太田述正コラム#3870(2010.3.6)
<中共のネチズン政策(その1)>(2010.4.6公開)
1 始めに
中共のネチズンを取り上げた記事がフォーリン・ポリシー誌とニューヨークタイムスに載っていたので、それぞれ、ご紹介しましょう。
2 プロ篇
「・・・中共のハッカー達は有機的に簇生する。
そして、青年のナショナリズムと高度にIT網でつながった人々とが混ざり合っている。
中共は現在、世界で最も多くのインターネット利用者を誇っていて、3億8400万人がネットを利用しており、その中から愛国的ハッキングがわき出てくるのだ。・・・
・・・これらのハッカー達の関心が中共の政策と重なり合うからと言って、彼等が政府のために働いているというわけではない。
実際、彼等の活動の多くは政府の干渉を全く受けていないと考えられる。・・・
フリーランスのハッカー達が外国のサイトや企業をターゲットにしている限りにおいては彼等は抛っておかれるという暗黙のルールがある。
しかし、ひとたび中共の内部の情報を彼等が追っかけるや、政府は弾圧する。
自己保全に関心のあるハッカーにとっては、いかなる選択をすべきかは明らかだ。・・・」
http://www.foreignpolicy.com/articles/2010/03/03/china_s_hacker_army?page=full
(3月5日アクセス。以下同じ)
→狡猾極まりない国家的ハッキングの民営化だと思いませんか?
中共当局は責任逃れができるし、ハッカー達は当局からまともな規制・弾圧を受ける懼れなくして、外国のサイトや企業に対するハッキングにふけることができるってわけです。
もちろんこれは、比較的知的レベルの高い青年達のガス抜きにもなっています。
おぞましいことです。(太田)
3 アマ篇
「・・・人肉捜索(Human-flesh search engines=renrou sousuo yinqing(発音))(注1)は中共の一つの現象となった。
(注1)「人肉捜索は中国の人力によるWeb検索を指すらしい。日本では人力Web検索が該当するようだ。検索方式は一時、水平型、階層型等で話題になったが、一長一短があった。中国では、情報統制されているため、GoogleやYahooで検索しても欲しいものが得られない場合がある。そのため、人力で検索しているようだ。・・・」
http://huhcanitbetrue.blogspot.com/2008/05/blog-post_7403.html (太田)
それは、オンラインの自警団員的正義の一形態であってインターネット利用者達が彼等の怒りをかった人間を捜し出し処罰するのだ。
目標とするところは、捜索対象をその職から逐い、その隣人達によって辱めさせ、町から逃げ出させることだ。・・・
捜索は、あらゆる種類の人々に対して向けられてきた。
その中には浮気をした者、腐敗した官吏、アマのポルノ製作者、非愛国的であると目された中共市民、チベットに関し穏健なスタンスを促すジャーナリスト、中共のシステムで投機(game)を行おうとする金持ちが含まれる。
人肉捜索は人々が何に対して戦おうとしているかを浮き彫りにする。
政治問題、意見が二極に分かれる事柄、そして議論ある道徳的基準が現在の中共における断層線なのだ。・・・
→中共で、報道の自由が確立していないから、ネットにその代わりを求めることになるし、名誉やプライバシーを保護する法制度が確立していないから、ネット上で名誉毀損やプライバシー侵害にあたる書き込みが垂れ流しされている、ということでしょう。
そしてここでも、その背後には、ガス抜きになるとほくそ笑んでいる中共当局いる、という構図です。
「2008年8月25日、中国の“全国人民代表大会”常務委員会の分科会が刑法修正案の草案を審議していた時に、委員の1人・・・は「刑法に“人肉捜索”(=「人肉検索」)に関する基準を新設して規制を行い、刑事責任を問えるようにすべきではないか」と提案した。「人肉検索」は国民の氏名、住所、電話番号などの基本情報を漏洩するばかりか、国民の基本的権益を著しく侵害する行為であるというのがその理由であった。・・・」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080910/170132/
といった動きがある旨報道はされても、それがいまだに実現していないことからしても、当局の人肉捜索容認姿勢が透けて見えてきます。
それにしても、「非愛国的であると目された中共市民、チベットに関し穏健なスタンスを促すジャーナリスト」が人肉捜索の対象とされる、という点にやりきれなさを覚えます。
もう少し、この記事の紹介を続けたいと思います。(太田)
(続く)
中共のネチズン政策(その1)
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