太田述正コラム#3886(2010.3.14)
<現在進行中のドローン軍事革命(その2)>(2010.4.18公開)
 (3)軍事革命
 「・・・<ドローン出現の>衝撃は、火薬や印刷機や航空機のそれに比肩しうる。・・・
 アフガニスタンにいる<航空機>部隊より、遠方にいる<ドローンの>部隊の方がストレス度が高いことが分かりつつある。・・・
 今までの爆撃機の操縦士達は目標が見えなかった。
 遠方からの操作員は、目標を近くで見る。
 そして、爆発とその後の間に目標に何が起こっているかを見る。
 物理的には遠く離れているわけだが、より多くのことを見ているわけだ。
 また、ドローンによる戦争は、24時間、丸一週間、そして365日<ぶっ通しで>行われる。
 この戦争はクリスマスにも止みはしない。
 それはまるで、毎日毎日、必ず火事がある消防士みたいなものだ。
 これは感情的にも肉体的にもきつい。
 それに加えて、多くの部隊は充足率が100%ではないときている。・・・
 <これまでは、>部隊全体が感情的経験を共有するものだった。
 今ではもはや、「戦友の団結」はないのだ。・・・
 <ある女性の操作員は、>地上にいる米軍の兵士達が殺されつつあるところを眺めていてどう思ったかを語ってくれた。
 自分達がそれ以上何もできない、という思いを・・。・・・
 戦争<をやるかどうか>は、かつては深刻な決断を要した。
 今ではもはや、宣戦布告すらなされなくなった。
 我々は、戦争諸税を払わないし、戦債も買わない。
 今は、戦争を、自分達の息子達や娘達を危険な所に送り込んだ結果の幾ばくかと向き合う必要なくして遂行することができる。
 それは、政治家達の戦争についての考え方を変えた。
 我々は、戦争に抗う社会的障壁が低くなりつつあったところ、今や、障壁が地上に崩れ落ちるようなテクノロジーを手にするに至ったのだ。・・・
 <そして、>ドローン戦争について、誰でもが、記録し、ダウンロードし、アクセスする。
 そのビデオをユーチューブで見ることができる。
 それは、戦争を一定の人間にとって、娯楽の一形態へと変えつつある。
 兵士達はそれを「戦争ポルノ」と呼んでいる。
 それをもっと見ることはできるが、より少なくしか経験できないから、と。・・・」(F)
 (4)法律問題等
 「・・・無人航空機がパキスタンの秘密航空基地から飛び立ち、米国バージニア州のCIAによって遠隔統制される。・・・
 パキスタンのタリバンに対するその成功にもかかわらず、米国人達によるドローンの使用はパキスタンでは引き続き議論の的になっている。
 ギャラップの世論調査によれば、パキスタン人の9%しかドローンの使用について好意的な意見を持っておらず、3分の2は頭から否定的だ。・・・
 理想的には、パキスタン政府並びに軍としては、ドローンによる攻撃を自分達の手でやりたいと思っている。
 だから、彼等は米国に必要なテクノロジーを提供するように求めている。
 しかし、米国政府は、この考えを退けている。・・・」(E)
 「・・・<CIAのドローン操作員達>は、制服も認識票も身につけていない戦闘員だが、戦争に関する国際法や国際慣習に反して、直接敵対行為に参加し、武力を行使している。
 たとえ、彼等がラングレーで座っているとしても、彼等が直接敵対行為に参加している以上、CIAの操縦士達は非軍人であることから、<軍人と非軍人とを>区別するという軍事紛争の中核概念を侵害している。
 1863年のリーバー規約(Lieber Code)(注)で非軍人の戦闘への参加が非難されるようになる前から、<既に>それは慣習法に反することとされていた。
 (注)「1863年4月24日のリーバー規約は、「一般命令第100号:野外における米陸軍の統治のための諸訓令(Instructions for the Government of Armies of the United States in the Field, General Order ��� 100)」、またはリーバー諸訓令として知られるが、これは、南北戦争中に北軍に対してエイブラハム・リンカーン大統領によって署名された訓令であって、戦時に兵士達がいかにふるまうべきかを規定していた。それはドイツ系米国人たる法律家兼政治哲学者のフランシス・リーバー(Francis Lieber)の名をとったものだ。主要ないくつかの節は、軍法、軍事司法、スパイと脱走者の取り扱い、そして捕虜がいかに取り扱われるべきかに関するものだった。・・・」
http://en.wikipedia.org/wiki/Lieber_Code (太田)
 非軍人の戦闘への参加は、今日においても、1949年のジュネーブ諸条約(Geneva Conventions)の二つの1977年議定書によって依然として禁止されている。
 米国は、この二つの議定書をまだ承認していないが、我々はこの禁止は武力紛争に係る国際慣習法であって、すべての国々を拘束していると考えている。
 国際軍事紛争であれ非国際軍事紛争であれ、我々が直接敵対行為に関わるテロリスト達を殺すのは、彼等がそんなことをしたことによって、非軍人としての保護対象でなくなるとともに彼等が合法的標的となるからだ。
 彼等が捕まった場合、彼等は、<敵対行為に>直接参加している間に犯した非合法な様々な行為について、民事諸法廷(civilian court)または軍律諸法廷(military tribunal)への訴追対象となる。
 彼等は、捕虜の地位を与えられる権利を有さない。
 もし、最近自爆者によって<アフガニスタンの>コスト(Khost)において殺されたCIAの非軍人要員が、直接的に、標的に関するデータを提供し、戦闘地域においてドローンに武器を搭載したり飛行させたりすることに関与していたとすれば、彼等は、敵・・この敵自身は非合法戦闘員であったとしても・・の合法的な標的であった<と言える>。
 CIAの非軍人達が米国政府またはその軍によって雇われていたり、そのために働いていたりしているかどうかは、関係ない。
 彼等は非軍人なのだ。
 というのは、彼等は、区別できる制服も認識票も身につけておらず、彼等が標的データを入力したり、戦闘地域において武装したドローンを操縦したりすれば、それは敵対行為に直接参加したことになるのであり、これは、彼等が合法的に標的にされても仕方がないことを意味する。
 しかも、敵対行為に繰り返し、かつ直接的に参加するCIAの非軍人要員は、最近の国際赤十字の指導要領(guidance)において「継続的戦闘機能」という言葉があてられているところのものに該当するのかもしれない。
 この地位について、この赤十字指導要領は、彼等が、ラングレーを含め、どんな所にいついることが発見されようと、正当な標的となると記している。・・・」(G)
3 終わりに
 私は、戦場に近いところでドローンを操作しない理由が、今一つ飲み込めません。
 というのは、操作員に指令が届くのにも情報が操作員に届くのにも、そしてそれらを踏まえて操作員が操縦したり爆弾投下やミサイル発射をする操作をするにも、それぞれに伝達時間というタイムラグが生じてしまうはずだからです。
 それはともかくとして、次に来るのは、艦艇のドローン化か、それとも、地上兵士のロボット化でしょうか。
 それまでにも、軍事紛争に係るジュネーブ諸条約の抜本的見直しが必要になりそうに思われます。
 とにかく、軍事一つとっても急速な大転換の時代に我々は生きていることを実感させられます。
(完)