太田述正コラム#3961(2010.4.21)
<皆さんとディスカッション(続x810)>
<太田>(ツイッターより)
普天間問題は、うやむやのまま棚上げの形で「決着」することにほぼキマリか。 とにかくなさけない属国だよ日本は・・。
日本には諜報機関がありません。
諜報って味方だって対象です。
日本政府は、在日米軍についても公式情報の持ち合わせしかない。
それでどうしてカネ出せるのよ。
答え:属国だから、キャッシュディスペンサーだから。お分かりか?
<Chase>(同上)
<コラム#3959で>の川内議員の普天間問題に係わる証言は大スクープですが、この内容を以前から発していた太田さんの慧眼にあらためて驚嘆します。
岩上氏のツイッターによると岡田大臣は全否定のこと。
太田さんのいううやむや決着に向かっていますね。
<太田>
本日TVのインタビューを受ける前、防衛省でどうして関係企業との癒着が生じるのかを整理したので、お読み下さい。
1 防衛省と他省庁との共通点
公務員は、公のための仕事をしているのであって、利益を追求する仕事をしているわけではないので、長年公務員をやっておれば、基本的に、民間企業では使い物にならない。
他方、年金だけでは、退職後、生活水準を大幅に切り下げざるをえない。
(60歳前に退職すると年金すら出ない。)
よって、退職者を、公的な法人をでっちあげてそこに天下りさせ、あるいは関係企業に天下りさせ、その見返りに、当該公法人や企業に、公費を流したり便宜を図ったりする、というやり方をとってきた。
2 防衛省のかわいそうな点
任期制隊員の話は横に置いておきます。
防衛省の文官と制服組共通の話から始めましょう。
日本では、自衛隊に軍隊としての本来の仕事をさせないというコンセンサスがあります。
従って、防衛省にもほとんど権限らしい権限を与えていません。
ですから、防衛省は、そもそも公法人をでっちあげることがほとんどできませんし、民間企業等に対する規制権限や助長権限もほとんどありません。
普通の先進国の軍隊であれば、上級将校だった人は、武器輸出を手がける民間企業で、輸出対象国がらみの仕事が結構ありますが、日本の場合、武器輸出が禁止されているのでそれもありません。
ですから、防衛省と民間企業等との関係は、明々白々な、財・サービスの売買の関係のみだ、と言っても過言ではありません。
これは、防衛省が職員を天下りさせる場合に、対象が基本的に民間企業しかなく、しかも、便宜を図るというバレにくい方法をとることができず、公費を流す形でしか見返りを与えることができない、ということを意味します。
こうして、常にカネが動くわけですから、これだけでも、防衛省関係の天下りはバレ易いと言えるでしょう。
しかも、随意契約で財・サービスを買い上げるケースならまだしも、このところ、不祥事防止の観点から、入札にかけなければならないものがどんどん増えてきています。
入札の下で、公費を、天下りした職員の人件費を補填する分に見合う金額以上を上乗せして企業に流すとなると、受動的に談合を黙認するか、能動的に官制談合をやるかしかありません。
ところが、談合には関係者がたくさんいますし、関係者の間で利害が対立することもよくあるので、極めてバレ易い。
その結果、あたかも防衛省で他省庁に比べて不祥事が多いかのような印象を世間に与えがちです。
ところで、以上に加えて、制服組には特有の悩みがあります。
若年定年制です。
階級によって違いがあるけれど、要するに60歳までに基本的に辞めなければならない。
当然、年金は出ないので、天下りをどうしてもしなければならない、ということになるわけです。
そもそも、どうして若年定年制なのでしょうか?
