太田述正コラム#3927(2010.4.4)
<皆さんとディスカッション(続x793)>
コラム#3925の訂正:2009年のエリザベート・コンクールの優勝者です X
→
2009年のエリザベート・コンクールのファイナルでの演奏です ○
(ブログは訂正済)
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<唯我独尊>
≫いや、日本が女性差別、そして(移民を排斥する)外国人差別の国であることは紛れもない現実です。≪(コラム#3925。太田)
確証、出典などはありませんが、程度の差があるにせよ世界中の人間が差別意識を持っているものと考えています。
これは、人間が生存本能を持った動物であるということを前提にしています。
自分よりも弱い者(と勝手に判断している)に対してのみ差別しているようで、本能的な生存競争の潜在意識だと考えることができます。
数万年、数十万年、数百万年と生きてきた人類は、身近な同類を押しのけてでも食欲と生殖本能を満足させてきたはずです。
差別することは、極論すれば「なにがなんでも自分が生きていくために」という、本能とも言える強い欲望だったに違いありません。というような推測は成り立つでしょうか?
<太田>
特定の属性に着目し、その属性を備える人々の集団を一括りにして評価する、というのは思考経済上必要な面があるけれど、極力それを事実と論理と経験科学に基づいて行うように心がけるとともに、その集団を構成する一人一人の人間を個別に評価するよう心がければ、それは差別とは言えないと思います。
私の、例えばアングロサクソン論のことを思いだして下さい。
それに対し、遺憾ながら、下掲のようなもの↓は、在日中国人差別ではないでしょうか。
「・・・ノンフィクション作家の関岡英之さん(48)は・・・こう警鐘を乱打する。
「在日中国人が有事の際、わが国の主権下において北京当局や中国大使館の号令の下、中国の国益を擁護し、わが国の国益を損なう集団行動を統一的に展開する可能性は排除できない。こうした懸念のある10万人規模の外国人に対し、地方レベルとはいえ参政権を付与するなど、常識では考えられない」・・・」
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100404/trd1004040702001-n1.htm
(優越感であれ、インフェリオリティー・コンプレックスであれ、)差別なんて、差別する側と差別される側の双方の「生存」を困難にするだけです。
<midshipman>
<コラム#3856>「東京オフ会(2010.2.27)次第」
http://blog.ohtan.net/archives/51956731.html#comments
<を読み>ました。
≫日本の属国状況が更に長く続くとどうなるかを先取りした形で我々に見せてくれている、と言えるのかもしれない。≪(コラム#3856。太田)
「沖縄には米軍がいるので大丈夫です。自衛官の皆さんは本土防衛をよろしくお願いします」と沖縄主催の練習艦隊のレセプションで沖縄の人が恥じらう様子もなく言っていたのを聞いた後にこのコラムに目を通しました。
確かに,沖縄は「属国病」末期の症状ですね。
一例にすぎませんが…。
<太田>
本土と沖縄の違いは、bloodだけを他者に依存するか、bloodもmoneyも他者に依存するかの違いといったところでしょうか。
<ΒΣΣΒ>(「たった一人の反乱」より)
・・・太田氏はなるべく無料で「広く」コラムが読まれることを期待しているはずだと思う・・・
<ΣΣββ>(同上)
えーっ、「広く」コラムを読ませたいならもっと親切に噛み砕いて書くでしょ。
本人も平均的日本人はコラムの読者対象ではないと断言してるし。
初めから着いてこれる奴だけ読めっていうスタンスでは?
