイスラム教徒として在籍していたという。・・・
・・・イスラム法学者の多数意見は、背教に係る法は自分の意思でイスラム教徒となり、その後棄教した者だけに適用される、というものだ。・・・
<米国のある大学の某教授>は、背教に係る法を含むところの、シャリア、すなわちイスラム法は、米国人等、イスラム世界の外の者には適用されないとしている。
彼によれば、イスラム教徒が多数を占める40カ国を超える諸国のうち、シャリアが公式の法制とされているのはわずかにサウディアラビアとイランにおいてだけであり、この2カ国においてさえ、背教者が必ず訴追されるというわけではなく、また、<訴追されたとしても、>処刑されることなく牢屋にぶちこまれるだけのこともよくある。
<米国のイスラム>学者のうち何人かは、昔のシャリアでは背教は重大な罪だったと声を揃えつつも、イスラム思想は変遷を遂げ続けていると言っている。・・・
彼等は<また>、イスラム諸国の新聞やテレビは、米国の大統領選挙について詳しく報道しているけれど、オバマのイスラム教のルーツと彼がキリスト教徒であることは、どちらも良く知られており、にもかかわらず、イスラム世界で、彼が背教者であるとの示唆はなされていない、と言っている。・・・」
(完)
米国での軍事論争2題(その3)
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