それは、制服組は、実際の戦闘時はもちろんのこと、平素の訓練時においても、体力を使う仕事をしなければならないからです。
指揮官、特に上級指揮官は、体力を使うわけではなかろうと疑問を持たれる方もおられるでしょうが、高齢になれば、注意力や瞬発的判断力は衰えます
http://koureisya.11joho.biz/
し、徹夜でもすれば、もうダメでしょう。
どうしたって、普通の公務員と同じ定年年齢というわけにはいかないのです。
3 恩給制度を復活させる必要性
では、制服組で天下りにからむ不祥事が起きないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
私は、恩給制度の復活しかないと思います。
戦前の日本には恩給制度がありましたが、それは、明治の初めに軍人を対象にしてスタートし、大正の終わりに全官庁の公務員に拡大された、という経緯があります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/engo/seido04/index.html
年金と恩給の違いは、前者は拠出制の部分があるのに対し、後者は全額国費で賄われる点と、後者の方が手厚い点です。
つまり、恩給は、本来、国にために生命の危険を冒して奉仕する軍人(やその遺族)に対する国による生活保障の制度なのであり、どこの国でも軍人恩給はあります。
ですから、自衛隊に軍隊としての本来の仕事をやらせるのであれば、恩給制度を復活することは、ごく自然なことだと言わなければなりません。
(日本でも旧軍人に対する恩給制度は現在でもありますが、この制度を自衛隊の制服組にも適用するわけです。)
そうすれば、彼等が天下りをする必要性はなくなるので、天下りにからむ不祥事もまたなくなるはずです。
4 結論
結局、防衛省の天下りにからむ不祥事をなくそうと思ったら、まず、自衛隊の現状を直視した上で、自衛隊をどうするのか、真剣に考えるべきだ、ということになりそうです。
それでは、記事の紹介です。
ヤク関連で、今年に入ってからだけでも3,000人の死者がメキシコで出ています!↓
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/04/20/AR2010042004961.html
イスラム教の本来的原理主義性(コラム#3957)の一つの例証。
まっこと悲劇なり、恐怖なり。↓
・・・In the 1980s, an American-supported autocrat, Mohammad Zia ul-Haq, seeded the education system with Islamists in an effort to forge a unified Pakistani identity. At the University of the Punjab, that created a pool of supporters for Islami Jamiat Talaba among teachers, making the group all but impossible to eject.
It has left liberal teachers like Ms. Sirajuddin despairing for their institution, which once upon a time produced three Nobel laureates. Now, they say, it is a shadow of its former self and no longer a safe environment for young people to exchange ideas. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/04/21/world/asia/21university.html?hp=&pagewanted=print
頭のトレーニングなんてありえないって話。↓
・・・healthy adults who undertake computer-based “brain-training” do not improve their mental fitness in any significant way.・・・
People who practiced a certain test improved at that test, but improvement does not translate beyond anything other than that specific test・・・
・・・getting a good night’s sleep, exercising vigorously, eating right and maintaining healthy social activity have all been shown to help maximize a brain’s potential over the long term.・・・
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1983306,00.html
タイの政治状況が、一言二言で分かる!↓
・・・When the king was crowned in 1946, the monarchy was at a low ebb following the abolition of the absolute monarchy in 1932. Military strongman Thanom Kittikachorn encouraged renewed public adoration of the king in the 1960s, in part as a way to consolidate his own power. King Bhumibol(プミポン)’s moral character and good works have also added to the monarchy’s prestige.
Despite having the longest history of democracy in Asia, Thailand has been run for long periods by a loose and evolving triumvirate of the military, nobility and established families of ethnic Chinese businessmen.・・・
The present conflict is the result of long-festering resentment among rural and working-class Thais that their democratic voice has been ignored. ・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303491304575187821022789544.html
カルヴィンはカトリック教会による異端審問に積極的に協力した。
要するに、どちらも欧州文明の産物であるプロテスタンティズムとカトリシズムは、そのおぞましさにおいて、コインの両側なのだ。↓
No blasphemous-book list would be complete without・・・The Restoration of Christianity <by> Miguel Servetus 1553・・・
Servetus<(1511~53年。スペイン人
http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Servetus (太田)
)>, the brilliant doctor who ended up burned at the stake in 1553 by Protestant authorities in Geneva. He was condemned thanks to John Calvin, who so hated Servetus’s writings that he cooperated with the Roman Catholic Inquisition to destroy the blasphemer. In “The Restoration of Christianity,” Servetus sketched a new Christianity that would unite the three great monotheistic faiths of his native Spain?Christianity, Islam and Judaism. So naturally his book ditched the Christian idea of God as a Trinity, emphasizing instead the oneness of God. ・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303828304575180132080712778.html?mod=WSJ_Opinion_MIDDLESecondBucket
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太田述正コラム#3962(2010.4.21)
<歴史のたられば英国版>
→非公開
皆さんとディスカッション(続x810)
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