<ΣβΣβ>(同上)
最初のほうは確か「広く」読んでもらおう的なスタンスだったはず。
そのわりに最初から不親切だったけどねw。
そしていつの間にか「ついて来れるやつだけ」に変わってた。
太田さんは以前「広く受け入れられることがないならブログを閉じる」的なこと言ってたはずだけどねぇ。
<太田>
まあ、長年やってるんだから、少しはコラム観が変わっても不思議はないだろね。
<村土俊彦>
僕は77歳なので昭和の歌と歌手が大好きです。
亡くなってみえる方もみえませうが、生きていらっしゃるものとして拝聴しています。
テレビではあまり報道しないので<太田さんのMixiでの一人題名のない音楽会の早版、>ほんとに有りがたいです。
2,3時間ぶっ通しで聞いています、有難うございます。
太田さんの頭脳には敬服しています。・・・
<太田>
こういう反応があるとうれしいですね。
私が好きな曲って「ど」クラシックなものばかりなので、そんなに沢山はないだろうと思っていたところ、ユーチューブにあたっていると、次から次へと好きな曲が新たに出てくるものですから、もう少し続けられそうです。
<MS>
・・・
≫やはりこういうときに意見してくれる人はMSさんでしたか。 数年前の太田さんの代理戦争(?)で共同戦線を張って以来(あの節は大変お世話になりました)、投稿読者の中では一目置いておりました。≪(コラム#3925。遠江人)
こちらこそ、大変お世話になりました。
≫Ueyamaさんについてですが、アナキストであるのなら自由を信条としておられると思うのですが、なぜオープンな場で意見を述べずにクローズドな形で意見を述べる(またBernieさんとTTさんに対して噛み合った返事をしない)のでしょうか。なぜなら隠す必要性がまったく見当たらないからです。こればかりは本人のご意見をぜひお伺いしたいところです。≪(同上)
確かにご本人の自己分析をお聞きしたいところですが、せっかくですから、私のほうからも一つUeyamaさんにまつわる現象の分析を提示させていただけないでしょうか?
(<コラム#3925での私>の書き込みは、正直にいうとオフ会の宣伝も兼ねて書きこまさせていただいたので、客観的な分析ではないという意味で、遠江さんの求められていたものと違ったかもしれません。すいません。)
私は、Ueyamaさんはアングロサクソン社会のway of life になじみにくい方なのだと思います。
というのも、私はオフ会というのは、オープンかつ水平的(太田さんも含めて全員対等)な組織だと考えており、アングロサクソン社会の軍隊における文官組織(#3689 ; http://blog.ohtan.net/archives/51430064.html)とも似た姿を持つという意味で、一種の小さなアングロサクソン社会であるべきだとイメージしています。
従って、そのようなオフ会で重要なことを提言せず、closedで不健康なやりかたの批判を始めたUeyamaさんは、きっとアングロサクソン社会のあり方を理解していない方なんではないでしょうか?
さらに、本来の日本人であるならば、その人間主義的なものの考えから、他者に無礼にならないように、細心の注意を払うのがごく当たり前の姿のはずです。
彼のBernieさんやTTさん、そして最終的には太田さんに向かった批判の仕方は、(太田さんの言うように)彼の反人間主義的傾向をはっきり示している気がします。
以上のことを踏まえて、
Ueyamaさんに見られる一連の現象を太田コラム流に分析すると、日本人が、様々なアンゴロサクソン社会の表面的な機能を利用するのみで、本格的に「日本の顔をしたアングロサクソン的社会」に変貌することを怠ってきたことによる歪み(部分的反人間主義化)の一種だというのが、私の分析です。
(ずっと前に別の件で、太田さんが同じことをおっしゃっていた気がするのですが、コラムを見つけられませんでした。)
「日本の顔をしたアングロサクソン的社会」化に関するFAQ:
http://wiki.livedoor.jp/veg_tan/d/%a5%a2%a5%f3%a5%b0%a5%ed%a5%b5%a5%af%a5%bd%a5%f3%cf%c0#05
≫オフ会にまったく参加できていない私が言うのもなんなのですが、こういう時は顔を突き合わせて何時間でも討議するのが一番いいようにも思います。生身の人間を感じながらではないと、感じあえないこともあるように思うからです。たぶん答えになっていませんが・・・。≪(コラム#3925。遠江人)
おっしゃる通りだと思います。ただ、その感覚をもっている人は、おそらく人間主義的な傾向が強い人でしょうから、Ueyamaさんのようなケースにそもそもならないかもしれませんね。
<遠江人>
MSさんの、Ueyamaさんはアングロサクソン社会のway of life になじみにくい、理解されていない方なのでは、という指摘、及び戦後日本の論理的帰結による部分的反人間主義化という考察は、大変鋭いと思います。
MSさんの分析を受けて、私も以下に少しだけ(アングロサクソンに重点を置いて)考えてみました。
その成立当初からアングロサクソンが戦争を生業としてきた(命のやりとりに従事している)以上、生きることに真剣にならざるを得ない。それは、生きることにかかわること、つまり森羅万象のことに対して真剣にならざるを得ないと言っていいと思います。これが一つ。
オープンかつ水平的=効率的であることを旨とするならば、オープンな場でリアルタイムに意見を言い合うより非効率な(個別に1対1で、時間がかかる方法で行う)ことをする理由は、特別なことが無い限り、無いと思います。これを回避するということは何らかの「理由」がある。これが一つ。
自分はメンヘルであるとか普通ではないとか、Ueyamaさんは、ある意味、「開き直り系」なのだと思います。これが一つ。
かつてアングロサクソンの戦士が戦争の余暇を楽しんだように、人生を楽しむことは、前提として、生きることに真剣である(≒何に対しても大なり小なり知的好奇心がある)ことの上に成り立つ。
しかし戦後日本の吉田ドクトリンを「信奉」している人々にとって「人生を楽しむ」は、「アングロサクソン的な」「生きることに真剣である」という前提が無いまま、ただ「人生を楽しむ」なのだとすれば、当然のこととして、効率うんぬんはどうでもよくて自分が楽しめればいいということにならざるを得ないのではないでしょうか。(≒知的好奇心も自分の興味の範囲内にならざるを得ない?)
吉田ドクトリンを解消すべし、という人間ならば、真剣に生きざるを得ない、そんな人間は少なくとも「開き直り系」には、ならないように思います。
<太田>
それでは、記事の紹介です。
・・・<韓国の>金泰栄(キム・テヨン)国防部長官は2日の国会での質疑で、哨戒艦「天安」沈没事件の原因として、「魚雷の可能性が現実的」と発言した。・・・
http://www.chosunonline.com/news/20100403000018
この哨戒艦爆沈事件は、その後の捜索活動で次々に悲劇を引き起こしています。↓
Reporting from Seoul – Heaping more tragedy on an already grieving South Korea, a fishing vessel assisting in the search for 46 crewmen of a sunken naval boat went down Saturday, and the nine on board were presumed dead.・・・
The circumstances of the navy ship’s sinking remained a mystery, one that has been compounded by other losses. A military diver died after losing consciousness as he scouted the hull of the boat.・・・
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/asia/la-fg-korea-ship4-2010apr04,0,7145888.story
アル中と並んでヘロイン中毒もまた、ロシアを蝕みつつある。↓
・・・In the US, there are around 800,000 heroin addicts. In the UK, between 200,000 and 300,000.
In Russia, there are now two and a half million. ・・・
We hear a lot about the effects of Afghan heroin on the streets of Europe. But the countries that are really suffering are the ones on Afghanistan’s doorstep, places we know little about, and care even less -Tajikistan, Kyrgyzstan, Kazakhstan, and the biggest of all – Russia. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/from_our_own_correspondent/8600847.stm
Miranda Carter, Three Royal Cousins and the Road to World War I (コラム#3555、3557、3905)の書評がまたまた出てたよ。NYタイムス一体どうしちゃったんだろ。
ただ、近代君主制(君主を元首とする民主主義体制)の始祖と言えば、ジョージ5世じゃなくて明治天皇じゃないの。↓
・・・Cautious George is viewed today as a founder of the modern monarchy. Wilhelm, while endlessly interesting, remains a disgraced figure. The disastrously ineffectual czar, on the other hand, along with his murdered family, has been improbably elevated. In 2000, the Russian Orthodox Church declared that the murdered Romanovs would henceforth be known as saints.
http://www.nytimes.com/2010/04/04/books/review/Seymour-t.html?ref=world&pagewanted=all
中共の通貨操作に対し、米国は執行猶予期間を与えました。↓
The Obama administration said Saturday that it would delay a decision on whether to declare China a currency manipulator, but it vowed to press Chinese leaders on the politically charged issue of its currency valuation during a series of meetings through June.
The Treasury’s action seemed intended to send a reassuring message both to China and to Congress. It signaled to China that the administration prefers to resolve the dispute diplomatically, rather than force a showdown, but also pressed the case for a change in China’s policy, a position advocated by many United States lawmakers in both parties. ・・・
Nicholas R. Lardy, a senior fellow at the Peterson Institute for International Economics and an authority on the Chinese economy, said the delay made sense given China’s recent steps on other American priorities, including tougher sanctions against Iran and pressure on North Korea over nuclear weapons. “Delaying the currency report is a small price to pay for what we’ve gotten so far,” he said.
He said the statement “reflects the administration’s desire to address this on a multilateral basis rather than a bilateral basis.”・・・
http://www.nytimes.com/2010/04/04/business/04yuan.html?ref=world&pagewanted=print
社会民主主義・・私に言わせれば人間主義・・を推すユダヤ系英国人で歴史家たるトニー・ジュット(Tony Judt。1948年~
http://en.wikipedia.org/wiki/Tony_Judt
)の言っていることは全くもって正しいと思うな。↓
・・・Whether they have gone by the name or not, most western societies have generally been social democratic throughout living memory, with the result that “from the late 19th century until the 1970s, the advanced societies of the west were all becoming less unequal”. Then things started to go wrong. With a typical combination of overstatement followed by more sober qualification, Judt says that “over the last 30 years we have thrown this all away”, only to accept that some countries have squandered their inheritances more than others. Unfortunately, Britain and the US are the worst offenders. ・・・Judt argues that the resulting increase in inequality is bad for health, crime, social mobility and pretty much any public or private good you care to name.
What caused this breakdown? The story is a familiar one: a toxic cocktail of too much confidence in free markets, too much emphasis on individualism and too much suspicion of the state. ・・・
Judt is at least clear about what our priorities should be. They are quite simply the traditional goals of social democracy: a pragmatic balance of freedom and fairness, of individual liberty and social cohesion.
http://www.ft.com/cms/s/2/23f82c42-3cf8-11df-bbcf-00144feabdc0.html
シリアでアラム語(Aramic)(コラム#205、1031)が生き残ってるんだって。↓
・・・The ancient Syrian village of Malula (also spelled Maaloula) is one of only three hamlets where residents still speak the Aramaic of Jesus Christ’s day.・・・
・・・it is Aramaic which first began using square lettering around the 12th century BC. The Hebrew now used in Israel, he said, was formulated 700 years later after the restoration of the ancient kingdom of the Jews in the 5th century BC.
“The Persians adopted Aramaic. The Babylonians adopted it and so did the Jews. It then prevailed as the language of the Middle East until 700 AD.”・・・
the Jewish people adopted the square Aramaic alphabet ? which had become the lingua franca of the entire Middle East from about 700 BC ? after they were exiled to Babylon in 587 BC, before which they had used a Palaeo-Hebrew script.・・・
Modern branches of the language are still spoken across southeast Turkey, northern Iraq, and northwest Iran.
But the dialect spoken by its inhabitants ? as well as the residents of two nearby, mostly Muslim, villages ? is the only survivor of Western Aramaic, the closest modern descendant to the language spoken by Jesus and his disciples. ・・・
http://www.csmonitor.com/World/Middle-East/2010/0402/Easter-Sunday-A-Syrian-bid-to-resurrect-Aramaic-the-language-of-Jesus-Christ
ちなみに、どうしてイエスがアラム語をしゃべっていたと考えられるかは、下掲ウィキ↓参照。
・・・Around the 6th century BCE, the Neo-Babylonian Empire conquered the ancient Kingdom of Judah, destroying much of Jerusalem and exiling its population far to the East in Babylon. During the Babylonian captivity, many Israelites were enslaved within the Babylonian Empire and learned the closely related Semitic language of their captors, Aramaic. The Babylonians had taken mainly the governing classes of Israel while leaving behind in Israel presumably more-compliant farmers and laborers to work the land. Thus for a significant period, the Jewish elite became influenced by Aramaic.・・・
After Cyrus the Great conquered Babylon, he released the Jewish people from captivity. The King of Kings or Great King of Persia, later gave the Israelites permission to return. As a result, a local version of Aramaic came to be spoken in Israel alongside Hebrew. By the beginning of the Common Era, Aramaic was the primary colloquial language of Samaria and Galilee・・・
http://en.wikipedia.org/wiki/Hebrew_language
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太田述正コラム#3928(2010.4.4)
<カルタゴ(その2)>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x793)
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